八ヶ岳の高地で育つ  花 も の


八ヶ岳は大変花の多いところです。ここ固有の植物も多数あります。植物学者でもない私が百万言を費やしても紹介しきれるものでは ありません。花の名前などろくすっぽ知らなかった人間の花との出会いの話です。


この項の目次

ノアザミ(野薊) ヤツタカネアザミ(八高嶺薊)
 フシグロセンノウ(節黒仙翁)   ヤツガダケタンポポ(八ヶ岳蒲公英)
 スイセン(水仙) ヘメロカリス ルピナス  ワスレナグサ(勿忘草)  
ユリ(百合) コオニユリ(小鬼百合)   クルマユリ(車百合) 

ヒヨドリバナ(鵯花) フジバカマ(藤袴)
タチツボスミレ(立坪菫) タデスミレ(蓼菫) ヤツガダケキスミレ(八ヶ岳黄菫)
  セキチク(石竹)  マツムシソウ(松虫草)  ワレモコウ(吾亦紅)
  キキョウ(桔梗) リンドウ(竜胆)  ハルリンドウ(春竜胆)

アヤメ(菖蒲) と ヒオウギアヤメ(桧扇菖蒲)  ダリア  プリムラ
ツリガネニンジン(釣鐘人参) イワシャジン(岩沙参)
クモマグサ(雲間草) ショウジョウバカマ(猩々袴) ウチョウラン(羽蝶蘭) 

ヤグルマソウ(矢車草) コウリンカ(紅輪花)
アキノキリンソウ(秋の麒麟草) カセンソウ(歌仙草)
シモツケ(下野) と シモツケソウ(下野草)
ハナイカリ(花碇)  イカリソウ(錨草、碇草)

クサレダマ(草連玉)  ゴゼンタチバナ(御前橘)
キバナノヤマオダマキ(黄花の山苧環) 
ヤブエンゴサク(薮延胡索)  ニガナ(苦菜)

ヤマラッキョウ(山辣韮) ママコナ(飯子菜)
ウスユキソウ(薄雪草)  ヤマハハコ(山母子)
ツマトリソウ(褄取草)  ニホンサクラソウ(日本桜草)

タマガワホトトギス(玉川杜鵑草)  ノコギリソウ(鋸草)
ミヤマハンショウヅル(深山半鐘蔓)

(以下の4種は花の姿が似ているので並べて紹介します
キジムシロ(雉筵) ミツバツチグリ(三葉土栗) 
オヘビイチゴ(雄蛇苺) コキンバイ(小金梅) 

(アツモリソウ、レブンアツモリソウ、コアツモリソウ、クマガイソウ
については「花の物語」で詳述しています )

・クリックでその項に飛びます。手形マークが出る写真は、クリックで大きなサイズになります



【 ノアザミ(野薊)   ヤツタカネアザミ(八高嶺薊)

ノアザミ
「無知というのは救いがたいことだ」とは、自然の中ではしばしば自覚させられることですが、単なる「アザミ」(薊) という名の植物は存在しないことを知ったときもそうでした。ノアザミ(野薊)やそれを改良したドイツアザミ(独逸薊 ハナアザミとも) 、フジアザミ(富士薊) はあ っても「アザミ」はないのです。多くは木曽、立山、鳥海、越前、日高、羽後などの地名のあとに「アザミ」がつきます。後述しますが、このあたりにも「ヤツガタケ アザミ」(八ケ岳薊)があると知ったのは、かなり後になってのことでした。しかもこの八ヶ岳特有のアザミとて、トゲが痛いので春先に敷地で芽生えたのを見つけると、ことごとく刈り取るようにし ていました。タラノメと同じ邪魔者扱いでした。

日本の野山に自生している多くはノアザミです。それをもとに作出した色鮮やかな園芸品種を「ドイツアザミ」と呼ん でいますが、ドイツには自生していません。純粋に日本原産で日本で改良された植物です。大正時代に園芸商が 花を売り出す時、違いを強調するために、名前の前に「ドイツ」という言葉を付けたものだといいます。

キク科アザミ属(Cirsium )に属する双子葉植物で、北海道から沖縄の日本全土、しかも海岸から高山まで幅広く分布します。日本列島には100種以上のアザミがあ り、うち5種類だけアジア大陸にありますが、95種以上は日本の特産種だそうです。アザミ属は地球上に約300種があると考えられているので、日本には世界の3 分の一が分布しているアザミの一大中心地です。

日本全国の野山にもっとも普通に見られる植物で、草丈は1メートルほど。枝分かれして直径5センチほどの花を多数つけます。葉には切れ込みが入り、尖った部分は トゲとなります。花の時期は5月〜8月、八ヶ岳では8月以降が盛りです。春咲きのアザミはごく少なく、ほとんどのアザミが夏から秋にかけて咲く秋の野草です。花 のあとはタンポポみたいな種(たね)になり、風に乗って飛びます。

葉のつき方は、「根生」(こんせい)で根のきわの茎から葉が付きます。茎から出る葉と葉の間隔が狭いので、上から見ると地面に接するように放射状に広がっていて 「ロゼット」と呼ばれます。茎につく葉は「互生」(ごせい)で節に葉が互い違いに付きます。
根生葉の形は、倒卵状楕円形です。「羽状中裂」(うじょうちゅうれつ)といい、葉の中央に一本の脈があり、その両側に「羽状」に走り、縁は中央脈の中間あたり まで切れ込み5から6対の裂片となります。葉の基部の根生葉は「くさび形」で、茎の中葉は「茎を抱く」ように付いています。葉の縁は、そり返るか、「歯牙」(しが )という大きなギザギザになっています。

花の色は紅紫色で、たくさんの花を1つの花のように茎の頂きにつける「頭状花序」(とうじょうかじょ)というキク科の花に有の付き方をします。原種の花は紫色 でまれに白色がある程度ですが、園芸品種では淡いピンクから濃い赤色まで作出されています。

ノアザミのトゲ
アザミの名前の由来は、「和名抄」に「葉には刺(とげ)多し、阿佐美(あさみ)」という記述があり「アザムという言葉 は、アサマから転訛したもので、傷むとか傷ましいの意。また、驚きあきれるとか興ざめする、 の意味があり、花が 美しいので手折ろうとするとトゲにさされて痛いので、アザム草がアザミと呼ばれるようになった」という説。 また、沖縄の八重山では、とげを「あざ」と呼ぶことから、「あざぎ」(とげの多い木)と呼ばれ、しだいに「あざみ」に なったとする説などがあります。

スコットランドの国花になっています。13世紀、ノルウェーの兵隊が浸入しアレキサンドロス王の城を包囲したとき、 城の堀にはだしで入ったノルウェーの兵隊は、アザミに足を刺され退散したことから、国を守った花として国花にな ったもので、内外問わずこの花は、いつもそのトゲがテーマになっています。

NHKのラジオ歌謡でヒットした「アザミの歌」( 作詞・横井 弘、 作曲・ 八洲秀章)があります。

山には山の 愁いあり   海には海の 悲しみや
ましてこころの花園に   咲きしあざみの 花ならば

高嶺の百合の それよりも  秘めたる夢を ひとすじに 
くれない燃ゆる その姿   あざみに深き わが想い

いとしき花よ 汝はあざみ  こころの花よ 汝はあざみ
さだめの径は 涯(は)てなくも  かおれよせめてわが胸に


八島湿原
豊富な植物が見られる八島湿原
歌声喫茶の定番で昔歌ったこともありますが、珍しくトゲがテーマにはなっていません。こんなトゲトゲしい花にも ファンがいるのだと感心が先にたちます。この歌の歌碑は八島湿原(八島ヶ原湿原とも)=写真右=にあります。標高1640〜 1797メートル。わが山小舎とほぼ同じ高度で、すぐ近くといってよいところです。長野県のほぼ中央、3000ヘクタールの大 草原が広がる霧ヶ峰高原の北西部にあり、日本を代表する高層湿原で植物が大変豊かなところです。昭和14年( 1939年)に国の天然記念物の指定を受け、ノアザミだけでなく360種の植物が咲く「空中花園」と呼ばれるところで す。人出が少ないころ行きたいものと念願しています。

ノアザミは昆虫が特に好む花です。ポーチから見渡すだけでも数本が目に付きますが、どの花もいつも何がしかの 虫が訪問していて揺れています。その理由は、自然の驚くような仕組みにあります。ノアザミの花は、花弁が5枚の 筒状花がたくさん集まって頭状花を形成しています。雄しべの葯は5つが合わさって雌しべを包んで筒状になって います。日中の開花しているころ、雌ずいに触れると雄ずいからたくさんの花粉が押し出されるのです。接触運動の 一種です。

この花は雄ずいが先に熟す先熟花で、まず、雄ずいが花筒から表われます。それが引っ込むと次に雌ずいが出て 受粉します。するとまた花筒内に引き込んでしまうという性質なのです。雌しべが花粉を押し出すように生長すると きは、先端が2つに分かれた柱頭の部分は閉じており、受精がおこらない仕組みです。これによって自家受粉を避 けているのです。「雄性先熟」といいます。ともかく、豊富な花粉を目当てに、多くの昆虫が訪れ、花は自家受粉を 避けながら、昆虫による花粉媒介で子孫を残す。自然界の妙がみられる花なのです。

ヤツガタケアザミ(八ケ岳薊)とヤツタカネアザミ(八高嶺薊)について 

ヤツタカネアザミ
これが八ヶ岳特有のヤツタカネアザミ
上で、このあたり一帯の特有の植物「ヤツガダケアザミ」があると書きました。しかし正確に言うと、実は「ヤツガダケアザミ」というのは存在しなくて、あるのは 「ヤツタカネアザミ」だという話です。

研究者の報告です。

ヤツガタケアザミは1913年に『八ヶ岳』で採集された基準標本につけられた名前です。ナンブアザミより葉のトゲが長く、総苞片の先端が全てトゲの新種で八ヶ岳で 発見されたからヤツガタケアザミと命名されました。ヤツガタケアザミの分布は、霧ヶ峰・日光白根・尾瀬と周辺の山々で、当然、八ヶ岳と周辺にあるアザミはヤツガ タケアザミと考えられてきました。

しかし、その後、国立科学博物館の門田裕一さんが、八ヶ岳のアザミと当時の基準標本を比較して見たところ、 ヤツガタケアザミには総苞内片と中片には明瞭な腺体 があり、総苞片が5列です。しかし八ヶ岳でみられるアザミは総苞片に全く腺体が無く、総苞片が6-7列で標本とは違っています。また苞片が8-9列のナンブアザミでも ありませんでした。結局ヤツガタケアザミは八ヶ岳にはないということになりました。

その後の調査で、ヤツガタケアザミの標本によく似たアザミは日光や尾瀬周辺に普通に見られるものであることが判明しました。しかし完全に一致する固体はまだ発 見されていません。こうした間違いが起きた原因ですが、標本を作った際に産地を『八ヶ岳』と誤記したためと思われます。

こうしたことから、八ヶ岳周辺でみられる「ヤツガタケアザミ」は、1991年に独立した新種として「ヤツタカネアザミ」と発表されました。染色体数 2n=68 です。

ヤツタカネアザミ分布
ヤツタカネアザミの分布図
左上の写真が「ヤツタカネアザミ」だそうです。では、本当のヤツガタケアザミはどこにあるのか。研究者は日光や尾瀬を中心とした地域で探索を続けてきましたが 、 完全に一致する固体は、1999年現在未だに見つかっていない、としています。謎のヤツガタケアザミです。専門家でもこうですから素人の私に見分けがつくわけも なく、まわりにあるものすべて「ヤツタカネアザミ」である、としておきます。

ヤツタカネアザミ分布
ヤツタカネアザミ
の花。下部が総苞。
上述の分類のところで出てくる「総苞」(そうほう])とは、花や花序の下部にあって、花の付け根の緑色の部分を指します。総苞の大きさや形で種を判別する手 がかりになります。 総苞には、「総苞片」(そうほうへん)と呼ばれる緑色の小さな花弁のような ものが、鱗のように重なり合って付いています。

また「腺体」(せんたい)というのは、 蜜などの分泌物を出す腺が突起状になったもので、葉の付け根や葉柄に、1ミリ前後のゴマ粒のようにつくのが普通。腺点、 蜜腺も似たような意味です。

知らなかったのですが、ノアザミの新芽は美味しい山菜です。味噌汁などに入れると色も鮮やかでクセもなく、おい しい、といいます。しかし、あのトゲ。青森の人のサイトには「春の新芽や初夏の若葉は、葉が開く前の太い株を選 び 根元からナイフで切り取ります。刈り取った後に2番芽、3番芽と出てきますが私たちは1番芽だけを採って来 ます。アザミの葉には鋭い刺がいっぱい付いていますが、茹でると気にならなくなります。てんぷら、ごまあえ、ク ルミあえ、からしあえ、油炒め、きんぴらなど、食べ方はいろいろ。芽、葉、根を用いますが、根は1年中利用でき るものの、強いアクがあるため、ゆでてから米のとぎ汁で一晩さらすといいでしょう」とあります。

また、ノアザミの根はゆでて食用にされるほか、陽乾して保存し、生薬として用いられます。煎じて服用すると健胃 、強壮、解毒、利尿、止血などの効果があります。



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【 フシグロセンノウ(節黒仙翁)

フシグロセンノウ
毎年夏ごろになるとフシグロセンノウ(節黒仙翁)の一鉢が緑一色の林の中に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせます。そして同時に一人の青年のことが思い出されるのです。彼が 学生時代から知っているのですが、ことニュース感覚に関する限り優秀な男で1ページの企画と取材をまかせても安心できるほどでした。そのときの仲間が週刊誌の副編集長や新聞社の部長になっても、本人はどこにも属せず、フリーのジャーナリストを通しました。

私を訪ねて山にもよく来てくれました。 山小舎にやってきた時、すでに分裂症の症状は出ていて、同じ人に何枚も名刺を渡したり、執拗に話に割って入ったりしていて敬遠する知人もいましたが「名刺ぐらい何枚でももらえばいいじゃないか」と山のフィトンチットが病状を改善してくれることを願っていました。

その夏は、多分お別れにやってきてくれたのでしょう。妻子と別れ病院に入るようなことをいいながら、途中で素手で掘ってきたというフシグロセンノウを植えていきました。爪を真っ黒にしながら「この花が好きなんですよ」と笑顔を見せました。それきり会ってはいないのですが、オレンジ色の花は毎年咲きます。

学名の「Lychnis miqueliana」はシーボルトと同じ頃、日本に来て多くの植物目録を作ったオランダ人、ミケール(F.W.Miquel)にちなみ、北海道を除く日本全土の山地、林の木陰に自生する日本固有の「ナデシコ科 センノウ属 」の多年草。日本では古くから親しまれていて、ままごとで花びらを濡らし4枚重ねてお膳にして遊ぶのでオゼンバナ(お膳花)とも言います。コタツバナ(炬燵花)、ヤグラバナ(櫓花)等の地方名や、滋賀と京都の境にある自生地にちなんでオウサカソウ(逢阪草)の名もあります。

節が太くて黒紫色を帯びることから「フシグロ(節黒)」の和名がついています。「センノウ」の謂(いわ)れは2つあり、中国原産の同属の植物のセンノウ(仙翁)の仲間だから、というのと、京都・嵯峨にある「仙翁寺」で栽培されていたから、というものです。

花期:7〜10月。茎の高さ80センチほど。丈が高いのは、林の下生えから頭を出す必要があるためのようで、株から10本前後の短い地上茎が分岐して、直立してさらに上部でまばらに分岐し、夏の盛りを過ぎると茎の上部に鮮やかな花を数個つけ遠くからでもよく目立ちます。しかし群生せず、こちらにポツン、あちらにポツンといった程度です。

葉は対生し卵形または楕円状披針形で長さ4〜12センチ、先はとがり、縁に毛がある。花は直径約5センチで花弁は5個で倒卵形。りん片が2枚ある。おしべ10本、花柱5本、がくは厚い肉質の筒形。果実は長楕円形のさく果です。
 



【 スイセン(水 仙 )
スイセン
伊豆などの暖かいところにある水仙畑が観光地になっているので、寒さにどれほど強いかわからない植物です。私が気づいたのはゴルフ場でした。山小舎と谷を挟んでほぼ同じ高度に八ヶ岳高原カントリークラブがあります。高度からみて冬場マイナス20℃にはなるでしょう。ゴールデンウィークにプレーしたとき、 ティーグラウンド横にあるのに気づいたものの、この春植えたものとばかり思っていました。次のティーグラウンドで泥をかぶって、いま芽を出したばかりというのに出会って、初めて越冬したものであることを知りました。 下界よりも遅く咲くのはやむを得ないとして、これまた強健で、生ゴミ用に掘った穴に捨てた小さい球根から大きな水仙の花が出ているのを見たときなどほとほと感じ入ってしまいます。



【 ヘメロカリス 】
ヘメロカリス
園芸の改良種でカタカナの名前が付いていますが、尾瀬などで有名なニッコウキスゲと同じカンゾウの仲間。ですから、高地で咲いて当たり前ですが、来歴を知らないうちは寒さにどれほど強いか気づきません。 氷の中に根だけあるという状態でも平気なのには驚きます。株が余ったので、そのへんの木の下に植えてみたのですが、肥料も与えたことがないのに、毎年見事に黄色い花を咲かせています。どのように交配したものかは知らないのですが、以前「倍数体」というのをいただきました。とりわけ大きいので 大事にしています。この花はとにかく強健で手もかかりません。花色は紫、ピンクなどいろいろありますがどれも同じです。



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【 ヤツガダケタンポポ(八ヶ岳蒲公英)

ヤツガダケタンポポ
タンポポ(蒲公英)は、キク科タンポポ属 (Taraxacum) の多年生植物の総称で、おなじみの黄色い花を咲かせ、綿の種を作ります。英名のdandelionはフランス語で 「ライオンの歯」を意味するdent-de-lionに由来すしますが、これはギザギザした葉がライオンの牙を連想させることによるものです。

八ヶ岳には高山性のヤツガタケタンポポ(八ヶ岳蒲公英、学名:Taraxacum yatsugatakense)があります。 本州の八ヶ岳及び南アルプスの高山に分布する高さ10-25センチほどのキク科タンポポ属の多年草です。実は名前がついた八ヶ岳より南アルプスの方が多いといいま す。そういえば日本で2番目に高い北岳(3193m)に登ったとき、直下にある南東斜面のお花畑一面にあった覚えがあるのですが、強風と雨で息継ぎも苦しくて、こんな上 まで(雑草の)タンポポがはびこっているのかと思いつつ素通りしたお粗末な昔を思い出しました。

ヤツガダケタンポポのアップ
ヤツガダケタンポポの花
見分け方が専門家でも難しいようですが、八ヶ岳や南アルプスの標高が高いところで7−8月ごろタンポポを見かけたらまずこれだと思えばいいでしょう。北アルプスに あるミヤマタンポポと似ているようですが、見分け方は、頭花の下部にあって萼(がく)のように見える総苞外片の長さが総苞内片の半分以下ならヤツガダケタンポポ だということです。

我が山墅がある横岳中腹1760メートルにもタンポポが多いですが、西洋タンポポが侵食しているほどで、「八ヶ岳の食卓」で紹介したタンポポワインをつくるにはこれで差し 支えないのですが、ヤツガダケタンポポを探すとなるともっと上になります。だいたい大きな岩のすきまとか砂礫地に生育します。

ヤツガダケタンポポの葉はふちに不揃いの鋸葉があり、羽状に浅く切れ込みます。総苞片の先には突起がなく、頭花は直径5センチほどです。
タンポポは古来から日本に生育していた在来種と、近世に海外から持ち込まれた外来種が日本列島で激しく主導権争いをしている最中です。よく似ていますが、在 来種は開花時期が春の短い期間に限られ、種の数も少ないのに対し、外来種は夏場でも見られたくさんの綿毛の種をつけます。見分け方としては花期に総苞片が反り返 っているのが外来種で、反り返ってないのが在来種といえます。しかしこれとて、細胞中の酵素の性質の違い(アイソザイム)を用いた解析では交雑が起こっていて単 純に外見から判断できない個体が存在することが報告されています。

根を乾燥させたものはコーヒーの代用品として知られていて、茎に含まれる乳液からゴムを採集する所もあります。全草を乾燥したものは蒲公英(ほこうえい)という 生薬で解熱、発汗、健胃、利尿などの作用がああります。「八ヶ岳の食卓」でタンポポワインを紹介しました。もちろん作るときはヤツガダケタンポポ含めどんなタ ンポポでも同じです。

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【 ルピナス 】

ルピナス八ヶ岳山麓には高原野菜の農家が多くあるのですが、こうした家の庭先とか牛舎の脇に植わっているのがルピナスです。紫やピンクのこの花の名前は知りませんでした。ただあちこちで見かけるので、寒さに強い植物であることは推測つきました。 小淵沢の園芸店で見つけて植えてみると寒さにめっぽう強いことを認識し直しました。はじめは雪の下で越冬するよう配慮したのですが、あるとき大きな植木鉢が雪面から出ていて、折からの寒波でルピナスの根の周りに氷がびっしり張り付いていました。 でも翌春、元気に新芽を出したのです。多年草ですが毎年根が大きくなって大株になります。なまじ植木鉢にいれるより露地植えの方がよく育ちます。逆に暑さに弱いから都会で見かけないのかもしれません。

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【 ワスレナグサ(勿忘草、わすれな草)

ワスレナグサ
forget me notのしゃれた名前と歌で有名です。アルプスの植物だけに寒さには強く、 鉢植えにしていたもののこぼれ種子から翌年道の脇にピンクの花が咲いていました。



【 ユ リ(百 合 )
カサブランカ
  カサブランカ

会社がある東京・大手町に毎月7,8日(花というわけで)「花の市」がでます。ここに園芸評論家で本な ども多く出されている柳宗民さんが本業の園芸農家として店番にくることが多いのですが、あるとき超寒冷 地でも花が咲くものはないか 相談したとき教えられたのが百合です。大輪で有名なカサブランカなど何種類か求めて蘭などの育成に使う 胴長のプラスチック鉢に植えて、穴を掘り鉢ごと埋めました。百合は上根と下根があり、ある程度深く植える 必要があるのと、すぐ笹の根に 浸食される土地なので今度掘り出すとき大変だからです。

結果は大成功です。空気がいいせいか下界のように病気や害虫のことを心配しなくてもよいのが高所園芸の 長所でもありますが、下葉が枯れあがることもなく見事な大輪でした。 相談したとき「鉄砲百合だけはだめですよ。系統が違うから」とアドバイスされたのですが、家内がたくさん の鉄砲百合を手に入れてきて、かといって都心では植える場所もないので、しかたなくプランターに入れて浅 く掘った穴にプランターごと 埋めて越冬させてみました。結果は大成功。厳冬といっても雪が1メートルぐらいは積もるので土中はけっこ う暖かいせいでしょう。

東北は米沢に疎開した世代なのですが、そのとき母の実家の人たちが、大根などが凍るのを防ぐのに、 土に埋めて雪の上に目印の棒をさしていた のを覚えています。地中は冬もけっこう温かいのです。ピンクの乙女百合、ヤマユリその他ユリならなんでも OKというのが私の結論です。

たいへん。寒冷地でもユリはなんでもOKと報告したのですが、2000年春行ってみたら鉄砲百合が全滅し ていました。初年度確かに大丈夫だったのですが、なぜ2年目にダメなのかわかりません。 鉄砲百合だけは南方系で寒さに向かないという、園芸評論家の説は正しかったことだけは確かです。

スカシユリ
  スカシユリ
ヤマユリ
  ヤマユリ

柳宗民氏

上で記述した柳宗民さんが2006年2月21日、79歳で亡くなられました。大手町で開かれる月に一度の花の市で、傍の新聞社ビルのサラリーマンと植木屋の主人という立場で園芸談義をしたのですが、日焼けした顔に少しでもうまく植物を育ててもらいたいという情熱を感じました。OLが「おじさーん」と呼びかけるこの人が、高名な民芸家、柳宗悦の子息ということは知っていましたし、我が家から近い目黒区・駒場の日本民芸館ものぞいた事があるのですが、そんなことは関係なく文学に深い素養があることを感じさせる楽しい会話でした。そのときの百合、八ケ岳で今も毎年咲いています

柳 宗民(やなぎ・むねたみ)
園芸家。1927年、民芸運動の創始者としても知られる柳宗悦氏の三男として京都市に生まれる。栃木県農業試験場助手、東京農業大学研究所研究員を経て、31歳の時独立、小平市で「柳育種花園」を経営するかたわら、英国王立園芸協会日本支部理事やNHKテレビ「趣味の園芸」講師などをつとめた。『柳宗民の雑草ノオト』(毎日新聞社)など園芸関係の著作多数。

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【 コオニユリ(小鬼百合)
コオニユリ

我が家にとってはとても切ない花です。愛犬リズが事故死した八ヶ岳の現場のすぐそばの道端で咲いていました。このHPの中で 「リズを偲ぶ」のくだりでもカットに使っている花です。ちょうどお盆のころ満開になることもあって、 毎年人間の供養と時を同じくして思い出します。それがつらくて、いままで掲載しなかったほどです。

この花の美しい姿は敷地の何ヶ所かで毎年みかけますが、いつも違ったところに咲くのはなぜだろうと思っています。 コオニユリなどの球根を作るユリの仲間は、3年目頃で突然消失してしまうそうなので、そのせいかなとも思います。もう少し増やしたいので、 種子を採集して苗床にまき、育てていますが、2年でやっと5センチほど。それも葉が1枚だけです。よほど生育が遅い植物のようです。 草原に直立する形のものが普通ですが、谷間の岩壁から垂れ下がる形のタニマユリ、山の高い所のホソバコオニユリは同じ仲間です。

オニユリ(鬼百合)との見分け方

コオニユリ(小鬼百合)は本州・四国・九州から朝鮮・満州に分布するユリの多年草で、日当たりの良い適湿の山地・草原ときには断崖にも自生しています。 オニユリ(鬼百合)に対してやや小型なところから名づけられたものですが、素人にはちょっと区別がつきません。 花がやや小型で葉も細く、茎は淡緑色で多数の果実ができるのがコオニユリ。アゲハチョウの仲間などがよく吸蜜に飛来します。これに対して、オニユリは茎に暗紫色の点や葉腋の珠芽(むかご)をつけ、果実はつけません。 オニユリは日本で本来自生しているものではなく、古く中国から食料として伝来したものが、野生化したものだといわれています。 オニユリのりん茎は食用となりますが、コオニユリは苦くて食用には不向きです。しかし、現在、食用として栽培されているゆりは植物学的にはコオニユリに属します。

八ヶ岳ではあちらこちらに散在していますが、一ヵ所に群落をつくっているところは、あまり見かけないので孤独な花のようです。



【 クルマユリ(車百合)

クルマユリ 夏の高山を彩る代表的な花で、コオニユリとそっくりなのにクルマユリ(車百合)があります。 間違える人が多く、私も最近まで同じだと思っていたほどです。

葉の付き方で見分けます。茎は 30センチから1メートル以上までばらばらの高さですが、茎の中央部付近に 写真のように6 〜 15 枚の葉が輪生しています。和名はこの様子を「車輪」に見立てたものです。 これより上には3、4 枚の葉がまばらに互生しています。

本州中部地方以北と北海道の亜高山帯から高山帯に分布していて、花は直径5-8センチと小さめで茎頂に 1個から数個つき、斜め下向きに強く反り返って咲きます。内に濃紅色の斑点がありますが、 富士山、谷川岳などには花びらに斑点のないフナシクルマユリ(斑無し車百合)があるようです。



【 ヒヨドリバナ(鵯花)

ヒヨドリバナ
ヒヨドリバナ
ヒヨドリバナ(鵯花)は八ヶ岳といわず日本全国に分布し、朝鮮から中国、さらにフィリピンなど亜熱帯にも分布するキク科ヒヨドリバナ属 の多年生草本です。植物学上はヒヨドリバナですが、一般には「ヒヨドリソウ」と呼ばれることが多く、山道の路傍や草原などに広く生育し 、淡紫色または白色の小さな筒状花が多数集まって、散房状に咲きます。次項のフジバカマとよく似ています。

我が山墅の周辺でもたくさん見かけます。しかし、この地に来たときすべて刈り取っていました。高さ1〜2メートルにもなるので見通しが 悪いのとヤブ蚊を嫌って、ガソリンエンジンの刈り払い機の力を借りて一気に切り倒していました。

これがとんでもない間違いでした。蝶が好んで集まる花だったのです。天罰でたちまち蝶を見かけなくなりました。無知を恥じて今では大事にしています。 ポーチのロッキングチェアに座るとすぐ横にこの花があり、じっとしているだけで蝶の図鑑を広げる趣です。自然というのはよく出来ています。声高に叫 ばずとも、共生ということを黙って教えてくれます。


ヒヨドリバナとアサギマダラ
ヒヨドリバナに舞うアサギマダラ
ヒヨドリが鳴く頃に花が咲き出すことからついた名だと云われていますが、別名、サンラン(山蘭)とも。花期は8月〜10月頃まで長期にわたります。 ですから、渡りの習性で有名なアサギマダラから、ヒョウモンチョウやまだ私が名前も知らない蝶が次々とやってきます。 初夏に見かけるアサギマダラには「遠路ご苦労さま」と、秋に見かけるのは台湾への飛翔前ですから「ボン・ボヤージ」と声を掛けます。アサギマダラの不思議な長旅については別にまとめました。こちらをご覧ください。

開花直前のヒヨドリバナ
開花直前のヒヨドリバナ(2006.7.9)
ヒヨドリバナの葉と茎
ヒヨドリバナの葉と茎
ヒヨドリバナは日本中、北海道から九州の山野まで広範囲に生育します。花期は8〜10月と長く、背丈は高く1〜2bになります。 葉の形は卵状長楕円形又は楕円形で、ふちには鋭い鋸歯があります。葉は2枚ずつ対生し、その両面に縮れた短い毛がまばらに生え、裏面には腺点が見 られます。


ヒヨドリバナのアップ
ヒヨドリバナのアップ
茎には縮れた毛があってざらつき、 その上部の枝先に多数の筒状花と呼ばれる花を付けます。右はアップの写真ですが、糸状の花柱が伸びた複雑な形をしています。 普通は白色ですが、ピンクがかったもの、たまに紫色を 帯びるものもあります。葉にはつやも香気もありません。咲き始めはみずみずしく雪のように 白い可憐な花はやがては褐色になっていきます。

 

ヒヨドリバナの仲間(属)は、アジアに約22種、北アメリカに23種、ヨーロッパ・中近東に各1種が自生しているそうです。 日本に自生するこの植物の仲間には、サワヒヨドリ、ヨツバヒヨドリ、フジバカマなど全部で8種類が自生していますが、変種 も数多くあるようです。

フジバカマや ヨツバヒヨドリ、サワヒヨドリなど似た花がたくさんあり、見分けるのに苦労します。大雑把に言うと、フジバカマの葉は深く3裂し ますが、ヒヨドリバナやヨツバヒヨドリの葉には切り込みがありません。また、ヒヨドリバナ葉が対生するのに対して、ヨツバヒヨドリの葉は3〜4枚 輪生(茎の節に数枚の葉が集まって付くこと)します。さらに、ヒヨドリバナの葉の下面に斑(はん)点があるのに対し、フジバカマには斑点がありま せん。生育場所でも判断できます。ヒヨドリバナは乾燥気味の道端などに生えるに対し、フジバカマはすこし湿った河原に生えます。

ヨツバヒヨドリ
ヨツバヒヨドリ
ヨツバヒヨドリ(四葉鵯)
葉が4枚輪生することが多いのでこの名がつきましたが、実際は3〜7枚と幅があるようです。湿原や山地に生え、高さ1メートルほど。ヒヨドリバナの仲 間では一番標高の高い所に生えます。ヨツバヒヨドリの花はヒヨドリバナより密についていたり、花の色も鮮やかでよく目立ちますが、一見したところで はほとんど同じなので、生育環境や葉の特徴(輪生)から区別します。花期は8〜9月。茎の色が赤いのと緑のがあります。赤いものの花の色は緑のもの に比べて濃いです。


サワヒヨドリ
サワヒヨドリ
サワヒヨドリ(沢鵯)
日当たりのよい湿地や湿った草原に生え、分枝せずに直立し、背丈は40〜80センチ。葉柄がなく、2枚の楕円形の葉が対生しています。しかし1か所から 3枚ずつ、あわせて6枚が対生し、一見輪生しているように見えるものもあります。ヒヨドリバナに比べて全体的に小型であること、花の色、葉縁の鋸 歯が鈍いなどの違いがあります。

花期は8〜10月。淡い紅紫色を帯びるもののが通常ですが、色の濃いものからほぼ白色のものまでいろいろあります。ヒヨドリバナに比べて全体に小型 で、花の色がより暗紅紫色で、葉の形が小型で鋸歯が鈍い点などで区別します。


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【 フジバカマ(藤袴)

フジバカマ
フジバカマ

ヒヨドリバナと大変似ている花にフジバカマ(藤袴)があります。八ケ岳に多いですが高山植物というほどではなく本州・四国・九州、朝鮮、中国 に分布しています。同じキク目キク科 ヒヨドリバナ属の多年生植物で、アサギマダラをはじめ蝶が好んで寄ってきます。なにか特別な蜜があるのかも しれません。

八ケ岳には蝶がどちらにとまるか迷うほど多く見かけますが、環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類(VU)に指定されている植物 です。かつて各地の河原などに群生していたものの、開発で数を減らしたといいます。「フジバカマ」と称して園芸店で入手できるもののほとんどは 本種ではなくて、同属他種または本種との雑種だそうですが、私には区別がつきません。

散房状見分け方ですが、フジバカマの頭花が淡紅紫色であるのに対し、ヒヨドリバナは白色です。茎は無毛の円柱状でかたく直立します。葉の形でも区別できます。フジバカマの葉は下部で3裂して、葉質はやや硬く表面に光沢があり、縁は鋸歯(きょし)状に切れ込み、生乾きのときにはかすかに匂います。葉の下面に斑(はん)点(腺点)があるのがヒヨドリバナ、フジバカマは斑点がないことで見分けます。 花はサワヒヨドリとそっくりで葉も3裂していますが、サワヒヨドリは葉柄がありません。
花は、8〜9月ころに、茎頂に淡紅紫色を帯びた白の小さい管状花(かんじょうか)を散房状につけます。

名前の由来は、「和名抄(わみょうしょう・932)」には、「蘭の名に対して、本草和名(ほんぞうわみょう)では、布知波加万(ふじばかま)と言う。新選万葉集では、別に藤袴の二字を用いている」という記述があり、袴(はかま)を帯び、花の色が藤色をしていることから、フジバカマと呼ばれるようになったとされます。

フジバカマは秋の七草の一つで、古くは万葉集にも詠まれた中国原産の帰化植物です。芳香や薬効があるため薬草として重宝され、奈良・平安の時代には雑草化したほどありふれた植物でした。

山上憶良の歌に「旋頭歌(せどうか)」というのがあります。万葉集と古今集の一部に見られる、5・7・7・5・7・7という独特の形式です。

秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
    かき数ふれば 七種(ななくさ)の花

萩の花 尾花(をばな)葛花(くずはな) なでしこの花
    をみなへし また藤袴 朝顔の花

「秋の野に咲いている花を、指折り数えてみると、七種(ななくさ)の花がある」
「その花は、萩、尾花(ススキ)、葛、なでしこ、おみなえし、藤袴、朝顔の花である」

花の名前を並べた、どうということない歌ですが7種のうち6種は現代でも同じ名称です。朝顔(原文は朝皃之花)」だけは、キキョウ、ムクゲ、ヒルガオなどの諸説がありよく分かっていませんが、現在ではキキョウ(桔梗)を充てています。尾花(原文は乎花)」はススキ(薄)です。

源氏物語では光源氏の長男、夕霧が、玉鬘(たまかずら)にこの花を贈って求愛する場面に登場します。葉や茎を乾かすとクマリンという芳香成分を放ち、中国では蘭草・香水蘭とも呼ばれ浴槽の湯に浮かべて使われました。生のままでは香りがないのですが、刈り取ったものを半乾きの状態にすると、桜もちの葉のような香りがします。昔、中国では花の一枝をかんざしにしたり、香り袋にして身に付けたといいいます。また頭髪を洗うのに使用されたといいます。

薬用としては生薬の蘭草(らんそう)になります。有効成分として配糖体クマリン、チモヒドロクイノン、ミネラルを含んでいます。 8〜9月に花が咲く前の、つぼみがついた時に全草を採取して、2、3日、日干ししてから香りが出たら、風通しの良い所で乾燥させます。乾燥後は、密閉容器に入れて保存します。 薬効としては皮膚のかゆみをとるのに、乾燥したものを布袋に入れ、煮立たせて入浴時に入れます。保温、肩こり、神経痛にも使われます。

また糖尿病の予防と治療には、蘭草、連銭草(れんせんそう、カキドオシ)、ビワ葉、タラノキ各5グラムを混ぜて1日量として、水0.4リットルで、約半量まで煎じて1日3回食間に服用します。

黄疸、腎炎などで体にむくみがある場合には、利尿剤として蘭草1日量10グラムを、約0.4リットルの水で半量まで煎じて、かすを取り、3回に分けて食間に服用します。

生の場合には、香りはありませんが、刈り取った茎葉を半乾きの状態にすると、桜餅の葉のような香りがするのは、クマリン、クマリン酸、チモハイドキノンによるもので、古く中国では、花の一枝を女の子の簪(かんざし)にしたり、香袋(かおりぶくろ)として身につけていました。



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【 タチツボスミレ(立坪菫) 】 【 タデスミレ(蓼菫)
     【 ヤツガダケキスミレ(八ヶ岳黄菫)

スミレ(菫)は専門書があるくらい品種も愛好家も多い分野です。ここでは八ヶ岳のいたるところに見られるタチツボスミレと、長野県だけに見られ、絶滅しそう なタデスミレ、そして八ヶ岳の山の上に咲く高山性のヤツガダケキスミレの三つを紹介します。

タチツボスミレ
このあたりどこにでも咲く
自生のタチツボスミレ

タチツボスミレ(立坪菫)は、北海道から沖縄まで、ほぼ全国の山地の湿り気の多い落葉樹林下に分布するスミレ科スミレ属の多年草です。海岸線から海抜2,000メー トルの高所まで、ほとんど立地を問わずに生育しており、標高1760メートルのこの別墅でもカーポートの砂利の中や舗装の継ぎ目など場所を選ばず咲いています。 日本ではどこにでも見られますが、国外では朝鮮半島付近の島々に知られるだけで、分布上からも個体数からも日本を代表するスミレと言えます。

名前の「坪」とは道端や庭の意味で、そういう身近な所で見られることからツボスミレと呼ばれ、「立」は、花の盛りを過ぎると茎がしだいに立ち上がってくるところか らついたものです。丸い葉と立ち上がる茎、薄紫のかわいらしい花が特徴です。花期は一般に3月上旬から5月下旬、八ヶ岳では5月中旬になります。地下茎は短く、 わずかに横に張り出し、根出葉は細い葉柄があって、ハート形の葉先は少し尖りますが葉に艶がありません。葉の基部には櫛の歯状の托葉があります。花茎は葉の間 から出て立ち上がり、先端がうつむいて花を付けます。

花期が終わると、葉の間から茎が伸び始める茎の節々からも長さ20センチほどの葉や花が出ます。年は越さず、次の春には、また地下茎から芽を出します。


タデスミレ
野菜の葉のようなタデスミレ
タデスミレ(蓼菫)はスミレ科の夏緑性多年生草本です。夏緑性というのは、冬季に地上部が枯れたりなくなる(休眠する)ものです。スミレのイメージとは少し違って、写真のように野菜の葉のように立ち上がります。長野県の松本市と上 田市(旧真田町)だけに自生地があるものの、上田市側のは最近見られなくなったといわれ、平成16 年(2004)2月19日、アツモリソウ・クマガイソウ・シナノコザク ラ・ツクモグサ・ホテイアツモリ・ホテイランなどとともに県の特別指定希少野生動植物に指定され、なんとか絶滅の危険から守ろうとする動きが始まりました。

タデスミレは日本のスミレの中でも一風変わっていて、スミレの仲間の葉の付け根は両側が張り出す心形か、横に広がる切形が普通なのに、タデスミレではそれこそ タデにそっくりの「くさび形」となっています。このタデ類のような葉を持つことからこの名がつきました。元来、冷温帯の林床に生育する植物です。

タデスミレの花
タデスミレの花
短い団塊状の地下茎から20〜40センチの茎が数本出て、葉の付け根から伸びる花柄の先に長さ約1.5〜2センチほどの白色の小さい花を付けます。1本の地上茎に1〜5個 ほど花をつけます。唇弁には紫条(紫色の筋)が入ります。距は長さ約5ミリ。花弁の先端は丸みのある形ではなく、細長くとがっているのも大きな特徴です。花期は 5月中旬〜6月上旬です。
放花(他家受粉した花)のほかに秋期まで閉鎖花(自家受粉した花)をつけます。タデスミレの托葉は櫛の葉状で、茎が太くて竹の節のように太い節が目立ちます。


ヤツガダケキスミレ
ヤツガダケキスミレ
ヤツガタケキスミレ(八ケ岳黄菫)は八ヶ岳連峰特有のスミレです。高山に咲く黄色いスミレとしてはタカネスミレ、クモマスミレなどがありヤツガタケキスミレ もそのひとつで、その名の通り八ヶ岳だけに特産するスミレです。山墅があるすぐ上の横岳の尾根付近の砂礫地にもたくさんあります。以前横岳に登ったとき昼食を取 ったあたりに黄色いスミレがたくさんありました。多分この花だと思うのですが、この時は疲労困憊していたのと高山植物の知識がまったくなくてただの野の花でした。


ヤツガダケキスミレ
八ヶ岳の稜線に咲くヤツガダケキスミレ
ヤツガダケキスミレは赤岳から硫黄岳にかけての稜線部の砂礫地に生えてます。タカネスミレの亜種の一つとされています。タカネスミレはキバナノコマノツメが高山 の砂礫地などに進出したものといい、種レベルでは広く千島やカムチャツカまで分布します。日本のタカネスミレは4つの亜種に分類され、東北地方に分布するもの をせまい意味でのタカネスミレとしています。葉に光沢がありほとんど無毛である点でヤツガダケキスミレと異なります。

ヤツガダケキスミレは地下茎で横に広がる性質ではないため一面に群生することは少なく、ぽつりぽつりといった感じで生えています。スミレは咲くのが早いですが、 山の上でも比較的早くクモマスミレよりも早く、6月下旬から咲き始め7月いっぱいが見頃です。

ヤツガダケキスミレの花弁
ヤツガダケキスミレの花弁
ヤツガタケキスミレの特徴は、葉に光沢がないのが一番のポイントで、次に黄色い花の唇弁が写真のように舌のようになっていて先が丸いことです。花柄は長さ3 〜7センチで先に長さ1-1.2センチの黄色い花をつけます。花弁は倒卵形です。側弁の基部に毛は無く、距が短く、葉が円形で光沢がなく葉脈上に微毛があります。托 葉に鋸歯があります。




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【 セキチク(石竹)
セキチク
カーネーションのようなセキチクからの園芸種は寒さに強く、なにもしなくても毎年越冬して7月近くに花を咲かせます。
写真にあるカーネーションは、10数年前このログハウスを建てる前からあるもので、東京のベランダで育っていた古株。灼熱の都会のベランダから 冷涼な山まで付き合ってくれてなんだか愛着があるのです。



【 マツムシソウ(松虫草)

マツムシソウ

秋ぐち草むらを彩るマツムシソウ(松虫草)はこのあたり一帯に広く自生しています。一名リンボウギク(林傍菊)といい、日本全国の山地で見られます。。林のぞばに咲く菊に似た花ということでしょう。漢方では松虫草の根を「山蘿蔔」といい皮膚病に使われます。蘿蔔(ろふ)とはスズシロ、つまり大根のことで松虫草の根からきていると思われます。干したものが生薬になります。英語では「スカビオーサ」とよばれ。ほかに愛称に近いですが「ピンククッション」「ジプシーローズ」「ブルーボタン」などたくさんの呼び名があります。

周りには、この花が好きな人が多いので、種子をつける頃に なると、袋にいっぱい集めて、咲いていないところを選んでばらまいておきます。2、3年後に花が見られます。発芽率はそう高くないようで、10個種子を蒔いて 1つくらいの感じです。

「マツムシソウ科マツムシソウ属」の二年草で八ヶ岳ではお盆のころから10月まで見られます。名前の由来は、マツムシ(スズムシ)が鳴くころ咲くからという説や、花が終わったあとの 坊主頭のような姿が、仏具の伏鉦(ふせがね:俗称「松虫鉦」=名前は虫の音に由来=)に似ているところからきた、 とかいろいろな説がありはっきりしません。

マツムシソウと揚げ羽蝶
マツムシソウには蝶も集まる
マツムシソウは高原を好み、草丈は40センチから1メートル、全体に細毛が生えています。茎の上部に径3〜5センチの淡紫色の頭状花を 1個つけます。頭状花は小花の集まりで、外側の小花は淡紫色の 花冠が上下に2唇形で上部は2裂、下部(外側)は大きく3裂して唇状です。古くから若葉を食用としていたようですが今食べる人は 少ないでしょう。ただ蝶や昆虫が好きな花でよくとまっています。

マツムシソウの種子
マツムシソウの種子。
このあと赤茶けてくる。
葉は長さ5〜10センチ、羽状に深裂し根生、茎の葉は対生します。 種子は長さ4ミリほどのものが多数集まり紡錘形になり、萼の変化したとげ状の剛毛があります。 写真の種子はまだ青いですが、このあとだんだん赤茶けてきて、自然に種子を飛ばします。 これも生薬になるようです。

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【 ワレモコウ(吾亦紅)
ワレモコウ
マツムシソウと並んで咲いたワレモコウ。
関西文壇の重鎮だった作家の藤沢桓夫氏(故人)から色紙をいただいたのですが、それには「吾亦紅(われもこう)という花を知れり草の中」とありました。しかし、現物はながらく知らないでいました。八ヶ岳で山小舎の前を通りかかった女性が「ワレモコウが咲いている」と声を上げたので、まわりにわんさとあるのがそれだと初めて知ったお粗末さ。ドライフラワーや生け花をする人は都会で買うとけっこう高い値段なのを知っています。このあたりでは秋の到来を告げるしるしですが、なんといっても名前がいいのでトクをしている植物です。

ワレモコウは北海道から九州、中国からシベリア・ヨーロッパのユーラシア大陸にかけて広く分布するバラ科ワレモコウ属の多年草です。バラ科というのが少し奇異に感じますが、田園地帯の路傍や山地の草原など平地から高山までどこにでも生育します。秋の草花の代表とされますが、八ヶ岳では8月上旬から咲き始めています。秋遅くまで咲いているように見えますが、一般に花期は7月から11月で、花の盛りに見えるのも、実際には花は終わっていることが多いものです。赤紫の花序のように見えるのは萼(がく)なのです。

ワレモコウの花
これがワレモコウの花。
上から咲いていく。
太い根茎(地下茎)があり、横伸びして湾曲して固く太くなり、初夏に茎を出します。ここから根生葉を出し、高さ1メートルほどになります。根生葉は5〜11の小葉からなり、茎に付く葉は上部のものほど小葉の数は少なくなります。小葉の長さは2.5〜5センチほどで、荒い鋸歯があります。茎の上部は枝を出しその先端に暗紅色の1、2センチの楕円形の穂状の花序を形成します。写真右のように、上部から咲き始めますがよく見ないと花と気づかないほどです。ワレモコウに花弁はなく、花びらのない小さな花の集まりです。花びらに見える萼片は4枚で、雄しべは4本です。

  ワレモコウはいろんな漢字があてられています。「吾木香」は「わが国の木香」の意で 、根が木香に似ていることからの命名です。「木香」とはインド原産の 菊科の根のことで、強い芳香があり健胃剤、防虫剤として使われるものです。「割木瓜」とも書きます。「木瓜(もこう)」は鳥の巣と卵を表した漢民族の丸い模様のことだそうで、ワレモコウの花の形が、割れ目を入れた木瓜の模様に似ていることからの名前です。「吾亦紅」の表記が一番多いですが、和歌、俳句など文学的表現の時に一般に使われます。文字通り「吾もまた紅い」との意味です。 形から「団子花」とも呼ばれます。

葉を傷めると瓜や西瓜のような匂いがします。キュウリグサ、キュウリッパそして、スイカグサ、ウマズイカ、ウリッパなどと呼ばれるのはここから来ています。ダンゴバナやボウズバナ、ボンボン、クロンボなどの呼ばれ方は、花からくる印象に由来したものでしょう。

増やす方法ですが、秋に採集した種子でも増えますが、地下に太い根茎があるので、春先3月か秋の終わりに堀りだして株分けをするのが一般的です。

ワレモコウの根
この根を乾燥させたものを、漢方では「地楡」(ちゆ)と呼び、止血剤に使われます。11月ごろ、写真右のように土の中にある根のような茎を掘リ出します。ひげ根を除いて水洗いしてから日干しにしたものを煎(せん)じて使うと、下痢止めや、傷の止血、やけどに効くとされます。
@下痢止めには、乾燥した根5〜10cほどを水400_gで半量になるまで煎じ、一日三回に分けて服用する。A出血、やけどには、煎じた液で患部を洗浄する。B打撲、捻挫には、生の根を擦りつぶして塗布する。
肌荒れ、ウルシかぶれ、草かぶれ、股ずれ、剃刀まけ、靴擦れ、ギンナンかぶれ、あせもなどの湿疹には、煎じ液を塗布して、乾いたら取り替えます。

ワレモコウの葉
ワレモコウの葉
また食用にもします。春先の出たての若い葉を、塩を入れた熱湯で茹でて、水にさらしてから、ひたし物などにして食べることができます。 また油いため、つくだ煮などにもします。

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【 キキョウ(桔梗)

キキョウ
野辺山に、高原野菜を分けてもらう農家があります。寒さに強い植物は、と聞いたら「ほらこれ持っていきな」とシャベルで掘ってくれたのがキキョウ 。土の中深く耐えていて春一気に芽を出してきます。キキョウがあるのを忘れて、上に違う花を植えたりしていると、そこのけそこのけとあらぬと ころから芽を出し、たちまち1メートルを超える高さに育ちます。ただその年によって背丈が違うのはなぜだろうと不思議に思っています。



【 リンドウ(竜胆)

オヤマリンドウ
オヤマリンドウ(08.9.20)
リンドウ(竜胆)はリンドウ科リンドウ属の耐寒性宿根草です。リンドウ科は世界中に約70属、1300種が存在します。秋の花とされますが、リンドウは春 咲き(3月〜5月)と秋咲き(9月〜11月)があります。雪解け直後に咲くハルリンドウは次項に挙げましたが、春にしろ秋にしろブルーの花など周りにな い季節なので、よく目立ちます。

日本では本州、四国、九州のやや湿った山野を好み、野原に分布しています。高さ20センチ〜1メートルになる多年草で、直立あるいは斜上する茎の 上部に、4〜5センチの青紫色の花をつけます。白花の品種もありますが、いずれも花は円筒状の鐘型で、先端は5裂します。
茎はたいてい紫褐色を帯び、4本の細い盛り上がったすじがあり、数段の対生する葉をつけます。葉に柄はなく、葉身には基部から伸びる3本の脈が目立ち、 縁はざらつくだけで鋸歯はありません。冬に霜に当たって褐色になっても葉は落ちずに垂れ下がり、花が終わっても萼や花冠は果実を包みこんだまま離 れず、果実は熟すると花冠からつき出て先が2つに裂け、風に揺られてたくさんの細かい種子を散らします。種子の両端に短い尾がついているのが特徴です。

以上は「リンドウ」全般の説明です。リンドウの種類は多く、素人目ではなかなか特定できません。いろいろ見比べるうち、八ヶ岳の我が山墅の周りに あるものは、どうもリンドウの高山種、オヤマリンドウ(御山竜胆)のようです。ここでいう「御山」は加賀の白山を指し、こうした深山に生えることに 因る命名です。

オヤマリンドウ
敷地に咲く
オヤマリンドウ(08.10.3)
オヤマリンドウ(学名Gentiana makinoi )は亜高山から高山の草原や岩場に生える日本固有のリンドウで、エゾリンドウの高山型とされています。 根茎は太く 直立した茎の先や葉の付け根にやや薄い青紫色の花を上向きに付けますが、オヤマリンドウの花はわずかしか開きません。この「花弁がなか なか開かない」というところを種の同定の決め手にしました。

もともとリンドウの花は日が当たると開き、日が陰ると閉じる特性があります。八ヶ岳ではこの花の季節には霧が出ることが多く、天気も曇り日が続く ので、なかなか全開ぶりは見られません。右の写真(2008年10月3日撮影)など少し日差しが出たときの撮影ですが、この程度で「満開」です。花の内側 には茶褐色の斑点があるのですが、なかなかうまく撮れません。

リンドウは薬用植物として知られています。根茎は淡黄色で少し肥大して長くのび、多数のひげ状の根があります。この根は噛むと、強い苦味があります。 リンドウの根茎や根を乾燥させたものは健胃薬「竜胆(りゅうたん)」と呼ばれ、リンドウの名はこの漢名がなまったものといわれています。秋に根を掘 り出し日干しにしたものを1日2〜3グラムを煎じて飲みます。西洋でもやはりヨーロッパの山地に生えるリンドウ属のゲンティアナ・ルテアから苦味健胃 薬「ゲンティアナ」を作ります。これは古代ローマ時代から知られていたそうです。

リンドウの学名はGentiana(ゲンティアナ)といいますが、ヨーロッパにあったイリリアという国のゲンチウス王にちなんだものです。王はすでに紀元 前2世紀ごろ、ヨーロッパ産のキバナリンドウの薬の効き目を知っていたことからの学名です。
日本でもリンドウの効き目を伝える伝説があります。昔、小角という行者が、日光の山奥でウサギが雪をかき分けて草の根を掘り出しているのを見て、 ウサギに訊ねたところ、病気の主人のために持ち帰るのだといいます。さっそく小角も同じ草の根を掘ってもち帰り、病人に試したところすばらしい効 き目が現われたといいます。

竜胆紋
竜胆紋
リンドウは長野県や熊本県の県花であるほか鎌倉市などいくつかの市章になっています。鎌倉は頼朝との縁からです。伊豆の蛭ガ小島に流された源頼朝 は北条時政らに常に監視されながら暮らしていました。狩りの途中、彼の前に一本のリンドウを胸に抱いた北條政子が現われます。頼朝が「それは何と いう花か」と聞くと「秋の野の尾花にまじり咲く花の 色にや恋ひん逢うよしをなみ」(秋の野で尾花に混じって咲く花のように、気持を表に出して 恋をしよう、そうしないと逢う手だてがないのだから)という古今和歌集を引きながら「想い草と申します」と政子は答えます。恋の告白です。その後、 政子は父の反対を押し切り頼朝の許に走った故事からリンドウは源頼朝の紋(竜胆紋)として知られています。

リンドウは交雑しやすく、屋久島、浅間、立山、ホロムイ(幌向。最初に発見された北海道岩見沢近郊の地名にもとづく)など各地の地名がついた変種 が多いので、なかなか識別が難しいです。いくつか挙げてみます。

エゾリンドウ
エゾリンドウ
エゾリンドウ(蝦夷竜胆)【学名 Gentiana triflora var. japonica】
都会で「リンドウ」の名前で売られているものはだいたいエゾリンドウです。本州中部以北、北海道、千島、樺太の山地から湿地に自生しています。草丈 が30〜80センチと高く、根茎が太く、葉の縁にざらつきがありません。
数あるリンドウ属の中でエゾリンドウは最も豪華・秀麗で、本州に見られる普通のリンドウよりも花が大きく、また花付きもよいことから、切り花用 として広く栽培されています。エゾリンドウの花は茎頂上ばかりで無く、茎途中の葉脇にも数段つけ花数が多いのが特徴です。


エゾオヤマリンドウ
エゾオヤマリンドウ
エゾオヤマリンドウ(蝦夷御山竜胆) 【学名 Gentiana triflora var. japonica subvar. montana】 8-10月ごろに低山から高山の湿った草地に生え、高さ10-30センチになる多年草です。葉は卵形〜狭卵形。外観はオヤマリンドウに似ていますが、花は ほとんど茎頂だけにつきます。山形県以北でよく見られる種類で、エゾリンドウの高山型とされます。


ミヤマリンドウ
ミヤマリンドウ
ミヤマリンドウ(深山竜胆)【学名 Gentiana nipponica】
月山や大雪山、十勝連峰など東北から北海道の主に日本海側の高山帯の草地に自生する日本固有種です。7月下旬〜9月ごろ、やや湿った草地に生え、 草丈はわずか 5〜15 センチ程度と低く、葉の長さは4〜10 ミリほどの短い卵状長楕円形で、厚みと光沢があり、対生します。花は茎や上部の枝先に 1〜5個つき花冠は大きく5つに裂け、裂片の間に小型の副片があります。根生葉は花期には枯れます。



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【 ハルリンドウ(春竜胆)
ハルリンドウ
春に咲くリンドウということでハルリンドウがあります。全国で見られるのですが、八ヶ岳では 春を告げる一番手として多くの人が待ちかねている花です。他の土地より1か月ほど遅くゴールデンウイークの頃やっと見かけます。写真は八ヶ岳高原ロッジのHPに掲載されたものですが、見てのとおり湿地を好みます。しかし、太陽が大好きで、花は曇っていると開きが悪かったり、 開かなかったりします。



ハルリンドウ
これほど鮮やかな色が出るのは
よほどの晴天でないとダメ。
二年草で、根生葉は長さ約2cmの卵形。上部には茎に沿った小さなロゼット状の葉が生える。 花茎は数本が集まって立ち、花は長さ2〜3cmの漏斗状で上向きに開きます。 花は淡紫色で中心部はやや色が薄くなり、紫色の筋がはいる。白花もある。高山から亜高山に生息するタテヤマリンドウは近親種。



【 アヤメ(菖蒲) 】 と 【 ヒオウギアヤメ(檜扇菖蒲)

ヒオウギアヤメの群生地
我が家の庭園だと思っているが海ノ口牧場近くにある
アヤメの群生地(06年6月28日)。
この項のタイトルをどうするか悩みました。八ケ岳で見かけるものを紹介しているのですが、両方身近にあります。しかも極似しています。その上、 「菖蒲」をどう読むかでコロッと変わるのです。しかも「カキツバタ」「ハナショウブ」「セキショウ」と同じようなものがゾロゾロあり、かなり分類に詳しくないと頭がこんがらかって投げ出すのは必定な植物なのです。 さて、冒頭で「菖蒲」をショウブと読んだ人ですが、ショウブは、古くはアヤメと呼んだことがありますが、花が咲くアヤメとはまったく異なる別の植物 なのです。順番に説明します。

アヤメ科アヤメ属の花を「Iris」(アイリス)と呼びます。ギリシャ語の「虹」(Iris)に因みます。世界中に分布していて、時々バードフィーダーを求め て訪れるので知っていますが、アメリカ・テネシー州の州花はアイリスです。


アヤメ
これはアヤメ
アヤメの仲間は、どれも花も葉もよく似ていて、とくにアヤメ、ヒオウギアヤメ、カキツバタ、ノハナショウブは花色がいずれも青紫から赤紫で、迷うとこ ろです。アヤメ属の花びら(花被片)は6枚で、基部で合着しています。うち3枚は大きくて外に垂れ下がり(外花被片)、3枚は小さくて内に立ち上がっ て(内花被片)います。

内花被片 花冠(花びら、またはその集まり)の外側の部分を萼(がく)といい、個々の部分を萼片といいます。花弁(花びら )の付け根にある緑色の小さい葉のようなものが萼です。萼と花冠が同じように見える場合は、ひとまとめにして花被(かひ)といい、花被を萼と花冠で 区別する場合は、萼を外花被といい、その一つ一つを外花被片、花冠の部分を内花被といい、その一つ一つを内花被片という。

さらに複雑なことには,それぞれの外花被片の内側をふさぐように,雌しべの一部が伸びていて、この両者の間に雄しべが隠されていて、そこに昆虫を誘う 蜜が蓄えられています。この外花被片の基部に「蜜標」がありますがこの模様が識別ポイントになります。白と黄色の地に虎斑模様(文目)があるのが、ア ヤメとヒオウギアヤメ。虎斑模様がなく、白い地色だけなのがカキツバタ。黄色い地色だけなのがノハナショウブです。ノハナショウブは唯一、葉の中央 の筋が太く、ショウブに似ているのでここで識別可能です。

ヒオウギアヤメは標高1760メートルあるここ八ヶ岳の東側では窪地などによく見かけます。本来は北海道・厚岸(あっけし)や尾瀬などの湿地に 多いと本に書いてあるのですが、八ヶ岳では道の脇などの乾燥気味の場所にもよく見かけます。特に我がログハウスの前はよく咲きます。少し窪地で雪解け 水や大雨で水たまりになるような所なので、湿地の条件を満たすのでしょうか。 青い花はこれとリンドウ、トリカブトくらいなので山の彩(いろどり)の上で貴重です。

檜扇
語源になった檜扇
ヒオウギアヤメは北海道、本州中部地方以北の高層湿原や湿った草地に群生する多年草です。 高さ80センチぐらい。漢字では「檜扇文目」と書きます。花の模様がアヤメ(文目)で葉の形が檜扇 (ヒオウギ=写真右)に似ていることから名付けられました。 花の内側の花弁(内花被片)は、アヤメでは大きく鶏冠のように立っていますが、 ヒオウギアヤメは小さくて目立ちません。花柱の先は二深裂し、裂片には鋸歯があります。花期は6〜8月。

昭和天皇が、那須野が原で初めて発見され、「那須の植物誌」に新種として発表された「ナスヒオウギアヤメ 」や キリガミネヒオウギアヤメ、ピンクヒオウギアヤメなどの変種もあります。

ヒオウギアヤメの花をアイヌ語では、「カンピ・ヌイエ・ノンノ」と言うそうです。 「手紙を書く花」という意味で、つぼみの形が筆先に似ていることからきているようです。

アヤメ(菖蒲)とヒオウギアヤメ(檜扇菖蒲)の識別
アヤメのアップ
アヤメの内花被片は立ち上がっていて長い
ヒオウギアヤメのアップ
ヒオウギアヤメの内花被片は短くて小さい
よく似ているのでごちゃまぜにしておいても格別の不都合は起きないのですが、八ヶ岳の我が山墅の周りでは 両方が見られます。なので識別の知識が必要になるわけです。

まず分布ですが、アヤメは全国どこでも見ることが出来ます。花の名所も多いです。ヒオウギアヤメの分布は本州の中部地方以北、北海道のやや湿地帯 となっています。この周辺の人にしかわからないでしょうが、海ノ口牧場のあたりに群生しているのがアヤメで、美鈴池あたりにポツポツ見かけるのがヒオウギアヤメです。

両方並べてみるとわかるように、直立する内花被片がアヤメの方がかなり長いです。ヒオウギアヤメの内花被片は短くて小型です。外花被片の網目模様は どちらも同じように見えるので識別点にはなりません。次に葉です。ヒオウギアヤメの葉の方がアヤメの葉より幅が広いです。


次にカキツバタについてです。「いずれ菖蒲(アヤメ)か杜若(カキツバタ)」というくらいですから、アヤメとカキツバタを区別することは難しいですが、最初に大雑把な見分け方。カキツバタは水中に生え、アヤメは地上に生えます。

カキツバタ
カキツバタ
次に花からの見分け方。外花被片(外側の大きな花びら)の基部を見て識別します。ヒオウギアヤメには黄色地に紫色の綾目模様が入り、花芽が数個付くのに対し、カキツバタは中央に白色の 斑紋が入り、周囲が黄色味を帯びて一つだけ花芽が付きます。そして細長い3つの花被片が立ち上がっています。 3枚の大きな花弁(外花被片)にある 網目模様があるのはヒオウギアヤメとアヤメだけで、よく似たカキツバタには網目模様は見られません。カキツバタには白いスジが見られますが、これが燕(ツバメ)の飛ぶ姿に見えるので「燕子花」という漢字をあてることがあります。

背丈についてもカキツバタは50〜60センチであるのに対し、ヒオウギアヤメは1メートル以上と背が高いのが特徴です。 また、カキツバタの葉の幅は1センチほどなのに対し、ヒオウギアヤメの葉の 幅は倍近くあり、葉は波状にちぢれています。また、カキツバタの方が葉の根元の紫色が濃いという違いがあります。

「カキツバタ」で脱線します。古今和歌集の在原業平の歌に

からごろも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ

があります。業平は六歌仙・三十六歌仙の一人で伊勢物語の主人公。高校の古文の時間に出てきますが、この歌は着物に関する 言葉を「折句」「枕詞」「序詞」「縁語」「掛詞」などのあらゆる修辞を駆使して詠んだ歌です。

らごろも(唐衣)  (着・来)つつなれにし ま(妻・褄)しあれば 
(遥・張)るばる き〔来・着〕ぬる び(旅・足袋)をしぞ思ふ 

舞台は三河の国八橋(現在の愛知県知立市。蜘蛛の手のように流れる川に架かる八つの橋。京銘菓の八橋はここから)。 都を離れた在原業平が、川のほとりに咲くカキツバタを見て詠んだものです。意味は 《唐衣を着るとしなやかに身になじむ褄、それと同じく長年慣れ親しんだ妻がいます。ひとり都に残して、はるばる遠くまで 来た旅の悲しさが身にしみて感じられます》というのですが、頭の文字を並べると「かきつばた」となり、これを「折句」といいます。 あと上に表記したように「掛詞」のオンパレードです。技巧に走りすぎて嫌いな人もいます。

ここで思い出すのがプレイボーイ、在原業平(ありわらのなりひら)と藤原高子(ふじわらのたかいこ)の恋。上の歌で妻というの は藤原高子とされます。『伊勢物語』第6段にある悲恋では、二人は愛し合っていたものの、高子の父・藤原長良は彼女 を天皇の后にしようと考えていたので、業平との仲を認めるわけにはいかず反対します。業平は高子を連れて逃げるのです が兄の藤原基経に捕まって家に戻されてしまいます。時に、高子17歳、業平の方は33歳くらい。

結局、藤原高子は9歳も年下の清和天皇に嫁ぎ、2人の皇子と1人の皇女を産み、長男・貞明親王は皇太子となります。3人の 子供が出来たと はいえ、清和天皇と高子の間は決して仲のよいものではなく、天皇の思いは別の女性にあり、高子の思いは業平にありました。 やがて、清和天皇が退位、高子の子である貞明親王が新天皇になる(陽成天皇)と、高子は天皇の母という立場を利用して業平 をどんどん昇進させ頭中将にまで取り立てるのです。

カキツバタは「書き付け花」が転じたといわれ、花の汁を布にこすりつけて染めた昔の行事に由来するとされています。 昔からアヤメ、カキツバタは日本人に 身近な植物だったのです。

ショウブ
ショウブ

次にショウブです。東アジアに広く分布して、池沼、水辺などの湿地帯に自生する常緑のサトイモ科ショウブ属の多年草草本です。アヤメはアヤメ科ですからまったく違う植物なのです。 葉は向かい合って叢生(そうせい)して剣状にとがり、長さ約80センチ、幅1〜2センチで中央に太い葉脈があります。 カキツバタの葉と似ていますが、表面に光沢がある点と、特有の芳香があることで花が咲いていない時期でも見分けができます。乾燥して衣類の虫よけにしたり、民間薬として利用されてきた香りです。

この芳香ゆえに端午の節句(5月5日:子供の日)に束ねて風呂に入れ、菖蒲湯にして入るのですが、ちかごろはハナショウブの葉を入れる人が増えています。いわばアヤメの葉を入れているわけで、この区別、巷間ではめちゃくちゃになっているのがわかります。

ショウブの花
ショウブの花

ショウブの花は、小さな花がいくつも集まった地味な花です。5〜6月ころに葉の間から葉状の花茎(かけい)を出して、長さ5センチくらいの円柱状の花穂(かすい)が出ます。淡黄緑色の小花が密に群がりますが、果実はできません。花序はこの仲間特有の肉穂花序で、花序が付いている部位までが茎で、花序よりも上に伸びているものは苞になります。

ショウブの根茎は、節が多く太く横に伸びて、白色で少し赤みを帯びて、節からひげ根を出します。根茎を刻んで軽くひとにぎり分を布の袋に入れて、適量の水で煮沸してから、そのまま風呂にいれて入浴すると薬効があります。ショウブにはアザロンとオイゲノールという精油成分が含まれているため、この成分が肌に入り込み毛細血管を刺激することで、血行を促します。神経の緊張をほぐして、血行を良くして体を暖めるので、神経痛、リューマチによいとされています。

セキショウと花
セキショウとその花

ショウブと似ているものにセキショウ(石菖)があります。セキショウは、左の写真のように葉が大きく花穂も太く短く、葉の断面の中肋(ちゅうろく・葉脈)が太いのでこの点で区別します。飯沼慾斎(いいぬまよくさい・1783〜1865)が記述した「草木図説」のセキショウの記載には「漢人ハ主トシテ此種ヲ用ウ・・・」とあるので、当時は日本ではショウブが用いられていて、中国ではセキショウが用いられていたことがわかります。

セキショウは、日本、中国に分布して、谷川の淵などに群生して自生する多年草の常緑草本です。 根茎は、太くて堅くよく発達して横に伸び、多くの節があり多数の丈夫なひげ根を地中におろすか、岩などにからみついて生長します。 根茎は、セスキテルペンなどの精油を多く含むので芳香があります。秋に根茎を掘り取り、ひげ根を取り除いて水洗いして、10センチくらいの長さに切り、天日で乾燥させると生薬、「石菖」が出来ます。鎮静、健胃、鎮痛、利尿、抗真菌作用があります。

葉は、根茎の端から直立して叢生して、平らで長さ30〜50センチ、幅6〜10センチの剣状で、中脈はなく、先は尖り光沢があります。 花は、4〜5月ごろに葉の間から、葉に似た花茎を出して、中間くらいから淡黄色の細長い肉穂花序をつけます。 花穂とほぼ同じ長さの総苞(そうほう)があり、花穂(かすい)には淡黄緑色の小花が密につきます。 果実は、緑色卵円形をしています。

ノハナショウブ
ノハナショウブ

ややこしいことに、同じく判別が難しいものに、ノハナショウブ(野花菖蒲)があります。花片の基部に淡黄 色の細い斑紋が入っていることで見分けます。またノハナショウブは剣型の葉の中央に太い脈があって,出っ張 っている特徴があります。カキツバタは葉が幅広く,花の色が青紫であることから,アヤメと区別できます。 園芸植物のハナショウブ(花菖蒲)はこのノハナショウブを改良して作ったものです。



ハナショウブ
これはハナショウブ
(久里浜・水辺の公園)
ハナショウブの改良は近年になってからと思われがちですが、これがなんと大半の品種改良は江戸時代に行われているのです。江戸後期に、大目付職をしていた松平定朝(さだとも)という旗本が、小さな紫色の花をつける野生の野花菖蒲をみて、ほれ込み、自分一代で今のような大きな花に改良したといいます。色彩も濃い紫、薄い紫、水色、かなりピンクに近いもの、白いもの…、模様も絞りとか縁どりとか現在見られるもののほとんどを一人でやり遂げたのです。沢山の品種を作り、それが大変な人気を呼んで、後世、「江戸菖蒲」と呼ばれるようになりました。今でも堀切の菖蒲園を始め明治神宮などで見られるのが、その直系だそうです。

おもしろいのは、全国への広がり方。当時、参勤交代で地方の殿様が江戸詰めになっていました。その中で、肥後(熊本)の殿様が無類の花狂いだったことから、松平公に頼んで花を譲り受け、国許に送って品種改良を命じて出来たのが江戸菖蒲より大輪で豪華な「肥後菖蒲」。現在も熊本城の一角に植えられています。江戸が中心ではあったけれど、またたく間に日本全国に広まったといいます。

まとめると、以下のようになります。菖蒲園に咲いている花は、ショウブの花ではなくてハナショウブというアヤメ科の植物。さらに花札に描かれて いるのはカキツバタでこれもアヤメ科。この3つはどれもよく似ていますが、花びらに違いがあるのでここで見分けます。網目模様があればアヤメ、白い 線1本入っていたらカキツバタ、黄色い線が入っていればハナショウブです。更に言うと、染物に使われるのがカキツバタ、五月人形と共に飾られ、また品 種改良でさまざまな種類の花があるのが、ハナショウブなのです。ハナショウブが俗にショウブと略されることから、何時しか混同されるようになってし まったのです。



こまごまと書きましたが上述のようにややこしいアヤメ、カキツバタなど各種の識別法を解説したサイト「Botanical Garden」があります。

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【 ダリア 】
ダリア1 もちろんこの花は都会でも咲くのですが、冷涼な気候を好む植物なので病気、花色などを考えると高地の方が断然きれいです。ただ、球根はここの寒さでは越冬できません。しかも、八ヶ岳と下界の季節のずれが大きいので、芽だしに一工夫いります。球根を水苔に包んで下界で越冬させたものを、水をかけずに、春なるべく遅くまでがんばります。それでもGW前には、乾燥した球根から芽が膨らんできます。2,3センチのところで水をかけて、一度芽だしをします(いっさい肥料を与えない)。 全体が20センチほどに育った頃、山の気候も霜が降りなくなっているので、浅く植え付けます。以後、芽欠きなどの作業は同じです。秋遅くまで咲きつづけます。10月末、寒くなるとともに上部が枯れてくるので、掘り出して、球根を水苔に包んで下に降ろします。分球もこの時します。また、いっさい水を与えずに保存、春4月、芽が動き出すまで下界に置くのです。
ダリア2



【 プリムラ (西洋サクラソウ)
プリムラ

東京で育てている植物も毎年何鉢かは枯れます。無知によるものが多いのですが、八ヶ岳に捨て置いた枯れ鉢から、越冬した翌年花が咲きました。 びっくりして調べると、プリムラだったのです。プリムラ属の植物は北半球を中心に五百種以上が自生していて、ほとんどが高山植物で、 標高1000から5000メートルの山岳地帯に最も多くの種が集中しているといいます。だいたい「プリムラ」という言葉自体、 ラテン語のprimus(最初)の意でこの花が早春、ほかの花に先駆けて咲く事からついた名前ですから、むしろ寒冷地向きの花だったのです。 日本にも20種ほどが自生していて「日本サクラソウ」と呼ばれ、愛好家が多いようです。

写真はその捨てた鉢から咲いたプリムラですが、園芸種の開発が進み、今では黒以外ほとんどの花色があり、八重など咲き方もいろいろです。プリムラは写真よりもっときれいなものが多いと思ってください。代表的な3種をあげておきます。

▽プリムラ・ポリアンサ
ポリアンサはイギリス生まれの園芸品種。ヨーロッパの山野に分布しているプリムラの一種をはじめ、いくつかの原種を交配して作り出されました。はじめのころは、イギリスではプリムラといえば黄色一色でしたが、 十七世紀の初頭に海外からもたらされた種との交配によってさまざまな花色が誕生しました。現在の品種では、赤、オレンジ、紫、青などが出揃っています。花の大きさや形も改良され、径八センチという巨大輪花を着けるものや、 八重咲きの品種も登場しています。ジュリアンという品種は、ポリアンサにジュリエという種を交配して作られたもの。草丈六センチほどのミニのプリムラとして人気を呼んでいます。 ポリアンサは本来は宿根草ですが、暑さに弱いため、一年草として扱い、毎年秋に播種して栽培していますが、私の例のように寒冷地では逆にそのままでいいわけで、育てやすいといえます。

▽プリムラ・オブコニカ
オブコニカは中国西部からヒマラヤにかけて自生するプリムラ。野性種の草丈は10〜20センチ、花色はピンクか淡い紫で中心部が黄色というものです。19世紀末にヨーロッパにもたらされ、ポリアンサと同じように豊富な花色が作り出されています。 ポリアンサとオブコニカは花の形はよく似ていますが、前者の葉が長楕円形なのに対して、後者の葉は円形という違いがあります。オブコニカの葉には細かい毛が生えていて、ここからプリミンという毒素を分泌する品種もあり、人によっては触れるとかぶれるので園芸店でよく注意書きが出ています。 プリムラの仲間は夏の暑さに弱いのですが、このオブコニカは比較的高温に強いようです。

▽プリムラ・マラコイデス
マラコイデスの原産地は中国の雲南省など。野生種の草丈は20〜50センチにも達し、オブコニカの野生種と似た色の花をつけます。前の二種ほどは改良が進んでいないため、園芸品種でも色の変化には乏しいけれど、小さな花を密集させる繊細な姿を好む人は多いようです。

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【 ツリガネニンジン(釣鐘人参)

ツリガネニンジン ツリガネニンジンは、日当たりのよい山野に見られる多年生植物。キキョウ科 ツリガネニンジン属。キキョウが寒さに強いのは前に紹介しました。 細かい毛の生えた茎は直立し、切ると白汁が出ます。その茎につく葉は、3〜6枚ずつ輪生します。 花期は8〜10月。鐘形で、先が5裂した青紫の花を、茎の先の小枝に円錐状につけます。下を向いて咲く花の長さは1.5センチほどです。 和名の「ツリガネ」は,左の写真を見ればわかるように花の形から、「ニンジン」は肥厚した白色の根が漢方薬として用いられたことからついたものです。

  春の若芽は「トトキ」ともいわれ、古くから山菜として知られています。食用にするのは柔らかい若い芽と根で摘み取った切り口からは粘液質の乳液が出てくるが、味はともにくせがないといいます。若い芽はおひたし、各種和え物、てんぷら、根は各種漬け物、きんぴらなどにして食べるそうです。 俗諺に「山でうまいはオケラにトトキ、嫁に喰わすもおしうござんす。」とうたわれている「トトキ」は、取って置きのご馳走という「トッテオキ」から「トトキ」となったほど大変なご馳走であったようですが、我が家で食べた者はいません。

私には区別がつかないのですが、よく似たものに「ハクサンシャジン」があるようです。こちらは 本州中部以北から北海道の亜高山から高山の草地や礫地に多く、別名タカネツリガネニンジンといい、平地に咲くツリガネニンジンの高山性変種で背は低く30-40センチ、花も葉も3-5個ずつ輪生するようです。 ツリガネニンジンより花が密集して咲き、花色も濃いようです。シャジンという名はこの植物の生薬名です。

また、 ツリガネニンジンとよく似た花をつけるものに、左の写真のソバナソバナ(岨菜)というのがあって、間違いやすいといいます。 こちらを見分ける方法は、ツリガネニンジンの花が輪生するのに対して,ソバナの方は小さな釣り鐘型の青紫の花が一つずつ独立していること、柱頭は花冠より突き出ていないことなどだそうです。 ツリガネニンジンには別名がたくさんあって、トトキ、トトキニンジン、キキョウモドキ、ヤマシャジン、フウリンソウ、ツリガネソウなどと呼ばれているようです。



【 イワシャジン(岩沙参)

イワシャジン

キキョウ科ツリガネニンジン属のものでは上でリガネニンジン 、 ソバナを紹介しましたが、同属のイワシャジンも八ケ岳 で見かける花です。沙参(シャジン)というのはツリガネニンジンのことで漢方の名前です。岩場に生育する釣鐘人参という名前どおりの花です。イワツリガネソウの別名も持っています。

日本固有種で、本州の関東地方から中部地方にかけて分布し、山地の湿った岩場を好む多年草です。八ケ岳高原ロッジ近くのこうした環境に、秋、9〜10月ごろ小さな青い花を見かけます。草丈は30〜70センチくらいで、茎は重みで垂れ下がっています。 自然では見かけるのは珍しいものの、園芸用に栽培されているので.、町でも見かけます。

イワシャジンの花

根際から生える茎葉は互生し、長さ5〜15oの柄があり卵形をしていますが、茎につく葉は細い披針形をしています。 花は総状花序に10個ほどです。花柄は細く長さ2〜5センチ。花冠は鐘形状をしていてで紫色の長さ1.5〜2.5センチの花を付けます(右写真は花のアップ)。花の色は八ケ岳では多くは紫色ですが、中には白いものもあるようです。ツリガネニンジン属の多くは春に咲きますがイワシャジンだけ秋に咲きます。晩秋に花茎は枯れますが、脇に小さな越冬芽が付いています。

イワシャジンなどツリガネニンジン属の花は、全国に広く分布しているものではなく、富士山を中心とした、フォッサマグナ(糸魚川−静岡構造線)の比較的狭い範囲に咲くので、種の成立や分布に大断層と関係した地史学的な共通要因があるのだろうといわれています。

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【 クモマグサ(雲間草)
クモマグサ
あとから勉強したことですが、北海道や本州中部の高山に生息する「ユキノシタ科ユキノシタ属」 の山野草です。草の丈は4ー5センチの背の低い植物です。
漢字で「雲間草」と書きますが、高山の雲間に生えるのでこの名がついたというから当然ですが、ものすごく耐寒性があります。 氷点下20℃のなかで、いっさい世話をしないのですが、毎年6月ごろかわいらしい花をつけます。
春に花屋さんで「雲間草」と称して売られているのは、実は北欧原産のもので、 日本の高山に自生するものとは別物だそうですから、上の写真にある我が家のものは、ヨーロッパ系のようです。 というのも、都会で買ったものだからです。変種には、いかにも北方系らしく「チシマクモマグサ(千島雲間草)・エゾノクモマグサ(蝦夷の雲間草)」 などがあるようですが、私には区別がつきません。ただめっぽう低温に強いので重宝しています。



【 ショウジョウバカマ(猩々袴)

ショウジョウバカマ常緑のユリ科の多年草です。 別名:カンザシバナ。多湿な所を好むようで、わが山小舎の敷地の中や近くの登山口の あちこちに見られます。雪解け具合によって花の時期に差異がありますが、雪が溶けたあと春先一番に咲くので印象的な花です。 平野部では3月から、八ヶ岳ではG・Wのころです。

漢字では「猩々袴」。紅紫色の花を猩々(赤毛のサルに似た想像上の動物)の赤い顔に, 地面に広がる葉を袴(はかま)に 例えて名づけられたようです。

葉は光沢があって舌状で長さが5〜10cm。重なり合って地表面に広がり、ロゼットを形成しています。 冬前に痛んだままの葉の間から、20cm前後の花茎だけ立ち上がるので、冬の厳しさを乗り越えて きたことがしのばれ、いっそう春の息吹がします。花はロゼット葉の真ん中から伸びた花茎に横向きに付きます。

花が散った後、花茎がさらに50cmほどに伸び、高い位置から種子をまき散らします。 秋に葉先に子苗をつくるところがちょっと変わっています。



【 ウチョウラン(羽蝶蘭)

ウチョウラン ウチョウランはこれだけで愛好家の集まりがあります。個体差が大きく、細かく分ければ同じ花はないと言っても いいほどで、まれに出る白花の珍種とか、葉裏に縞柄がないものなどは、とんでもない高値をつけるものもあるようです。 写真は私が大事にしている1株ですが、好事家が寄ってくるようなものではありません。近くの園芸店で求めたものです。

大事にしているのは、この八ヶ岳の寒さに耐えて毎年花を咲かせ続けているからです。本州、四国、九州に広く 分布する日本原産の野生ランで、冷涼で湿り気のある渓谷の岩場などに自生しています。採りに行った人 が転落したり、落石事故でケガをしたりすることが多く、危険と同義語として有名になった蘭でもあります。 しかし、本来は関東以西で育つもの。ここの厳寒に耐えられるか不安でした。でも見事に咲いたのです。

八ヶ岳では、6月ごろから花芽が伸び始め、7月までに10数センチに育った花茎の上部に紫紅色の花をつけます。 自生している場所が岩場なので、ものの本によると、管理は難しいようです。「雨の当たらない風通しのよい明るい 日陰に置き、用土は日向土の小粒だけなど粘土状に固まらないもの。水やりは土の表面が乾いたら与える」とあります。 山ではそんなこといってられないので、梅雨時など雨にじゃぶじゃぶ当たりっぱなしです。でも大丈夫です。

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【 ヤグルマソウ(矢車草)

ヤグルマソウ
ヤグルマソウ
ヤグルマキク
園芸店ではヤグルマソウ
正しくはヤグルマギク
バラ目ユキノシタ(雪の下)科 ヤグルマソウ属の多年草です。北海道西南部から本州、朝鮮に分布し、冷涼で湿度の高い深山の樹林の林縁や林床に生育 します。根生葉が 5 枚の小葉からなる掌状羽状複葉を出しますが、この形が鯉幟(こいのぼり)の竿の先端に付ける矢車に似ているから名前がついたもの です。よく間違うのは、園芸店で同じヤグルマソウの名で色とりどりの菊のような花が売られていますが、こちらはキク科で花の形が矢車に似ているのでこ の名前になったもので、和名では「ヤグルマギク」(矢車菊)という別な科の植物です。葉が矢車似か、花が矢車似かの違いです。 

学名は「Rodgersia podophylla」です。Rodgersia(ロジャージア)はヤグルマソウ属に与えられた名称ですが、アメリカの海軍士官Rodgersが函館で 採集したのを記念しての命名で、podophyllaは下で説明するように「柄のある葉をもつ 」という特徴からきています。

ヤグルマソウ群落
林縁で群落をつくる
ヤグルマソウはブナ林などの広葉樹林域の谷筋に生育し、地下茎で増えるので、群落を形成することが多いです。葉は上述のように5枚の葉が円形に生える 特徴ある形で、根のきわの茎から葉が付く「根生(こんせい)葉」で「葉柄(ようへい)」があります。1枚の葉が進化して複数の小葉となり、小葉が平面 的に付くのを複葉といい、ヤグルマソウの根生葉は「5出複葉(ごしゅつふくよう)」という形で長さ80aになるものもあります。茎の上部の葉は掌状の 「3出複葉」です。1つの小葉は大きいので長さ40a。小葉の先端は浅く5つまたは3つに分裂、浅い切れ込みがあり、それぞれの先端は「尾状(びじょう )」に鋭くとがっています。茎につく葉は互いちがいに付く「互生」で短い「葉柄(ようへい)」があります。葉の基部は、「くさび形」です。


ヤグルマソウの花
ヤグルマソウの花
花のアップ
花のアップ
花期は6月から7月で、高さ1メートルに達する円錐状の花序を形成して芽の時は濃い茶色、初めは緑白色で後に白色の細かい花を多数群生させます。花の色 は緑白色から白色やがて茶色に変わります。1つの花は直径6〜8ミリで、5〜7枚の萼(がく)があり、花からはたくさん角のようなものがツンツン突き出 ていますが8本から15本の雄しべと2本の花柱からなる雌しべです。花弁はありません。秋に楕円形のさく果をつけます。

咲く途中で花色を変えるものがいくつかありますが、植物体内での酵素の働きが色素変化に関係しているとする研究があります。 煙草の葉と似ていますが、戦争中はヤグルマソウやオオイタドリなどの葉とともにタバコの代用品にしました。信州ではゴハ(五葉)、サルカサ(猿笠) などの名があります。

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【 コウリンカ(紅輪花)

コウリンカ コウリンカ(紅輪花)も最近名前を覚えた花です。八ヶ岳で最初に覚えた花の名前がマルバタケブキ ですが、「マルバタケブキと似た花」でずっとすませてきたいい加減さ。

日当たりの良い高原に生えるキク科の多年草。本州だけに見られるようです。八ヶ岳では7月〜8月末に見られます。 高さ50センチ程度に成長し、茎の上部は白い毛が多く、下のほうは紫色を帯びて角張っています。 その茎の先を枝分かれさせ先端に丸く輪のようにオレンジ色の花びら6〜13個付けます。舌状の長い花びらは、 最初は水平に出ますが、 最盛期に開ききると、下垂するので枯れ始めと間違えることがあります。



【 アキノキリンソウ(秋の麒麟草)

アキノキリンソウ 八ヶ岳にこの花が咲き出すと秋の訪れを感じます。別にここだけの花ということではなく、北海道から南西諸島まで低いところか ら高いところまで、また 日のあたる草原から茂みや疎林内にも生え、それこそ場所を選ばず日本中に分布します。

キク科アキノキリンソウ属の多年草 で、高さ50センチから80センチほど。茎はかたく直立し、葉は互生します。茎先に穂状に なって頭花が多数つき、外側の舌状花と内側の筒状花があり、 内側の筒状花が結実します。花の形が酒を醸造している時に生じるあわ立ちに似ているた め別名をアワダチソウともいいます。 北米原産で戦後日本に入ってきたセイタカアワダチソウも同じ種に 属します。全国どこにでも繁殖し、喘息の原因とされて嫌われ、またアクが強く食用にもなりません。 同種の草花でも大変な差です。

キリンソウ 写真右のように春に咲くキリンソウ(麒麟草 ベンケイソウ科マンネングサ属)と似ていて、こちらは秋に咲くのでアキノキリンソウ の名が付いてます。黄色の小さな花が穂のように細長く咲くのがアキノキリンソウ、わりにまとまって上でひとかたまりに咲くのが キリンソウです。キリンソウの葉の形が幅広であるところも識別のポイントです。

ミヤマアキノキリンソウ ミヤマアキノキリンソウ写真右)というのがあり、こちらは本州中部以北・北海道、千島・樺太・シベリア東部などに分布する アキノキリンソウの高山型です。コガネギクの異名があります。茎の頂端にまとまって付くので花の形はキリンソウと似ています。 詳細には、総苞片が3列のものがミヤマアキノキリンソウ、4列のものがアキノキリンソウです。湿原に生育するキリガミネアキノキリンソウもあります。

中国ではミヤマアキノキリンソウを「一枝黄花」と呼び、薬草にしますが、日本ではアキノキリンソウで代用します。 薬用には、花の時期に地上部を採り、水洗いして日干しし、煎(せん)じてカゼの頭痛やのどのはれ の痛み、はれものの解毒に利用される。 食用の場合は、若苗の葉を揚げ物にしたり、塩ゆでして水でさらし、おひたしやごまあえなどにもするようです。

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【 カセンソウ(歌仙草)

カセンソウ キク科オグルマ属の多年草で、和名は「歌仙草」と書きます。和歌の道に優れた人を「歌仙」といいいますが、花の名前になったいわれはさだか ではありません。

八ヶ岳でよく見られる花ですが、高山植物というほどではなく、北海道から九州の日当たりのよい山野の草原に生え、草丈60-80センチほどです。 花期は7〜9月頃。花の径3〜3.5センチほどの鮮やかな黄色の頭花をつけ、遠くからでも目立ちます。 茎は直立して固く、上部で少し枝を分けます。葉は互生し、柄が無くヘリには細かい鋸歯があり、葉脈がよく目立つのが特徴です。

オグルマ
オグルマ(小車)
同じ属のオグルマ(小車)と花がよく似ていて見分けがつけにくいですが、 カセンソウが上述のように葉が細長くてかさか さしていて硬く、葉の裏面の葉脈がはっきり浮き出ているのに対し、オグルマは 20〜60センチ で草丈がやや低いようです。こちらも全国どこでも、田の畦や湿地で見られます。葉の幅が広くて質は柔らかく、裏面の葉脈は浮き出ていません。 またカセンソウの方が乾いたところに生えます。 そう果の表面に毛があるのに対し、カセンソウは無毛です。 オグルマの頭花は中国では健胃や利尿などの薬用にしています。名前の由来は整然と放射状に並んだ舌状花を小さい車に見立てたことからきています。

ミズギク
ミズギク(水菊)
もうひとつよく似たものにミズギク(水菊)があります。湿地に生える菊なので水菊と呼ばれ、山地帯から亜高山帯の湿地に生育します。 オグルマ、カセンソウ、ミズギクの3種は日本中で見られますが、区別の仕方は、花が咲いている時期に根生葉が枯れているか、生きているか で分けられます。根生葉が生きているのがミズギク、枯れてるのがオグルマとカセンソウ。ミズギクは茎 の先端に径3〜4cmの頭花を1個つけ、オグルマやカセンソウは枝分かれして、多くの頭花をつける点で区別します。頭花は外側1列が舌状花で、 中の多数の小花は筒状花です。



【 シモツケ(下野) と シモツケソウ(下野草)

シモツケとシモツケソウ
同じ場所に咲くシモツケ(左)とシモツケソウ
シモツケ(下野)とシモツケソウ(下野草)が別物だということは最近まで知りませんでした。もともと草木の名前など何一つ知らずに 八ヶ岳に来たので、こんなことは他にもたくさんあるのです。私が間違ったことは他の人もそうかもしれないというのが、 このホームページで紹介している理由です。

シモツケ
シモツケのつぼみと開花したものが同時に見られた。
この葉の形を覚えておく。(撮影2006.7.8)
《 シモツケ(下野) 》
シモツケは日当たりのよい草地や礫地に生えるバラ科の落葉低木です。このグループにシモツケソウがありますが、こちらは多年性の草本で、 シモツケに花が似ているので名づけられたもので、まったく別のグループです。シモツケソウの葉は羽状複葉なので区別します。 またシモツケはシモツケソウよりも半球状にまとまって花がついているところで見分けます。 シモツケという名前は、下野(しもつけ=栃木)産のものが古くから栽培されて いたことによるようです。漢字では「繍線菊」と書きます。当て字です。

後の日に知る繍線菊(しもつけ)の名もやさし       山口 誓子

  俳句の大家も、この花を知るまでに私と同じような経緯をたどったようで共感をおぼえました。

シモツケは、西洋ナツユキ草とも呼ばれ、日本全土、朝鮮半島、中国の山地に分布しますが、庭木としても利用されます。乾燥 にも強いので、日本庭園の岩組にも古くから植栽されてきました。また、茶花としても用いられます。

木本ですが、主幹といわれるものがなく、高さもせいぜい1m程度ですから、草と間違われることがあります。シモツケは5月から7月にかけて、 枝先に紅色をした直径3〜6ミリの小さな花をたくさんつけます。「複散房花序(ふくさんぼうかじょ)」とよばれるものです。これは花弁の倍程度 の真っすぐに伸びた長い雄しべをたくさんつけた小さな五弁の花が、群がっていっせいに咲くもので、少し離れて見ると、花序の輪郭がぼけて、あ たかも霞(かすみ)がかかったような美しい花です。また香りのある花です。

シモツケの樹皮は暗褐色で、葉は卵形で幅2〜3センチ、長さ3〜9センチ、単葉で互生します。  葉の表面は緑色で無毛。 裏面は白緑色で葉脈上に毛が密生。果実は袋果で9〜10月に長さ2〜3ミリの卵形が5個集まってつきます。

シモツケのグループには○○シモツケという名前のついたものが多くありますが、コデマリ、ユキヤナギ、シジミバナなども同 じグループです。しかし,このグループで紅色の花をつけるのはシモツケとホザキシモツケのみです。その他の種は、すべて 白色の花をつけます。

《 シモツケソウ(下野草) 》
シモツケソウはバラ科の草本でブナ帯からハイマツ帯にいたる広葉草原に生える多年草です。別名クサシモツケ。関東以西から四国、九州の山地の日当たりのよい やや湿った所に群生し、高さは30センチから1メートルほど。 花期は7-8月で、花弁は円形で下部に爪がなく、縁に小さい歯牙があります。 萼片は反り返り内面に毛がない。5弁花で多数咲く。蕾のときは赤い小さな玉で美しく、咲くと多数の 長い雄しべが広がり、ピンクの霞がかかったようになり、群落美を見せます。

シモツケソウ
シモツケソウ(海の口自然郷2009.07.29)
シモツケソウの花
シモツケソウの花のアップ。

シモツケソウの葉
シモツケソウの葉
シモツケとはこの葉で識別する
シモツケソウの実
シモツケソウは秋にこんな実をつける。
葉はもみじのように深く5裂した掌状の奇数羽状複葉。頂小葉が大きく5〜7裂して1 枚の葉のようにみえ、葉柄の側小葉は托葉と間違えてしまうほど小さいです。 木本のシモツケとの識別は葉でするのが早いです。シモツケは葉が狭卵形〜広卵形なので区別します。 果実の縁に毛のあるものをアカバナシモツケソウというようです。

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【 ハナイカリ(花碇)

ハナイカリ ハナイカリは八ヶ岳でよく見かける花です。リンドウ科ハナイカリ属の1年草で花期は8月〜9月 。低山から亜高山まで 高原の陽当りがよく、草丈の低い草むらに生えます。50〜60センチほどの背丈になります。花色は緑黄色、茎は細く直立し 稜が4つあります。葉は楕円形で対生し、鋸歯はなく、3本の葉脈が目立ちます。茎の上方の葉腋に細い花柄を2〜3個ずつ 出して、写真のような小型の花を上向きにつけます。名前は花の形が、イカリに似ているためで漢字では「花碇 」「花錨」です。

ハナイカリは、アジアやヨーロッパの温帯に広く分布し、日本全国の山地に自生します。変わった花ですが、直径1.5センチほどの 合弁花で4裂し、裂片の下部が長く伸びて距(写真で角のようにみえるもの)となり、そこに蜜をためます。距は初めは白く後に赤みを帯びてきます。 多年草ではないので毎年咲く場所が変わります。



【 イカリソウ(錨草、碇草)
イカリソウ
イカリソウ(2006.6.04飯盛山)
イカリソウは花の形がハナイカリと似ています。本州の東北地方以南の太平洋側、四国の半日陰の少し湿った山野や林間に4〜5月に咲くメギ科の多年草です。八ケ岳では野辺山の飯盛山の場合、5月下旬くらいに錨の形をした直径4〜5センチの薄紫の可愛い花をつけますが、 ハナイカリが上向きに咲くのに対し、こちらはイカリを下向きにして咲きます。 8枚のがく片と4枚の花弁からなっています。がく片は二重になっていて、外側の4枚は早くに落ち、内側の4枚が大きくなって花弁と同じ紅紫色 になります。花弁の4枚は細長い管状(距)になって四方に広がり錨の形をしています。

イカリソウの距
イカリソウの距は虫を引きつける
ためのすごい仕組みを持っている。
これが蜜を蓄えている「距」(きょ)ですばらしい働きをします。イカリソウは一つの花の中に雄しべと雌しべを持つ両性花ですが、同じ個体の 花粉では種子をつくることができません。「距」の蜜が虫を引き寄せ、虫が運ぶほかの個体の花粉で受粉するのです。

葉は、花の終わるころに伸びてきますが、3出複葉で、その1つの小葉 はゆがんだ卵形をしています。春になると、地中を横に伸びる性質がある地下茎の先から1個の根生葉または1本の地上茎、あるいは根生葉と地上茎が1本ずつ 伸び出します。茎につく葉は1枚。根生葉も茎 の葉も同じ形で、ともに2、3回くり返して三つまたに分かれる複葉、小葉は9〜27個あり、小葉のふちにたトゲ、裏には毛が密生するのも 見分ける特徴です。

イカリソウの仲間には、トキワイカリソウ、ウラジロイカリソウ、キバナイカリソウのほか花に距がないバイカイカリソウ、ホザキイカリソウがあります。 色は紅紫色、白の他にピンクもあります。

ホザキイカリソウ
これが淫羊霍=ホザキイカリソウ
中国原産で日本には栽培ものしかない
この植物が有名なのは花の美しさよりも滋養・強精・強壮剤としてです。なかでもホザキイカリソウはもともと中国が原産で、現在も日本にあるのは栽培 されたものがほとんどです。花の数はイカリソウより多くて、ずっと 長い花穂をつくり、花に距はなく、錨の形にはならないので、別種といっていいものですが、これは 別名、三枝九葉草(さんしくようそう)とか、淫羊霍(いんようかく)と呼ばれ、全草が 生薬として使われます。江戸時代後期に渡来し盛んに栽培されました。

名前の通り、羊がこれを食べて精力をつけたことから命名されたとのことで、中国の薬草に関する 古い本『神農本草経集注』(しんのうほんぞうきょうしゅうちゅう:500年ごろ)に「西川(せいせん:四川省西部)の北部にいる羊は1日に100回交合する。 それはこの霍(かく)を食べるためだ」と命名の由来が出ているそうです。「霍」とは豆の葉をいい、葉が豆の葉に似ているからついたといいます。 今ではイカリソウの種類は何であれ、漢方薬の世界ではイカリソウの全体を乾燥させたも のを広く「淫羊霍」と呼んでいて、日本在来のイカリソウもドリンク剤などに使われているようです。

生薬としての効用は強壮、強精、血圧低下、健忘症防止などとても多いです。植物全体を掘って陰干しにし、1日8〜10グラムを煎じて飲むだけですが、買うと 高いです。また、放杖草とも棄杖草とも呼ばれますが、これは飲めば元気になって老人にも杖はいらなくなるという意味です。

仙霊脾酒(せんれいひしゅ)のつくり方

薬用酒にして飲む方法もあります。

【材料 】
イカリソウ 200ー300g。ホワイトリカー 1.8L。砂糖(グラニュー糖または氷砂糖、ブドウ糖でもよい) 100g。

【つくり方 】
5ー6月、イカリソウの地上部の葉茎全草を刈り取り、水洗いし、細かく刻み、2ー3日陰干しする。 これをみな広口ビンに入れ、冷暗所において2−3ヶ月置くと出来上がり。長く貯蔵するほどいい味になるので半年後 くらいまで待つ方がよい。

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【 クサレダマ(草連玉)

クサレダマ
夏の草原で黄色が目立つクサレダマ(八ケ岳050807)
「腐れ玉」とはひどい名前だと思いましたが、調べると、マメ科の植物で江戸時代に盛んに栽培されていたものに「レダマ」(連玉)という木があり、これに似た「草の方のレダマ」と言う意味です。漢字では「草連玉」です。花の色からイオウソウ(硫黄草)という別名があります が、サクラソウ科の耐寒性多年草で、八ヶ岳でもあちこちでよく見られます。 夏になると香りの良い、鮮やかな黄色の花を咲かせます。遠くからも目立ちます。今はスプレー式の殺虫剤に取って代わられていますが、 乾燥した葉を燃やしてハエ除けに使われたこともあります。

クサレダマの花のアップ
クサレダマの花のアップ
これがレダマ。
江戸時代に流行したレダマの
正体は「Spanish Bloom」
元になった「レダマ」(連玉)とはどんな木だろうと探したのですが、今では栽培されていないようです。しかし英名で「Spanish Bloom」というのを 手がかりに英語サイトを検索したら右のような写真がありました。花色は似ていますがかなり大きくなるようで、このへんが日本で廃れた理由かもしれません。 「草連玉」は中国名では金連花(キンレンカ)だそうですが、日本では金連花というとまったく別のナスタチウムを指します。
クサレダマの実
花は落ちずに、立ち枯れて
秋の野に風情をもたらす。
クサレダマの花期は夏7〜8月で、草丈は40〜100 センチ程度。日当たりのよい湿地に生えます。根茎は横に伸び、茎は直立します。先の尖った細い楕円形の葉 は対生あるいは3〜4枚輪生し、まばらに黒点があり、茎の先に2センチほどの多くの黄色い花を円錐状につける特徴があり、花冠の先は5裂します。

草花を知るといつも感心するのが、先達の命名の巧みさです。今回はひどい名前だというので調べたら、ルーツが違うことが分かりましたが、以前紹介した「オオイヌノフグリ」 という花は、その後同情からいつしかきれいな花として記憶に残り、今では栽培しようかなと思うほどです。

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【 ゴゼンタチバナ(御前橘)
ゴゼンタチバナ
ゴゼンタチバナ(2006.7.11八ケ岳)

名前の由来から。かの牧野富太郎博士が「御前ハ加洲白山ノ最高嶺ヲ云ヒ、タチバナハ果実ニ基ク」と記しているから、これで 決まりです。最初に発見された加賀の白山の主峰、御前峰(ごぜんがみね)と「橘」は葉と実がカラタチバナと似ていることからきたものです。名前は加賀にちなむものの、八ケ岳にも多い花です。

ゴゼンタチバナはミズキ科の多年草。 亜高山帯の木漏れ日の差す針葉樹下の湿ったところに多く群生しています。高山帯のハイマツの縁まで幅広く生育しています。

茎の高さは5-15センチ。菱形の葉は常緑で、対生だが輪生のように見えます。葉は4枚葉のものと6枚葉のものがあり、花が咲くのは6枚葉で4枚葉はあまり咲きません。また越冬できるのも6枚葉のものだけです。

ゴゼンタチバナの実
秋になるとこんな実をつける

花期は6-7月ですが、八ケ岳では7月に入ってからです。4枚の白い花弁のように見えるのは総苞片というもので、花は小さく目立ちませんが真ん中に20個ほどが集まってついています。秋になると直径5-7ミリの赤い実を数個ブローチのようにぶらさげます。

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【 キバナノヤマオダマキ(黄花山苧環)

キバナノヤマオダマキ
初夏を彩るキバナノヤマオダマキ(2007.06.30)
この項のタイトルは大きなくくりで「オダマキ」とする方がいいのでしょうが、敢えてキバナノヤマオダマキ(黄花山苧環)としました。我が山墅の周りはこの黄花 とやや紫がかったヤマオダマキ(山苧環)が多いためです。

オダマキの仲間は日本、アジア、ヨーロッパに約70種くらいが自生します。日本では北海道から九州までの低山から亜高山に分布していて、野生種のオダマキの仲 間は3種あります。名前が紛らわしいですが、ヤマオダマキ(山苧環)、ミヤマオダマキ(深山苧環)、そしてヒメウズ(姫烏頭)です。ヤマオダマキには黄色と紫 のものがあり、ここ八ヶ岳には両方とも咲いているのです。

日本ではオダマキは山野草として愛好されてきましたが、外国産のものでは品種改良が加えられ、園芸植物として多彩な色のものが生み出され、日本に「西洋オダ マキ」として黄色や紫どころか色とりどりのものが広く市場に出回っています。

キンポウゲ科(金鳳花科)オダマキ属の耐寒性宿根草です。高山植物というほどではなく路傍や畑の畦、林縁などに生え、草丈は普通15〜30センチほどです。 根生葉は3出複葉で長い柄があり小葉は3裂しています。茎は細く直立して、細い枝を出し、茎葉は葉柄が短く、基部は茎を抱いています。ともに裏面は紫色を帯びていま す。

おだまき
織物で使われる「おだまき」
和名の「苧環」(おだまき)というの は織物工場で糸繰りのとき撚った糸を巻きつけるものです。私の母の実家が山形・米沢の機屋(はたや=機織り)だったので、 これとか杼(ひ)など身近に見るものでした。写真右が苧環ですが、これほど長い棒はなかったように思います。

「苧(お)」というのは糸のことで、これを巻きつけたものを「苧玉」(おだま)といいました。花の形がこれに似ているところから、”苧(お)、玉(たま)、巻き (まき)”が「おだまき」と呼ばれるようになったそうですが、昔は身近でも廃れた今、説明だけでも大変です。同じ理由で「糸繰草」(いとくりそう)の別名があ ります。

学名はヤマオダマキが「Aquilegia buergeriana」といい、属名の「Aquilegia(アキレギア)は、同じラテン語の「aquila(鷲)」が語源で、曲がった距の部分が鷲の爪 に似るところからきています。「buergeriana 」は日本植物の採集家だった「ブュルゲル」氏にちなみます。

英語名ではオダマキは「Columbine」(カランバイン、鳩)といい、これはつぼみの形が鳩に似ていることからついたといいます。ハトは普通「dove」とか「pigeon」 ですが、英語では個々の動物名に対応してラテン語起源の外来形容詞を別に持っていて、この場合「鳩のー」という意味です。ラテン語の「columbinus 」(ハト)が 、古フランス語の「colonbin 」を経て、14世紀に英語化したものです。日本でもこの名前の洋菓子店がありますし、新大陸発見者のコロンブス、ドラマの「刑事コロ ンボ」などもここから来ているものです。

キバナノヤマオダマキ(黄花山苧環)は林縁や草地に生え、上述のように普通30センチ前後ですがここ八ヶ岳では、ぐんと高く30〜70センチ ほどになります。また開花期も遅く6月から8月ごろ、写真のように小さなシャン デリアのように透きとおった直径3〜3.5センチの黄色い花を下向きに咲かせます。

花の構造をよく見ると、花の外側の白っぽい花びらのようなものは蕚(がく)で、内側の筒状の黄色っぽいものが花弁で5枚あります。花の後ろにぴょんと伸びて いるのは「距」(きょ)といいます。蕚片が目立つのはキンポウゲ科共通の姿です。

秋になり花が終わると、茎の先端が頭をもたげ、空に向かって果実をつけます。袋果といい、中に小さく真ん丸いゴマのようなのがぎっしり詰まっています。風に 揺れて遠くに種子を飛ばす仕組みなのです。私は封筒にたくさん集めて、今年咲いていなかったところを選んでばら撒くのを秋の作業にしています。 

ヤマオダマキ
ヤマオダマキはがく片が赤紫、花弁が黄色。
ヤマオダマキ(山苧環)は低山から亜高山にかけての深山の林縁など日当たりの良い場所に自生し、6〜7月に葉より長く高さ30〜50センチの花茎を伸ばして、茎頂 に下向きに花を咲かせます。蕚片は5枚で赤紫色、花弁は5枚で黄色というツートンカラーが特徴です。ヤマオダマキのうちで蕚片が淡黄色をしたものが上で紹介し たキバナノヤマオダマキです。黄花は比較的高度が高いところに多いようで、八ヶ岳で見られるのもこうした理由からです。

ヤマオダマキの根から出る根生葉は2回3出複葉というものです。茎は2〜3枝別れしています。根は古くから鎮痛、消炎作用があるとされ、腹痛、下痢などに用いら れてきました。腹痛、熱性の下痢には、乾燥した根を1日量約5グラムを水0.4リットルで半量まで煎じて3回に分けて服用します。関節炎、耳だれには、生の葉の絞り 汁を患部に塗布し、耳だれには生葉の絞り汁をつけます。



ミヤマオダマキ
ミヤマオダマキは高山地帯に
咲き青紫色が濃い。
ミヤマオダマキ(深山苧環)は、初夏〜夏、北海道や本州中部や北部の高山の礫地や草地で10〜25センチの花茎を伸ばし、先端に青紫色の3〜4センチの花をやや俯 (うつむ)きかげんに咲かせる高さます。ここ八ヶ岳では赤岳の南西斜面で見られます。
先端が白い花弁は後方が距となって巻いており、萼片も青紫色で5枚あります。数個の根生葉から細長い無毛の花茎を出し ます。

ヒメウズ
ヒメウズは春の野原を彩る小さい花。
ヒメウズ(姫烏頭)は「小さい烏頭(うず)」という意味です。「烏頭」は同じ科のトリカブト属を指します。葉や果実(袋果)がトリカブトの果実に似ています。 トリカブトと同じく全草が有毒です。以前はオダマキ属に分類されていましたが、距が目立たないことから現在は一属一種のヒメウズ属とされています。

ヒメウズは中国と日本にだけ分布する一属一種の固有種で草丈が約20センチ前後、葉は細かく切れ込み複雑な形をしています。多くのキンポウゲ科植物と同様に萼が 花弁状になっています。内側の黄色い部分が花弁です。大きさは5〜7ミリ程度しかありませんが、春の野原では目立ちます。花(萼)は白色ですが、つぼみの時は うっすらと淡紅色を帯びています。一つの花は二日ほどで終わってしまいますが、次々と新しいつぼみをつけ、花を咲かせます。 5月の終わり頃には実を結び地 上部は枯れてしまいます。

オダマキは古くから日本人に親しまれた植物で、多くの文芸・文学作品に登場します。例えば「義経記」のこんな場面です。
兄頼朝にうとまれ、都を落ちた義経に従って静御前(しずかごぜん)は吉野に向かいますが、そこから京に帰る途中に捕らえられ、鎌倉に送られます。 舞上手、静御前に頼朝が一曲所望します。

「しづやしづ しづのをだまき くりかえし むかしをいまに なすよしもがな」

と義経を思う心を歌に寄せて舞い歌います。「しづ」には静御前の名前を掛けていますこのほか歌舞伎の演目にも「苧環」が登場します。

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【 ヤブエンゴサク(藪延胡索)

ヤブエンゴサク
ヤブエンゴサクは生薬で有名
ヤブエンゴサク(藪延胡索)は別名、ヤマエンゴサクとも呼ばれ4月から5月に本州から四国、九州 のやや湿り気(沢沿いの湿地)のある山野の落葉樹の林床などに群生するケシ科キケマン属の多年草です。
八ヶ岳ではゴールデンウイークのころ見かけます。茎は高さ10〜20センチほどでその先に、紅紫色から青紫色の2センチほどの淡い ブルーの小さな筒状の花をつけます。スミレの花の形に似ていますが、ケシ科です。 筒の先は唇状に開いて後部は反り返った距(きょ)と呼ばれるものです。

ヤブエンゴサク
ヤブエンゴサクの花のアップ。
いろいろな変異体が多く、色違いの花はもちろん、通常は楕円形の葉が細葉に変わっているもの、白花の細葉タイプなどさまざまです。 北海道のものはエゾ(蝦夷)エンゴサクと呼ばれ、全体に花つきも多く、大柄。花の付け根にある苞が、エゾエンゴサクでは切れ込みがないのに対し、 内地のエンゴサクはギザギザに切れ込んでいるところで見分けます。

「延胡索」は、中国で鎮痛薬として有名な生薬の名前でそれを日本語読みしたものです。 秋の彼岸の頃に塊茎を採取し、蒸してから乾燥したものは激しい胃の痛みや腹痛に 漢方処方「安中散」としてよく利用されます。



【 ニガナ(苦菜)

ニガナ
どこにでもあるニガナだが・・

不明の花3年
ちなみにこれが私が撮影、
不明扱いで3年間ほっておいたニガナ。
ニガナは5〜7月にかけ全国の山地や野原にごく普通に生えるキク科の多年草です。ほとんど雑草といってよいでしょう。しかし私の場合「不明の花」 として3年もの間パソコンに貼り付いていました。植物に無知なのでこんなこと珍しくないのですが、あまりにも見かけるのでとうとう 名前を知りたくなったのが3年後というワケです。

中国では赤ん坊にまず五味を味わわせるそうです。五味とは「酸、苦、甘、辛、鹹(かん)」で鹹は塩味(しょっぱい)です。 その苦味を知るのにニガナが使われました。切ると葉や茎に苦みのある白い乳液が出るのですが「苦菜」の名前はこれに由来しています。 別名はチチグサとも呼ばれます。茎・葉は苦いがウサギなどは好んで食べます。

ニガナは日本全国に生育し、草原や荒れ地、乾燥した場所から湿潤な場所まで場所を選びません。春に高さ20〜50センチ の花茎をもたげ、茎の先端で枝分れし、集散花序に約1.5センチの黄色の頭花をつけます。頭花は普通は 5 個の舌状花からなります 根生葉は長い柄があり、葉身は長さ3〜10センチ、幅0.5〜3センチの長楕円形です。

漢方では古くから同じキク科のオオジシバリと薬効が同じとされ、ともに鼻づまりや健胃薬として利用されてきました。 中国では開花期の全草を採取して、水洗いして日干しにします。「鼻づまりには乾燥したものを大人だと3〜5グラムを水0.3リットルで半 量に煎じて服用。健胃には5〜10グラムを水0.4リットルで半量に煎じて1日3回服用する」そうです。日本ではほぼ雑草ですが、 薬草として重宝するところもある植物です。

さらにいえば沖縄の人はニガナをよく食べるそうです。こんなレシピを見ました。

【 ニガナのツナ和え 】

○材料(2〜3人分)
ニガナ ………………… 適 量
ツナの缶詰 …………… 1 缶
みそ …………………… 適 量
米酢 …………………… 適 量
みりん ………………… 適 量

○作り方
ニガナをきれいに洗って根は捨てて2センチ程度に切って水気を取っておきます。 大きめのボールに、みそ・みりん・米酢を合わせておきます。ボールにこのニガナとツナ缶を入れ、よく混ぜ合わせ、 器に盛り付けます。

ニガナについてはすぐ知りえたのですが、面食らったのはニガナの仲間の多さ。ざっと紹介すると、

 
ハナニガナ
ハナニガナ
ハナニガナはニガナとほぼ同じところに生え、高さもおなじくらい。ニガナより花が大きく、黄色の舌状花もニガナの5個に対し7-12個と 多い。茎もニガナのように弱々しくない。晴天以外は花を開かない特徴があります。別名オオバナニガナといい、シロバナ ニガナの変種とされます。

シロバナニガナ
シロバナニガナ
さてそのシロバナニガナ。これはニガナの変種で舌状花が白色で、ニガナの5個に比べ8-11個と数が多いのと、全体にニガナより大きく 高さ40-70センチになります。

タカネニガナ
タカネニガナ
高山植物に分類されるタカネニガナ(高嶺苦菜)というのがあります。平地に生えるニガナの変種で、高山の岩場に生えます。 茎は高さ5-15センチと小型で、枝を分けます。頭花は茎の高さの割に大きく、直径2センチほど。舌状花は8-10個あり鮮やかな 黄色。日が射さないと花を開かない特性があります。

ムラサキニガナ
ムラサキニガナ
ムラサキニガナは花の色が紫色のもの。ひょろひょろした細い茎の草で葉は下の方にいくにつれ、三角状からくさび型に切れ 込んでいます。

ノニガナ
ノニガナ
さらに似たものにノニガナがあり、こちらは田んぼ道にはえる一年草で、茎の高さは15〜50センチくらい。茎の中部の葉は深く矢尻状にきざまれて茎を抱く。 舌状花は黄色。果実のできるころに下向きに花が垂れ下がるのでニガナと区別できるようです。

ジシバリ
ジシバリ
ジシバリは別名イワニガナ(岩苦菜)とかハイジシバリ(這い地縛り)といい、これも日本全国、朝鮮・中国に分布する多年草です。 細長い枝を出し子株が次々にでき、すぐ地面を覆い尽くす、その繁殖ぶりが、地面を縛っているように見えることから「地縛り」の名前が ついたものです。花期は4月から6月、たんぼの畦や土手などで黄色い花が一面に咲いています。 よく似た種にオオジシバリがありますが、ジシバリより大型で、葉がヘラ型なので区別します。

さてここまで調べたら、「いったいどこでタンポポと区別するのだ」と思うことでしょう。私など上述のように名前を知らないで いただけに、ニガナ調べからはじまったこの展開、ため息が出るばかりで、ニガナの名前を覚えるだけで精一杯です。

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【 ヤマラッキョウ(山辣韮)

ヤマラッキョウ
ヤマラッキョウというものの食べられない
ヤマラッキョウ(山辣韮)は本州福島県以南の地域に生育するユリ科の多年生草本です。やや湿潤な草原に生育することが 多いそうですが、八ヶ岳ではいたるところに見かけます。和名は鱗茎が食用のラッキョウに似ているところからついたもので、 食用になると間違いがちですが食べられません。食用にするほど大きくはならないのと、固くて食べられないのです。 また冬には地上部が枯れてしまうところもラッキョウと違うところです。

ヤマラッキョウの花
アップしたヤマラッキョウの花。
花茎は高さ30〜60センチほどです。その下部から長さ20〜40センチのネギのような円柱形の根生葉が3〜5葉互生します。 断面は三角形をしています。その葉は冬に枯れます。 茎頂に数十の花をつけ、花被片は濃紅紫色で先は丸く、おしべは花被片より長いのが特徴です。紅紫色の 花から雄しべが外に飛び出しています。 地下には球根があり、その鱗茎は長さ2〜3センチで黒い繊維の皮をかぶり、地際から数枚の細い葉を出し、夏の終わりから 秋にかけての9〜10月ごろ花茎を出して紫色の花を咲かせます。リンドウやウメバチソウと共に、山の草原の最後を飾る花の一つです。



【 ママコナ(飯子菜)

ママコナ
ママコナは夏の花

ママコナは八ヶ岳に多い花ですが、別に高山植物というほどではなく、北海道南部から九州にかけてのほぼ日本中の少し乾いた 山地で見られるゴマノハグサ科ママコナ属の1年草の半寄生植物です。半寄生植物ということは、独立して も生活出来るということですが、独立個体は背丈が低く10センチ程度で、数花付けて終わるのに対し、 宿主を得たものは、40〜60センチほどになり、多数の花や果実を結びます。

ママコナの花のアップ
ママコナの花は複雑なかたちをしている
花期は6−8月。夏に枝先に白い軟毛が密生した花穂をつけます。包葉の脇ごとに1個の紅紫色の花が開きます。 花は筒状で、長さ1.5センチほどの花を片側に穂状につけ、花の先は唇形をしています。下唇は浅く3裂し、 内面に斑紋と呼ばれる2条の隆起があります。この米つぶ状の突起が 名前のママコナの由来で、漢字で書くと「飯子菜」です。種子も米つぶにみえます。 対生する葉は、長卵形で両面に多少毛があり、先が尖っています。とげ状の鋸歯があります。

ミヤマママコナ
高山植物に入るミヤマママコナ
ママコナに似て、深山や高山に自生する高山型のミヤマママコナがあります。よく似ていますが苞は葉状でふちはなめらかなので、 とげ状の鋸歯があるママコナと区別します。花の内側の隆起が黄色く、葉っぱも少し赤みがかっています。

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【 ウスユキソウ(薄雪草)

ウスユキソウ
ウスユキソウ

ウスユキソウ(薄雪草)を見かけた人はかならず「エーデルワイス」と口にします。八ケ岳に多いのですがあまり好きな花ではありませんでした。白サビ病とかの病気にかかったイメージが先に立ってしまう私だけのクセでしょうが。

ウスユキソウの花
頭部に数個固まった
小さな丸い黄色の部分が花。

キク科のウスユキソウ属を代表する植物で、日本各地の山に見られます。この花の特徴は、小さな花の集まり(頭状花=とうじょうか)の下に星形に大きく広がって花のように見える白い綿毛(わたげ)のついた葉(星状葉=せいじょうよう、または総包葉=そうほうよう)があることです。これは葉が変化したものです。ウスユキソウの名もこの白い綿毛を積もった雪にたとえてつけられたものです。また学名の「Leontopodium」というラテン語は「ライオンの足」の意味で、綿毛のあるその花の形状たとえたものです。

乾いた草原や岩礫地に生える多年草。茎は高さ20〜50センチほどになり、茎の上部が枝分かれし花が付きます。葉は4〜6センチで披針形(ユリのように幅よりずっと長い形をした葉)です。表面は緑色だが、裏面は綿毛が密集して灰褐色。花期は場所によって違うものの 6〜10月。 植物学上の分類は、種子植物門>被子植物亜門>双子葉綱>合弁花亜綱>キキョウ目>キク科>ウスユキソウ属。 ウスユキソウ属は中国の四川、雲南、ヒマラヤを中心に約50種あり、ユーラシア大陸の東の端の日本には北海道から九州山岳地帯にかけて5種と2変種が分布しています。西方の端では、アルプスのエーデルワイス1種だけです。

日本で最も分布が広く、本州の中部から北部の山で比較的簡単に見られるのがミネウスユキソウ(峰薄雪草)で、その他の6種は、北海道の特定地域でないと見られないエゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草)=レブンウスユキソウ(礼文薄雪草)とも=やオオヒラウスユキソウ(大平薄雪草)、早池峰山の蛇門岩でしか見られないハヤチネウスユキソウ(早池峰薄雪草)、東北地方の日本海側高山でしか見られないホソバヒナウスユキソウ(細葉雛薄雪草)=ミヤマウスユキソウ(深山薄雪草)とも=、中央アルプスの高山帯でしか見られないコマウスユキソウ(駒薄雪草)=ヒメウスユキソウ(姫薄雪草)とも=などがあります。

低山帯から亜高山帯にかけて分布するウスユキソウと本州中部の高山に分布するミネウスユキソウは、本来両者は同一種ですが、高度の違いとそれに伴う環境の違いから呼び分けられています。ハヤチネウスユキソウは岩手県の早池峰山の蛇紋岩地帯の特産植物です。ホソバヒナウスユキソウは、ほかに尾瀬の至仏山と笠ガ岳、谷川岳の蛇紋岩地帯で見られます。北海道・後志(しりべし)地方の大平山に咲くオオヒラウスユキソウは最もエーデルワイスに近いとされます。

エーデルワイスの切手
エーデルワイスは
映画に歌に切手に。
「エーデルワイスの歌」を主題歌にした映画「サウンド・オブ・ミュージック」の大ヒット以来「日本のエーデルワイス」として広く知られるようになりました。
そのエーデルワイス(セイヨウウスユキソウ)ですが、ヨーロッパのピレネー、アルプス地方に自生する高山植物です。高さ5〜25センチ。花序(総苞も含めた)の形状から「アルプスの星」とも呼ばれます。かつてはヨーロッパアルプスではありふれた花でしたが、高山牧畜の発達や、清楚な美しさのために摘み取られるなどの理由で減少し、現在では自生するエーデルワイスを見つけることは難しくなっているといいます。スイスの国花ですがチロル地方などでは採取禁止種に指定されているほどです 「昔アルプスの村に絶世の美女がいたが、彼女を妻に迎えるにふさわしい男がいなかったため、ついに嫁ぐことなく世を去った。この花は乙女の生まれ変わりで、アルプスの山男や狩人がその白い花を帽子に飾るのは、最も美しい乙女を妻に迎えたいという思いを表している」という言い伝えがあります。この花を恋人に捧げるため、多くの若者が山に命を落としたので「山のローレライ」とも言われるそうです。



【 ヤマハハコ(山母子)

ヤマハハコ
ヤマハハコ

上で紹介したウスユキソウと間違えやすいものにヤマハハコがあります。これも八ケ岳にはやたら多いのですが、 見ていると多くの人はかつての私同様ウスユキソウで済ましているようです。

ヤマハハコは山地帯から高山帯の日当たりのよい草地に生える雌雄異株の多年草です。キク科ヤマハハコ属 と属が違うだけの近縁ですから間違えやすいのも仕方ありません。 雌雄異株で、雄株には両性花しか持っていないのに対し、雌株には周りに雌花、中心に両性花があります。両性花は結実しません。

ヤマハハコの分布は、北海道から中部地方以北。山地帯〜亜高山帯の日当たりの良い乾いた草地に育ちます。野辺山あたりではどこにでも見かけます。ウスユキソウとの類似点ですが、茎の高さ20〜70センチで、葉裏ともに灰白色の長い綿毛が密生しているのも似ています。 葉の幅は変化が多いものの、だいたいは狭披針形で、質が厚く三脈で、互生しています。茎の先に、散房状に たくさんの花をつけますが、白い花弁に見えるのは総包と呼ばれる花を保護する特殊な葉で、触るとカサカサしています。黄色い部分が本来の花びら。小花は淡黄色ですから遠くから見るとこれまたウスユキソウそっくりです。花期は8〜9月頃。

川原に白色の花を咲かすハハコグサ(春の七草のひとつでオギョウ)と似ていて、山に生えるのでヤマハハコの名が付いたものです。東日本はヤマハハコ、西日本はホソバノヤマハハコの名で呼ばれるそうです。ヤマホウコと呼ぶところもあります。

タカネヤハズハハコ(高嶺矢筈母子)

タカネヤハズハハコ
タカネヤハズハハコ
ヤマハハコと似ているものにタカネヤハズハハコがあります。 別名タカネウスユキソウ(高嶺薄雪草)とも呼ばれますからますます一緒にしてしまいますが、 茎の先に特徴的なカサカサの頭花を密集するものの、苞状葉がないのでウスユキソウ属とは区別され、キク科ヤマハハコ属の多年草です。咲き始めはピンクですが、日が経つにつれて白くなっていきます。

わが国の北海道と本州の早池峰山、北・南アルプスそれに中国地方の中 部に分布しています。高山帯の礫地や乾いた草地に生え、高さは4〜30センチになります。全体に白い綿毛があり、葉は白っぽく見えます。花期は7月から8月ごろ。

矢筈とは矢のおしりの弓の弦をかける部分のことで、葉に柄がなく基部が茎に直接つく様子を矢筈に見立ててこの名前があります。

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【 ツマトリソウ(褄取草)

ツマトリソウ
ツマトリソウ(飯盛山 060604)

物の端の部分を「つま」といいます。「褄・端・妻」の字を当てます。屋根の両端の三角になったところは「切妻」だし、和服の 腰から下のへりの部分も「つま」です。芸者になることを「左褄をとる」というのは、普通の女性は右手で褄を取るのに、芸者 は左手で取ることからきています。鎧(よろい)の端を別色の糸や皮で継ぎ合わせることを「つまどる」というのも同じです。 ツマトリソウの名は、がく片の先端が薄く赤みを帯びることが「つまどる」の由来のようですが、そういうツマトリソウはむしろ少な いようで、白いままの方が多いようです。

サクラソウ科ツマトリソウ属の多年草です。 形からはサクラソウの仲間というのに驚きますが、八ケ岳では次に取り上げるニホンサクラ ソウの近くに咲いているので、なるほどサクラソウの仲間かとも思います。ツマトリソウは北半球に広く分布し、日本では兵庫県氷ノ山(ひょうのせん) 以北の本州、四国 、北海道の亜高山の草地や林縁 、針葉樹林の周辺の明るい所に見られます。

茎の下部に小さな葉が互生し、茎は直立し、上部の葉は先がとがった披針形か楕円形で、輪生状につきます。草丈は5〜20センチ ほど。花期は6〜7月で、花は一見すると頂生しているように見えますが、よく見ると葉腋から花柄がでています。花の径は約1.5 センチほどの小さなもので、通常1個つき、花冠は7つに裂けています。

この七つに裂けている花が特徴で、英名の「starflower (星の花)」、ドイツ名の「Siebenstern (七つ星)」、中国名の「七弁蓮」など いずれもこの点に注目しているのに対し、日本だけ「つまとり」に注目した命名で随分と感性が違っています。すべてが7つに裂けている わけではなく6つとか8つというのも結構あるようです。

ツマトリソウの7枚の花びらは、正確にはひとつの花冠が根元まで裂けたもので、それぞれ互いに螺旋状に重なっています。 かつ雄蕊も7本でそれらと対に並んでいます。これはサクラソウ科特有の性質です。

仲間にコツマトリソウ(小褄取草)というのがあります。こちらは茎の高さは7〜10センチ。上部の葉腋から2〜3センチの花柄を 出し、直径1センチほどの白色の花を上向きに1個つけます。全体にツマトリソウより小型です。葉はツマトリソウの葉の先が とがっているのに対してやや丸みを帯び、亜高山帯の湿原に生えます。

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【 ニホンサクラソウ(日本桜草)

ニホンサクラソウ
ニホンサクラソウ(飯盛山 060604)

本来、ニホンサクラソウ(日本桜草)という和名をもつ植物は存在しません。サクラソウは日本に古くから自生しています。 花の形が桜の花に似ていることから名前がつけられました。江戸時代から日本の湿地帯などに分布する野生のサクラソウ が、花の変異に注目され観賞用として品種改良されて今では数百の品種が作出されました。サクラソウの園芸品種といった 意味が正しいようです。 八ケ岳にはこの原種があちこちに残っています。

ニホンサクラソウの学名は「Primula sieboldii」です。命名はあの長崎のシーボルトに由来します。プリムラは中国西部から チベット、ヒマラヤからヨーロッパの温帯に、約500種以上が分布、多くが高山植物の範疇に入ります。比較的湿度のある砂礫 地から湿地に自生しています。 Primulaは、ラテン語のprimus(最初)の意でこの花が早春ほかの 花に先駆けて咲く事から名つけられています。

山地や河畔の野原に群生する多年草です。葉は根元に多数集まり、楕円形でふちは浅く切れ込みます。花期は4〜5月ですが 、この辺りでは5月末から6月になります。長い花茎を直立します。花びらは5枚に見えますが、基部がくっつき五つに深く裂け た紅紫色の合弁花を数個つけます。原種の花はピンク色です。

日本原産の桜草ですが、自生地はだんだん減ってきています。八ケ岳ではハイキングコースや登山道の脇によく見かけますが、 絶滅危惧U類に分類されているほどです。



【 タマガワホトトギス(玉川杜鵑草)
ホトトギス
ホトトギス

花の名前も形もずいぶん変わっています。「ホトトギス」は花と鳥に同じ名前が付けられていることになります。まず日本を中心と したアジアに分布していて、日本でも愛好家が多く、古くから栽培されているホトトギスという花があります。右の写真のように、 白地に紫の斑点が特徴で、この斑点が鳥のホトトギスの胸に似ているところから名付けられたものです。

英名では「Japanese Toad Lily」 です。一般的なカエルを 「frog 」と呼ぶのに対して、ヒキガエル(ガマガエル)を区別して 「toad 」と呼びます。花弁がヒキガエルの足に似ていることからきたのでしょうか、それとも花の形がヒキガエルがうずくまってい るように見えたのでしょうか。また、中国では斑点を油のしみに見て「油点草」といいます。比べて日本の命名の方が断然優雅 です。

タマガワホトトギス
タマガワホトトギス(八ケ岳 090731)

八ケ岳に多いのはそのホトトギスの白地の部分が黄色になったタマガワホトトギス(玉川杜鵑草。玉川時鳥草とも表記)です。 この玉川は橘諸兄が植えたと伝えられるヤマブキの名所で、歌枕に詠まれる全国の六つの玉川、六玉川(むたまがわ) の一つ「井手の玉川」からきています。

牧野富太郎説では ホトトギスの花をそこの山吹色に例えたのだといいます。玉川のある京都府綴喜郡井手町は京都と奈良の ほぼ中間に位置し、玉川の清流は今もゲンジボタルが舞うような場所です。
名前は京都に借りていますが、生育する場所ははもっぱら亜高山〜高山です。八ケ岳のこのあたりでいうと、ロッジ付近、せせ らぎの小径あたりの岩陰で見かける花です。

タマガワホトトギスはユリ科ホトトギス(tricyrtis)属の多年草 。北海道、本州(主に日本海側)、九州の涼しい高地に分布します 。草丈は40〜80センチ。林縁や林内の湿った場所を好みますが、時には明るい岩場にも生育します。

植物体全体に毛は少なく、葉は広楕円形で互生し、長さ5〜15センチで基部がへこみ、茎を抱いています。 茎頂や上部葉腋に散房花序を出し、黄色花をつけます。花の内部には赤黄色の小さな斑点があります。

花期は7月〜8月中旬で、平らに開かず、ななめに咲きます。花には赤紫色の斑点があり、花柱(花の中央)が3つに裂けさら に二股になっています。花は2日間咲きます。

ホトトギス属の植物は19種知られていますが、いずれも東アジアに生育しています。日本には12種分布していて、この内の10 種は日本だけに生育する日本固有種です。この分布の様子から、日本はホトトギス属の分化の中心地とされています。 日本では古くから栽培されてきた日本原産の園芸植物だけに色、形さまざまな変種があります。

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【 ノコギリソウ(鋸草)

ノコギリソウ
ノコギリソウ(八ケ岳 060802)

葉がギザギザに裂けて鋸(ノコギリ)のようなところから名前が付けられています。白い花が集まって咲きます。 原産地はコーカサス地方、ヨーロッパ、アジア北東部で、北半球の温帯から寒帯に85種が広く分布しています。日本でも 本州の山地から北海道に数種類が自生しています。八ケ岳でもよく見かける夏の花ですが、だんだん危なくなってきました。

それというのもセイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)の大繁殖です。明治20年(1900)東京の小石川植物園セイヨウノコギリソウが培されたのが最初ですが繁殖力旺盛、かつ強健なため、たちまち花壇から飛び出して野生化、いまでは全国に広がって平野部といわず山といわず、見かけるのはこちらの方が圧倒的に多いのです。

植物学的にはどんなものかと説明を読むとこれがすごいのです。「茎の上方に密毛あり。茎葉は長さ6〜10cm、幅7〜15mmで裂片は半枹茎、櫛歯状に羽状深裂〜中裂、小裂片は長楕円状披針形で鋭頭・鋭鋸歯がある。 頭花は多数で密に散房状。径7〜9mm、総苞は球鐘形、有毛、舌状花は白〜淡紅色で5〜7個、花冠は長さ3.5〜4.5mm、幅2.5〜3mm。 鋸草の名は葉の形状」。専門にしている人はこれで分かるかもしれませんが、単に植物好きくらいの人がこれを読まされたら、逃げ出すこと必定でしょう。少しは分かりやすく書けないものかと思います。

拡大ノコギリソウの花
拡大したノコギリソウの花
ノコギリソウは高さ50〜100センチほどのキク科ノコギリソウ属の宿根多年草です。 日本では別名「ハゴロモソウ」(羽衣草)の名前を持っています。大きなブーケのように見えますが、よく見ると、茎の先端に散房状に非常に小さい花がかたまって咲き傘のような独特の花姿をしています。頭花は多数の筒状花とその周辺の5個の舌状花で構成されていて、繊細な花であることが分かります。花色は本来、白、黄色、ピンクくらいですが、園芸品種として栽培されているセイヨウノコギリソウはたくさんのカラフルな品種があります。

開花期は7〜9月。八ケ岳では初夏から初秋の花です。学名は「Achillea alpina」。ギリシャ神話に登場するトロイ戦争の英雄アキレスが、この葉を使ってかかとの傷を癒したことからきています。

アキレスが消毒に使ったくらいですから薬草としてノコギリソウの効用は大変顕著で、ノコギリソウの葉でも花でもいいようですが、その浸出液は、消毒・殺菌・消化・浄化・止血などに有効で、そのほか、ヨーロッパでは強壮剤として使用されていました。
・健胃・強壮・風邪
・消炎・抗炎症作用
・抗酸化作用
まさに万能薬のように扱われています。

西洋ノコギリソウはハーブの世界ではヤロウと 呼ばれ、ビタミンCと、ミネラルが豊富なので若葉をハーブサラダで食したり、ハーブテイとして健康増進や虚弱体質の改善に用いられています。花の部分は染料にもなります。一枚の葉を堆肥用の生ゴミの中に入れただけで、急速にゴミが分解される効用も知られています。 西洋ノコギリソウは変種も多く、花屋ではセイヨウアキレア、ヤロウの名前で出回っています。

北海道にはエゾノコギリソウがあって、多分、渡来植物の広がりを調べているのでしょうが、環境省の調査方法の説明に 「ノコギリソウの見分け方」というのがあったので、そのまま紹介しておきます。「葉を見くらべてみよう」、とありますから専門家もここで識別しているようです。

ノコギリソウの葉
ノコギリソウの葉
[ノコギリソウ・キタノコギリソウ]
葉が大きく深いノコギリの歯のようになっています。
セイヨウノコギリソウの葉
セイヨウノコギリソウの葉
[セイヨウノコギリソウ]
葉が細かく鳥の羽毛のように枝分かれしています。
エゾノコギリソウの葉
エゾノコギリソウの葉


[ エゾノコギリソウ]
葉のふちが、細かく浅いノコギリの歯のようになっています。

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【 ミヤマハンショウヅル(深山半鐘蔓)

ミヤマハンショウヅル
ミヤマハンショウヅル(八ケ岳 090601)

カタカナで表記するより漢字で書くと名前の由来から咲く場所まで一目瞭然です。学術書でない限り植物名をできるだけ和名か漢字で表記する方がよいと考える証左です。単なる名称表記に過ぎないカタカナと違って、漢字・和名だと「平地にはハンショウヅルというのがあり、その高山型であること。形が半鐘に似ていることからの命名であること」まで、先人が名付けるに当たって意図したことが伝わってきます。

和名の通り、本州では標高の高い場所に育ちます。 八ケ岳にもあるオキナグサと似ています。同じキンポウゲ科の植物ですが、ミヤマハンショウヅルは つる性で本州の関東・中部から北海道までの低山、山地、亜高山から高山まで成育します。 深山の針葉樹林のふちや、森林限界近くの高山のハイマツの中などに生えます。

花や葉などの形態が地域によって微妙に異なる植物です。葉柄を使って周囲の低木などによじ登るように絡みつきます。 葉は三出複葉で対生し、小葉は卵型または卵状被針形で、葉の質は薄く、ふちには荒い鋸歯があります。

カザグルマの仲間で、キンポウゲ科 センニンソウ属の植物です。センニンソウ属は日本ではカザグルマなど17種が知られています。6月から8月ごろ長い花柄を葉の間から出して、鐘形で暗紅紫色の長さ2.5〜3.5センチの大きな花を1個つけます。

ハンショウヅル
平地のハンショウヅルとは
花や葉の形が違う。

実は花に見えるのは萼で、本当の 花は筒状の内側に収まっていて外からは見えにくいです。 フェルトのような質感をした紫色の萼片の中に多数の白い細かな花弁が並んでいます。

平地にあるハンショウヅルとミヤマハンショウヅルの違いはヘラ状の花弁が多数あるところ、また葉の形が違っています。


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【 キジムシロ(雉莚)

キジムシロ
キジムシロ

  キジムシロという名前が、 花の名前としてはずいぶん変わっていますが、この花は株が円形に広がる特徴があり、これをキジが座るムシロにたとえて 「雉蓆、雉莚」の名があります。特にキジが好むということではないようです。

春〜初夏(5月〜7月)に日本中の低地・山地を問わず、また草原や丘陵地、岩地にも、日当たりのよいところによく咲いてい るバラ科の多年草です。八ヶ岳高原海の口自然郷ではヒュッテあたりに多いですが、どこでも出会えます。

キジムシロアップ
キジムシロの花アップ
茎は地面を這わず、四方に立ち上がり、長さ5〜30センチになります。葉は奇数羽状複葉(複数の葉から出来ているが1枚の 葉身から分かれたもの。葉の部分は小葉)で小葉は5〜9枚あります。根元から茎が四方に広がり、茎全体に粗い毛があり ます。花茎の先に1センチ前後の黄色い花(5花弁)をつけます。頂小葉が特に大きく、5枚の花弁は萼片よりも大きいのが 特徴です。

この花に似ている花はたくさんあり、花期が近いものとしてはミツバツチグリやオヘビイチゴなどがあり、またキンバイ系 (コキンバイやイワキンバイ)もよく似ています。キジムシロ属の植物はみな黄色の花をつけよく似ているので区別しにくいです。 茎が地面を這っていればヘビイチゴの仲間です。ミツバツチグリは3小葉が長い柄についています。オヘビイチゴは5小葉で 上部の葉は3小葉。コキンバイやイワキンバイの葉は3つに分かれています。

キジムシロと似ている花3種を続けて紹介します。



【 ミツバツチグリ(三つ葉土栗)

ミツバツチグリ
ミツバツチグリ
ミツバツチグリの 根茎は紡錘状で、焼くと栗を焼いた匂いがするので、「土栗」の名が。でも食べられません。 葉は三出複葉なので、「三つ葉土栗」というのが名前の由来です。ツチクリという植物も同属にりますが、こちらは羽状複葉 で毛が多いく、根茎は食べられます。

バラ科キジムシロ属の多年草で高さ15〜30センチほど。花期は4〜5月。葉は3小葉からなり、1〜1.5センチの黄色くよく目立つ5枚花弁の花が咲きます。 ヘビイチゴやオランダイチゴの仲間と違って花の後、花床が膨らみません。

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【 オヘビイチゴ(雄蛇苺)

オヘビイチゴ
オヘビイチゴ
  オヘビイチゴは「雄蛇苺」と書きます。 ここでの「雄」は雌雄の別があるということではなく、ヘビイチゴより大型という意味です。大を使うと「大蛇」になるので、ここは「雄」にした、とは私の解釈です。 しかもヘビイチゴ属ではなくバラ科キジムシロ属で、上の3つと同じです。

高山帯の植物ということではなく、本州・四国・九州の田の畦など少し湿った所に5〜6月ころによく生えている植物です。全体に伏毛がありヘビイチゴのよう に地をはわず斜めに立ち上がることが多いようです。小葉は茎の下部で5個、上部で3個か1個。



【 コキンバイ(小金梅)

コキンバイ
コキンバイ

深山の樹林下は暗く、あまり日がささない場所が多いですが、倒木で林がとぎれたところなどは日がさして、植物の種類も 多くなります。コキンバイ(小金梅)はこのようなところに生える植物です。5〜6月に本州中部(氷ノ山以北)から北海道の山の明るい登山道沿いなどに咲 いている小形の多年草です。亜高山帯に分布する種です。日本名の「小金梅」はキンバイソウに似ていて草体が小さいからついた名前です。

花茎は10〜20センチ。葉は根生し、葉柄は長さ5〜10センチ、3小葉で両面に毛があります。頂小葉は菱状倒卵形で浅く3裂し、 側小葉はゆがんだ卵形で2裂しています。花茎の先に直径2センチほどの卵円形か円形の黄色の5弁花を1〜3個つけます。 根茎は地中を這い先端に2〜3葉を束生します。キジムシロ属はみな似ていますが、コキンバイの小葉には欠刻(ギザギザ)が 入り鋸歯が荒い特徴があります。



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