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2026年1月 課題:流星
神話に遊ぶ俳句
私の属する俳句結社天為には、各国の神話を題材にして俳句を作るグループがある。ギリシャ神話から始まり、メソポタミア、中国、ケルトと進み現在は北欧神話を取り上げている。メールによる句会で、各神話ごとにテキストブックが決められ、一柱の神または人物について、各自2句投句、選句1句。最初のギリシャ神話では百柱の神と人物について、毎月五柱を対象とし、終了までに20ヶ月かかった。参加人員は30数名で、一柱の神に対して70句近くの投句があり、その中から互選は1句を選ぶ。
作句でもっとも苦労したのは、季語を選ぶこと。例えばアテナはゼウスの頭から完全武装した形で生まれたとか、双子の兄弟の一方の父が神様で、他方が人間の王だとか、荒唐無稽な話に満ちている。季語として「四月馬鹿」を置けば一句が成り立つ。例えば
違ふ父持つてふ双子四月馬鹿
しかし「四月馬鹿」だけ使うわけにもいかないので、歳時記の索引欄を最初から最後まで当たったことが何回もある。それはそれで良い勉強にはなったが。
ギリシャ神話は終盤はトロイア戦争の話になる。トロイアの物語に登場するのは生身の人間で、エピソードもそれほど荒唐無稽ではない。何よりも不死の神と違って死ぬ運命にある。英雄の死に「星流る」を季語とした投句が見られるようになった。一瞬の光を放ち消えて行く流星。英雄の死にはふさわしい。
稚児の死に深き傷心星流る
親友パトロクロスの死を嘆き悲しんだギリシャの英雄アキレウスを詠んだ句。選者選の5句に入った。稚児とは同性愛の相手。古代ギリシャでは同性愛は美徳として許容されていた。二人はそういう関係にあったから、アキレウスの悲しみは深かった。怒りに燃えたアキレウスはその後、パトロクロスを討ったトロイアの大将ヘクトールを一騎打ちで倒し、敵を取る。そのアキレウスも弱点のアキレス腱を射抜かれて死ぬ。『イーリアス』でも有名なエピソード。
中国神話では神様よりも歴史上の人物が多い。孔子、始皇帝、項羽、関羽、楊貴妃など。
渾身の一擲外れ星流る
これは荊軻を詠んだ。荊軻は中国の戦国時代に、刺客として秦の始皇帝を襲ったが、露見し、始皇帝に向かって短刀を投げつけるも外れてその場で殺された。
四方より起こる楚の歌星流る
秦を亡ぼした後、漢の劉邦と対立し、垓下に包囲されて最後をむかえた項羽を詠んだ。四面楚歌の由来となったエピソード。
神話俳句も9年目に入った。毎月舌をかみそうな名の異教の神々と向き合い苦吟の連続だが、突拍子もない話に、想像力を遊ばせるのは楽しくもある。
補足:各神話で用いたテキスト
ギリシャ:ギリシャ・ローマ神話人物記
メソポタミア:ゼロからわかるメソポタミア神話
ケルト:ゼロからわかるケルト神話とアーサー王伝説
中国:ゼロからわかる中国神話・伝説
2026-01-21 up
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