2008年10月  課題 :稲

古代米を作る

 稲作りを試みてから、今シーズンで5回目になる。10月の初めから中旬にかけて、ミニ水田から香米、赤米、緑米、コシヒカリを収穫した。1区画は幅57センチ、奥行き32センチ、高さ22センチのプランター。それを4個並べたのが私のミニ水田で、それぞれに各品種5株の苗を育てた。まだ脱穀、精米はしていないが、1株で35グラム程度の玄米が得られるはずだ。 

 私の住む横浜市緑区のJR横浜線十日市場から隣駅の中山までの恩田川の両岸は、水田主体の農地になっている。私の水田は十日市場駅から恩田川に向かって急坂を下りたところにある。駅から5分もかからない。友人がそこで菜園をやっていて、その隅に4つのプランターを置かせてもらっている。菜園の横を農業用水路が流れていて、バケツで水をくみ上げて稲を育てる。

 初めてプランター稲を育てたのは2003年。恩田川沿いの水田の隅にあった余分の苗をもらってきて自宅の庭で育てたが、日当たりが悪くてうまく実らなかった。翌年はタイミングよく苗が入手できなかったので中止。2005年、ネット経由で古代米の籾を入手できたので再開した。黒米、赤米、緑米、香米の4種だ。稲作りには日照が鍵とわかっていたので、菜園の片隅にプランターを移動した。籾を発芽させ、苗を育て、1つのプランターに8株(1株3〜4本の苗)ずつ植えた。順調に生育し、夏の終わりには出穂した。ところが、稲穂に実が入ってこなかった。蜜植が原因と思われた。刈り取った後で、プランターの土を出してみたら、縦横に細かい根が絡み合って、土が固まっていた。

 次の年はプランターあたり5株に減らした。今度は秋に念願の自作古代米を収穫できた。黒米、赤米、緑米、香米、それぞれ玄米を一握り白米に混ぜて炊く。黒米と赤米は、ご飯全体がそれぞれ赤紫とピンク色に染まる。香米は白米であるが、ご飯の香りが強化される。緑米はご飯全体の色が変わることはなく、一粒一粒が薄い緑を保っている。

 翌2007年は、種籾も前年収穫したものを用いた。黒米は背丈が150センチにもなり、倒壊しやすく、また穂から稲粒が落ちやすい。それで作るのをやめた。今年は魚沼コシヒカリの籾も入手できたので一緒に作ってみた。

 田植え後や出穂期には水を切らせないので、毎日のように水をやる。それ以外は特に注意しなくても稲は育つ。病害も虫害もないので完全無農薬。途中で1回配合肥料をやっただけだ。赤米、緑米、香米と比べて、コシヒカリは背丈が低かった。そして出穂は一番早かった。こうした特徴は栽培上有利だ。コシヒカリが野生種に近い赤米などと違って、人手により育種されてきた品種であることがよくわかる。ただ、私の作ったコシヒカリは、古代米に比べて稲穂の充実が劣っていた。古代米と違って肥料や水やりなどもっと細心の管理が必要だったかも知れない。

 稲の出穂は劇的だ。数時間で一気に穂が出てくる。出穂間近になると茎の先端がふくらんでくるのに今年初めて気が付いた。指で触れてみるとふくらみの下に将来米粒になる一粒一粒が感じられる。私は妊娠してふくらみ始めた妻のお腹を撫でるように、そのふくらみを撫でた。


補足
 初めての稲作りはエッセイ「稲作り日記2003」を見て下さい。
 その他稲に関しては「稲の夫」「光合成の音」にも書いています

手前中央 赤米 左 緑米 右 コシヒカリ



 収穫間近の赤米の稲穂



恩田川沿いの水田と案山子 残したい風景


                         2008-10-29 up      
エッセイ目次へ