ランの成長日記 17 (05−04−20 UP)

2005−03−28(月) 妊娠? ネコ馬鹿冥利 おばさんの食欲
 最近、ランが太った。特に腹から尻にかけてふっくらとしてきた。昨日体重を量ったら3150グラムであった。長いこと3000から増えなかったのに久しぶりに増加した。もしかするとお腹に赤ちゃんがいるのではないかと疑う。外に出す時は必ず監視していたし、隣の雄ネコも姿を消したし、過去の2回の発情の時は家の外には出さなかったからその心配はないと思うが、人の目をかすめて、わずかな時間にどこかで雄ネコと交尾することもあり得る。
 不妊手術は7ヵ月を過ぎてからと言われた。ランはちょうど8ヵ月だからそろそろ手術して、自由に家の外に出してやりたい。
 最近では、外に出しても、リビングのガラス戸を開けておくと、そこから自分で帰ってくる。家の庭が主な行動範囲で、せいぜい隣家の庭に行くくらいである。

 昼間、立っている私の胸に飛びついてきた。そのまま抱いて撫でてやると目をつむりのどを鳴らして、いかにも気持ちがよさそうだ。夜も私が階段を下りていくと、下でランが待っていた。きちんと両足を揃えて坐り、まん丸な目を輝かせて私を見上げる。胸をたたいて「ランおいで」と言うと、飛びついてきた。ネコ馬鹿冥利に尽きる一瞬。

 おばさんの食欲が異常だ。朝も、昼も、夜も食事の時には食卓に上ってきて、うるさい。自分は缶詰の魚をぺろりと食べる。人間も年を取ってくると、さっき食べた食事を忘れてすぐに「メシはまだか」と催促するという話はよく聞く。おばさんもそんな状態かも知れない。

2005−04−02(土) 犬 トイレ
 この頃昼間はランを外に出す。1時間から2時間近く外にいる。外でやることと言えば、アブなどの小さな虫を追いかけたり、隣家の犬を眺めたり、道路に出て背中をこすりつけたりである。
 犬が好きなようだ。隣家の犬をフェンス越しに眺めていることがよくある。また、道路を隔てた東隣の家には、小さな犬が2匹いるが、それが気になるようで、この家の階段を上がっていくランを今までに2回見掛けた。しばらく前に、この家の人が2匹の犬を連れて我が家の前を通った時、ランはじっとその後を見つめていた。

 リビングのガラス戸を開けておくと、そこから自分で家に入ってくる。今日は、入って来るなり、トイレに直行したという。外でしてくればいいのにと家のものは言う。ランはトイレは外ではしないようで、必ず家でする。それも、トイレの砂がきれいに乾いていないとしない。湿って固まった砂ではしようとしない。新しい砂に替えられるのを待っている。おばさんやミーはトイレはいつも外でしていた。おばさんが老齢になり、オシッコが間に合わなくなって家の中でもらすようになったので、室内にトイレを設けたのだ。それもここ3年ほどのことである。ランは最初から室内トイレの習慣がついている。

2005−04−05(火) 不妊手術
 家に来てから8ヵ月が経過した。いよいよ不妊手術をすることにした。前もって獣医に電話しておいて、今朝ランを連れて行った。昨日の夜8時から食事を与えないようにと言う獣医の指示を守った。ランは日頃から食べ物にはそれほど執着しない。今朝も空腹で餌をせがむ様子はなかった。網袋をかぶせて、自転車のハンドルの前のかごに入れて動物病院に連れて行った。道中それほど鳴かなかった。

 不妊手術には卵巣除去と、卵巣と子宮の両方を除去する2つの方法があるとのこと。この動物病院では前者を行う。他に卵巣を結索する方法もあり、この方法だと妊娠はしないが、発情はあるという。卵巣を取ってしまうのは女性としての機能を奪うことで、かわいそうな気がしたが、仕方がなかった。
 せっかく順調に思春期を迎え、子孫が残せる体まで成長したのに、それを人間の都合でランの願いを断ち切ってしまうのだ。残酷な話だ。おばさんの場合は、妻が「女だから1度は子供を生ませたい」といって、ミーとムーが生まれた。しかし、その後すぐに手術した。ミーの場合はもうそういう話にはならず、ランと同じように大人になったとき手術した。おばさんも、ミーも発情の顕著な徴候を示さなかったのに、ランは典型的な徴候を2回も示した。それを見ているから、ランに対してはすまないという気持ちが強い。しかし、ランに子供を産まれても、その子達を全部面倒見てやることは出来ない。たとえその中の1匹を手元に置いて育てたとしても、今度はその子が大人になったとき、ランの場合と同じ問題のぶつかる。どこかで決断しなければならない。そんな理屈を心の中で繰り返して、ランを病院においてきた。
 小さなゲージに入れられたランはおとなしくしていたが、大変なストレスだろう。午後、手術して、一晩病院泊まりで、明日の朝迎えに行く。

 私は今日は1日家にいたが、ランがいない家は火の消えたように静かで、拍子抜けする。暖かな爽やかな日で、ランがいないために家のガラス戸を開け広げておくことが出来た。これからはランも手術を終え、妊娠の可能性も、あるいは発情して雄ネコを求めて遠くまでいってしまうこともなくなるから、好きな時に出してやれる。ドアや窓の開け閉めに気を使うこともなくなくなる。

2005−04−06(水) 肌色 乳首 
 朝、動物病院にランを迎えに行く。今日は休診日なので朝一番で取りに来て欲しいと言われていた。ひょっとして妊娠しているかと思ったが、それもなく無事手術は終わったようだ。3日間飲み薬を飲ませること以外には特に注意すべきことはない。
 
 外に出してもいいかと聞いたら、「ネコの行動半径は2キロにも及ぶから、幹線道路などに出ていって、交通事故に遭う可能性があり、出さない方がいい」とのことだった。出たがってしょうがないというと、それは癖で、本当に出たがっているわけではないと言う。ランは恐がりのようだから、追いかけられたりするとみさかいもなく走り出しそうだ。そういうネコは交通事故に遭いやすい。おっとりとしていて鈍いネコの方がかえって事故には遭わないものだという。それは納得できた。
 そんな話をしてから、獣医の夫人はケージに入ったランを奧から連れてきた。ケージからランを出し化膿止めの注射を背中にして、網袋に入れた。その間ランは数回甲高い声で鳴いた。普段聞き慣れない鳴き声だった。やはり緊張しているのだ。代金は消費税込みで16800円。

 家に帰っても鳴き声も出さずおとなしくしていた。下腹部の毛をきれいに剃ってあって、真ん中に2センチほど縫い合わせた跡がある。抜糸しなくてもいいとのこと。ランは手術の跡をなめていた。お腹の地肌がもろに出ている。中心部が淡いピンクで、脇の部分が黒い。黒いところは毛が残っているのかと思ったら地肌が黒いのだ。地肌の色が毛色になっている。
 手術の縫い合わせの横に小さな乳首。触ってそれが突起しているのが初めてわかるほどの可愛い乳首だ。ランはこの乳首を吸われることもなく一生を終わるかと思うと、やはり不憫であった。

 5月下旬の陽気とかで、暖かい日であった。ランを外に出してやる。いつものように突然走り出すことをしない。おとなしく庭に坐っていた。獣医は外に出さない方がいいと言うが、1年あるいは2年で行方不明になった我が家の雄ネコの「ニコチン」や「ムー」と違って、雌ネコのおばさんやミーは遠くへ行くこともなく天寿を全うしているから、ランもできるだけ外に出してやろうと思う。
 夕方になってやっと鳴き声が出るようになった。手術の緊張からまだ解放されていないようで、いつものように走り回ることはない。抱き上げると軽くなったような感じだ。

2005−04−09(土) カワハギ
 一気に桜が満開となり、今日は見頃。
 手術の緊張から解けて普段のランに戻った。鳴き声を上げ、外に出たがり、突然家の中を走り回るいつものランだ。抱き上げると硬かった肢体も今日は従来のしなやかさを取り戻した。朝、新聞を取りに出た妻が、外から玄関のドアを出たときにランが飛び出してしまった。何とか家に入れたいと思った。ランは庭でうろうろしているのだが、忍び寄って捕まえようとしてもスルリと逃げていく。以前うまくいったという、私のビールのつまみであるカワハギの加工品で釣ることにした。手にしたロールカワハギを突き出して、ランに近づくと、ランは鼻面を寄せてきた。すかさず胴体を捕まえて、家に入れた。

 夕食時は必ずその日のランの行動が話題となる。キュウイ棚から下りられなかった、外から自分で帰っていた、帰ってくるとすぐウンチをした、外出から帰って玄関のドアを開けたらランが待っていた、胸に飛びついてきた等々。今日は隣家の犬に吠えられて後ずさりしたと妻がいう。ネコでも後ずさりできるのだと妻は感心する。ランはこの犬を無視していて、隣家の庭に入って吠えられても知らぬ顔を決め込んでいることが多いのだが、今日は何かあったのだろう。

 毛がやたらに抜ける。膝の上で撫でていると、何本もの毛が指先についてくる。暖かくなってきたので、夏毛に生え替わるのだろう。

2005−04−11(月) 山古志村のネコ
 朝、雨戸を開けているときにランが外に飛び出した。リビングのガラス戸を開けていつでも入ってこられるようにしたのだが、ランは姿をくらませていた。庭に姿を見せたらビールのつまみのさきイカで(前回のカワハギはなくなってしまった)おびき寄せて家に入れようと待ちかまえていたのだが、ランは一向に姿を見せなかった。

 朝食後、新聞を見ていたら山古志村で、震災後4ヵ月ぶりに自宅に帰ったら、飼い猫が生きていたという記事が大きく出ていた。飼い主の主婦と「チャグ」というネコのカラー写真が載っていた。鼻の中央に黒い線のあるぶちネコだ。鼻の黒い線がランに似ていると妻と話していると、ランが外から入ってきた。あまりのタイミングのよさに、自分のことが話題になっているのを聞きつけて、外から帰ってきたのではないかと思うほどだ。
 まだ残る雪の下で、足がしもやけになり、痩せたとは言え、倒壊した家の中で4ヵ月も生き延びたネコの生命力は素晴らしい。こうした生命力の強さが、逆にネコが古来魔物として怖れられる一因でもあろう。
 我が家のおばさんネコもやせ衰え、足腰もふらついてはいるが、強靱な生命力を発揮して健在である。



手術後の傷跡をなめる  05−04−06

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