ランが来た
 
 2004年8月4日夜8時頃、買い物に出掛けた妻が子猫を拾ってきた。途中の道の真ん中でミーミー鳴いているネコの上を車が通りすぎたという。危なくて見ていられないので拾ってきたという。生まれて間もない三毛猫で、捨てられたのか、迷い出てきたのかは不明だ。足取りもまだおぼつかない。小皿にミルクを入れて飲ませようとしたが、飲めない。スポイトで口の中に入れても飲まない。育つかどうかわからないネコを家に置いてもしょうがないから、近くの動物病院で引き取ってもらうよう、妻には言った。
 
 すぐに動物病院へ持っていったが、あいにくその日と次の日は休みであった。仕方なしに家に引き取り、とりあえずほ乳瓶からミルクを飲ませることにした。ところが、ほ乳瓶の乳首がない。それで急遽買ってきて、飲ませてみたがほとんど飲まなかった。段ボールにタオルを敷き、その中に入れた。小さいくせに伸び上がって縁に手をかけてはい上がろうとする。そのうち中で寝てしまった。そんなこんなで、その日の我が家の夕食は遅くなってしまった。
 
 翌朝、ほ乳瓶から少しミルクを飲んだ。台所のはかりで測ったらちょうど200グラムだった。メスの三毛で、鼻のちょうど左半分が黒く、右半分が茶という、派手な顔だ。全身の毛が立っていて、まるでゴミのようだと妻は言う。目が飛び出ていて、おばさんネコのような器量よしとはとても言えないが、ミルクを吸う姿は可愛い。少し前に知人から子猫を紹介され飼わないかといわれたが、おばさんネコもいるし、私たちも年をとるからと思い断った。しかし、こうして実物の子猫を目の前にしていると、小さな生命への愛しさがこみ上げてきて、結局家で飼うことにした。我が家では、初代のニコチン、2代目おばさん、そしておばさんの子供、ミーとムーについで4代目のネコだ。
 おばさんネコは家に来てからもう17年が経過している。もしこのネコも同じくらい長生きすると、私たちも80歳を過ぎる。その年まで面倒を見られるかどうかはおぼつかないが、その時はその時だと割り切った。
 
「おばさん」の時は、いつか本当の飼い主が引き取りに来るだろうと思って名前を付けそびれているうちに、子供を産んで、「おばさん」という名前になった。余り評判のよくない名前なので、今回は最初からつけることにした。私が「ラン」と命名した。

 順調に生育し、今日で(27日)で体重がちょうど500グラムになった。まだ、ほ乳瓶からミルクを飲むが、サンマの塩焼きや、卵焼き、幼猫用のビスケットなどもよく食べる。台所、リビング、和室と1階をチョロチョロと動き回り、台所の敷物、段ボール、椅子の足、ゴミ箱、電気コード、カーテン、何でも興味を示し、触り、ひっかこうとする。私たちの後を追いかけてきて、足下にまとわりつく。踏みつぶしはしないかと気が気でない。食卓についている私たちの足にからみつき、ひっかいたり、噛んだり、とにかくじっとしていない。そのうちにズボン伝いに膝の上に上がってきて、さらにシャツに爪を立てて、胸から首、顔の方まで上がってくる。おばさんネコの子供達はおとなしくてこんなことはしなかった。
 
 食器戸棚の裏やタンスの裏など、どこでも潜り込もうとする。ランはミルクを飲んだ後だけでなく、普もお腹がパンパンに張っていて頭より大きい。だから狭いところに入るのに頭は入ってもお腹がつかえてあきらめることがある。
 
 おばさんはランを避ける。ランがおばさんの尻尾にじゃれようとするとすぐに逃げる。餌を食べているところへ寄られると、食べるのをやめて逃げていく。決してうなったりして威嚇しないところに、おばさんの気性のおとなしさが出ている。ランの毛をなめてやったりして、愛情を示してくれればと思うのだが、そんな素振りはまったく見せない。人間で言えば「金さん銀さん」くらいの年齢に相当するおばさんに、赤ん坊の面倒を見ろと言うのが無理なのだろう。


2004−08−08 我が家に来て5日目
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