ランの成長日記ー13  (2005−02−14up )

2005−01−22(土) FIP(ネコ流行性腹膜炎)?
 今日よく見たら左の虹彩の部分も右眼よりも赤みを帯びている。娘が昼間に首輪をつけたランを外に出した。ランはどこへも行かずリビングの前のポットに生えているスズメノカタビラを食べたりしておとなしくしていた。その後隣家の庭に行ったりしたが、木に登ったり、道に出たりという以前のような活発な動きはしなかった。日差しが強く外は暖かであった。目を見てもらいに動物病院に連れて行くことにした。庭にいたランを捕まえ、昼食後私が連れて行った。

 おばさんの時と同じように、網袋に入れさらに布袋にいれ自転車の前の荷台に積んで出掛けた。ランは網袋の中でも暴れた。自転車が家の前を過ぎようとした時、ランが網袋から抜け出た。仕方なしに自転車を道路に停めランを抱えて家に帰り、再度網袋に入れ、しっかりとファスナーをして出直した。道中鳴き声を上げ、もぞもぞやるので左手でランを押さえながら自転車を進めた。

 獣医には先客はいなかった。獣医のT夫妻と助手の若い女性2人の4人がかりで見てくれた。T氏は目にペンライトの光を当て、レンズ越しにのぞき込んだ。見立ては前眼房炎とのこと。水晶体の前の前眼房に炎症があり、さらに虹彩も炎症を起こしているようだ。水晶体の中はよく見えないが異常があるかも知れない。どこかにぶつけるなどした外傷が原因とも考えられるが、ウイルス性のこともあり得る。T氏は紙に図を書いて説明してくれた。それで、その検査をやってから診断したいとのことであった。

 3種類のウイルス検査のうちFIP、ネコ流行性腹膜炎ウイルスに感染すると、目にこのような症状が出るとのことであった。流行性腹膜炎の解説のコピーを渡してくれた。どこかにぶつかって、こんなになるとは私には思えなかった。それで、もしそのウイルスだったら治りますかと私は聞いた。「治すことはできない、延命処置しかできない」と予想通りの答えであった。私は信じられなかった。感染経路はと聞いたら、夫人が母親から移ることもあるし、他のネコから移ることもあるという。ランは2週間ほど前近所の雄ネコと喧嘩して鼻先に小さな怪我をしたが、それはひっかき傷で、噛まれたのではないから感染はしないと私は思った。結局母親からだろう。

 解説の1枚コピーに目を通した。発症したら致死的であり、治療法はないと書いてある。症状にウエットタイプと、ドライタイプがありドライタイプの一つの症状が目の異変であった。T氏は、検査結果を見てから、もしそうなら副腎皮質ホルモンなどの投与をするといった。それまでは抗生物質、眼圧降下薬、抗炎症薬の3種の目薬を点眼するということになった。

 ランの体重が2740グラムとのこと。確か2800は超えていたはずだと思った。まあ、家のバネばかりだからそのくらいの誤差はあるかと思った。体温も測りましょうと云うので、お尻に体温計を入れて測った。38.7度とのことで、子猫の平熱は38.5度だから平熱だという。

 その間に診療台の後ろの窓際に張ってあるネコの年齢換算表を見た。今まで見なかった最初の方を見た。7ヵ月で初潮、人間相当12才とあるのに今回気がついた。ネコに初潮があるのだ。先日、ランの避妊手術について聞きに行った時、7ヵ月になってからといわれたのはそのことだったのだ。犬の年齢換算表にも初潮というのがあった。

 ランの右前足にクリップで血止めをした。それだけでランは鳴き叫び、暴れる。T氏が注射針を刺そうとしたが受け付けず、引っかいた。「引っかかれた」と腕をさすりながら、爪を切るように助手に命じた。二人がかりでランの爪を切った。その後助士が二人係で押さえつけ、3度目の試みでT氏がやっと1mlの血液を採取した。

 それが終わった後で、ランの目をデジカメで接写。夫人と助士の一人が抑え、もう一人がシャッターを押す。しかし、動いたり目をつぶったり、ピントが合わなかったりでなかなかいいのが撮れなかった。そのうち記録メディアが一杯になり、再度今度は奥の部屋に連れて行って撮影された。3種類の目薬のうち1種類を助手が点眼。5分間間隔をあけて次のを点眼するように云われたので、後の2つは家に帰ってすることにした。ランは点眼された後、目をしばしばさせた。

 FIPの検査はここではできずセンターの出すので、火曜日以降に結果がわかるとのことであった。それまでに目がおかしくなったらいつでも連れてくるように云われた。検査代が6500円。診療代と合わせて11340円 。5000円しか持ち合わせていなかったので、後で払いに行った。おばさんは病院からの帰りはうんともすんとも云わないが、ランは帰りも荷台の中でニャーニャー鳴いていた。

 家に帰って家族に説明する。皆一様に驚く。検査の結果はまだだが、私はまず間違いなくFIP、ネコ伝染性腹膜炎であると思った。
 インターネットで「ネコ伝染性腹膜炎」で検索。解説といくつかの実例が出ていた。コロナウイルスが体内で変異して発症するというのが原因らしい。しかし、感染経路、発症メカニズムなどはよくわからず、治療法はない。ウエット型は身体の各部から体液が浸出してお腹がふくらむ。ドライ型は脳神経をやられ、歩行困難、痙攣発作、発狂などで亡くなるという。発症は7,8ヵ月のネコに多いとのこと。ちょうど思春期でホルモンの分泌とストレスが関係しているのではないかという。この記述を見た時、ランはこの病気にかかった思った。

 私は真っ暗な気持ちになった。色々な思い、これからのことが次々に胸をよぎった。薄幸のラン。
 インターネットを閉じて、2階に上がっていった。ランは私のベッドの上で前足にあごを乗せいつものように寝ていた。撫でてやると軽くのどを鳴らした。愛おしさがこみ上げてきた。起きあがる仕草も、私の手を払いのけようともしなかった。獣医に行ったために疲れているのだと思い聞かせたが、やはり体調もよくないのだろう。私は床に膝をつきランと向き合って「ランちゃん…」と声をかけながらしばらく時間を過ごした。

 最近おとなしいのは、思春期を迎えて体も、心も変わりつつあり、子孫を残すための準備をしているのだと解釈していた。そうではなかったかも知れない。
 夕食時、ランは2階から下りてきた。目薬をさす。ランがいやがって動くので、一人ではさせない。妻にランを抑えてもらって、私が点眼する。5分間隔で3種類だから大変だ。1日4〜5回さすように云われた。

 妻はそういう病気ならそれはランの運命だからしょうがない、最後まで面倒を見るという。娘も息子もランは元気ではないかと言う。皆、それほど深刻に考えていない。食卓の私の席からは冷蔵庫が左前方にある。冷蔵庫の扉には2L版のランの写真が3枚貼ってある。1枚はネットのトップ頁に載せた生後3週間くらいの写真だ。カメラを見つめた黒いつぶらな瞳とまだ残る産毛が別ネコのように可愛い。愛しさと不憫さがこみ上げる。
 私は安楽死まで考えた。足腰が立たず、痙攣し、もだえるランは本人がかわいそうだ。 一縷の希望は発見が早いので、その後の進行をくい止められ、ランの生命力でウイルスが消滅することだ。

2005−01−23(日)
 朝起きてダイニングに行くと、ランは電気炊飯器の上に坐っていた。目薬を3種類さす。さされた後盛んに目の上を手でこする。前眼房や虹彩の上にかかっていた薄い曇りが少しとれたようだし、瞼が閉じることもなく、全体として改善しているようであった。私が朝食をとっている時、ランは冷蔵庫の上に上がり、そこから下に手を伸ばしマグネットフックに留めてあった袋を落とした。そんなランの姿を見て私は安心した。

 朝食後、ランを抱えてリビングのソファに座る。ランは私のお腹の上に腹這いになり、目を閉じている。物音に反応し目をあけるが起き出してその方に行くこともしない。やはり以前のランとは違う。ソファの上に置いたが、そのままの姿で目を閉じて動かなかった。

 インターネットで昨日からネコ伝染性腹膜炎関係の頁を見ている。たくさんある。今日は、掲示板を見た。飼い主としての実際の経験が語り合われている。ドライの方は進行が遅いようだ。治ったという例も報告されている。

 ランは一日居間のソファで寝ていた。娘が一日抱いたり、目薬をさしたりして面倒を見てやっていた。口ではランのことをよく言わないが、行動ではこまめによく面倒を見る。娘や息子はご飯も食べるし、暴れる時は暴れるし元気だという。しかし、私の見るところ、元気ではない。鳴き声がしないし、走り回ることもしない。

 HPを更新した。ランの成長日記は10〜12までをアップした。1月21日、目に異常が発見されるところまでをアップした。咋、22日の分はアップしなかった。明後日に検査結果が出て、診断が下った後でアップしようと思う。もし、この病気であっても、最後まで記録を残そうと思った。しかし、ランの日記を読み返し、写真を眺めているといたたまれない気持ちになる。

2005−01−24(月)
 冬晴れの日であったので、昼前ランを外に出した。庭の中を駆け回っていた。久しぶりに柿の木に登ったので、チャンスとばかりカメラをもって近寄ったら、ヘリコプターの音がして、ランは驚いて家に逃げ帰った。相変わらず音には弱い。それからまた出てきて、庭をあっちこっちして、30分ほど遊んだ。帰りも開けてあったリビングのガラス戸から入った。もうリードをつけなくてもいい。ゆっくりと気ままに遊ばせたやらなければと思った。

 夕食時、ランに本日3回目の目薬をさす。3種類、5分間隔だから時間がかかる。抱き上げた感触が、心なしか軽くなった感じ。目薬をさし終わると、ランは餌を食べ、それからダイニングと廊下の間の引き戸を自分で開けて出ていった。餌を食べたことに少し安心した。

 ビールを飲んでいる私の膝におばさんがやってきた。皮膚の下はすぐ骨で、触ってみるとゴツゴツしている。肩胛骨が直に手のひらに感じられる。こんなに痩せていて元気なのが不思議だ。そのことを口にすると、妻は「獣医さんでは痩せているから長生きなのだと言われる」と云った。おばさんはほとんど1日中寝ていて、声を聞くこともない。そろそろ満18才になるだろうと妻と話す。ビールのつまみのチーズをちぎっておばさんに食べさせる。3回やったのだが、ペロペロと私の手のひらの小片を食べてしまった。

 夕食後、いつの間にかランも戻ってきて、リビングのソファで娘の手からチーズをペロペロ食べていた。それを見て安心した。食欲は落ちていないようだ。


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