山梨県の北部山岳地帯を縫って、八ヶ岳から勝沼方面に抜ける道路がある。 |
クリスタルラインというのがあることを知ったのは、2000年の夏だった。清里(現 山梨県北杜市高根町清里)の国道141号から同県牧丘町(現 山梨市牧丘町)の国道140号まで、
県道、林道、農道、町道の計20路線をつなげて全長は68.1キロメートルもある。
ほとんど1000メートル以上の高度を走っていて、道幅は狭いが、すべて舗装されているので、
普通の乗用車でもらくに走れる観光道路だ。ただし、毎年12月10日から翌年の4月25日まで
冬期間閉鎖になる。
クリスタルラインが走っている場所の概略図 | 地図の標識。 ビューポイントは開いている方角に絶景がある。 四角は案内板の設置場所。 |
八ヶ岳から数えれば、瑞牆山(みずがきやま=2230メートル)、金峰山(きんぷさん=2599メートル)、
甲武信岳(こぶしだけ=2483メートル)と深田久弥の日本百名山のうち4つの山ふところを縫うように走るわけで、
眺望がいいことは容易に想像できる。
さっそく、その年の秋にチャレンジした。だが、瑞牆山登山口の先が、がけ崩れで引き返した。
2001年6月再度試みたが、全行程のおよそ半分行ったところで、今度は路肩が削れて通行止めになっていた。
全線走れたのは7月も終わりのころだった。この経験から、ガイドがないと走れないことを痛感したので、ルートを紹介する。
以下は八ヶ岳側から走った場合の説明である。
まず、クリスタルラインへの入り口がわかりにくい。
[清里→(林道高須線)]
野辺山から国道141号を下りて行くと、清里を過ぎてまもなく、「←津金(605)」と県道を示す標識が出てくる。左側にJAのガソリンスタンドがあるところだ。2001年春まで日石のスタンドだったから、こちらのほうが一般に通りがいいのだが、これを左折する。この標識と同じところに、クリスタルラインの標識もあるのだが小さくて見落としやすい。曲がってすぐ右手に清里小学校がある。
道なりに谷に下りて上がったところに、「北甲斐亭」という蕎麦屋がある。過疎対策でこの集落の人たちが補助金を得て最近建てたもので、もりソバ600円と、妥当かつおいしいから「来た甲斐」はある。ここから先はろくに食べるところもなくなるので立ち寄るとよい。地区でとれた野菜の即売所も併設されている。
「北甲斐亭」の先、数十メートルで直角の曲がり角がある。クリスタルラインの表示がある左に進む。 すぐ先に、川があり、橋がかかっている場所に出る(左の写真)。右へ直角に曲がるのは須玉の方へ下りる道。左の 山の方へ登る道がクリスタルラインの入り口だ。写真にも写っているが小さく案内板が出ている。
標識どおり右折して、少し行くと、「これより高須林道」というオレンジ色というか黄土色の看板が出てくる(上の写真右)。この色はクリスタルラインのシンボルカラーになっていて、全線これで統一されている。
ややこしいのはここまでで、あとはそう難しくない。
[(高須林道)→(増富ラジュウムライン)→黒森]
高須林道をしばらく行く。「黒森方面へ10キロ」の表示に続いて、「直進、黒森 右塩川」を示す標識が出てくる。まっすぐの黒森の方にを選ぶ。やがて「小尾(obi)」の標識
の前の二股にあたる。右下の方に下がる狭い道を取る。心細いほどのあぜみち風の農道で右に川が流れている。
行くのをためらうほどの細さだが、かまわず、あぜ道を進むと、すぐに大きなT字路にあたる(写真左)。「左黒森、右塩川」とあり、角に「←岩屋殿」の看板がある。
左の方の信州峠から須玉に至る「増富ラジウムライン」で、これを左に上っていく。
[黒森→瑞牆山荘]
そば屋「森の水車」前を過ぎてすぐに「→みずがきグリーンロッジ」などの標識が出てくる。行けな
いことはないが、集落の中に入ってしまうので、もう少し先まで走る。2001年5月に瑞牆山で両陛下が出席されて全国植樹祭が開かれたので、広い道路ができたのである。
増富ラジウムラインを上がっていくと、すぐに下の写真左の場所に出る。「県道610号」と、「直進、川上、信州峠。右、瑞牆山」を示す二つの標識が出ている。この場所は信州峠のすぐ手前にあたる。クリスタルライン
にこだわったから、途中を詳述したが、野辺山から川上村を抜けて直接ここに来てもいいわけだ。これを右折する。
丸太風のガードレールが続くすばらしく整備された道を行くと、やがて「瑞牆山荘」に出る(上の写真右)。百名山への登り口で、登山客用のバスも入っているので、このあたりまで人もけっこう多い。清里から入ってきて、ここまでの所要時間はざっと50分。
[瑞牆山荘→(本谷釜瀬林道)→金山平]
クリスタルラインは、山荘の前をそのまままっすぐ行くが、がたっと人もクルマも減る。やがて金山平キャンプ場を通過する。昔の金山の跡だという。このあたりは「本谷釜瀬林道」というのだが、
ここから先は、いま自分がなんという林道を走っているか、わかっていないと脇にそれてしまうから注意している必要がある。
[金山平→(観音峠大野山林道)→木賊峠]
やがてちょっと大きなT字路にあたる。手前に左の写真のような標識がある。右は増富温泉への道だ。左の「観音峠大野山林道」へ入る。この先、瑞牆山が見え隠れして展望がいい。途中右の方が立派な道があるが、迷わず直進する。
すぐ林道のT字路にあたる。その手前に「左、乙女高原・黒平 右、竜王・敷島」の標識がかかっている。(下の写真左)
ここが木賊峠(とくさとうげ)で、カラーのクリスタルライン全図の案内板があり休憩所もある。後日、富士山が見えたが意外に大きいのに驚いた。瑞牆山荘からここまでざっと20分ほど。
さて、ここでトクサの話。「木賊」をトクサと読める人は少ないだろう。途中の標識に「tokusa pass」とあるから、読めたとしても、なんだろうと思う。近くに木賊山があるからそちらからの命名だが、
トクサそのものを知る人はさらに少ないと思う。でも、いつか水辺などで見かけたはずの植物だ。
左の写真がトクサだ。きっと、この付近に多かったのだろう。砥草とも書き、細工物を磨くのに使ったシダ植物だ。紙やすりなどでは、
どんなに細かいものを使ってもささくれてしまう。ところが、トクサで砥ぐとささくれができない。信州ではソバの麺棒を磨くのに使う。
[木賊峠→(池の平林道)→(御岳林道)→黒平]
話がそれたが、ここから先のガイドに戻る。峠からは、標識にしたがって、左の黒平(くろべら)の方向に進む。「池の平林道」で、道は細い。しばらく行くと「これより甲府市」の看板。
このあたりからは「御岳林道」になる。けっこう険しい崖沿いなので、常に対向車にそなえて待避場所を考えながら走る。
うねうねと走るうち、猫の額ほどの、山中の三叉路に出る。(写真左) 左手にカラーのクリスタルライン全図の案内板がある。この先が黒平で、右角に山野草専門の御岳園芸センターというのがある。 瑞牆山荘から40分ほどの行程だ。
[黒平→(荒川林道)→乙女高原]
クリスタルラインは、ここをほとんどUターンするようにして、乙女高原方向の標識がある「荒川林道」に入って行く。
2001年6月下旬は路肩崩壊で通行止めになっていて、この先を断念した。ここまででクリスタルラインの半分というところか。木賊峠から20分、清里からざっと1時間30分。
ここから直進すると昇仙峡だった。甲府まで出るのに1時間以上かかった。いかに山奥の道を走っていたか実感した。
その後何度も通行止めに会い、やっと全線走破できたのは7月22日だった。「荒川林道」が数日前に開通したのを甲府林務事務所で確認して出かけたのだ。走ってみて驚いたのは、さらに登りにかかることだ。
道路は狭く、左側は千尋の谷だ。とても景色を堪能する余裕はないが、谷の向うに百名山の金峰山が手の届くような距離に見え隠れする、すばらしい山岳風景が展開した。秋はさらに見事な紅葉が見られるに違いない。
「荒川林道」に入って20分ほどで「柄沢恩賜林」の標識が出てくる。このあたりが、展望台になっているので、クルマをやすめて奥秩父の山並みを見るとよい。このさきにそうした展望台はない。
ここを通過してすぐ巨大な送電線の下をくぐる。走るのも大変な山の中にどうして建設したのか、今走っている林道がその工事用の道路なのかと考えているうちに「これより牧丘町」の表示がでてくる。もうクリスタルラインは
おしまいかと思うが、なにまだまだ先だ。
やがて大きな標識が出てくる。(写真左) 「直進・荒川林道 金峰牧場、焼山峠」「右・水ケ森林道 積翠寺、帯那山(おびなやま)」が図示されている。左の焼山峠の方へ。
すぐ先で広い高原に出る。このあたりが乙女高原で、ロッジやお花畑がある。散策用の遊歩道もある。黒平からこの乙女高原まで30分ほど。
[乙女高原→焼山峠]
乙女高原(1520b)から数分走ると、左下の写真のような標識が出てくる。すぐ先に小さなロータリー風の場所がある。例の案内板やトイレが設置されている。焼山峠である。
ここはちょっとした交通の要所で、ここから北にルートを取ると、金峰温泉から国師ケ岳の横、大弛峠(おおだるみとうげ)を通って、川上村(つまり我々のいる南牧村の隣り)に出る「川上牧丘林道」(クリスタルラインもその一部)が通っている。
1年後、逆に川上村からこの悪路を登ってきた。いやはや、聞きしに勝る悪路で4WDでも時速20キロほどでしか走れなかった。途中で乗用車3台ほどとすれ違ったが、ドライバーの顔が気のせいかみな引きつっていた。車体の下を何度も擦ったに違いない。すごいのは川上村から大弛峠までであとはほとんど舗装されている。
この1週間後、皇太子殿下が山梨側から大弛峠までクルマで上がり国師ケ岳(2592b)登山を楽しまれたとニュースに出ていたが、これが正解ルートで、逆はやめたほうがよい。
[焼山峠→(杣口林道)→牧丘町]
焼山峠からのルートだが、”正式”のクリスタルラインは、いったん北に上がり琴川ダム(平成20年完成予定)を迂回して林道杣口線を、琴川の流れに添って小鳥山のすそを通り牧丘町に出る。しかし、毎度時間がなくなり、「林道川上牧丘線」を一気に下り、鼓川温泉に寄ったりして、勝沼に抜けているので、正式な方の案内は後日にしたい。
広い舗装道路を走るとやがて国道140号に出る。(写真左) 信号の下に「牧丘トンネル南」の看板が下がっている。左が雁坂トンネル、右が甲府・塩山で「雁坂みち」 の別名がついている。右角にJAのガソリンスタンドがある。清里の入り口もJAのスタンドだった。クリスタルラインの両端がJAのガソリンスタンドというワケだ。荒川林道に入ってから、ここまでざっと1時間。清里の入り口から 2時間半がクリスタルライン全線の走行時間ということになる。
クリスタルラインの終点が牧丘町になっているが、これは暫定だ。やがて三富村(みとみむら)に伸びる。計画では、「杣口林道」の途中から「塩平徳和林道」「徳和林道」「乾徳山林道」(いずれも現在工事中)とつなぎ、廣瀬ダムのそばから名勝、西沢渓谷に抜け、 雁坂トンネルの手前に出る。平成17年に山梨市、牧丘町、三富村が合併して新「山梨市」になったので、正式にはクリスタルラインの終点は山梨市ということになるのだろう。
国道140号は別名「秩父往還」とも呼ばれるとおり、秩父に抜ける。クリスタルラインというのは気宇壮大な山岳観光道路なのだ。しかも、完成までそう遠くないようだ。開通したらまた紹介したい。
途中から見える瑞牆山の奇岩(パンフレットから) |
クリスタルラインは沿線の市町村で「クリスタルライン整備促進協議会」をつくっている。この周辺は平成の大合併で大幅な統合があり、それまでクリスタルラインを管理していた町や村がみな市になった。2006年8月、行政区域変更にあわせて非常に詳細な観光地図ができた。上に紹介したものだが、希望者には下記の場所で配布している。
私の例をみてもわかるとおり、山岳道路なので大雨などの悪天候があると落石、崩落などでよく通行止めになる。しかし、いまどこが通行止めになっているか一か所で把握しているところは少ない。下記の市役所か林務環境事務所に問い合わせるしかないが、路線が長い甲府市役所で比較的全体が分かる。
甲府市役所北部振興課 п@055-237−1161
山梨市役所観光課 п@0553−39−2121
甲斐市役所商工観光課 п@0551−20−3654
北杜市役所観光課 п@0551−42−1351
中北林務環境事務所 п@0551−23−3096
峡東林務環境事務所 п@0553−20−2727