ランの成長日記ー14 (05-02-23 up) 2005−01−25 ネコ流行性腹膜炎?―2 昨夜は10時前に床についた。床の中で三島由紀夫の短編集を読んだが、ランのことばかり気になり中身は何も入ってこなかった。 夜中に目が覚めた。まだ1時過ぎでしかなかった。ランのことをが心を駆けめぐった。「恩寵」と云う言葉が思い浮かんだ。若くして亡くなるのは神に魅入られ、特別の恩寵にあずかった人だ。三島は「恩寵」に憧れたが、ついにそれによくすることができなかったと、どこかで書いていた。ランも若さあふれる命の輝きのみを残して逝ってしまうことで、かえっていつまでも人々の心に強く残る。しかし、その悲惨な最期を果たして私たちは耐えることができるだろうか。神経を冒され、夜も昼もわからなくなり、夜中中苦しむランのそばにいて見てやることができるだろうか。診断が下されたら、私は麻雀や将棋をしばらく中止してランの面倒見に専念しよう。こんな心理状態で勝負事に勝てるわけがない。最後は人間のように動物病院に任せた方が良いのだろうか。そんなことが次々と浮かんできた。 こんな思いは私の人生で初めてのことだった。父の時もこんな思いはしなかった。若くして逝った母の時にも、こんな思いはなかった。 今からこんなに悩んでいては、私の方が参ってしまう。飼い主が落ち込んでいてはランもそれを感じ取ってかえって良くない。もしFIPなら最後までしっかりと面倒を見てやるしかない。獣医ともよく相談して最善を尽くすしかないと言いきかせてやっと眠りに落ちた。 朝ダイニングに降りていくとランがいた。目薬をさしてやる。検査結果の出る運命の日だ。娘は出がけに、ランの結果を電話で知らせてくれと言ったという。 よく晴れた日であったので、朝食後ランを外に出した。私も庭に出てランを見ていた。庭の中や、あるいは隣家の庭をうろうろしていたが遠くへは行きそうになかった。 10時少し前に家に入ってみると留守電が入っていた。妻は洗濯をしていたので電話のベルに気がつかなかったのだろう。もしかすると獣医のTさんではないかと思って再生した。 受話器の向こうから、T夫人の声が流れ出した。 「ランちゃんの検査結果が出ましたのでお知らせします。結果は感染していませんでした。FIPは400倍未満という数値でこれは感染してないことを示しています」と、一気に流れてきた。 私は拍子抜けするような気がした。すぐに妻に知らせた。それから獣医さんに電話した。やはり夫人が出てきた。私は感染の最盛期には抗体値が低く出ることがあるとインターネットで出ていましたが大丈夫でしょうかと聞いた。「400倍未満という数値では、今まで感染例はありませんから大丈夫です」とのことだった。目はどこかに強くぶつけたのが原因でしょうと言う。みさかいもなくすっ飛んでいってドアにぶつかったりしていることがよくあるから、その可能性はあるだろうと思った。ここ数日元気がなかったようだと云ったら、今、風邪が流行っているから、そのせいではないかとのことだった。目の具合を聞かれ、瞳がまだ光るようだと伝えた。今週末に再度来院するようにいわれた。 風邪と言えば、昨日、冷蔵庫の上からいつものように下に手を伸ばしてマグネットを取ろうとしている時、鼻先からぽたりと一滴鼻水が垂れた。私はそれはFIPの症状の一つではないかと疑った。 ランは相変わらず外で遊んでいた。今までより元気がよくなったように見えた。柿の木に登ったり、ガレージの屋根に登ったりした。 午後外出して、8時過ぎに家に帰る。ランは午後ずーとおばさんと仲良く私のベッドの上で寝ていて先ほど起きてきたという。目薬をさし、食後ランを膝にしばらく撫でてやる。 2005−01−29 初潮、乳歯 ランを獣医さんに連れて行く。前回ほどではなかったが、行く時は自転車の荷台で鳴いていた。 夫人と助士の女の子が出てきて見てくれた。ちょっと目をのぞいて、よくなっているという。それだけで診療はなし。目薬は使い切るまで使って良いとのこと。FIPの検査結果のファックスを手渡された。電話で聞いたのと同じことが書いてあった。きっとどこかに強くぶつけたからなったのだろうという。 FIPは30頭に1頭くらいはある病気とのこと。発症すると助からないが、目にだけ症状が出た場合は致死的ではなく、この獣医さんの所でも11才まで生きたネコがいるという。感染力も強くなく、多頭飼育しても感染することは少ないという。 私は年齢換算表に出ている「初潮」ということを聞いた。「発情のことで、出血などの現象はない」とのことであった。犬の場合も同じとのこと。ついでに4ヵ月のところにある乳歯が永久歯に変わるという記述についても聞いた。哺乳動物は皆乳歯があり生え替わるのだとのこと。少し前に、床に落ちていたのは多分犬歯で、奥歯は抜けても飲み込んでしまうので床に落ちていることはないだろうと云う。折れたのではなくて安心した。こんなことも知らないで、今まで20年近くネコを飼ってきたのだ。ニコチンも、おばさんも、ミーもムーも歯が抜け替わることには気がつかなかった。もっともおばさんはが来た時は4ヵ月を過ぎていただろう。 今回は診療料金は要らないと云う。この間網袋に入れたまま診察台の上に乗せておいたのだが、一言も鳴かなかった。帰りの自転車でも一言も発しなかった。病院が慣れたのかも知れない。 柿の木とラン 05−01−25 |