いったん八ヶ岳に上がってしまえば、うまいものを食べようなどという気は起きない。何を隠そう、疎開世代である。 雑炊も、焦げた匂いの脱脂粉乳の給食も、 「青い顔してなんば粉食べて・・」と歌われ、水と一緒でないとのどを通らない トウモロコシの粉で焼いたパンのぱさぱさも体験済みだ。

習い性になって、その時あ るものでいいと思っている。 十数年そうしてきたが、慣れてくると近在にそこそこおいしい店があることに気づいた。

まずいことに、この飢餓世代の特徴としてDNAに美味求眞への欲求が擦り込まれている。欠落した時代に食べ損なったうまいものを食べないと死に切れない というところがある。

だが「贅沢は敵だ!」という強迫観念も持ち合わせているため、折り合いとして「B級グルメ」 で満足するところがある。 「B級グルメ」というのは「安くて、そこそこうまい」ということの代名詞である。


B級グルメ  menu
長野県・諏訪市 富士見町
うなぎ 「古畑」 そば処 「おっこと亭」

長野県・飯田市
うなぎ 「丸井亭」

長野県・佐久市
ローストチキン 「 瀬川 」 そば 「職人館」 ラーメン 「くれしづき」 ケーキ店 「Aimer」(エメ)

長野県南佐久郡・小海町
パイの店 「敷島屋」

山梨県・北杜市小淵沢町
うなぎ 「井筒屋」

山梨県・清里、北杜市長坂町、甲斐大泉
うなぎ 「Blowin' in the wind」(旧そば屋「北甲斐亭」変身して)  そば 「草五庵」(ご主人急死で閉店中) そば処 「三分一」
上海家庭料理 「安晏」(あんあん) カレー「ヴィラ・アフガン」(Villa Afghan)

山梨県・韮崎市
フランス料理 「キュイエット」 そば 「瓢亭」

山梨県・甲府市
支那そば 「蓬莱軒」
甲府鳥もつ煮 「奥藤」

静岡県・静岡市 三島市
うなぎ  「石橋」 うなぎ 「桜屋」 うなぎ 「水泉園」
うなぎ  「元祖 うなよし」 うなぎ 「本町 うなよし」

ぐるめ 3考

ラーメン考                   「支那そば」へのこだわり

蕎麦(そば)考                信州ではそばを食べるべし

うなぎ(鰻)考                 つかみ所のない話

 




カーナビの入力に必要な郵便番号、住所、電話は
屋号の下にまとめてあります。

諏訪湖

我々がいる八ヶ岳の東麓から諏訪湖は比較的近い。しかし、八ヶ岳周辺のほかのところより足が向かないのは、結構時間がかかるからだ。諏訪湖を囲んで岡谷市、下諏訪町、諏訪市と三つの行政区域が並んでいる。古い町だけにB級グルメの渋い店が多いし、いい温泉が湧き出しているので、いったん足が向くとえらく忙しいことになる。

うなぎ 「古畑」 
〒392-0027 長野県諏訪市湖岸通り5-15-3   
TEL 0266-52-1167  FAX 0266-52-1762
古畑
諏訪湖岸まで数十メートルの「古畑」

岡谷、諏訪周辺にはうなぎの名店が多い理由は小淵沢の「井筒屋」のところで書いた。諏訪湖周辺では値段といい味といいこの「古畑」がおすすめだ。最初に訪れた2005年の時点での値段のままだいぶ経過したので2023年版を以下に紹介する。

創業80年ほどだが、うなぎ専門になったのは現在の店主の代から。長野は九州と並んで馬刺し文化圏だがここもメニューに「馬刺し 1650円」というのが残っていたりする。川海老もある。

うなぎは一度蒸してからふっくらと焼く関東風。店のHPに「創業当時から変わらぬつくりかた。注ぎ足して使われてきたタレは、甘すぎず、うなぎの風味を生かしつつご飯にも適度に絡む美味しさです」とある。看板に備長炭焼きをわざわざ掲げているほど。米もそうで安曇野産と魚沼産のコシヒカリをブレンドしたものを使っている。


古畑
店で一番安いうな重の「松」は鰻3切れ
ここの定番「うな重」(吸い物付き)は松竹梅など4種あるが、世間と違い「松」が一番安い。

松(鰻3切)   3,300円 
竹(鰻4切)   4,200円 
梅(鰻5切)   4,700円 
特梅(鰻6切)   5,800円

うなぎの蒲焼き、白焼きがともに3,100円。肝焼、うざく、う巻きもある。

古畑
古畑の店内

※繁忙期(7月〜9月の諏訪湖新作花火大会が終わるまで)は、予約制は取ってなくて来店順。しかし席数55席(1階 35席、2階 20席)もあるのですこし待てば入れる。

・店のホームページhttp://www.unagi-furuhata.com
【 営 業 】
営業時間 11:30〜13:50 17:00〜19:50
休業日 水曜日(月1で連休あり)
【 アクセス 】
・上諏訪駅から徒歩数分の住宅街の中の細い通り。 ・7台ほど入る駐車場あり(店舗前には4台)。

そば 「おっこと亭」 
〒399-0213  長野県諏訪郡富士見町乙事3777-3
電話 0266-62-7188
町営のそば屋「おっこと亭」

サイトの亭主のいる長野県南牧村から行くと、ぐるっと八ケ岳の南麓を「鉢巻道路」に沿って回り込んだ、ほとんど反対側になる。小淵沢の少し手前で右(北側)に回ると原村とか富士 見町という一帯に出る。富士見高原は我が国の結核との闘いでサナトリウム( sanatorium)発祥の地といってもいいところで多くの文人墨客がここで闘病生活を送った。

「おっこと亭」はその高原の一角にある。2016年夏、ここにあるヴァイオリンづくりの工房を訪ねての帰路立ち寄った。そば好きの人にはつとのその名を知られているところである。

標高千メートル前後の高冷地で作られた100%地元産玄そば使用。ゆで上がったそばを八ヶ岳の湧き水で一気に冷やすため、歯ごたえ強いコシのあるそばに仕上がる、というのが売り。そ ばの種は八ヶ岳西麓しなの1号 100%地元産『玄そば』で 1年を通して12℃に管理し、予約状況で週1〜2回製粉している。少し離れたところにはそば道場もある。

きりだめ
3人目からお得なきりだめそば
メニューを見ると、ざるそば950円、もりそば890円、かけそば950円、きのこそば・山菜そば1160円、10割もりそば1570円(要予約)、かき揚げ天ぷらそば(冬季限定)1160円などがあるが、 店のおすすめは、 「きりだめそば」(もりそば。2人前から1780円、3人前2610円(1人前870円)。3人前からは安くなるということ。「きりだめ」というのは、そばを打ち、そばきりに したとき並べておいた入れ物のこと。そばをこれに入れてそのまま出す。

『朝採りきゅうりの食べ放題!』がここの名物で、近在で採れたキュウリを切ったものと味噌がテーブルに並んでいるので、そばと一緒に味噌をつけて食べるが、新鮮でおいしい。座席数80ほどあるがシーズン には行列が。

店名の「おっこと」というのは、このあたりの地名「乙事村」(おっことむら)からきている。一帯は戦国時代に度々戦場となった地域で、この付近でも何度か戦闘が行われた。中でも 天正十年(1582)徳川家康と北条氏直がこの辺りで対陣したことはよく知られており、「徳川家忠日記」には「(八月)三日戊子、おつこつ迄出陣はり候」と記されている。中世来 の有力な土豪であった五味氏は、はじめ武田氏に仕えたが、同氏の衰運とともに乙事に身を引いて住居した。その後徳川氏が諏訪に進出するとこれに仕え、家康の関東入国に従った。 この際、姓を乙骨と改めており、乙骨氏は代々旗本として幕府に出仕している。

「乙事」というと宮崎駿監督の「もののけ姫 」に登場するイノシシの親分「乙事主 」として出てくる。宮崎駿監督の山荘がすぐ近くにあることから、この地名を登場人物につけたようだ。 このほか、近くには「烏帽子」(えぼし)という小字もある、これまた、作品では「エボシ御前」として「もののけ姫に」登場、また乙事村の「小六新田」や県境の「甲六川」、そして きのこのハナイグチの地方名「ジコボウ」までジコ坊として登場 するなど「もののけ姫 」ゆかりの土地でもある。

ホームページ「おっこと亭」がある。


【 営 業 】
営業時間 10:00〜17:00 夏季7・8・9月は18時まで 冬季12・1・2月は15時まで
定休日 木曜日。 5月〜10月無休。11月〜翌4月 木曜日(木曜日が祝日の場合は前日水曜日)
【 アクセス 】
・(1)小淵沢ICから車で15分 (2)諏訪南ICから車で13分 (3)JR中央本線富士見からタクシーで15分の場所だが、ほとんどの人はマイカーだろう。カーナビには住所でも電話でも入る。
・80台ほど入る駐車場あり。

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飯田市

諏訪湖があるので諏訪、岡谷のうなぎはうまいと書いたが、同じ理屈でそこから流れ出る天竜川流域の伊那谷はうなぎの名店が多いということ になる。この店は2007年4月、飯田へ桜の名木10数本を見に行ったときに知った。

うなぎ 「丸井亭」 
〒395-0045 長野県飯田市知久町4-1226   
TEL 0265-22-0349  
桜を見に行ったらおすすめ「丸井亭」

2007年4月8日、早朝から桜を求めてこの町の市内や近郊を走り回っているうちにお昼時になった (記事はこちらに)。新聞記者生活で身に着けた知恵で、こういう時は 町の観光案内所か、役所の観光課に飛び込むことにしている。さらに高等テクニックとして秘書課に紹介を頼むときもある。

なぜなら、こうした行政の部署は 町の穴場にしろ旨い処にしろ町の隅々まで通じているうえ、VIP接待などで使っているから、味や値段から経営者のことまでよく知っている。こちらの 人品骨柄(たいしたことないが)まで判断したうえで、たちどころに店の名前を教えてもらえるものなのだ。

「うなぎか蕎麦を食べたい」と言うと案の定「飯田ならうなぎがいいでしょう。(こちらがクルマで来ている事を判断した上で)ここは歩いても行けますが駐 車場もあります。遠くから来る人もいるくらいの店です」と駅前の観光案内所から即座に答えが返ってきた。

必要な情報、つまり、飯田では「そばよりうなぎがいい」、「駐車場あり」、「味は第三者も保証」、という知りたいことがみな入っている。値段が 入っていないが、気にするほどではないですよということも言外に含んでいる。手馴れたものだが、全国どこに行ってもだいたいこうして即答が得られ ることは経験ずみだ。「お口に合うかどうかわかりませんが」というセリフがあればもう言うことがない完璧さだ。味と言うのは好みに個人差がある ことだから。

「丸井亭」に着いたのは午後1時過ぎだったがそれでも客席6テーブル、24席ほぼ満員。ということは、かなり地元の名店で客が多いということを意味しているので一安心だ。 店先には行列用にベンチまで用意されていた。うなぎ選別用の大きな使い古したざるやうなぎを入れるらしい甕(かめ)も並べてあって古くからの店な のがわかる。注文する前に味から値段まですっかり信用していた。別な入り口から2階があり座敷があるようだが、こちらのような飛び込み客には関係ないので触れない。

写真のうな重は3200円

「当店は青鰻を使い、備長炭と秘伝のたれに2度漬けして団扇であおぐ昔ながらの方法で焼き上げています」とあった。「うなぎ釜めし」(1750円)、「うなぎ丼」(1700円)などもあるが、私はどこでも「うな重」に している。この店では吸い物つきで、2200円、2500円、3200円の3種類。一番安いものを取ったが、背開きの関東風のさばき方で質量とも十分でおい しかった。うなぎの量が多い分で値段が違うようだ。この店はホームページもあり、 自分でも撮影したが出来が悪いので、掲載した写真はそちらからの拝借。

【 営 業 】
営業時間 11:00〜14:30 16:30〜21:00
定休日 木曜日
【 アクセス 】
・JR飯田駅から徒歩5分の幹線道路沿いにある。
・中央道飯田ICからクルマで10分ほど。
・5台入る駐車場あり。

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小淵沢

小淵沢(こぶちざわ)というと我が家の娘たちは、野辺山に行くために中央線から小海線へ乗り換える駅、くらいにしか思っていないが、一帯に人が住み始めるようになったのは約1万年も前からだ。60カ所以上の遺跡が 証明しているように、約4千万年前の縄文時代にはすでに多くの人々が生活していた”先進地帯”だ。加えて、武田信玄が棒の道を通って京に向かった古くからの交通の要所でもあり、交流によって「B級グルメ」が発達しておかしくないところなのだ。

うなぎ 「井筒屋」 
〒408-0044 山梨県北杜市(旧、北巨摩郡)小淵沢町1035  
電話 0551-36-5990

井筒屋
「井筒屋」の構え
この店は八ヶ岳に山小舎を構えて10数年たったころこの項で取り上げた。その後また10余年、シラスウナギの高騰や店のリニューアルで状況が変わったので2023年書き換えることにした。

諏訪湖があるので昔から諏訪、岡谷あたりは鰻が名物である。しかし小淵沢にうなぎの名店があるとは知らなかった。我が山墅から4,50分かかるのだが、某日店先に並んだ。

室内
「井筒屋」室内。リニューアルで北欧の家具に
ごらんのような櫺子(れんじ=連子)格子の建物で、これがうなぎ屋にぴったりの雰囲気だが、 この建物は、戦前の昭和2年(1927)建てられ、旅館だったときもあるようだが、戦後、和菓子屋として営業していた。その子孫が平成8年(1996)年7月にうなぎと天ぷらの店を始めた。店の名前も和菓子屋のときの屋号で。中は、10畳ほどの座敷が二つと、8畳部屋。磨き込まれた太い柱や長押、ガラス障子や電灯の傘まで、昔のままで。平成26年(2014年2月、北欧のアンティーク家具を入れテーブル、椅子席にリニューアル、令和3年(2021)10月AGED EEL(熟成のうなぎ)専門店としてリニューアルオープンした。

といっても、こだわりは以前と同じ。

米は同じ北杜市の武川町で取れる武川米だ。我が家も八ケ岳では武川米を使っているが、その昔、旨さは江戸にまでとどいていたという。南アルプスの雪解け水が米作りに最適な土壌をつくっているといい、食味・艶・粘りが最高という評がある。同感である。

出汁(だし)は北海道南茅部産の真昆布と築地から仕入れた血合い抜きをした特上削りの鰹節を使用。「澄んだ昆布と風味溢れた鰹の出汁です」と店の案内にある。

同じ案内に「タレは減った分を少しづつ足しながら万年地といわれるように延々と使い続けます。鰻の脂肪、炭の灰が入ってたんぱく質が乳化するため丸みのある味が熟成されます。タレはうなぎ屋の命です」とある。

水は八ケ岳の火山砂礫と溶岩流の中を通ってきた水を地下60メートルから汲み上げ、硬度50度前後のミネラルを含んだ硬水だ。

 「熟成の鰻」を売り物にしている。どういうものかというと「本来の鰻の調理工程に『熟成』を加え、素材本来の深いコクのある旨味を引き出す調理法だそうで、川はゼラチン質が増し、活鰻独特の匂いがなくなり、魚本来の旨味が増し、皮はパリッと香ばしく、身はしっとりした食感に仕上がります」とこれも店のガイドブック。

諏訪地方のうなぎは特有の甘さがあるのだが、近年諏訪湖周辺では営業用に使うほどは取れなくなった。一時は静岡・富士吉田から毎日直送されていたが、さらに稚魚の不漁や絶滅危惧種指定により仕入れが難しくなり今では国産鰻のほか輸入鰻を使用していると正直に告白している。

当日使用しているうなぎの産地を表示しているが、その日のうちに地下水で身をしめ、備長炭で焼く。、ここのは関東と同じで、蒸してから焼いたもの。

以前は天ぷらや天丼、地鶏の塩焼き、うな茶に湯豆腐まであったが現在は下記のように絞ったメニュー。

室内
「熟成竹めし 二のう
室内
「熟成重箱」

「熟成竹めし」  (税込み 5720円)
  熟成の鰻が自家製の竹の器に入って出てくる。香の物、吸い物付き。

「熟成竹めし 二のう」」  (税込み 5720円)
  「のう」というのは「嚢」、つまり「入れ物」「袋」のことで、ここではうなぎの蒲焼と白焼きの2つが竹の器で入って出てくる。

「熟成かめ塩のうなぎ」  (税込み 4950円)
  この店は「かめ塩の鰻」が売り物。うなぎの白焼きで、レモンを搾り、これをわさびと自然塩で食べる。

「熟成重箱」  (税込み 4950円)
  自家製のタレを三度漬けしたうな重である。

「熟成小どんぶり」  (税込み 2750円)
  うなぎ蒲焼を半身サイズにしたどんぶり。

「炭火焼き親子どんぶり」  (税込み 2200円)
  炭火焼きの鶏にタマゴとごぼうをあわせたもの。

一品料理として肝煮、う巻き、うざく、茶碗蒸し、湯豆腐、味噌こんにゃくなどがある。

予約は1か月前から受付、電話・FAXまたはオンラインがある。
予約していてもその時間に店先にいないとキャンセル扱いになる。
ホームページ  https://www.itutuya.com/

【 営 業 】
営業時間 昼の部 11:00〜14:00
夜の部 17:00〜19:30
定休日 火曜日と水曜日
【 アクセス 】
・中央道小淵沢ICより小淵沢役場方面へ5分 。JR小淵沢駅前で、駅を出て少し先の小路を鋭角に左折してすぐ先。
・9台ほど入る駐車場あり。

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佐久市

言わずと知れた島崎藤村の「千曲川のスケッチ」に登場する「佐久の草笛」の舞台である。我が山墅から40キロほど離れているので小一時間かかる。結構遠いのだが 大型量販店や農機具の修理をする専門店があるので夏場数回は訪れる。当然「B級グルメ」の世話になる。

ローストチキン 「瀬川」 
〒384-0301 長野県佐久市臼田稲荷105  
電話 0267-82-2444
路地裏の小さな店ながら・・・むしり「瀬川」

この店では「むしり」と言っているがローストチキンのことである。概要は「八ケ岳の食卓」の「ロースト チキン」の項で紹介したのでこちらを見ていただきたい。
平成の大合併で上記のように佐久市に編入されたがナビなどでは旧住所でないと出てこないものがあるのでそちらを表記すると「長野県南佐久郡臼田町大字臼田105」と なる。

「1つ」(1羽の半分)で880円だったが、その後値上げしたかもしれない。2014年も注文したのだが値段を聞くのを忘れた。値上げしてもそう大幅には上げていないと思う。

【 営 業 】
営業時間 10:00〜22:00 
定休日 不定
【 アクセス 】
・JR小海線の臼田駅から徒歩10分。
・クルマだと、141号を小諸の方に向かう。最近バイパスに付け変わったが、右に臼田の市街に入る旧道がある。左かどに雨宮病院がある。 ここから2本目の十字路を右にはいってすぐ左手。

そば 「職人館」 
〒384-0301 長野県佐久市臼田稲荷105  
電話 0267-82-2444
田んぼ道の奥にある蕎麦屋「職人館」の看板

このあたりは、かつて長野県北佐久郡にあった望月町(もちづきまち)で 2005年(平成17年)4月の「平成の大合併」で佐久市の一部となったところ。古くから中山道の宿場町「望月宿」とし て発展し、主集落の望月を中心として、稲作・畑作・林業や薬用の人参、酒の産業が行われてきたところ。

山間の自然に囲まれた田園にぽつんとある古い民家の古材を利用した建物。田んぼの中の一本道の奥にあるようなところで、カーナビに電話番号で入っていたものの、細い旧道に導かれ土地の 人に聞かねばならないほど。


職人館
職人館
どうして訪ねることになったかというと、2016年夏、サイトの亭主が学生時代に馬に乗っていた仲間7人と八ケ岳の山墅で「北大馬術部38喜寿の会 in 八ケ岳・草津」という集まりを持った。 八ケ岳からこの年のNHK大河ドラマ「真田丸」の舞台、上田城址を訪ねる途中に昼飯時になるので、ちょうどグルメ雑誌にこのところよく登場する「職人館」でそばを食べることにしたので ある。


職人館主の北沢正和さん
職人館主の北沢正和さん
館主の北沢正和氏は、役場の職員を投げ打って、そば料理職人となり、農林水産省が日本の食文化の伝承、発展、普及に貢献した料理人を顕彰する「料理人マスターズ」の第1回(2010年)で受 賞した人物。料理に使う農林産物は全て村内で生産されたもので、醤油や味噌、酒などの調味料に至っては職人館オリジナルのもの使用しているそう。館主は、料理の根本は、健康は食べ物 によって作り出されるという意味の「食養(しょくよう)」という信念の持ち主で、地産地消というテーマが今ほど一般化してない90年代初期に創業した農家レストランのはしりといえる。


職人そば
職人そば
メニューをみると夜は3000円〜5000円の山菜料理を出すようだが、通りすがりの昼飯代わりなので、4人で盛りそば「職人そば」(\850)を注文。日本の蕎麦屋のほとんどは今ではほとんど 北海道産のそば粉を使っているがここでは、付近の高原で栽培された地粉100%を使っている。石臼挽きの十割そばはかなりの絶品ものである。辛仕立てのつゆは、地元産丸大豆を使った醤油を生 かし、鰹節(鰹・宗田・鯖)にもこだわり、化学調味料・砂糖の類は一切使っていないという。仲間2人は北海道から来ていてそばやラーメンにはうるさいのだが太鼓判を押した。

この日は手を出さなかったが、その他の品書きを見ると、
そば  ・職人そば(\850) ・みぞれそば(\850) ・十割石臼挽きそばそば(\1300) ・山菜温そば(\1300) ・季節の変わりそば(\1500)

■館主おまかせ膳(\2500)は、みまき豆腐・季節の一品・変わりそばのチョイス・茶菓子・抹茶
■職人館スペシャル(各\1500)は、山葡萄のドレッシングのそばサラダ、みまき豆腐の葛あんかけそば、岩魚そば 、そばの実と放し飼い鶏卵のリゾット風 、どんぐりそば (石臼挽きそば粉とどんぐり粉のハーモニー)
■みまき豆腐(\350)は北御牧村特産丸大豆100%使用
■山里の季節膳には・鉋(かんな)膳(\3,000) ・炭にきけ膳(\4000) ・棟上げ膳(\5000) ・野にきけ膳(\6000) ・山にきけ膳(\7000)

バラエティー豊かだが、要するにこの土地の山菜、野菜の味をふんだんに食膳に盛り付けたものである。

【 営 業 】
営業時間 11:30〜15:00 16時以降は予約のみ 
定休日 水・木曜日(祝日・ゴールデンウイーク・8月は無休)、1〜2月は不定休
【 アクセス 】
・JR長野新幹線佐久平駅から芦田行きバスで30分、望月で岩下行きバスに乗り換えて15分、新町下車すぐ、というのだが、バスで行く人は少ないだろう。
・クルマだと国道142号線望月交差点を春日温泉方面へ曲がり6キロ。途中道路脇に案内板がある。カーナビでは店の電話番号でセットできる。
・9台ほど入る駐車場あり。 席は38席ほど。

ラーメン 「くれしづき」 
〒385-0051佐久市中込3466‐5 ミヤザワビル1F 
電話 0267-88-6447

くれしづき
くれしづき

麺処くれしづき]は、佐久・中込の佐久市役所近くにお店を構えるラーメン店だ。一帯は農村地帯なので農機具の修理店が多いところ。チェーンソーや刈払機の具合が悪くなると、このあたりを徘徊する。この店を知ったのは「ラーメン官僚かずあっきぃ」ととして食べ歩きをしている田中一明氏のコラムを見たからだ。どこの官庁かしらないが、栃木や宮城など地方都市に出張することが多い人のようで、いつもはこんな遠方に行くことはないなと読み捨てにしているのだが、ある日佐久市のこのラーメン店が紹介されていた。

塩白湯チャーシュー麺
塩白湯チャーシュー麺
2019年夏行ってみた。2017年6月にオープンしたというからわりと新しい店だ。店内は右手に、厨房とカウンター7席、左側に4人掛けのボックス席3卓と、こじんまりしたところ。ラーメン官僚氏が塩白湯チャーシュー麺を推薦していたのでこれを注文。鶏がらスープのラーメンが好みだがそれとは違う味。でもあっさりしていて、「中の上」といったところ。

くれしづきのメニュー
この店の売り文句をホームページから紹介しておくと「是非、お召し上がりいただきたいのが、塩らーめんと醤油・塩白湯(ぱいたん)めんです。塩は3種類をブレンド、バランス重視で鶏ガラスープと和風だしをあわせ、さっぱりとした味わいに仕上げました。 醤油・塩白湯めん(塩は昼のみ)のスープは真空圧力寸胴で仕込み、臭みのないまろやかな味わいとなっております。お子様からご年配の方まで幅広い世代には醤油らーめん、20代から30代(特に男性)には背脂ちゃーしゅーがオススメです!また、ぎょうざはパリッとした食感をお楽しみ頂きたく、しっかり焼いており、タレとのバランスでクセが無く仕上げています」。

店名が珍しいので辞書を引いたら「くれ‐しづき 『暮(れ)▽新月』 陰暦の正月のこと」とあった。

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【 営 業 】
営業時間 11:30〜15:00 17:30〜21:00
定休日 火曜日
【 アクセス 】
・佐久市役所の近く。JR小海線(八ヶ岳高原線)北中込駅から徒歩5分。
・店の前に数台分の駐車場がある。

ケーキ店 「Aimer」(エメ) 
〒385-0051 長野県佐久市中込3458-1 
電話 0267-88-6548
しゃれた「Aimer」の店構え

先に紹介したラーメン店「くれしづき」には次女と一緒に行ったのだが、そこから同じ並びで4、50メートル先にケーキ店があった。ちょうど八ケ岳の山荘に甘いものがなく、ショートケーキでも買うかということで入った。なかなかしゃれた店構えだったが、スマホをいじっていた娘が「へえ、佐久は”日本三大ケーキの街”だって」と声をあげた。

一つ目が東京・自由が丘、二つ目が兵庫・神戸、そして三つ目が長野・佐久だそうだ。自由が丘には長女の家族5人がいて、孫3人ほか年中誰かの誕生日やクリスマスパーティーがあって、ケーキ屋をはしごしているので多いことはわかる。神戸は家内が結婚するまで隣の芦屋市で育ったので、若いころから一帯を根城にしていた。我が家は「日本三大ケーキの街」を制覇したことになる。

なぜか。佐久はケーキの本場であるフランスの気候と似ていて、日照時間が長く寒暖差があるため上質な果物があり、ケーキを作る際に欠かせない牛乳や卵が良質だという事情があるようだ。

オーナーの上原夫妻
そんななかで「Aimer」( エメ)は瀟洒な洋館の佇まい。オーナーパティシエの上原正彦さん(56)は、東京の調理師の学校を卒業後、フレンチレストランやパティスリーで修業を積み、地元に帰ってケーキ店を開いた。30余年前から別の場所でテナントとして営業していたが、都市計画による道路拡張で店を移転することを迫られた。折しも奥さんの両親の家が古くなったのを機に、1階部分を店舗に建て替えて平成27年に開業した。

佐久のケーキはとにかく安い
手づくりするチョコレートが人気で、 店内には他に生ケーキ約30種類、焼菓子約30種類、ジェラート約8種類が並ぶ。果物など素材は旬のものを使い、季節感のあるケーキを1か月に2〜3種類は登場させる。ケーキの街を広めるべく他の店主数人と「佐久ケーキ職人の会」を立ち上げて、イベントなどを開いている。

買ったショートケーキは他の2箇所と遜色ない美味しさだった。何より素晴らしいのは佐久のケーキは安いことだろう。ショートケーキは480円だった。自由が丘なら800円以上はする。ここに来られるのは夏場だけだが、このときも帰宅までの時間を聞いて保冷剤が箱の上下に入っていた。

店名は仏語の「愛」から
店名はフランス語の「愛」からとったそうだ。仏語を習うと「Je t’aime」(ジュテーム)と「je vous aime 」(ジュブゼーム)の違いを教えられる。前者を「あんたが好き」と訳すなら、後舎は「そなたが好き」とでも言おうか、やや文語調になる。「Aimer」は動詞なので店名なら名詞の「amour」(アムール、愛)になるのだが‥と思ったが、まあどうでも良い。

【 営 業 】
営業時間 :10:00〜19:00
定休日 木曜日(祝日の場合は営業)※夏期定休日:水曜日、木曜日
【 アクセス 】
・JR小海線(八ヶ岳高原線)北中込駅から徒歩5分。八十二銀行前。
・店前に数台分の駐車場がある。

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小海町

長年八ケ岳の東麓で過ごしているが、これほど素晴らしい店があったとは知らなかった。家内と次女にして「これまで食べたパイの中で最高」と言わしめたのである。

パイの店 「敷島屋」 
〒384-1102 長野県南佐久郡小海町大字小海4406−4  
電話 0267-92-4342
路地裏の小さな店ながら・・・パイの店「敷島屋」

毎年夏、八ケ岳高原カントリークラブで友人、親戚とゴルフコンペを開いている。亡くなった方がいたりしてしばらく中断していたが2014年夏「追悼」と銘打って再開した。 スコアはいつもどおり振るわなかったが、その夜に開かれるパーティーの方に主力があるので日本酒とワインでかなり酩酊した。

男どもはそれでいいが、ご婦人方はそれほど飲むわけではないので早々とお茶になる。そのとき追悼される立場の未亡人と商社マンと結婚して目下ペルーにいるという娘さんが 「亡くなる前に主人がここの店を見つけてきたので、食べてみて」と持参されたのが、紹介するパイの店「敷島屋」のスイーツである。

そのとき、「秋になると紅玉のアップルパイが並ぶのだが、これが絶品」というので下山予定の前日10月12日(日曜)店を訪ねた。場所がわかりにくいというので、同じ小海 町でいつもバードフィーダーのキットをつくってくれている木材店の社長に道順を聞いたら「うちのすぐ近くだ」と道路に地図を書いてくれた。消防の望楼の下だというのですぐ 分かった。

午前10時40分頃着いた。店は10時からだというので余裕の時間だと思ったが先客が2人いて、我々に続いてもう2人が来た。紅玉のアップルパイとチョコレートパイ、 チーズとカスタードクリームのロールパイ、それに目的の紅玉のアップルパイの4種類を買った。というよりそれしかなかったのだが、驚いたのは我々よりあとから来た客は 「売り切れました」と言われていたのである。40分で売り切れというわけだ。

路地裏といってよい住宅の裏にある「敷島屋」
次女は「もう少しアップルパイはないかしら」と声をかけたら「自分で焼いた方が早いですよ」と言われたという。この店で素晴らしいのはパイ生地の良さ。ロールパイ(180円) などフォークやスプーンなどなくてもパイ生地を綺麗に切り分けられるほどサクサクで、買えなかったがこの店のミルフィーユを食べて見たいと思ったほどだ。ミルフィーユと いえば上高地帝国ホテルのミルフィーユが有名で、日比谷の本店よりおいしいというので、わざわざ上高地まで泊まりがけでやってくる人がいるほどである。以前、上高地帝国 ホテルの支配人に聞いたら本店と同じ作り方で材料も同じなんですがね、ということだった。きっとカラッとした空気の乾燥が影響しているのだと思う。


アップル チョコ バナナクリーム" カスタード
人気のアップルパイ チョコレートパイ

バナナクリームパイ \350 カスタードパイ \180

そんなわけで「鄙には稀な」といったら失礼ながら、千曲川上流の小さな町の、さらにこんなわかりづらい場所に一流店が存在したことに大いに驚き、パイは三日がかりでつく るというオーナー新津正さんの精進に最大級の敬意をはらってすっかりこの店のファンになったのである。ついでながらこのあたりでは「新津」さんが多くて、道を教えて くれた木材店の社長も「新津」である。町を歩けば新津と井出ばかりという土地柄である。そのうちご主人の新津さんのパイ作りひと筋の人生を聞いてみたいものだと思う。

一時小海町から10数キロ離れた佐久市中込に支店を出した、こちらはなにもない本店と違ってその場で食べられる「パーラー」のようなスペースがあったようだが、店を畳んだ。 多分手がまわらないからだろう。本店には「電話(携帯電話)でのご予約は、お受けしておりません。7日前から前日の夕方5時までにメールでお申し込みください。(4種類まで )。一定の数になりましたら、締め切らせていただきます。パイは、大変手間のかかるお菓子です。また日持ちのする商品ではありませんので、品切れすることもあります。ご了 承ください」という張り紙が出ている。売る気がないというか、職人気質というか。でも、それも結構と思わせる絶品パイである。

店にある手作りのパンフレットによると、「レギュラーメニュー」にバナナクリームパイ、チョコレートパイ、信州のフルーツパイ、ロールパイ(ブルーべりー他各種)、「12月から 5月のメニュー」としてストーローベリーパイ、いちごのサンドパイ、いちごのブッシュ、ふんわりサンドパイ、「夏のメニュー」にはクリームチーズレモンパイ、ブルーベリーパイ、 ヨーグルトパイ、レアチーズパイ(巨峰ほか)、「10月のメニュー」として紅玉のアップルパイ、りんごとチーズスフレのパイ、スイートポテトパイ、が並んでいた。おすすめとして 、果物が多い信州のフルーツを使ってりんご、巨峰、プルーン、あんず・・・と並んでいた。

【 営 業 】
営業時間 10:00〜18:00 (日曜日は16;00まで)
定休日 月曜日
【 アクセス 】
・JR小海線 小海駅裏側。徒歩3分。
・国道141号線からもすぐ。わかりにくいのと入り組んだ路地裏なので地図参照。

ホームページ「パイの店 敷島屋」がある。
電話に出る余裕がないためだろうが、パンフレットに「ご予約・問い合わせは店頭または
E-mail pie-shop@minos.ocn.ne.jp のみ」とある。

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高根町・清里

山小舎に入るとき、どうしても清里を通るから仕方がないが、いったん入ったら、なるべくこの町には近寄らないようにしている。 趣味のよろしくない白やピンクのペンキを塗ったペラペラの無国籍の建物が群がり、無作法な若者が跋扈(ばっこ)していて、こちらが情緒不安定になるからだ。しかし、この町を一歩中に入ると、開拓に汗を流した人たちの艱難の跡が見て取れるところで、先住の人やヤマネや牛馬の息吹が感じられる。

うなぎ屋「Blowin' in the wind」(旧そば屋「北甲斐亭」変身して) 
〒407-0301 山梨県北杜市(旧:北巨摩郡)高根町清里2890  
電話 0551-45-6775

この場所では以前そば屋「北甲斐亭」を紹介していた。2022年春に一族引き連れ出かけようとしたら「閉店になっている」というので止めた。贔屓にしていたので、なんで潰れたのだろう、コロナのせいか過疎で村のおばちゃん人手がなくなったせいかなどと心配していたのだが、2023年「あの蕎麦屋、うなぎ屋になっている」と言われた。さっそく出かけた人の話では滅法うまいというので、大急ぎで紹介する次第。

店舗
うなぎ屋「Blowin' in the wind」。
暖簾が変わっただけで建物は以前の「北甲斐亭」。
Bob Dylan1964
ボブ・ディラン(1964)
それにしてもそば屋がなんで「Blowin' in the wind」などというバタ臭い店名に変身したのか。謂われはあとで書くがオーナーの農業とワインと食文化、加えて音楽が深く関わってのうなぎ屋経営なのである。

店名は言わずとしれたボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」( Blowin' in the Wind)に由来する。2016年にノーベル文学賞を受賞したアメリカのシンガーソングライター はこう歌う。


How many roads must a man walk down(男はどのくらい道を歩めば)
Before you call him a man?(男として認められるの?)

How many seas must a white dove sail (白い鳩はどのぐらいの大海原は渡れば)
Before she sleeps in the sand? (砂浜で休むことができるの?)

Yes, and how many times must the cannon balls fly (どのくらい大砲が飛び交えば)
Before they’re forever banned? (それらは永久に禁止されるの?)

The answer, my friend, is blowin’ in the wind (友よ。答えは風の中に吹いている)
The answer is blowin’ in the wind. (答えは 風の中に吹いている)

Bob Dylan
Bob Dylan近影(ノーベル賞受賞の頃)
1960年代のアメリカ公民権運動の賛歌であり、世界の反戦歌である。店名はその最後のフレーズから来ている。そばを流れる大門川の渓谷から吹きつける心地よい風に触発されて音楽好きのオーナーが命名した。ボブ・ディランは2023年7年ぶりに来日公演を行うので盛り上がるかもしれない

店内は大きく「鰻・喫茶ゾーン」(テーブルが6つほど)と、「ミュージックゾーン」(リクエストでレコードをかけてくれる)に分かれている。鰻の営業は(11:00〜14:00)、喫茶・甘味・レコードの営業は(11:00〜17:30)。


肝吸い
肝焼きが入った肝吸い。
樫山鰻ごはん
樫山鰻ごはん。ウイスキー樽の
オーク材で作ったお重で出てくる。
肝心のうなぎに戻る。 ここのうなぎは完全予約制で、予約枠は11:00、11:15、12:30、12:45の4枠。

樫山鰻ごはん(肝吸い・香物付き)
¥5,445(税込)

蒲焼
¥4,620(税込)

白焼き
¥4,620(税込)

う巻き
¥1,980(税込)

卵焼き
¥800(税込)

そのうなぎだが、ここは関東風に鰻を蒸してから焼き上げる。柔らかいしタレもいい味だ。大きめの鰻が2枚ぎっしり入って出てくる重箱は、近くのサントリー白州蒸留所のオーク樽から作られたというずっしりした重みがあってなかなか重厚。価格は5445円と東京の名店並みに少し高いが、昨今のシラスの不漁で軒並み値上がりしているから仕方ないかも。

余談だが、八ケ岳の我が山荘に花植えしているプランターが2つある。一つは同じサントリー白州蒸留所から、もう一つは現在のメルシャン、以前の三楽酒造から山荘の完成祝いとしてプレゼントされたものである。ウイスキーやワインを寝かせるためのオーク材の樽を真っ二つにして作られていて、丈夫で気に入っていたがさすがに30年を過ぎて傷んできた。

◇ ◇ ◇

うな重にある樫山(かしやま)というのはこの地区の名前で、今では国道141号沿いの清里が表通りで、こちらは、谷を一つはさんだ隣の尾根にある裏通りといったとこ ろだが、昔は逆でこちらが「表」だった。なにしろ、甲斐と信州・佐久を結ぶ街道「佐久往還」の宿場町だった。 樫山地区は奈良時代から甲斐の三御牧(さんみまき 馬の放牧場)のうち「柏の牧」として有名で、少し時代が下がって平安時代には、「念場」とよばれたこのあたりは「念場千軒」と言われるほど民家が多数あって賑わい、毎年30頭ほどの馬が朝廷に献上されていたところだ。

小河内ダム
東京の水がめ奥多摩湖
ここで少し樫山の歴史を見る。東京の水がめ奥多摩湖の小河内ダム(ダムの名前はこうだが、できた湖の名前は奥多摩湖)が完成したのは1957年(昭和32年)11月26日だが、建設計画は戦前、大正15年からあった。 多摩川の源流は山梨県の笠取山に始まるが、流域の村は軒並み反対で進まなかった。昭和7年小河内村(おごうちむら)が「帝都の御用水のために栄光ある犠牲となる」と賛成してから計画は前進するが、下流の川崎市の反対などでさらに空転する。

建設工事が始まると信じて作付けもしないで協力した村民は窮地に陥る。高利貸しの餌食になる者も出た。 昭和12年(1937年)、作家、石川達三は村の荒廃の様 子を「日陰の村」という小説に描いた。「 東京という大都会が発展すると、その日陰になる土地は草が枯れるように犠牲になる」という社会派作家の目から描写した作品だ。

歌碑
「湖底の故郷」の歌碑
また、東海林太郎も同じ年に「湖底の故郷」として「夕日は赤し、身は悲し、涙は 熱くほおぬらす、さらば湖底のわが村よ・・・」と歌い、全国的に愛唱された。この歌の歌碑は奥多摩湖左岸の公園に建てられ(昭和41年)ている。

戦争で中断したが戦後に工事は再開された。戦前戦後を通じて建設のため水没する 三多摩地域の丹波山村(たばやまむら)、小菅村から600世帯、3000人が移住したが、その一部の人は代替地として山を越えたこの山梨県側の地を選んで入植した。

樫山部落の転機は小海線の開通だった。清里駅が完成すると、こちらの方が発展すると見込んだ一部の人が7キロくらい北の駅前に再度移住した。現在駅周辺に住む人の 大半はこのときの移住者だ。樫山部落では長らく開墾をしてはそばを植えるというそば栽培が主流だった。技術が進んで、やっと稲作に移るのだが、今度は減反政策を押し付けられ、米にかわって再びそばの栽培を始めた。日本の農業政策の無策を象徴するような有為転変ぶりで、前にあったそば屋「北甲斐亭」は農水省が9億円の 補助金を出して作った振興事業だった。

◇ ◇ ◇

新しいオーナーはどんな人か。

岡本英史さん
オーナーの岡本英史さんはドメーヌである。
岡本英史さんといい、1970年、愛知県生まれ。 明治大学農学部農芸化学科を卒業後、山梨大学附属醗酵化学研究施設(現ワイン科学研究センター)博士過程前期終了後の26歳のときに勝沼のワイナリー勤務の傍ら、ぶどう栽培に適した土地探しと勝沼での苗木育成に着手。「ドメーヌ(Domaine)」とは、ブドウ栽培から醸造・熟成・瓶詰めまでを自分たちで行う生産者を指すが、今では日本有数のドメーヌである。

1999年、中央道須玉IC近くの北杜市津金の畑にブドウのメルロー種の苗木を植え、ワイナリー「ボー・ペイサージュ(Beau Paysage フランス語で「美しい景色」の意)」を設立してワインづくりをスタートする。「ワインは人が造るものではなく、土地が造るもの」という思想のもと、現在、2ha(6000坪)ほどの畑でシャルドネ、ピノ・ブラン、ピノ・グリーそしてソヴィニョン・ブランの4種の白ブドウ品種とメルロ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソヴィニョン、カベルネ・フランと同じく4種の赤ブドウ品種を栽培。

『Beau Paysage』は年平均で12000から15000本程度のワインを生産しているが、土地を購入したときには「ここではブドウは育ちませんよ」と言われたそうだ。畑では不耕起、不施肥、醸造は自然発酵一切添加物は使用しない。八ケ岳高原ロッジとも縁があり、2019年5月「ボーペイサージュと音の仲間たち 音楽とワインの夕べ」の企画で音楽堂を訪れ、世界的に評価されているワインの試食会を開いたことがある。

【 営 業 】
営業時間 うなぎ 11:00〜14:00
甘味・レコード11:00〜17:30
定休日 火曜日(臨休あり )
予約 予約制で前日までにインスタまたは電話(営業時間内はダメ)またはメール info@blowin-in-the-wind.jp
【 アクセス 】
・中央道須玉ICから141号経由、清里の高根小学校(角は農協のスタンド)を右に 入る。大滝を過ぎてすぐ。
・駐車場は10台ほど。

そば 「草五庵」(そうごあん)(ご主人が亡くなり閉店、再開の見込みも立ちませんが、思いが多くあるのでしばらくこのまま掲載を続けます) 
〒407-0301  山梨県北杜市高根町清里3545-2896   
電話 0551-48-2848
そばがきづくりから始めた店主の関沢さん。
初めて味わうそばの風味が。

2016年の夏、同じ海の口自然郷にいる従妹夫婦から「いい蕎麦屋があるので一緒に」と誘われた。東京・練馬で開業医をしていてサイトの亭主の主治医でもある。
お盆休みも終わりの日の午後6時、予約してあるという店に行ったが「本日休み」と赤ペンキで書かれた看板が出ている。鍵もかかっている。ケイタイで連絡を入れると「予約をもらってまし たか」という返事。おいおいそれはないだろう、と思ったら「今から開けます」とのんびりしたもので、料理作りはそれから始まった。

そばがき
目の前でつくるそばがきは初めて味わうそばの風味が
ガスコンロを持ってきてそば粉1、水1の割合のものを鍋で温めながらすりこ木のようなものでかき回していくとやがて団子のようなそばがきができてきた。「こうしてかき回すので”そばが き”(蕎麦掻)といいます」と、まずそのままのものを少しの塩を振りながら食べる。つぎに、団子状のものをすりこ木の先につけて火にあぶって五平餅のようにした「そばがき焼き」と いおうか、そばの香りがのこる一品というふうに次々とそば粉を使った料理が出てきた。

奥さんも出てきて
奥さんも出てきて昔話に
やる気があるのだろうかと思わせたが、その後店主の関沢哲男さんが繰り出す「そば料理」は蕎麦というものの深みを感じさせるものばかり。やがて奥さんも出てきて、ここに来る までの人生航路の話に。その昔イタリア料理店の社長をしていたという。それがそばに魅せられて「一茶庵」に弟子入り。

「一茶庵」というのは日本のそば打ちの歴史に欠かせない一大「そば道場」である。「昭和の手打ち蕎麦再興者」とでもいう片倉康雄氏という人物がいる。創業は大正15年、場所は新宿東 口にあった店で、当時機械打ち全盛の中にあって「手打ち」にこだわり続け、遂にそば打ち名人と呼ばれるようになる。戦中戦後の休業を経て、栃木・足利で店を再開したのは昭和29年。東 西の蕎麦屋が教えを請うために足利に押しかけた。「足利詣で」の伝説の人である。その後片倉氏は神田にも出店し東京への凱旋を果たす。昭和47年に上野で開設した「日本そば大学 講座」が「手打ち」に火をつけ多数の手打ち蕎麦職人を輩出した。(片倉)一茶庵系の蕎麦屋は現在全国に1000店超の一茶庵系蕎麦店を数える。そこの直系の弟子が関沢さんである。

関沢さんは東京の国立市で「大平」という蕎麦屋さんをやっていたが2005年春、清里にあたらしく「草五庵」(くさごあん)という名前の古民家を移築した食事処を開いた。長野県の国鉄の 駅舎を解体した古材やその近くの民家から集めた古材で建てられ、そのとき農家の物置から出てきたものも民芸品風に並べられていて、昔の田舎の囲炉裏端にいるようなくつろぎを与えている。

関沢さんはマナスルにも入ったことがある山男で、わざわざ案内された部屋の隅に一枚の登山姿の写真があった。数人の男が蓑笠姿で大雪の中を行軍しているところで、なにか八甲田山雪中 行軍図のような雰囲気だ。かなり前の登山スタイルで、これからすると相当昔からの山男のようで、、八ケ岳のふもとのこの場所を選んだのも山に惹かれてのことらしい。

この店の名前を「くさごあん」としているブログが散見されるが、「そうごあん」である。店主の関沢さんに直接聞いたから間違いない。食物にする五つの「草」、つまり「五穀」(米・麦 ・粟 (あわ) ・黍 (きび) ・豆)からとったという。

”草五庵お品書き"
草五庵のお品書き
そばがきの焼き団子
そばがきの焼き団子風

ごちそうになったのはご本人が“日本一のそばがき” と自負するそばがき中心の山菜、野菜を加味したいわば「薬膳料理」といったもので、品書きには◎おまかせコース@6800円◎おまかせ コースA3800円とあったが、この日はごちそうになったのでどちらのコースだったかはわからない。このほかにもいろいろなコースがある。じゃがいもとごぼうの素揚げやそばがきの天ぷら、 絶妙な具合に揚げられた揚げ物や味噌焼き、珍しいトマトうどんなど季節ごとにいろんあ料理が出てくる。トマトうどんはカツオだしにトマトの酸味がよく合い、さっぱりと食べられる。


草五庵
いつも「本日休み」が多い草五庵
この店は昼も夜も完全予約制で、夜はお任せコースが主で、客の顔を見てから料理を考えるようなところである。昼は70人分しかそばを打たない。なくなったら「閉店」というあんばい。従 妹夫婦が前回来たときは昼で、鴨ねぎ鍋だったそうで、鴨の下処理がよく、脂っぽさがなくてほんとうにおいしかったそうだ。このほか1500円の「昼膳」がおすすめだという。蕎麦饅頭ほ か4品にとろろ蕎麦がついてくる。

そば本来のせいろは1枚800円。お代わり600円。ぶっかけそば1500円、鴨せいろ1600円など。当日の予約も受け付けるがなにしろ昼は70人分しかないからあっという間に出てしまう。だ から外からみると一日中「本日休み」の看板だけが出ているところである。

ご主人亡くなる!  
2019年春、予約を入れようと電話したら奥さんからご主人の関沢さんが前年亡 くなったことを告げられた。店も閉店状態で今後のことは分からないという。残念この上ない。

【 営 業 】
営業時間 11:30-21:00
定休日 月・火曜日(休日営業)
【 アクセス 】
・JR小海線清里駅から南に7分ほど歩いたところ。 ・国道141号の清里の交差点、萌木の里があるところから30メートルほど北に行ったところで国道沿いながら表になにも看板がないので写真のような建物を目印にする。
・駐車場は7、8台分あるが昼時はいっぱいになる。

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そば処 「三分一」(さんぶいち) 
〒408-0031  山梨県北杜市長坂町小荒間292-1   
電話0551-32-8318

八ケ岳で出かけるそば屋といえば「草五庵」と決まっていたのだが、2019年春に電話したところ親父さんが急死したという。山男としては相当名を売った人らしいので、そのうちじっくり話をしようと思っていたので残念この上ない。

そば処「三分一」
見つけた!八ケ岳南麓のそばの名店
それはそれとして、「草五庵」なきあと、さてどこに食べに行くかという問題である。そこで思い出したのが昨年(2018)、リスのフィーダーをお買い上げいただいた方の一言だ。このフィーダーというのは、トウモロコシをぶっ刺しておくと、リスがちょこんとお座りして食べるように設計されている。

面白がってくれたその方は、最近都心を離れて小淵沢で家を買いリタイア生活を始めたという人で、フィーダーを引き渡すとき、双方が知っている「三分の一湧水」で待ち合わせたのである。

2019年夏、これまた突如姿を消した桃ジャムを求めて次女と一緒に甲斐大泉駅前をうろついた。桃ジャムにこだわる我が家の顛末については「八ケ岳の食卓」に書いたとおりだ。八ケ岳南麓にはジャムの専門店もあるのだが、やたら香料が強かったり、値段が高かったりして不満を持っていた。その点、長坂のスーパーの片隅で見つけた桃ジャムはこちらのこだわりにぴったりで、通りがかるたびに購入していたのだが、2019年春これまた姿を消した。

店主に聞いたらこの桃ジャムを作っていたのは甲斐大泉の主婦で娘さんがこのスーパーで働いていたので置いていたが辞めたので置かなくなったが、甲斐大泉の駅前の市場ならあるかもしれません、という。それで上述の通り駅前をうろついていたのだが、目論見通りあった。しかし夏のはじめでまだ桃が出回っていないのでないが、しばらくすると出てくるという話で大いに気を良くした。

5キロ先に三分の一湧水がある甲斐小泉駅があるので娘と「日本名水100選」に選ばれた水を汲みに行くことにしたのだが、苦労して名水をポリ容器に入れホッとしたところで、ぞろぞろと多くの車が集まり始めた。件のそば処「三分の一」の開店時間、午前11時になっていたのだ。

そば処「三分一」
「天盛りそば」
前置きが長くなったが、「10割そば」(1000円)と「天盛りそば」(1200円)、「そばがきの刺し身」(450円)を頼んだ。いずれもこれを食べればその店の良し悪しがわかるものである。3つ目の刺し身というのは食べたことがなかったので試してみた。

いずれも申し分のないものだった。何より嬉しかったのはわさびが多分隣の静岡県の生わさびで、きちんとおろしがねで引いてあったことだ。近頃有名店でも平気で市販のチューブ入りのわさびを出して来るところがある。もう一つ、海老の天麩羅だけは塩で食べるのが好みなのだが、ここではちゃんとパウダー・ソルトが用意されていた。そばがきは何度も食べたことがあるが、その刺し身というのは初めてだったが、ぬめりの先にわさびが効いていて美味であった。天もりそばは野菜の天麩羅がふんだんに乗っかっていたが、カリッと揚げてあってこれまた美味かった。


メニュー」
メニュー
三分の一名水をふんだんに使っていてそれだけでも美味しさをそそるが、ガラス戸越しに職人がそばを打つ姿が見えるがこの名水があれば10割そばもつなぎなしで美味しく仕上がるはずだと思った。その上この店ではきちんとした竹の割り箸が出てきた。普通の割り箸より高いのだろうが、そば、うどん、そうめんには滑らない竹箸が最適なのだ。少し高めの価格設定だが、そのくらい我慢しよう。清里の「草五庵」よりクルマで30分ほど足が伸びるが、今後はここにしようと決めた。

三分一湧水(さんぶいちゆうすい)とは

八ヶ岳の峯々に降り積もった雪は伏流水となり、長い年月をかけ麓に清らかな泉となって湧き出てくる。三分一湧水(長坂町小荒間)は近くの大滝湧水(小淵沢町上笹尾)、女取湧水(長坂町)とともに八ヶ岳南麓高原湧水群として日本名水百選に数えられている。


メニュー」
3つの村に当分に水を分ける仕組み。

「三分一」のいわれは、戦国時代、水争いをしていた三つの村に等配分するために、武田信玄が堰を築いたという伝説が残っており、湧出口の分水枡に三角石柱を築き、三方向に流水を分岐させている。近在の水田はみなこの水に頼っている。日量8,500トンの豊かな湧水で、水温は年間を通じて10℃前後に保たれている。

現在、1922年(大正11年)に完成した石造の枡が用いられ、水利権を持つ地区住民が組織する管理組合や地元住民によって管理されている。1943年(昭和18年)に一度山津波によって破壊されたが、後に復旧した。

本来、農業用水で飲用には適さないとされ、水汲み場がないが、上述の蕎麦屋とお土産屋の間に水汲みスポットがあり、飲用の湧水をペットボトルなどで持ち帰る事ができる。

近隣の方が言うのに、「三分一湧水や道の駅白州の水は、汲んで1周間程度で飲めなくなりますが、大滝湧水は空気が入らないようにペットボトルいっぱいに汲めば、2か月ぐらいまで常温で置いておいても腐らないんですよ」とのこと。今度は大滝湧水で採集しよう。

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上海家庭料理 「安晏」(あんあん) 
〒408-0003 山梨県北杜市高根町東井出4986ー1115   
電話 0551-47-5099

安晏
「安晏」はペンションと併設
清里とは言うものの、駅でいうと一つ隣の「甲斐大泉」駅から徒歩20分ほどの場所にあり、わかりにくい隠れ家的場所にある。深い谷を渡る高架橋で、八ケ岳を南側から一望する場所として観光客が多い「八ケ岳高原大橋」の近くで、このあたりでは有名な「中村農場」のすぐ裏といったほうがわかりやすいかも。

長女の家族5人はよく我が山荘にやってくるが、孫たち含め中村農場のオレンジ卵(10個入り750円)と名物の親子丼(1000円)がお気に入りで、「安晏」にはめったに来ないから、いつもここで「紹興酒と酢豚で飲んでいるのは私と山の仲間という図式である。

酢豚
日本の酢豚はここでは豚の角煮
日本では辛い「四川料理」、濃厚な「広東料理」が有名だが、ここは「上海家庭料理」をうたっている。上海料理というのは近くの江蘇省や浙江省一帯は、「魚米之郷」と称され、魚介類と農産物が豊富な平野である。上海料理の源流は、長江の河口に近い蘇州や揚州から移り住んだ人たちが作り上げたものだ。さらに20世紀以降に広まったロシア料理、フランス料理などの西洋料理の手法や調味料をも取り入れて、より豊富なものへと変貌した。酒、酒粕、醤油、黒酢などの醸造品や、砂糖、麦芽糖を多用するため、甘く濃厚な味が特徴。上海蟹、小籠包、生煎饅頭は日本でもよく知られた代表的上海料理である。

「安晏」のオーナーは陳建忠さんで奥さんは日本人。以前東京・国立で同名の店を出していて、かなりの贔屓客がいたようだが2013年頃八ヶ岳山麓に移住してこの店を開いた。

サイトの亭主はここからすぐ近くの八ケ岳高原ロッジ周辺に展開する「海の口自然郷」に住んで30数年になる。住人でオーナー会を作っているのだが、同じ仲間が「安晏」をこの地に引っ張ってきたというので、皆で利用するようになった。国立で私学経営をしていたこの人が贔屓にしていた「安晏」オーナー夫妻を自分の別荘に招いたりするうちに、夫妻がすっかりこの地を気に入り、移住を決めたそうだ。

いずれはこういう場所で暮らしたいと思っていたということもあって、ちょうど売りに出ていたペンションを購入してペンション経営と上海家庭料理 の店をオープンさせたという。併設のペンションは「B&B晴」といい、素泊まり5000円、朝食に上海おかゆ付きで6500(税別)という安さ。

前置きが長くなった。この店はメニュー数も豊富で一品料理や点心、ご飯・麺類まである。手書きのメニューでも分かる通りその季節の食材を使ってしょっちゅう書き換えられるが、2021年のある日は下記のような具合。酢豚を注文したとき細々と説明された。日本で酢豚と言うと豚肉、タケノコ、時にはパイナップルまで加えた甘酢和えといったイメージだが、上海ではメニューにあるように「豚の角煮」であることことなど奥さんからくわしく念を押された。

メニュー
ある日のメニュー
・ランチタイムセットメニュー 1,580円
・マーボー豆腐 1,200円
・レタス炒飯 1,100円
・豚角煮 1,500円
・焼ソバ(エビ・イカ入り)1,280円
・ごま団子 680円
(いずれも税込)

卵ときくらげの炒め物とか麻婆豆腐とか水餃子、季節になるが上海蟹などが人気のようだ。いずれも上海料理らしいメニューだ。コロナ禍の前だが、仲間と紹興酒(グラス売りがなくて1本まるごと買う3000円くらいだった)を飲んでいたとき、地元の女性ばかり10人ほどがパーティーをしていたが、次々といろんな料理が運ばれていた。予算と希望でコース料理にも対応しているようだ。

【 営 業 】
営業時間 11:30〜13:30(LO)
17:30〜21:00(LO)
定休日 月曜日( 祝日の場合は翌日休。冬期休業あり(特に1月〜3月は完全休 )
【 アクセス 】
・最寄り駅は小海線甲斐大泉だが大抵の人はクルマだろう。中村農場のすぐ裏手といったほうが分かりやすいかも。
・ペンション含め4台ほど。

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カレー 「ヴィラ・アフガン」(Villa Afghan) 
〒409-1501 山梨県北杜市大泉町西井出8240-3510  
電話 0551-38-3148

店内
いきなり急な階段を上る「ヴィラ・アフガン」のエントランス
アフガン・ハウンドという、アフガニスタン原産の長毛で大型の華やかで優美な狩猟犬がある。「ロシア貴族の愛玩犬」として有名で、サイトの亭主は東京畜犬事件のとき御殿場で裁判所が競売をしたとき取材に行った。犬の数が多いのに競売参加者が少なくて、このままでは餓死すると言うので頼まれて買い取り東京まで連れ帰った事がある。乗っていた新聞社のハイヤーに乗せたら犬が車酔いで吐いて大いに迷惑がられた。

その犬をこの店のオーナーがかつて飼っていた事に店名が由来するということだった。住所からは分かりづらいが、このあたりでは有名な「八ケ岳倶楽部」の隣りといったほうがいいかもしれない。タレントで一時日本野鳥の会会長などもした柳生博一家が経営するレストランである。

名物カレー
店の名物はこのベーコンエッグカレー
1978年創業。八ヶ岳山麓にあるカレー専門店で、木々に囲まれた中に沈んでいるような一軒家。シーズンには長蛇の列ができるという地元では有名な店。厚切りのジューシーなベーコンが乗ったベーコンエッグ&ポークカレー(1700円)や、限定メニューの牛すね肉のカレー(1900円)が人気。辛さを四段階から選べる。ライスのおかわりは自由。

メニュ-
メニュー
多くの人は名物のベーコンエッグカレーを注文するようだがこちらは普通のビーフカレーにした。カレーにしては少し高いと思うが、それもそのはずで大きな和牛のスネ肉をじっくり煮込んだ「ビーフシチューのカレー」といったところだ。独特の味は、厳選素材と海外で買い付けている香辛料を使っているせいである。

店は2階にあるがその階段というのが恐ろしく急で上から見ると垂直かと思うほど。もとは倉庫かなにかだったところに無理やり階段を付けたようで足元の不確かな同伴者がいる人は要注意だ。

【 営 業 】
営業時間 11時30分〜14時
17時〜19時
定休日 火曜日(祝日の場合は翌日休、月曜は夜休)
【 アクセス 】
・八ケ岳の南麓を走る「八巻き道路」の天女山入り口から南にJR小海線甲斐大泉までの道路沿いにある。「八ヶ岳倶楽部」の隣り。
・2台分しかないが多くの人は八ヶ岳倶楽部の駐車場に入れているようだ。


韮崎

森進一が「襟裳岬」で「襟裳の春は 何もない春です」と歌って地元から「何もないとは何事だ」と文句をいわれた。 韮崎も最初は通過地点で「何もない」ところだったが、韮崎高校の横を通って「こんなところからサッカーの中田英寿選手が出てきたのか」と殺風景なグラウンドをしばし眺めたことがある。彼は当初から権利意識をはっきりもっている男で、自分を高く売る技術にも長けている。インターネットの可能性に早くから気づいていて、彼のオフィシャルホー ムページを見てもファンとの双方向性に気を配っているのがわかる。技術的にも大変先進的で時々参考にしている。この街はナカタ以外にも、温泉やそば屋、サクラの名木など「いろいろある」ところだ。

フランス料理 「キュイエット 」 
〒407-0174韮崎市穂坂町三ツ沢1129 
TEL・FAX 0551-23-1650
ブドウ畑の中にある「キュイエット 」

雰囲気がいいのとリーズナブルな料金で洋食ではおすすめナンバーワン。こんなすばらしいレストランを「B級グルメ」などというコーナーで紹介しているのは 申し訳ないのだが、成り行き上なのでご勘弁を。

まずロケーションがいい。山登りのバイブル「百名山」の深田久弥の終焉の地は茅が岳(かやがだけ)だが、その登山口から ふもとにかけてゆったりとリンゴやサクランボ、そしてブドウ畑などの果樹農園が広がっている。

その真ん中にこの店はある。スレートや石積みのヨーロッパ農家風の建物が「キュイエット」(La cueillette)だ。

「cueillette」というのはフランス語で果実・花などの「摘み取り」とか 「収穫」といった意味だ。「la cueillette des pommes」は「リンゴ狩り」。「pommes」を「truffes」にすると「トリフ狩り」。この台地にはトリフ以外は果樹とか野菜とか「cueillette」対象の大地の恵みはどっさりある。

だから、前菜には周りで採れる無農薬野菜をサラダに、ブルーベリーや桃をデザートにあしらう。 個室2室と30席ほどのテーブルがあるが、どこからも窓の外に広がるブドウ畑と、その下の甲府盆地の西の端にあたる町並み、その上に南アルプスの山並みが展開する。 「山々の上に月が上がり、その左手に富士山が見えた時は感動しました」とサービスの若い女性。すぐ隣の須玉町の出身で山には慣れているのだけど新たな感動があるという。

テーブルのすぐ前からブドウ畑が広がっているので、ハウスワインがありそうだと思い、聞いてみたら、あれは生食用の 「巨峰」で、母親が世話をしているのだそうだ。オーナーシェフの山田真治さんは20歳で料理の世界に入り東京・横浜で修行をし、甲府では有名なフラン ス料理店「ベルク」で8年間料理長を勤めた。28歳で本場の厨房が見たいと渡仏。ぶどう畑が広がるシャンパーニュ地方の古城を改築した一つ星レストラン「シャトー・ド・フェール」で修業を積んだ。その田舎の雰囲気にあこがれ、2003年5月、 38歳の時、実家が所有していたこの地で開業した。レストランのすぐ裏が自宅だ。

フランス料理が基本だが、こだわらずに食材とアイデアしだいで日本、アジア、イタリアなどさまざまなエスニックに変貌する創作料理の店といったところ。昼も夜もコース料理だけ。といっても、ランチは「A」(2400円)、「B」(3000円、 「C」(4000円)。 ディナーは「メニューA」(4200円)、「メニューB」(5500円)、「メニューC」(8000円)。安いと思う。

訪れたのは夏だったが、その日の「メニューA」は、
◎アミューズグール(一口前菜)
◎オードブル(・車海老と帆立貝、 生ハムのムース・フォアグラが入った牛テールのテリーヌ・フランスランド産フレッシュフォアグラからセレクト)
◎スープ
◎メインディッシュ(・鮮魚のポアレ・オマール海老のグリエ・ブルターニュ産鴨胸肉ロースト・黒豚ばら肉の柔らか煮・仔羊背肉のソテーからセレクト)
◎デザート(・桃のスープとバニラ風味のアイスクリーム・マスカルポーネのムースとライチのジュレ・季節のフルーツと3種のアイスクリームの取り合わせからセレクト)
◎コーヒー・紅茶(エスプレッソ、紅茶9種からセレクト)
◎プティフール(小菓子)

これで充分という量だった。「メニューC」は「宮城県産はさま牛ヒレ肉(150グラム)のグリエ」となるくらい。 味のほうも、それほどのグルメではないから説明不足だろうが、「素材の味が出ていて、結構」だった。

少し前といっても10年はたつが、ヘルシー志向でフランス料理のくどいソースが敬遠されるようになった。来日した三ツ星シェフのポール・ボギュースなどが日本料理を見て「ヌーベルキュジーヌ」(新しい料理)運動を提唱した。むずかしいようだが、 なに、肉や野菜の味をソースに頼らずそのまま生かそうということで、日本では昔から割烹の基本である。

「キュイエット」では近在の野菜や果物をそのま ま出していて、「ヌーベルキュジーヌ」など、とっくに実践している。たとえば野菜は、すぐ近くの高根町(清里)の無農 薬栽培の農家から仕入れているし、果物も庭先の農家や近在からといった至近距離である。安くておいしい所以(ゆえん)だ。

家族で食事
当日の家族の食事のスナップだが
話題はテーブルのブドウについて
(2010.10.11)
2010年10月11日、下山の途中家族3人で立ち寄った。メインディッシュの肉は普通のフランス料理の味だったが前菜とデザートに感心した。地元産にこだわっていた。マイクロトマトは北杜市のものだそうだが一粒が一段と小さく金平糖ほどの大きさ。超マイクロトマトとでもいうべきものではじめて見る大きさだったが味は格段に濃密だった。写真は 家族の記念写真だがテーブルの上にあるのはこれまた感心した巨峰のデザート。上述のように周りは実家の巨峰畑なのだが、これまたわざわざ近くで一段と味のよいものを求めたという。1つずつ丁寧に皮をむいてあってムースのようなアイスクリームとあいまって美味。普段はデザートは残すのだがみんな食べてしまった。

この時の食事がすばらしかったので次女が「ここでの食事を毎年の恒例にしよう」と言い出し、2011年10月10日、ふたたび訪れた。私と犬とで夏の間八ケ岳で暮らしているが、 寒くなってくるので体育の日のあたりに迎えに来る家族と一緒に下りる。連休なので中央道が渋滞するが食事している間に解消するというメリットもある。

早く着きすぎたので駐車場で時間つぶしをした。折から、暮れなずむ南アルプスのシルエットが夕焼けに浮かび上がって美しい景色を堪能できた。山なみの下に甲府盆地のともしびがまたたいている。そんなロケーションにある。

今回も満足する内容だった。オードブルに近くの北杜市で一軒だけ作っている農家があるという黒いちぢくや南アルプス市の食用ほおずきが出てきた。日本ではまだ珍しい食材である。1000円加算されるが肉料理のフィレ肉やソース、またその量も申し分なかった。デザートのブドウ も昨年と違う切り込みが入っていたし、付け合せの飴細工も凝ったもので毎年研究していることがうかがわれた。

前夜、八ケ岳高原ロッジで食事をした家内と娘が、和食で出てきた栗が缶詰でシロップもそのまま使っているし、サービスの間の悪いことといったらなかったと慨嘆していた。 それに比べてキュイエットの料理のすばらしさと料金の安さといったら群を抜いている。あまりに感心したので帰りに山田真治シェフを引っ張り出して記念写真を撮った。来年も出かけることになりそうだ。

南アルプス 2011.10.10 山田シェフ
暮れゆく南アルプス 恒例になった食事。2011年10月10日

山田シェフと

【だんだんファンがふえてきた
2012年も出かけた。毎年、食べた、食べたと書くのも気が引けるのだが、他意はなく、ただ、鄙には稀なといったら失礼ながら、こんな美味しいフレンチを私たちだけで独占しておくのはもったいないとい う思いからである。サイトの亭主が夏場を過ごしている「八ヶ岳高原海の口自然郷」で来訪されたり家の前を通りかかったり立ち話をした人のうち、この年は3組の夫婦がキュイエットに通っていることを知った。2組はこのサイトで、1組はネット検索で 探し当てたそうで「あの料理で、あのお値段、いいのかしらという思い。書いていただいたおかげで楽しませていただいてます」と言われた。わが意を得た思いだった。

カレンダーの都合でこの年は体育の日が10月8日だったが、家族3人(長女が嫁に行ってこれが全員)でいそいそと訪ねた。次女はこれまでは参加不参加まちまちだったのだが、すっかり気に入って何を置いても山に来るようになって3年 連続である。だんだん予約が取りにくくなってきたというので3週間ほど前に家内が申し込んだのだが、覚えていてくれたのか、一部屋だけある個室に案内された。窓外に甲府盆地の夜景が広がっていて実に雰囲気がいい。山田シェフも折々に 現れて食材や料理方法を説明にあたってくれた。

毎年説明に困るのがメニューで、メモ仕切れない。見当がつかない料理用語もある。写真を撮るかコピーを頼むかと考えていたら、娘がいつからかキュイエットのホームページができてそこに掲載されていると教えてくれた。7月に娘と昼の食事をしたのだが 、単純な比較だがやはり夜のメニューの方がおいしい、とは娘の話。
キュイエットのディナーメニュー

2012年も大満足でシェフと記念撮影

帝国ホテルの村上信夫総料理長が年に2度ほど数人を招いて手料理を振舞う会に出ていたことがある。そのとき「料理で大事なのはサービスの”間”です」と言っていた。早からず遅からず皿を引き料理を出す。絶妙のタイミングを計るためにはいつも食事の進み具合を 観察していなければならない。ウエイター(ウエイトレス)に先ず教育するそうだ。その点からいっても今回も及第点だった。


上で紹介したように次女が「ここでの食事を恒例にしよう」と言い出して、毎年ここで親子3人でテーブルを囲むようになった。2013年もみんな変わりなく健康で「キュイエット」に集うことができた。 いつの間にかサイトの亭主のつたない「名店紹介」(そのわりに”B級グルメ”の項に入れているのは申し訳ないが)のことが「八ケ岳高原海の口自然郷」内に知られるようになり「サイトを拝見して キュイエットに行ってきました。すばらしい」と声をかけていただくことが多くなり、今年は3組もあったほどである。中にはわざわざ立ち寄られて呼び鈴 を押して「紹介ありがとうございました」と、いわれることもありこちらが恐縮するほどだった。

家族で食事
これまた恒例のシェフと一緒の当日の家族の記念撮影。(2013.10.14)
この年も食事は申し分なく、駄文を付け加えることなどないのだが、シェフとしてはもちろんだがパティシエ(patissier 菓子職人)としても優れていて毎年その美しさと素材を活かした味に感心するばかりである。 デザートメニューにあった「栗のクレームブリュレ」を頼んでうなってしまった。家内に聞くとブリュレ(brulee))とは、焼きごてで菓子の表面を焦がしたものだそうで、さしずめ「焦がしたカスタードプディング」といったところだが、 栗の季節感と美味は特筆すべきものだった。次女はこれを別に注文して持ち帰っていたからよほど美味しかったのだろう。

NHK「キッチンが走る」に出演
2013年12月4日、山でお向かいで、山のホテルのレストランの味が落ちたのでやはりこの店に行くようになった森有子さんからメールが来た。「今テレビを見ていたら キュイエットのシェフが登場していました。日本各地をまわり、その土地土地の食材で料理を作る、という番組ですが、今晩は、山梨県。 笛吹市の柿と、甲州のワインビーフを食材に山田シェフが創作料理を作ってくれてました。山梨は桃とぶどうは良く知っていましたが、柿も採れるのですね。でも、そこの富有柿は、なんと一個二千円!もするそうで、んなバカな、柿って庭の木からと って食べるものでしょうと思っている庶民には、びっくりの値段でした」

こういう馬鹿高いものは私も嫌いで、現役のとき日本橋の千疋屋に「1個2000円」のリンゴ(昭和60年代)が登場したとき、隣の三越の1500円のラーメンと並べて批判記事を書いた覚えがある。今回、そういう食材を使う企画の番組だから目くじら立てても仕方ないが、「キュイエット」もNHKに発掘されるようになったかと 、陰ながらの応援者としては喜ばしいことである。番組の方はその後の再放送も見逃したが、この人の作るものならおいしいに決まっている。

台風が迫るなかの食事 2014年
2014年も皆健康に恵まれ「キュイエット」で食事することができたが、いくつかのハプニングのさなかとなった。まず台風19号の接近である。超大型で最大瞬間風速数十メートルが各地で観測され、鹿児 島の枕崎に上陸後、高知に再上陸、大阪・岸和田に再上陸、紀伊半島を横断して、静岡の御前崎に再々上陸し関東を縦断して茨城県で太平洋に抜けるという、この年2度目の日 本直撃型台風だった。我々が山荘を出るときは19号はちょうど紀伊半島にあったが八ケ岳は雨こそ降っていたが風はどういうわけか微風状態で、あまり危険を感じさせなかった。

しかし、この夜キュイエットを予約していた人たちにとっては「直撃」寸前とうつったようで、みなキャンセルして客は我々3人だけ。「全館貸切状態」で特別室での食事となった。 ハプニングはもうひとつ。孫たち、すなわち長女の家族5人も八ケ岳に来る予定だったので、総勢8人の大デレゲーションのはずだった。子どもたちはディナー初デビューというの で、マナーを教えられ、着るものもちゃんとしなくちゃとはしゃいでいたのだが、1週間前にパパが仕事で途中で帰ることになり一人減り、3日前には長女の優妃(小学4年)が学 校で転んで半月板損傷、というアクシデント。歩けないというのでついに断念した。

台風のさなかの食事
大型台風接近と孫の半月板損傷で3人だけの食事になった(2014.10.13)
本人は次女の電話に出てきて「楽しみにしていたのに」と号泣したという。そんなわけで嵐の夜に3人だけの食事になった。メインは毎年牛肉をとっていたが、今回は次女がエゾ 鹿ロース肉のソテー、家内が魚(スズキ)のポワレ、私が山梨県産鶏のソテーと別れたが、いつもながら地場産のミニミニトマト、ホオズキなどこだわりの食材と素晴らしい料理を 堪能したのだった

雨脚がきつくなってきたので高速道のことを心配してくれて、食事のサービスもいつもより30分ほど早いペースで出してもらう配慮があり、全員に見送られて帰途についたが 、例年だと渋滞している中央道はガラガラで一段と早く帰京した。

山田シェフにこの辺りで作られた桃ジャムを頂いた。桃ジャムについてはこのサイトの「八ケ岳の食卓」で特別に コーナーをもうけているくらいなので我が家製の桃ジャムと食べ比べしてみたいと思っている。

この食事の1週間前に株ェヶ岳高原ロッジの社長、役員たちと懇談する機会があった。とかくの評判のレストランの食事が改善されてきていると自賛の言葉があったので「食事に 感動するといういうところまではいかない。一度皆さんでキュイエットに行って見てください。得るところがあると思いますよ」と進言したのだった。

大村智博士のノーベル賞祝賀とかち合った! 2015

2015年10月12日、この年も3人揃って食事することができた。しかも孫娘2人も加わって。ありていに言えば押し付けられたのだが、爺・婆・叔母の3人は喜んで迎えた。昨年長女の家族5人も参加予定だったが一人が熱を出して来られなかった。今年は上の孫娘が受験間近で塾があり、両親ともども用事ができて家を空けるが下の2人(小学3年と幼稚園年長組)は留守番させるのも心もとないので、ちょうど八ケ岳に行く母親に「預けた」のである。

幼い2人は初めての「ディナー・デビュー」というので母親にドレスを着せられて送り出され、テーブルマナーも特訓されたらしく、ナイフとフォークは外側から取ることをわきまえていたがなに、ものの30分もすると掘りごたつの下に潜り込んだりして、いつもの活発な遊びぶり。

例年は出窓風の個室に案内されるのだが、子供が小さいので奥まった小部屋だった。掘りごたつがあり8人ほど入るようだが落ち着いた雰囲気の部屋で気持ちがよかった。

ノーベル賞と食事
ノーベル賞祝賀会にお相伴(2015.10.12)

さて私が食べたものを説明すると、オードブルは「フォアグラと県産ワイン豚のテリーヌ 季節野菜とビーツピューレ添え」。フォアグラがこれまで食べたことがない味と香りであった。メインは肉を取った。「牛フィレ肉グリエ ポルト酒と赤ワインソース  旬の野菜とともに」とメニューにあった。肉はニュージーランド産と国産和牛を選べたが、少し高くなる甲州和牛(+2400円)をとった。これまた絶妙の味。濃いソースだったから、ニュージーランド産でも同じだったかもしれない。

いつも感心させられる《デザート》はこの日は以下のようなメニュー。

○栗のクレームブリュレ 洋梨のソルベ(アイスクリーム)を添えて
○冷たいフォンダン(とろけた)ショコラとココナッツのソルベ(氷菓)  ヘーゼルナッツのチュイール(瓦状のクッキー)を添えて
○自家菜園の巨峰と赤ワインのジュレ  クリームチーズのグラスを添えて

いつもは的確な間をおいて出されるサービスがこの日は待たされることが多かった。午後6時から始まった食事が最後のコーヒー・紅茶(ここの紅茶がまたおいしいとは女性たちの評 )が出たのが午後8時40分。挨拶に見えた山田シェフがいうには、今年のノーベル医学生理学賞に選ばれた大村智・北里大学特別栄誉教授の受賞祝賀会が多く、この日もサービスが追いつか なくてすみませんとのこと。そういえば大村博士は韮崎高校から山梨大学に進んだ地元の人。特許料で韮崎に美術館から温泉まで掘った方だという。韮崎高校はサッカーの名門で中田英寿元 選手が出たところである。地元の喜びが伝わってくるような一夜であった。

グルメの秋 満喫 2016

食事2016
今年も3人そろっての食事ができた(2016.10.10)
2016年も家族3人で「キュイエット」のテーブルにつくことができた。この年の夏最大のイベントを挙げれば、世間ではリオデジャネイロ五輪でもちきりだったが、山荘にはテレビがないの で皆目知らないで過ごした。個人的には大学時代の馬術部の同期生7人が集まる「馬術部38喜寿の会 in 八ケ岳・草津」が最大のイベントだった。

北海道などからやってきた昔の仲間をここに案内しようかとも思ったのだが、なにせ貧乏な学生時代だった。日本酒1升あれば焼酎2升に替えて飲み、自分たちで夜っぴて肉をさばい た羊肉で牧草地で囲むジンギスカンが最高の贅沢だった。なので、仲間とは山荘の白樺林でジンギスカン鍋を囲んで昔の思い出に浸った。

10月10日、家内と次女が楽しみにしている山ぶどう狩りでバケツ1杯分の収穫を楽しんだ足で「キュイエット」には夕方6時についた。この時期、秋も深くなり、周りがとっぷり暗くな る時刻である。山田シェフと1年ぶりの再会を喜んだあと食事に入った。

オードブル2016
いつもキュイエットのオードブルには感心する
この店のオードブルにはいつも感嘆する。写真は小生がこの日、食べたものだが、メニューの名前は忘れたものの、例えば「フォアグラとワイン豚のパテ 季節野菜とビーツのピュー レ添え」などとあるうちの「季節野菜」というところだけでも、なかなかのものだ。皿のまわりにさりげなく置かれている野菜というのは、近くでとれたイチジク、食用ホオズキ、 アスパラガスにこれまた近くの南アルプス市の農家で最近栽培をはじめたかぼちゃのようなナス(左端のパイナップルのようなもの)とかいう具合である。サービスの女性の説明に 聞きほれているうちに口にするのがもったいないような美しさである。

ベストワイン
今年のベストワインに選ばれた
韮崎の「アダージョ上ノ山2015」
ここで筆者の予言である。来年あたりには地元、韮崎のワイナリー「ドメーヌ茅ケ岳」の赤ワインがキュイエットのメニューに登場すると思う。新聞記事で知ったばかりだが、こ のワイナリーの代表、安部正彦さん(55)は大手メーカーを早期退職し、50歳を過ぎてから栽培と醸造を学び、1年前に立ち上げたばかりのワイナリー「ドメーヌ茅ケ岳」(山梨県 韮崎市上ノ山)の赤ワイン「アダージョ上ノ山2015」が、9月に東京都内で開催された品評会「日本で飲もう最高のワイン2016」で、「ベスト日本ワイン」に輝いたという。夫婦 で初めて仕込んだワインが最高賞の栄誉を得たそうだ。(2016.10.14 産経新聞)

昨年はノーベル賞の大村智博士の祝賀会に出会った。地元の食材を大事にする山田シェフのことだからきっとこの赤ワインで一品を編み出すだろうと思うのだ。

【2020年正月、久しぶりに訪問】

家内と次女
家内と次女と3年ぶりの訪問
年号が令和2年に変わった2020年1月4日、3年ぶりにキュイエットで食事した。この間何度も店の前を通りかかったのだが、いつも桃ジャム用に特別に分けてもらっている桃農家に返却するパケットを届けるのに急いでいたり、予約していなかったりでパスしていた。

直前の2019年12月末、突然、雪の正月を迎えたくなって家内と次女の3人で八ケ岳の山荘に出かけた。29日に入荘して、翌日は急な降雪で急坂でオールシーズンタイヤも効かないスリップの恐怖を味わい慌ててチェーンを付ける羽目になったりしたものの、チェンバロとソプラノのニューイヤーコンサートを楽しんだり、八ケ岳高原ロッジで正月料理を食べたりしていた。

前年の今頃は入院手術の身だったのだが、退院後体質が変わったのか、あれほど好きだった日本酒とビールがさっぱりうまくなくなって、牛肉も敬遠するようになった。そんなことから「キュイエットなら料理がうまく感じられるのではないか」という思い入れもあってこの日の訪問となった。

帰京の予定時間の関係でランチの時間帯だった。まず出て来たアミューズグール(客の注文ではなくシェフのその日のセンスで出される”突き出し”のようなもの)は「エスプーマで仕上げたヨーグルトのムースと洋梨のマリネ」。エスプーマというのは、亜酸化窒素ガスを添加してつくるふわふわのムースのことである。


アミューズグール
富士の介の自家燻製 レモンクリームと
アーモンドロースト添え
オードブルに出てきた「富士の介の自家燻製 レモンクリームとアーモンドロースト添え」が見事なものだった。青い朝顔のようなエディブル・フラワー(食用花)からハーブ、ミニトマトに至るまですべて地元山梨産にこだわったものだ。「富士の介」というのは説明しないとわからないだろう。山梨県水産技術センターがキングサーモンとニジマスを交配して10年がかりで開発した新種のブランド魚のことで、2017年に一般公募で「富士の介」と命名されたものだ。2019年11月に初出荷されたばかりで、いち早く、燻製という山田シェフの一手間かけた形で登場した。

アミューズグール
鴨胸肉のロースト タスマニア産粒マスタード添え
メインディッシュに3人とも選んだのは「鴨胸肉のロースト タスマニア産粒マスタード添え」。私が選んだ理由は上述のように、入院生活を送ったののだが、退院後は体質が変わったのか、牛肉ステーキなどは敬遠するようになったのだが、鴨なら食べられそうだと思ったからだ。はたして味付けもさっぱりしていて、出された2切れのほとんどを食べられた。

アミューズグール
デセールは彩りも美しい
デセール(英語ならデザート)は「苺のバシュラン(スイスで牛乳を原料として生産されるウォッシュチーズの総称)仕立て マスカルポーネ(ティラミスなどに使われるクリーム状のチーズ)とホワイトチョコレートのソース」。写真のようにイチゴがふんだんでクリームの味の舌触りが心地よいものだった。

アミューズグール
再会を約して、我が家族と山田シェフ。

焼き上がったばかりのパンをおみやげに頂戴して記念写真を撮って外に出ると、腫れ上がった南アルプスの山々が眼前に輝いていた。食欲不振に悩んでいたのがウソのようだった。

【2022年秋、娘や孫と6人で食事】

二年ぶりに2022年10月10日、家族6人で「キュイエット」でディナーを楽しんだ。

八ケ岳高原ロッジの音楽堂で9日、千住真理子のヴァイオリン演奏会があり、家内と娘2人、孫の真妃の4人が出 かけた。翌日、配管が凍結する冬に備えて山墅の水抜きをして下山するという慌ただしい日程だったが、「キュイエット」に行ったことがない長女がこの際ぜひにと所望したためだ。

優妃は高校でミュージカルの演出・監督をしていて、舞台稽古があるから来られず、パパは美妃とクルマで来る予定だったがテレビ局の仕事があってダメになり美妃一人前夜バスでやってきて6人での会食となった。暮れなずむ甲府盆地の夜景をバックにいつもながらのフレンチを堪能したが二つほど感心したことがあった。

2022年
2022年10月10日、娘孫ら6人と食事。山田シェフ心づくしの料理を楽しんだ。

メインの料理には「八ケ岳山麓の鹿肉のソテー ソースポアブロート」というのを頼んだ。ポアブロート( Poivrade)というのはコショウのことで、ジビエのダシ汁にコショウを効かせたジビエの定番なソースのことだそうだ。

山墅は八ヶ岳高原ロッジのさらに上にあるが、毎年シカの食害に悩まされている。長野県南牧村は両耳と尻尾を持参したハンターに1頭あたり1万円払って年間1000頭も駆除しているが、殺して穴をほって埋めるだけという馬鹿なことを繰り返している。数年前からジビエ振興策として村内に食肉処理場を作るよう提言している。国と県から9割の助成金が出るからそう負担にはならない。ところが村長以下一向に動かない。

鹿肉
鹿肉のソテー。ジビエの美味なることを実感。
私たちが自然郷で開催している「緑陰トーク」という文化講演会があり、今年で5回目になるのだが、彼らを啓蒙する意味で来年のテーマに「ジビエ」を選んだ。日本ジビエ振興教会から講師を呼んで鹿肉のステーキも食べてもらう企画を立てている。そのため、美味しいに違いない山田シェフの手になる鹿肉の料理を食べておこうという意味があった。

少し私には固かったが実に美味で、フランスなどでは鹿肉が高級食材扱いされている意味が十分わかった。シェフに聞いたら肉はランプと言われる部位だという。 ランプ(rump)肉とは、直訳すると臀部で、牛の腰、モモ、尻にかけてとれるやわらかく上質な赤身肉を指し、有名なサーロインの隣である。来年は十分熟成させたランプ肉にしようと決めた。

茸
キノコのエチュベ
もう一つ感心したのは「山の水農場のキノコのエチュベ」である。エチュベは水分をほとんど入れずに蒸し焼きにして、素材のおいしさを味わうフランスの料理方法だ。山の水農場というのは山梨県北杜市白州町にあるキノコの専門店で、できるだけ地元山梨の食材を大事にしたいという山田シェフのこだわりがわかる。他にも食用ホオオズキ、エディブルフラワー、鴨、鱒などほとんど地場の食材が出てきた。

名前は知らないがキノコは数種類入っていた。キノコは香茸というくらい香りが持ち味だが一つでも香りが強いものを入れるとぶち壊しになる。この料理にもしマツタケを入れたらどうなるかと考えればよくわかろう。ぬめりがあって食感がいいもの、すこし香りがあるものなどが混在していた。白い茸と赤い茸があったが同じような色をした茸のなかで彩りを添えていた。こうした配慮にいたく感心した。

皿
娘たちからのメッセージが届いた。
デザートのとき「パパ、ママありがとう」と書かれたプレートが出てきた。2本のローソクも灯っていた。娘たちが用意してくれたものだが、孫まで三世代の顔ぶれを見て、改めて80代に入った我が夫婦の人生を振り返った。膵がんの術後3年になる自分は、毎回「キュイエットの食事もこれが最後かも」と思いながらフォークを手にしている。山墅に通い始めて今年で35年になる。良いフレンチの店を見つけたものだ、との思いを新たにした。

【 営 業 】
営業時間 11:30〜14:30 
18:00〜21:00
定休日 火曜日
【 アクセス 】
・クルマだと中央道・韮崎ICを出て右折、最初の信号を右に入る と「茅が岳広域農道」だが、その100メートルほど先。
・中央線韮崎駅よりタクシーで10分。
・別掲のそば屋「瓢亭」のすぐ上になる。
・駐車場は30台分ほど。

そば 「瓢亭」 (ひょうてい)
〒407-0175 山梨県韮崎市穂坂町宮久保934−2  
電話 0551-22-4359
畑の中の民家といった趣の瓢亭
2003年の暮れにこの住所に移転したが、それまでは韮崎市内の目抜き通りにあった。そばの名店を紹介する雑誌、 ムック本は数多いが、たった100店に絞ったのが「そば店100」(柴田書店 1200円)。東京が半分を占めているか ら、地方となるとほんの少数になる。その2002年版に山梨でたった2軒だけ紹介されているというので有名になった。 どうして暮れも押し詰まっての移転だったのか、亭主が新聞に寄稿した文章を読むと分かる。

「『年越しそば』は、私どもの店でも年に1回の人気メニューである。 新粉で打ち始めたころは、ぼつぼつ紅葉の便りを聞くころであった。やがて周囲の山々に白いものが舞い始め、はや1年を締めくくる『年越しそば』の時季に。なんとなく気ぜわしいが、このそばを打ち終わらないことには年を越せない。そば職人の宿命でもある。

年越しそばは金銀箔を作る時に散乱した金銀をうまく集めるのにそば粉を使ったことから、商人が大みそかに売掛 金を回収する際、そばと同じようにうまく集められることを願い、その名が付けられたそうだ。

年越しそばがいつごろから食べられるようになったかは定かではないが、15世紀末、朝鮮半島から奈良の東大寺 に来た元珍という僧が、つなぎに小麦粉を使ってそばを打つことを教えたと聞いている。 こうして打ったものを『そば切り』と呼ぶようになった。たぐって食べるから早い。これが江戸っ子に人気を博したという。」(「瓢亭」主人 吉田朋光)

なにがなんでも年越しそばに間に合わせるための師走移転だったようだ。その引越し先がすごい。韮崎インターチ ェンジの出口、民家もまばらな丘陵地の畑の中に写真のような普通の民家がある。最初は通り過ぎてあきらめかけた。戻り道で屋号の看板を見つけた。親父夫婦と息子と娘4人でやっている。移転と共に全品50円値上げした のが残念だが、客が追いかけてクルマでやってくるという”はやる店”の条件を兼ね備えている。

「盛り650円」「ざる900円」。海苔だけでこの差額はひどかろうといつも思っているから(この店では、海苔が違うといって いる)、私は「盛り」と「鶏もつ煮」(800円)、家内は「にしんそば」(1000円)を頼んだ。「鶏もつ煮」 は甲州ではたいていの店で出てくる。地元の人間は気づいていないが、外部からみると奇異な感じがする。なにか甲州人が特別好きないわれがあるのだろうか。ここの「鶏もつ煮」は他の居酒屋などとすこし異なり、もつを甘辛く、汁けがなくなるまで煮込んである。砂肝やレバーが、それぞれの食感を残している。これで酒を飲んでいる人も多い。

「にしんそば」は京都が有名だが、甲府盆地ではかなり見かける食べ物だ。鰊(にしん)の干物は、外部から新鮮な魚が入らない盆地での保存食として発達した。みちのく米沢盆地で過ごしたことがあるが、ここでも「身欠きにしん」がどこの家でも廊下にぶら下がっていた。 昆布巻きにして食べる。この土地の「にしんそば」はやはり盆地ゆえに発達したものか、それとも武田信玄が棒の道を通って京に登ったのとなにか関係があるのか、京都と同じ味付けだ。

他の客は天丼(2000円)、天盛り(1000円)を食べている人が多かったところを見ると、天ぷらが自慢なのだろう。ごま油のにおいがしておいしそうだった。ほかのメニューには「なっとうそば」「おろしそば」「つつじそば」、「鶏もつ盛り」などがあった。そばつゆに鶏もつが入っているのだろうか。

この店のそばつゆに特徴がある。薄味に見えるがしっかりしていて濃い。通常は一度に作ったものを、 何日間か 寝かせて使用するが、ここでは毎日作る。

【 営 業 】
営業時間 11:30〜20:00  日曜日は午後2時から5時まで休み。
定休日 火曜日(祝日の場合は翌日休) 。
【 アクセス 】
・中央道 韮崎ICのすぐそばになる。インター出口の信号を右折して10数メートル、またすぐ右折すると、中央 道のフェンス沿いの細い道に入る。直進して50メートルほどの左手、引っ込んだ場所。
・14台入る駐車場がある。

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甲府

甲府は途中通過の街なので八ヶ岳への行き帰りでは一気に駆け抜けていた。渋滞を避けて裏道の広域農道を通ったり、北側の山の中を通るクリスタル ラインが通行止めでやむなく下に降りるなどしているうちに、温泉に入るようになった。富士火山帯沿いで400も温泉があるのだ。ついでに食事をする。県 都だけに結構いい店があるのだが、「甲府時間」というのか、ほとんどの地元資本の飲食店は午後2時から夕方まで休む。不思議だ。

支那そば 「蓬莱軒」 
〒400-0032 山梨県甲府市中央4-12-28
TEL 055-233-2458
「蓬莱軒」
ここは甲府で有名なところ。創業は昭和39年、以来60余年。これまで雑誌・専門誌などの《全国100選の店》やテレビ番組に取り上げられ全国4位になったこと もある有名店だ。

私と同じく「支那そば」の名前にこだわるところがうれしい。一般には「ラーメン」と「支那そば」は同じものではあるが、サイトの亭主は厳然と区別している。今はないが札幌の北16条、北大そばにあった「爐」(いろり)のものが「ラーメン」であり、これまた今は消えたが昭和30年代まで大阪・心斎橋筋の戎橋裏にあった「桃園」ものが「支那そば」である。

だからここの店名の「支那そば・餃子工房 蓬来軒」など大いに支持する。店主 いわく「差別用語ではないのに消し去られた言葉”支那そば”。そのルーツをたどり、再現すべく、努力を重ねてきました」とある。そのとおりなのだ。
サイトの亭主の親父は「支那哲学」の教授だった。戦前は「支那」表記一本だったが、戦後の1946年になって中国政府から「支那は差別用語だから中国と呼べ」という中共の言い分を、愚かな日本外務省が受け入れて学術分野以外での使用が原則禁止され、ついでに「支那そば」もそのとばっちりを受けた。その呼称の復元を謳う店主の「発祥」宣言の意気や大いによしとする。

支那そば
メインの支那そば
さてその味、スープは鶏がらだしを使ってあっさり醤油味、というのだが、鰹だしの味が勝り、昆布、鰹出汁、煮干し等も使っていて醤油色が濃い。もうすこし鶏がらスープ にこだわってもらいたいところだ。麺は縮れの細麺。 チャーシューは今では珍しい食紅のもので1センチ程の厚さがあり、支那竹、ナルト、ノリ、その上にたっぷり刻みネギが入っている。

豚骨系などしつこいラーメンが多い中、おいしい部類には入るが、サイトの亭主の分類では「ラーメン」である。上述の「桃園」の「支那そば」のスープは「蓬莱軒」よりもっと澄んでいて、麺はもっと細かった。

支那そばというとき必須のものは、「梘水」(かんすい)を使った麺であるということだ。鹹水、乾水、漢水、鹸水と書き方は多種だが、「麺に独特の食感や喉越し、色味を与える添加物」で成分的には炭酸カリウム(液体かんすい)か炭酸ナトリウム(固形かんすい)だ。この店の麺はもちろん「かんすい」を使っている。
餃子
餃子
支那そば              850円
五目そば           1150円
チャーシューメン        1200円
湯麺(タンメン)      1050円
広東麺           1050円
天津麺           1150円
焼きそば          800円
餃子            500円
炒飯             800円
中華丼            950円
(2023年4月)

中にはテーブル30席・座敷42席・カウンター6席ある。甲府の中心部にある店舗としては広いが行列で待ち時間があるときも。そんなときは名前を書いて呼び出しを待つ11名掛けの待ち合い席がある。
ホーム・ページがあるが、これには必須の価格つきのメニューがない。

【 営 業 】
営業時間 昼  11:00〜14:30
夜  17:30〜21:00
定休日 火曜日
【 アクセス 】
・甲府のほぼ中心部にある。甲府駅から歩いて20分ほどの場所。遊亀通り南下し法人会館角左折。
・駐車場は店の前は3台だが直前や近くに10台ほどスペースあり。

甲府鳥もつ煮 「奥藤」 
〒400-0043 甲府市国母7−5−12
TEL 055-222-0910
「奥藤」

2010年8月、厚木市で開かれたB級グルメの祭典「第5回B−1グランプリ」で「甲府鳥もつ煮」がゴールドグランプリを獲得したというので突然、甲府に観光客 が押し寄せるようになった。経済効果は年間28億円だと試算するところもある。

八ケ岳に向かう道中のB級グルメ推奨店のピックアップコーナーを設けている当サイトとしても取り上げないわけにはいかない。しかし、山梨あたりを徘徊した人な らわかろうが、そば屋から居酒屋にいたるまで、どこでも普通に出てくる食べ物である。私も隣の人がこれを食べながら飲んでいるのを見て真似して頼んで、結構 いけることは、そば屋「瓢亭」のくだりでも書いた。

水気がなくオレンジ色のキンカンが
いろどりの「甲府鳥もつ煮」
もつ煮とは、牛、豚、鶏、馬などの内臓を煮込んだ料理の総称である。近ごろでは駅前居酒屋などにこれ専門の店もあり「もつ煮込み」とか「もつ煮」とかいう看 板を掲げている。牛や豚の内臓肉を使用したもつ煮込み(関東風煮込みや九州のもつ鍋)は汁気が多い味噌汁に近いイメージだと思うが、「甲府鳥もつ煮」は少し 違っている。

山梨県で食べられている「甲府鳥もつ煮」はニワトリの内臓「もつ」を砂糖と醤油で煮込んだもので、完成品は水分が少なく、照り焼きに似た状態で出てくる。「 もつ」と総称される鶏の内臓部位のうち、主に砂肝、ハツ、レバー、ヒモ、「キンカン」を使用した料理だ。「キンカン」というのは、鶏の体内で成長途中の卵の 名称で、成長過程で白身(卵白)や殻が作られて卵になるのだが数珠のような形で存在する。この腹子(まだ生み出されていない卵)は柑橘類のキンカンに似たオレ ンジ色をしていることからの名前だ。

「甲府鳥もつ煮」の発祥はそば屋「奥藤(おくとう)」である。甲府のそば屋の名店「奥村」から暖簾分けされた職人「塩見藤四郎」が始めた店なのでこの屋号に なった。当時、鶏肉はカシワとして上客の口にしか入らない貴重な肉だったが、一方鳥の内蔵である「もつ」は食べられることなく捨てられていた。1950年(昭和25 年)頃に2代目主人・塩見勇蔵が鳥もつを使って料理を造ることを発案、調理担当の弟・塩見力造がレシピを完成させた。砂糖と醤油だけを使って小鍋で素早く照り 煮する。飴状のタレが絡まっていて汁気はない。このタレ自体は焼き鳥で使用されるタレと同じ味がする。

調理のこつは強火と素早い鍋振りだという。鍋の持ち手が焼けてすぐに使い物にならなくなるため、奥藤本店ではペンチでつかんで鍋を振る独特の方法で仕上げ る。
鳥もつ煮は小500円と大650円。そばとセットになった鳥もつ煮セット1130円がある。

そば屋発祥の料理だけに山梨県のそば屋やほうとう料理店の定番となり、逆に焼き鳥屋ではあまり出てこない。B級グルメ日本一に選ばれてから、「奥藤本店」駐 車場は県外ナンバーの車で埋まるほど。今ではとんかつ店やスーパーでも扱うほどのフィーバーになっている。

本店からのれん分けした10店で「奥藤暖簾会」を作っていて、甲府市一帯でレシピを同じくしたものが食べられるが、多くのそば屋や飲食店でも出している。

【 営 業 】
営業時間 11:30〜14:30
17:00〜20:30
定休日 水曜日(祝日の場合営業)
【 アクセス 】
・駐車場あり(20台)。中央道・甲府昭和ICから5分。国道20号(甲州街道)の国母交差点からすぐでわかりやすい。
・身延線の国母駅から徒歩15分ほど。


ブームで甲府駅前に本店移す

奥藤駅前
奥藤駅前本店
B級グルメ大会で優勝して以来、土日には全国各地から客で長蛇の列が出来るほどの繁盛でとうとう2011年3月、「奥藤本店」甲府駅前店を開業した。JR甲府駅前 のバスターミナルの近く。

もともと大正2年に駅前で開業したそば屋で、甲府鳥もつ煮もこの地で開発されたのだが、人口のドーナツ現象にともない郊外に移転していた。ブームで15年ぶり に駅前に戻ったもので、上で本店として紹介した同市国母の店舗は、「国母店」として営業を続ける。

駅前店は平和通り沿いにあり、広さ約188平方メートル。80席。もう一つの郷土食「ほうとう」の小作本店も近く。手打ちそばと鳥もつ煮を組み合わせた 「鳥もつセット」(1180円)をはじめ、地物を意識したメニュー。午前11時から午後8時半まで営業。

甲府駅前店  山梨県甲府市丸の内1-7-4   電話 055(232)0910

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静岡市・三島市

八ヶ岳のB級グルメガイドに静岡県とはなんだ、と思うかもしれないが八ヶ岳からすぐなのだ。中部横断道 がほんの少しの区間しか開通してないが、韮崎から国道52号線を走れば、最近静岡市に合併になったが 清水市に出る。中央道・河口湖線を使えば沼津まですぐだ。要するに静岡市と三島市にうまいうなぎ屋が あるから紹介しようというだけのことだ。何かのついでにどうぞ。

うなぎ 「石橋」 
〒422-8053 静岡県静岡市西中原1−6−13  
TEL 054-281-5432
「石橋」は東名静岡IC近くにある。

静岡に1年間ほど赴任したので知った店。うなぎの「一本焼き」といいうか「姿焼き」というか頭から尻尾までまるごと出てくる。釣り針もついてくるという伝説があったが養殖うなぎの時代にそれはない。ここのうなぎは同じ静岡県吉田町から来る。メニューは「一本焼き定食 2,450円」だけ。蒸すか焼くか、料理法の分水嶺は浜名湖にあるのだが、ここは越境してまるっきりの関西式で、蒸さずに焼く方式。

丸ごと一匹、頭がはみ出ているのが名物
うなぎが入れ物からはみだして出てくる。しっかり皮を焼くのが旨さのコツだそうで、コゲが少し多い。母を連れて行 ったときは、黒い炭のような頭付きに恐れをなして取りよけていた。ご飯はコシヒカリで静岡名産の「輪っぱ」に入って出てくる。おいしいのだが、「輪っぱ」がどうにかしたらいいのにというほどはげちょろの古色蒼然とした年代もの。昼前後は行列が出来る。紙に名前を書いて順番を待つ。

「鰻の稚魚が入荷し難くなったので50円値上げさせて下さい。」と書かれていたりする。2000円以内の時から知っているが、時々小刻みに値上げする。石橋というのは経営者の姓で先代の創業から40年ほど。壁に柳家小さん、永六輔、藤村俊二など古い名前の色紙がある。静岡を訪れる芸人は、ここのうなぎか丸子のとろろ汁を食べて帰るのが定番になっている。

【 営 業 】
営業時間 11:00〜14:30 17:00〜20:30
(土・日・祝日)    11:00〜20:30
定休日 年中無休
【 アクセス 】
・ 東名静岡インターを右に出てすぐ近く。通称「南幹線」という道と交わる「南安倍町」交差点のすぐそば。 通りに面していない。
・駐車場何か所かに分散。

三島のうなぎ
三島市では古くからうなぎは「三嶋大社のお使い」とされて、食べなかった。徳川二代将軍、秀忠は三島に泊まった際、家来が神社の神池のうなぎを食べたのを知り処刑したと伝えられるほどで、市内を流れる桜川などにはたくさんのうなぎがいた。幕末になってやっと食べられるようになった。現在市民11万人だが、うなぎ屋が80軒もある「うなぎの町」だ。三島のうなぎがうまいのは富士山の湧き水を使って餌なしで1週間真水にさらし余分な脂肪や臭みを落とし身を引き締めるからだといわれる。

三島のうなぎ屋の御三家は「桜屋」と「水泉園」と「うなよし」だろう。「うなよし」は 「本町うなよし」と「元祖うなよし」(うなよし本店とも)があり争っている。以前に新聞社の三島通信部にいた老記者と私の私情を交えて独断すれば、上に書いた順番でうまい。 番外に「うな繁」が入ると思うが、まあ似たり寄ったりで、微細に味を表現するほどの違いはない。 値段と量と店構えで独自にランクすればよい話だ。ただ三島という場所は他所よりうなぎが旨いとだけはいえよう。一切の論評なしに紹介する。

うなぎ 「桜屋」
〒411-0856  静岡県三島市広小路13−2
TEL 055-975-4520 
「桜屋」
ここのうな重は何枚うなぎが入っているかで値段が以下のように違ってくる。
重    箱 2,200円(2枚)
2,800円(3枚)
3,500円(4枚)
2,200円
上    丼 2,800円
蒲 焼 定食 3,000円


【 営 業 】
営業時間 11:00〜20:00
定休日 水曜日
【 アクセス 】
・ 伊豆箱根鉄道「三島広小路」駅すぐ。

うなぎ 「水泉園」
〒411-0036 三島市一番町1−28
TEL 055-975-0268
「水泉園」

戦後すぐからの店。うな重(きも吸、香物付)1,900 円。

 

【 営 業 】
営業時間 11:00〜15:00
16:00〜19:00
定休日 水曜日
【 アクセス 】
・JR東海道新幹線三島駅から徒歩5分。市立公園楽寿園の正門前。間口2間ほどの小さな店。

うなぎ 「元祖 うなよし 」
〒411-0848  三島市緑町21−6
TEL 055-975-3340  
並うなぎ丼(うなぎ1匹) 1,800円
上うなぎ丼(うなぎ1.5匹) 2,500円
特上うな丼(うなぎ2匹) 3,150円
この他、うなぎ豆腐(うなぎの身を粉にし豆腐にし、塩で食べる)530円。

【 営 業 】
営業時間 11:00〜19:30
定休日 木曜日
【 アクセス 】
・沼津インターから、国道1号線伊豆方面へ。すぐ。

うなぎ 「本町 うなよし 」
〒411-0855   三島市本町1−37
TEL:055-975-0499   フリーダイアル:0120-30-0499

「うなよし」は2軒争っているので、こちらは住所をとって「本町」(ほんちょう)うなよしという。

うな丼(並)  1,680円
うな丼定食 2,730円
特上うな丼(うなぎ2本) 2,940円
かば焼き定食 1,995円

 

【 営 業 】
営業時間 11:00〜21:00 (オーダーストップ20:15)
定休日 無休
【 アクセス 】
・三島駅から徒歩7分。

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