この山墅に入ったとき、カラスとハトしか識別できませんでした。ハトは日本に11種いて、我がエサ場に
来るのはヤマバト(キジバト)という種類らしいのですが、いくら見てもドバト(伝書鳩)とどこが違うのかわかりません。 |
この項の目次
シジュウカラ ゴジュウカラ コガラ
ヒガラ ヤマガラ
(以上の5つはカラの仲間。「カラの巡邏」で混群をつくってやってくる)
コゲラ アカハラ アカゲラ
アトリ イカル シメ ウソ
カワラヒワ マヒワ アオジ キビタキ
カケス キジバト エナガ ビンズイ
カッコウ ジュウイチ ホトトギス
ウグイス ホシガラス ミソサザイ
オオマシコ ベニマシコ ハギマシコ
ジョウビタキ
野鳥観察のよすがになったのはアメリカで買い込んだバードフィーダーです。
その多彩なバリエーションを【バードフィーダーのいろいろ】で紹介しています。
もっともほとんど品切れ状態ですが。多彩な種類の一端が分かると思います。
私の場合、野鳥の識別はカラの仲間の観察からはじめました。というのも、「カラの巡邏」というおもしろい言葉を知ったからです。
まず、お隣の富士見高原で戦後7年間暮らした詩人の尾崎喜八の日記を紹介します。人となりは
《八ヶ岳雑記帳》の中の「文学作品にみる八ヶ岳」
を見ていただくとして、八ヶ岳の自然観察に没頭したこの日記(昭和21年8月22日)に「カラ類の巡邏(じゅんら)」というのが出てきます。
○ カラ類の巡回
朝七時の観測の帰りに、林の中でドュラマンの所謂「カラ類の巡邏」に出合ふ。四十雀と柄長とを主としてそれに少数の日 雀をまじへた四十羽ぐらゐの群れだ。四十雀の地鳴(ツーツー、ツーチョ)と警戒音(ガシャ ガシャ)、柄長の低いトレモロ( トゥリリリリ)、白雀の「チイ、チイ」が実に賑やかである。
○ カラ類と一緒にゐるコゲラ
それに交って二羽のコゲラも樹幹をコツコツ叩いて調べてゐる。どうも比の数量の観察によると比のカラ類の仲間のゐる所に はいつも揃って一、二羽のコゲラを見るやうだが、事によったら彼等も亦一緒になって巡羅をしてゐるのではないかと思ふ。 それとも彼等の領分へカラ類の進入して来たのを見て興奮して活動を始めるのかとも思ふ。
「カラ類の巡邏」
野鳥観察を始めた人が最初に覚えるのがこの「カラ類の巡邏」というものです。「巡邏」というのはパトロールのことですが、漢字がむずかしいせいか近ごろの学校では「カラ類の巡回」とか「カラの混群」と教えているようです。上に出てくるドュラマンというのは最初にこの習性を
報告した鳥類学者のようですが、ビール片手にガラス窓の外を見ていて、このとおりのことが起きたときからすっかり野鳥のとりこになりました。
どういうことかというと、普通の野鳥は同じ種だけで群れをつくり、巡回するにしても同じ仲間とだけですが、シジュウカラ、 ゴジュウカラ、コガラ、ヒガラ、ヤマガラ、エナガなどカラ類は一緒に群れをなして林の中を移動して食餌すると言うのです。これに どういうわけか種類の違うコゲラ、キクイタダキも混じっていることが多いのです。でも繁殖はちゃんと同種だけで 行います。尾崎喜八の日記はこのことを書いているのです。
「カラ類の巡邏」は12世紀から知られていました。
冬野には こがらやまがら とび散りて またいろいろの 草の原かな 藤原信実 (新撰和歌六帖)冬の野には小雀・山雀が飛び舞っている。秋の草花が枯れてしまった原も春になればまた、以前のようにさまざまに人の関心を引く平地になるのだろうなあ、といった意味ですが、コガラ、ヤマガラの混群は早くから知られていました。。
関東南部のカラの混群はヤマガラ、シジュウカラ、エナガが主となり、コゲラ、メジロも加わり、関東北部に行くと更にコガラやヒガラが加わり、やや高地に行くとキクイタダキが混じるといいます。
我が山小舎では時間は不定ですが、一日に何度となくこの「カラ類の巡羅」に出会います。小鳥たちはどこからか突然やってきます。餌場はもちろん周りの木々にたくさん止まっています。そして小さな啼き声を残しながらまたどこかに去っていきます。次に来るのは同じ群れなのか違う群れなのか分かりませんが、同じようににぎやかにヒマワリの種子やピーナッツ、冬場や春先には牛脂まで突ついて食べていきます。リスが来ているときはエサ場の取り合いでてんやわんやの騒ぎになります。
混群を作る理由ですが、カラ類はそれぞれよく似た警戒の声を持っ ており、他の種類のカラ類があげる危険信号で群全体が回避することができるからと考えられています。また、同じ1本の木 に集まっても、種類によって枝先、幹、木の中程など活用する場所が異なり、混群を作っても食べ物で競合することはないからという説もあります。
カラ類の5種(シジュウカラ・ヤマガラ・コガラ・ヒガラ・ゴジュウカラ)の見分け方を解説した動画があるのでご覧ください。 《 カラ類の見分け方 》
大きさは シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラの順で、けんかもこの順で強い。
ピーナッツで求愛行動するシジュウガラのオス(左)=千葉県・八千代市の及川正彦氏撮影 (クリックで拡大画像に) |
春先オスはメスにつきそって自分がこれと思った巣をいくつもメスに見せてまわるそうです。新居候補地を案内する不動産屋の趣です。
巣はキツツキの古巣や樹洞などに作りますが、人間が設置した巣箱もよく利用します。敷地の林の中に5つほど巣箱が
ありますが、毎年2つほど使った跡があります。でも巣立ちは見たことがありません。
郵便受けや伏植木鉢なども利用するといいますからイージーな性格のようです。
小型の昆虫類、幼虫、クモ類、木の実などを食べます。我が家ではもっぱらヒマワリの種子を食べ、牛脂とリンゴにつついた
跡が残っています。
2010年夏、八ケ岳の山小舎でバードフィーダーを購入いただいた千葉県・八千代市の及川正彦様からご自分で撮影された写真を絵葉書にしたもの数葉をおみやげに いただきました。その中のシジュウカラのスナップが素晴らしいので差し替えました。上で説明したようにピーナッツを渡してメスのご機嫌伺いをしているところのようです。
囀り(さえずり)は「ツピツピツピツピツッピン」と鳴いて、地鳴きは「ツーツー」とか「ジュクジュク」というのですが
聞き分けは難しいです。
「四十雀の引導」という江戸時代のお話しがあります。
ある男が、死んでしまったシジュウカラを寺へ持ってきて小坊主に、あの世への引導(いんどう)を渡してほしいと
頼みます。「なにシジュウカラとな。人生わずか五十年というのに、なんじは小鳥の分際でシジュウカラとは生き過ぎたり。
カアーツ!」と引導を渡しました。一休和尚の小坊主時代のエピソードとされています。
むずかしや どれが四十雀(シジュウカラ)五十雀(ゴジュウカラ) 一茶
というのですが、これは私には見分けは簡単です。ゴジュウカラは木を垂直に上がり降りする習性があるからです。
地方によって呼び方は千差万別。まかかつちや(岩手)、しじゆうから(青森)、しじゆうぐら、ちんちかん、すじゆがら、しんじゆがら(山形)、ちちはい
(秋田)、ばかどり、しんじゆーがら(静岡)、ちんから、ひいちぶ(群馬)、ちんちがら(埼玉)、ちゆうちゆうがらがら、かーら
(千葉)、しじうがら(兵庫)、ぼんもつといくる(アイヌ)、ちんちから(八丈)、まつむし、おおがら、ちんちんから(長野)、しんち
ゆうがら、ちちんがら(山梨)、ちんちんからから、しじがら(愛知)、やまがら、ほしろ、まつくい、まつすずま(愛媛)、えだわたり
(滋賀)、まつかさどり(三重)、ししがら、しんしん(奈良)、けんちよう、しじうがら、はたけやまがら(広島)、むしくい、ほおじろ
(鳥取)、がら(大分)、しじゆうがらがら(福岡)、まつむし(栃木)、しろやまがら(島根、愛媛)、しゆんしゆんがら、しーながら
、しんくえどり、しんしんがら、すすんがら、すんすんがら、りゆーきうすずめ、じゆじゆがら(鹿児島)・・・
それだけ親しまれてきたともいえます。
シジュウカラは鳴き声の「単語」を二つ組み合わせて「文」をつくり、その「語順」を聞き分けて意味を理解している。つまり「単語から文をつくる鳥類を発見」という面白い研究が 、2016年3月9日 発表され大きな話題となりました。
鳴き声を組み合わせて会話しているシジュウカラ |
ダーウィン以来100年にわたって、単語をつなぎ合わせて多様な文を作り出す言語能力は「ヒト」で固有に進化した性質だと考えられていました。チンパンジーなどで異なる鳴き声を組 み合わせる種は見つかっていましたが、それによって意味が組み合わされる証拠は見つかっていませんでした。
鈴木俊貴氏を中心とする研究チームは、シジュウカラが仲間を集めて天敵を追い払う際などに「ピーツピ・ヂヂヂヂ」と2つの音声をつなぎ合わせていることに着目。まずは、それぞ れの音声が単独でどのような意味を伝えるのかを調査しました。
シジュウカラは10種類以上の鳴き声を組み合わせて多様な鳴き方をしているそうです。鈴木さんらは、野外に置いたスピーカーから、危険を知らせる「ピーツピ」と、仲間を呼ぶ 「ヂヂヂヂ」という2種類の鳴き声の録音を流し、周囲にいたシジュウカラの行動を観察しました。
「ピーツピ」単独では21羽のうちの大半が首を振って周囲を警戒し、「ピーツピ」 |
「ヂヂヂヂ」単独ではスピーカーに近づいた。
「ヂヂヂヂ」 |
二つを組み合わせた「ピーツピ・ヂヂヂヂ」では、多くが盛んに首を振って警戒しながらスピーカーに接近した。
「ピーツピ・ヂヂヂヂ」 |
つまりシジュウカラは組み合わせた音声から、それぞれの意味を抽出して同時に理解していることが示されことになります。
次に、別の34羽を対象に「語順」による違いを比べました。
「ピーツピ」と「ヂヂヂヂ」という2つの音声の順序を入れ換えて、野生のシジュウカラが発することがめったにない「ヂヂヂヂ・ピーツピ」という組み合わせを流すと、
「ピーツピ・ヂヂヂヂ」の時よりも、警戒行動やスピーカーに近づく行動が明らかに鈍く、ほとんど反応しませんでした。
「ヂヂヂヂ・ピーツピ」 |
鈴木俊貴さん |
サイトの亭主は八ケ岳でいつも見かけるこの小さい鳥がそんな「会話」をしていたのかと感心するとともに、こんな優雅な研究を続ける人もいるのかと二重の意味で感心しました。
上で鈴木俊貴博士の研究を紹介して数年後の2022年、京都大学白眉センター特定助教となった博士の研究がさらに進化して「ジャージャー」がヘビ、「ピーツピ」がカラスを意味する「言葉」であることなども解明した。このため「世界初、鳥の言葉を解読した男」として多くのメディアに取り上げられ、NHKのネイチャー番組でも取り上げられるようになった。その番組の動画がYouTubeにあるので 紹介します。また、研究の中身と氏の生い立ちなどを詳述したルポがあるので別項で取り上げます。
◇ ◇ ◇
「鳥の言葉」研究がさらに進化鈴木俊貴さんの研究はさらに進んで、2024年にはさらに驚きの研究成果を発表した。シジュウカラの「言葉」はウソ、コガラ、アカゲラなど「カラの混群」と呼ばれる10数羽で群れをなして林間を飛び回ってエサ取りをする鳥の間だけでなく、鳥類でないリスも「鷹(タカ)が来た」という声を聞き分けて、一斉に逃げることまで解明したのだ。
ただ鳴いているだけだと思われていた鳥たちの声に、人間と同じような単語や文章があることを発見した時は京都大学白眉センター特定助教だったが、2023年には東京大学先端科学技術研究センター准教授となり、さらに動物言語学という分野を進化させている。
上で「カラの混群」と書いたが、これは最近の用語で、明治時代には「カラ類の巡邏」と呼んでいた。「巡邏」というのはパトロールのことだが、漢字がむずかしいせいか近ごろの学校では「カラ類の巡回」とか「カラの混群」と教えるようになった。
「カラの混群」の「カラ」とはシジュウカラ科の鳥を指し、「混群」とは異なる種の鳥が1つの群れになることを指す。メンバーにはシジュウカラやコゲラ、エナガを中心に、平地ではヤマガラやメジロが加わり,少し標高の高い地域ではゴジュウカラやコゲラ,ヒガラ、ちょっと珍しいところではキクイタダキやセンダイムシクイなども見られる。我が山墅の餌台観察ではアカゲラやウソも参加している。
鈴木俊貴准教授は「カラの混群」には大きい順に力関係があるという。例えば、コガラが「集まれ」と鳴いてその仲間が食べているとき、シジュウカラがやってくるとコガラは追い払われた。続いてヤマガラがやってきてシジュウカラとけんかになった。さらに大きなゴジュウカラがやってくるとこれら先にいた仲間を蹴散らすという。
面白いのはここからで、先に来たのに次々大きな鳥が来てさっぱりエサにありつけないコガラはどうするか?「ヒーヒーヒー」(タカが来た」とウソ鳴きするという。他の鳥があわてて逃げたすきにエサを食べた。
北海道の帯広での観察では、エゾリスが鳥たちの言葉を理解していることも発見した。シジュウカラの「タカが来た」という鳴き声でエゾリスも逃げだした。リスは自分より視力がよくいち速く気がつく鳥たちの言葉を生きるために学習しているのだという。
こうした面白い研究はNHKの「ダーウィンが来た!聞いてびっくり!鳥語講座」で2024年放送された。鳥の「基礎単語編」から「文章編」さらに上述のような、言葉を使っただまし合いまで紹介されているので採録した。
「ダーウィンが来た!聞いてびっくり!鳥語講座」
ゴジュウカラはおもしろい鳥です。上述のシジュウカラと区別がつかないという一茶の句は頭で考えたものでしょう。
実際は誰でも識別できる特性があります。木の幹を上下の区別なく、頭を下にしながら歩き回るのはゴジュウカラ
だけなのです。枝の下側にとまって餌を探すこともあります。非常に活発に動く野鳥でカメラを向けても焦点を合わせるまもなく、もう動いていて、それだけにカメラに
納めたときは大変うれしいものです。バードウオッチャーはみな「撮れた?下向きを」というのが決まり文句です。
スズメ目ゴジュウカラ科の体長約13センチほどの留鳥です。細目の嘴(くちばし)に目から後ろに黒いアイライン(過眼線という)
が走っています。背が灰色、お腹が白、脇腹がだいだい色のずんぐりむっくりした胴体ですが、なにしろ動きが早いので流線型の鳥という印象を
持つ人が多いでしょう。我が山小舎では、例の「カラの巡邏」の群れに入ってやってきます。
エサ場のヒマワリの種子など他の鳥は足ではさんで上手に割りますが、ゴジュウカラは短足なため、そのまま嘴でつつけません。
樹の樹皮の隙間などに種子をはめ込んでからキツツキのように嘴でつつく動作をします。樹皮のすき間などに木の実を蓄え、
小さな枯れ木でふたをして隠すという念のいった貯食行動も行います。
鳴き声も特徴的で、さえずりは非常に大きな声で「ピリピリピリ」とか「フィーフィーフィー」と長めに連続して鳴いたり、「フィフィフィフィフィ」と小刻みに連続して
鳴くなどたくさんの鳴き声を持っています。地鳴きは「チョッチョッ」「ツッツッ」「ツルルルル」とか聞こえます。
世界にはゴジュウカラ科の野鳥が25種類いますが日本のゴジュウカラには3つの亜種があるそうで、北海道にいるものはシロハラゴジュウカラと呼ばれています。
本州ではブナ、ミズナラなどの落葉広葉樹
やカラマツ、ダケカンバ、シラビソ、コメツガなど亜高山針葉樹林にすみ、八ヶ岳の我が家のようにやや高地で観察されますが、北海道では山林でも平地の民家周辺でもどこにでもいます。
また、本州産のものに比べ、お腹の白い部分が広く、だいだい色の部分が総排泄口のまわりだけにあることからの発想で
「ケツグサレ」というひどい名前で呼ばれているようです。樹幹を
旋回しながら昆虫類をついばむので「木まわり」とか「木めぐり」と呼ぶ地方もあるそうです。
ゴジュウカラが巣を作る場所は木の割れ目や洞ですが、アカゲラなどのキツツキの古巣を利用することが最も多いそうです。
ゴジュウカラがキツツキの巣穴を利用する方法は実に巧みで、ゴジュウカラには大きすぎる巣穴の入り口に泥を運んできて、くちばしで器用に埋めて、
自分だけが入れる大きさに作り変えてから使います。また、古巣ばかりではなく、キツツキが巣を作っている最中に枯れ草など
の巣材をしつこく入れて乗っ取ることもあります。一方では、人間が用意した巣箱をわりに気軽に利用してくれます。娘が工作でつくった昔の巣箱に出入りするのは
見かけますがヒナを確認したことはありません。イージーな習性なのでしょう。産卵期は4月から6月。卵は5つから8つ産みます。2週間で雛がかえり、あと3週間ほどで巣立つようです。
スズメ目シジュウカラ科。体長13センチほど。九州以北の山地の落葉広葉樹林、針葉樹林にすむ留鳥。標高500メートルくらい
から2,500メートルの森林限界まで生息するようです。まさにわが山小舎の環境です。
秋や冬などでも平地に下りないで山暮らしです。1羽か2羽でいることが多いようですが時にはエナガなどと群れを作ることも
あり、私が見るのはいつも例の「カラ類の巡邏(じゅんら)」に入って我がサンクチュアリにやってくる時です。ヒマワリの種など2,3度突っつくだけでたちまち殻を割ってしまい中の実を取り出しています。強力な嘴です。
頭は黒く体は白。嘴の下にちょび髭のような黒斑があるのでここで見分けます。
地方によって、ひがら(青森、岩手、栃木県、山梨、静岡)、しいら(群馬)、ちちんがら、なべかぶり、まつせせり、まつむし
(山梨)、しじうから、しんしんがら(奈良)、ぜーら(愛知)、おげら(愛媛)、まつから(大分)、まつめじろ(熊本)、
まつむし(広島)
などの名前があります。
鳴き声はさえずりが「ホーヒホーヒホー」、「チチョー、チチョー、チチョー」、地鳴きは「ツツジャージャー」「チッ」と聞こえるようです。
北海道には大変よく似たハシブトガラがいます。見分け方は難しいようですが、ある観察者の報告では、コガラは「チチ、ジェー、ジェー」、
ハシブトガラは「ピスイ、ピスイ、ピスイ」と鳴くので見分けるといいます。
小枝の先にぶら下がって昆虫、クモ類やその卵などを探します。秋冬には草や木の実も食べ、貯食の習性があります。
カラの仲間は他の鳥が使用した巣を再利用するものが多いのですが、コガラだけは自分で巣穴を掘ることからはじめます。写真右はシラカンバの幹に開けられたコガラの巣穴です。こんなにきれいなものをクチバシ一つで掘るのですから相当な力です。この穴に、樹皮やコケ類を使っておわん型の巣を作ります。
5月から7月に5〜9個産卵、2週間でヒナがかえります。巣立ちまでさらに2週間ほどです。固い木の実を割ることができる強いくちばしを持っているためエサに不自由しないせいなのか、冬でもあまり移動しません。
小回りが苦手のようで、直進するクセがあり、山小舎の大きな窓ガラスにぶつかって死んだことがあります。夕方の一時、光線の
関係で青空がガラスいっぱいに映るときがあるのです。空に向かったつもりが激突死ではかわいそうなのでカーテンをするなど注意していますが、
他のカラ類は大丈夫なのになぜコガラだけぶつかるのか不思議です。こちらが留守中ははぶつからないで入居中だけというのもさらに不思議です。
ヒガラ(日雀 )はカラ類の仲間では一番小さく全長11センチ程度です。シジュウカラ、コガラとあわせて「3羽ガラ」といい、
このカラ仲間をきちんと見分け、区別 できることがバードウォッチャー入門第一歩です。
ヒガラの特徴であるよだれかけとも蝶ネクタイとも見える模様があります。また後頭部には短い冠羽があり、これが寝ぐせのついた
頭に見えるのでここで見分けます。
シジュウカラに良く似ていますが、背中は青灰色で右のイラストのように2本の白い翼帯があり、後頭部が白いのが特徴です。
囀りで識別するなら「ツピツピ」とか「ツピンツピン」と早口です。地鳴きは「ツッ・チィー、ツッ・チィー」「チー」「ツィツィツィ」など、高い声で鳴きます。
スズメ目シジュウカラ科。九州から北海道の平地から山地の針葉樹林帯にいる雌雄同色の留鳥 です。樹木の枝先や葉の
部分で虫を探して食べますが、秋や冬には果実、種子も食べ、松の豊作時には大集団をつくります。
種子を貯食する習性もあります。繁殖期は5月〜7月頃で、樹洞やキツツキの古巣などの穴にコケ類を使って営巣します。
5個から8個産みます。抱卵期間は2週間ほど、巣立ちはさらに2週間ほど後になります。
ヤマガラ (山雀)は「スズメ目 シジュウカラ科」の14センチほどの一年中見ることができる留鳥です。 生息分布は、日本と朝鮮半島、台湾までの地域に限られ、東アジアに特有の野鳥です。日本では、平地にも山地に もいます。左は2009年1月8日八ヶ岳高原ロッジ付近での撮影です。この時期、この場所は寒すぎるのかもっと下の標高1300メートルの野辺山駅付近に いることが多いので、この日暖かだったので上まで上ってきたものと見えます。
貯食するヤマガラ |
全国で8つの亜種が知られていますが、ダイトウヤマガラのようにすでに絶滅したものもあります。
雌雄同色です。白と黒の頭にレンガ色の体,青っぽい翼が特徴です。おなかと背中が明るい茶
色で,羽が青みがかった灰色のわりと目立つ鳥です。
カラの仲間では美しいので知られるヤマガラ |
騒がしい鳥で、木々の枝から枝へと「シーシーシー」と甲高い声で鳴きながら敏捷に動きまわり、時には、「ツツ、ニィーニィー」とやや鼻にかかったような声
で続けて鳴きます。これらの声は、鳥同士が普段のコミュニケーションに使う「地鳴き」と呼ばれる声で、繁殖期の縄張り宣言で
ある「さえずり」は、「ツツピン、ツツピン」と透き通ったゆっくりしたリズムで鳴きます。ヤマガラの鳴き声で離れていても「カラ類の巡邏」が
来たのがわかります。
春、繁殖期を迎えると縄張り宣言で一段と騒がしく、響きのいい金属を選んでは、キツツキのように「カンカンカンカン・・・」と激しくつつき打ち鳴らす行動も
見られます。人間に向かっても何のつもりかしつこく「ニーニーニー」と鳴き続けます。大きな木にできた穴(樹洞)やキツツキの古巣、人工の巣箱などを利用
して巣を作ります。
昔、露店で神社の入り口を開けておみくじを引く芸を見せていたのがこのヤマガラで、あまり人を恐れず、少し慣れると
手からじかにエサを取ったりするので昔から日本人にかわいがられてきました。日本中でいろんな呼ばれ方をしていて、やまがら(青森)、やまからす(岩手)、じんじよー(愛媛)、はたおり(福島)、
みかきどり、みまきどり(新潟)、ひがらす(富山県)、なべかぶり(長野県)、ひかた(奈良県)、やますずめ(徳島)、ぬーすみ(御蔵島)、のすずめ、やますずめ、まつばなし、しんしんがら、やまんすど(鹿児島)、あかやまがら、
まつばさがり、べんしち、ごじゆうがら(高知)、ちやちやぐり(奄美大島)、なーくぐら(沖縄)・・・ とても同じ鳥とは思えないのも
それだけ親しまれてきたということがいえます。
ダケカンバの木にとまったコゲラ(2009.12.23) |
コゲラ(小啄木鳥)はキツツキ目キツツキ科で中国東北部、朝鮮半島、サハリンに分布、日本ではほとんど全国にいます。
背中の白の横じまですぐコゲラと判別できます。日本にはエゾコゲラ、ホンシュウコゲラなど9亜種がいるそうですが当然私には
識別できません。
名づけるとき日本の鳥類学者が申請したようで、学名の「 Dendrocopos kizuki 」のデンドロコポス
は「木をつつく」、キヅキは日本語の「木突き」というのはよしとして、英名の「Japanese Pygmy Woodpecker」は今なら命名できなかった
でしょう。小人族として知られるアフリカのピグミーからきています。ウッドペッカーはアニメ映画でおなじみですからキツツキとわかります。
キツツキ科の鳥を「ゲラ」といいます。日本では最も小型のキツツキです。
幹を螺旋状に登り、くちばしで木の皮の裏側の虫を食べます。昆虫類、昆虫の幼虫、繭、木の実を好み、花蜜もよく吸います。枯木を叩いてタララ・・と
ドラミングをよくします。繁殖期には食餌だけでなく、求愛行動のためのドラミングも行います。
鳴き声は「ギィーギィー」とあまりきれいでは
ありません。繁殖期には「ギィーキッキッキ」と鳴きます。直径500メートルほどの縄張りを持ち、縄張りからはあまり出ない、といいますが、「カラの巡邏」に入るともっと広い
行動半径を持っているようにも思います。
冬、餌をさがすコゲラ(2015.1.29) |
冬でも動物質の餌を探し出すため、幹に潜む幼虫やサナギなどを鋭い嗜で取り出します。。習性は他のキツツキと同様ですが、小形であるために大木のない
森林でも繁殖し、地上で採食することが少ないです。餌は虫を好みますが、木の種実も食べます。また、秋冬にはシジュ
ウカラ類の混群に1、2羽で入って生活しているのが普通です。
窓際で望遠レンズを構えているのですが、えてして油断しているときにやってくるので、それッとカメラを向けた時には飛び去っていることが多く、上で紹介した ようにピントが甘いものが多いのです。ネットを見ると練達の愛好家が多く、いい写真がたくさんアップされています。そちらを紹介します。(好みの写真を探し出してくれる「Pinterest」 というサイトからですが撮影者情報がないのでクレジットは失礼します。画像クリックで原寸に)
撮影外国人なので海外のコゲラかも | 目玉までピントがあっている | 木にぶら下がる特技がある |
アカハラは同じ仲間のツグミを少し小さくした体型をした25センチ前後のヒタキ科の野鳥です。腹部の茶色がアカハラの名の由来です。
「赤」とはいうものの橙々色くらいです。
八ヶ岳ではカッコウやホトトギスと同じく、よく見られる野鳥ですが、我が山小舎のエサ場のバードフィーダーには寄り付きません。というのも
生餌(いきえ)だけを食べる習性があるからです。開けた地面を足早に歩きミミズや昆虫等を捕食します。これを
知らないで、近くまで寄ってきたので、もう一息だと思い、いろいろ考えました。気に入ってもらおうとヒマワリや
菜っ葉はてはバターまで用意しましたがダメでした。ほっておけばその辺に出入りしているのですが。秋には
木の実も食べるようで、このころなら寄ってくるのかもしれません。
八ヶ岳高原ロッジに現われたアカハラ |
「キョロン・キョロン・チリリー」と単純な節回しを繰り返してさえずります。遠くまできこえます。地鳴きは「ツー」と聞こえます。
人間の言葉でどう聞こえるかというのを「聞きなし」といいますが「ワン、ツー、スリー 」と聞こえたらこの鳥です。
山地の樹上や木のまたに枯れ茎、コケ、細根、泥などでお椀形の巣をつくり、5月から7月の産卵期に3個から5個
の卵を産みます。メスだけで卵を抱き、巣立ちには2週間ほどかかります。縄張りをもちますが、つがいで直径300メートル
ほどですから野鳥では狭い範囲です。
最初にアカゲラを見たときは「これはとてつもなく珍しい野鳥に出会った」と興奮、家族を窓際に呼び集めて
観察したのですが、その後「東日本ではもっとも普通に見られるキツツキです」という説明に出合い、なんだか
がっかりしました。しかし、何度見ても美しい姿で、来るたびにカメラを構えずにはいられません。
アカゲラ(2015.1.28) |
アカゲラは大きさといい種類といい、他の野鳥とぜんぜん違うのに、どういうわけか上述の「カラの巡邏」に混じってやってくることが多いようです。
エサはもっぱら生食なので餌場に用意したヒマワリの種など見向きもしません。そのくせ遠くには行かず、シジュウカラ
やコガラの近くにいるという不思議な関係です。カラマツなどの木の幹を登りながら虫をほじくりだして食べます。
枯れ木を番(つがい)でつついて採餌するもので、かなり太い幹一本まるまる樹皮をはがして裸にしてしまいます。
めったに窓際の餌台には来ませんが、ピーナッツを苦労してつついて剥(む)いていることもあります。エサがないときは
やってくるようです。また、木の穴の中にドングリやクルミを隠す習性もあるようです。
林の間を「キョッ、キョッ」とか「ケレケレケレー」といった鳴き声で飛ぶことがありますが、多くは無言です。
しかし、この鳥が来ていることがすぐ分かるのがけたたましく木の幹をつつく音です。木をくちばしでつつく動作を
ドラミングといいますが,この動作は木の中の虫をとる他に、なわばりを主張しているといわれています。
「あんなに木をつついていて脳震盪(のうしんとう)をおこさないのだろうか」などと、言われます。キツツキはクチバ
シの根元の筋肉がクッション状に発達しているのと、頭の骨は分厚いスポンジ状になっていて、いわばショックアブソーバー
を持っているので振動を吸収しすることが出来る身体構造になっています。
アカゲラはよく動き回るのでなかなか撮影しづらいのですが2012年10月2日、望遠レンズで他の野鳥を撮っているとき近くにやってきたので3枚ほどシャッターを切ることができました。 普段はバードフィーダーに近寄ることはあまりないのですがこの日は長く滞在していました。(いずれの写真もクリックで大きなサイズになります)
アカゲラは下腹の赤色が美しい | アカゲラが餌場に降りるのは珍しい | 木の幹をつつきながら 上に登る姿が多い |
2007年4月7日、飯田の桜を見たあと八ケ岳の我が山墅に立ち寄ったとき、雪が残る敷地の バードフィーダーにこの鳥がやって来ました。この日付けが実は大事だったのです。
例によって私の山での野鳥の先生、水野昇さんにメールしたところ「これはアトリの♀です。 ♂は頭が黒く翼の模様がもっとハッキリしています」とありました。オスかメスかも分かるんだ、 と感心して、調べたら、「アトリという鳥の名前はあまり知られていない。ロシア極東地方などから、 10月頃に日本へ渡ってきて、翌年4月頃に帰る冬鳥」とありました。そう、私が見たときはこれから 遠いシベリアに帰る直前だったのです。そうと知ると、この小さな体ではるばる長距離飛行するとは ご苦労様なことだといとおしくなりました。
右は私のカメラで偶然捕らえた羽ばたきの姿ですが、なにか北帰行の準備運動のようにもみえます。
分類ではスズメ目アトリ科です。わざわざ1つの科を与えられているくらいですから鳥類学では
かなり重要な鳥なのでしょう。
上述のように秋10月ごろロシアからどっとやってくるそうです。「どっと」、というのは数百羽から数千羽、まれに数十万羽の 大群を作るからです。これだけの数が草むらや田んぼからいっせいに飛び上がると、ドォーンというすごい音がして、 さすがの猛禽類も圧倒されて手出しできないといいます。八ケ岳で見かけた時は一羽だけで、助かりました。
アトリのオス(左)とメス(右)=いずれも夏羽 |
雄の頭はバフ色(*)で、黒色の羽が混じります。この混じり方は個体により様々で一定ではないそうです。頬から頸側は灰色で、黒色の 羽が混じります。背の部分は黒っぽく、うろこ状の羽縁が目立ち、雌は雄よりも淡色で、黒褐色の頭側線が後頸まで伸びます。嘴(くちばし)は淡黄色で、先端が黒く、足は肉色。 腰は雌雄、年齢に関係なく白です。
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*バフ色
探鳥の愛好家の間でよく使われる言葉です。決まった色ではなく黄褐色、淡い黄褐色、茶褐色、黄土色、明るい薄茶など
を指します。あいまいなのは、もともとは、皮の色で、バッファロー(Buffalo)の皮を揉んで柔らかくしたものをバフ(buff)と呼んで、
丈夫で柔らかい素材として古くから衣類に使われていました。昔は兵士の服装の色でした。このことから色の説明に使われます。
アトリはユーラシア大陸、サハリンの亜寒帯針葉樹林で繁殖します。針葉樹の枝に巣をかけ、5〜7個の卵を産みます。 避寒と餌のために北アフリカ、ヨーロッパから中東、中央アジア、中国、 ロシア沿海地方、朝鮮半島、フィリピンで越冬しています。
日本には冬鳥として全国に渡来し、平地の水田や川原でもまた山地の林でも見られます。このため、 あきとり、かちよ(奈良)、あつとり(大阪、奈良、岩手、石川、富山、鳥取、 島根、岡山、山口、広島、熊本)、あわとり、やまにわとり、べにひわ(岩手)、やますずめ、いちごすずめ(埼玉)、いわすずめ (群馬)、ゆきどり(静岡)、ほうねんどり(山梨)と各地でいろんな名前がつけられています。 鳴き声は「キョッキョッ」「キュルキュル」と聞こえる。飛ぶときにキョッという声を出し、ジュイーとも鳴きます。
八ケ岳の探鳥家の間では冬鳥として有名で、地上では草の実をついばみ、林では樹上で実を食べます。実がなくなる真冬は 主に脂肪種子を食べますが、夏は主に昆虫など動物質のものをとるようです。冬は赤いナナカマドの実の近くで待っていると 発見しやすい、といいます。ちなみに我がサンクチュアリではヒマワリの種をついばんでいました。
【 イカル 】
イカル(斑鳩、鵤)は八ヶ岳ではよく見かける鳥ですが、用心深いのか眼前のガラス窓の前にあるバードフィーダーなどにはあまりやって来ず、下の草地を歩きながらエサを
つついています。
スズメ目アトリ科ヒワ属なので上に紹介したアトリやシメ、ウソなどとは親戚筋にあたります。盛んにやってくるウソについてのは「八ヶ岳雑記帳」のなかで、 この鳥の写真撮影に熱中する山でご近所の大学の先生のことを「山口さんちのウソ」のタイトルで紹介しました。 似ていますが、シメは頭部が茶褐色でくちばしは鉛色か淡い褐色。イカルは飛ぶと翼に白い模様が目立つことから識別します。
アジア東北部一帯に分布し、日本では北海道・本州・九州の平地から山地の落葉広葉樹林に棲む体長23センチほどの留鳥です が、冬になると本州以南に移動します。雌雄同色で太く大きく黄色い嘴(くちばし)、覆面をかぶったような青みを帯びた黒色の頭部が特徴です。全体に灰色です が頭部、羽の一部などは紺色をしています。
5月から7月にかけて樹上に枯れ枝などを集めて巣を作り、黒褐色の斑点のある淡青色の卵を3〜4個産みます。2週間ほどで雛がかえり、さらに2週間ほどで 巣立ちを迎えます。繁殖期が終わると小さな群れを作って行動します。秋から冬にかけては、しばしば群を作り、繁殖期には生息しない平地や人里近で地面に降 りて草の実などを探しています。寒くなると南に下る鳥ですが、渡るとき大群をつくることで有名です。しかし、近頃は北海道や本州高地で越冬する数が増えて いるそうで温暖化との関連が心配されています。
黄金仮面といったところか 美しいイカルの横からの姿。 |
この嘴(くちばし)はペンチのように頑丈で、堅い木の実や種、豆などを食べますが、地上に降りて昆虫や柔らかい実を食べることもあります。木の実を嘴に はさんでくるくる回す習性から「マメマワシ」(豆廻し)、「マメコロガシ」(豆転がし)、「マメウマシ」(豆旨し)、「マメワリ」(豆割り)などの呼び名も あります。
古くから親しまれた鳥なので各地にいろいろな「聞きなし」があります。参考までに野辺山で録音された鳴き声を紹介します。(MP3のロゴをクリック)
「キリコ、キリコ、キー」と聞こえますが、これを昔の人は、「オキクコーイ」(お菊来い)とか「お菊二十四」(おきくにじゅうし)、「比志利古木利」(ひしりこきり) 、「月、日、星(ツキヒホシ)、ホイホイ」 と聞きました。このためイカルのことを「三光鳥」と呼ぶこともあります。しかし、本州以南に生息する別の鳥、サンコウチョウがいます。
【 シメ 】
2002年春、バードフィーダーに写真のような鳥がやってきました。撮影したものの、名前もわからず「不明の鳥」としてパソコンに貼りついたままでした。5月末
、八ヶ岳で知り合いの野鳥愛好家、水野昇さんにメールで問い合わせたところ、即座に返事がきました。「それはシメです。わたしも今年ロッジで見かけました。
事務所の人も、今年はこの鳥を多く見かけると言ってました」とありました。下の写真のようにアップで見るとあまり「人相」のよくない鳥ですが、よくよく見ると
愛らしいところがあります。
よくみると猛禽類のような顔をしている。 (2010.4.6撮影) |
保護色なのか、林の中ではあまり目立たない鳥です。体がふっくらとしていて頭が大きく尾が短く見え、尾は暗褐色で外側尾羽に白斑があります。雄の成鳥は、 頭の上部と耳羽が茶褐色、頸の後ろは灰色。冬羽になると肌色になります。翼は黒い線に僅かに青い色があります。風切羽は青黒色、背中は暗褐色、目か らくちばしの周りやのどにかけて黒色で、胸以下の体下面は淡い茶褐色です。雌は雄より全体的に色が淡く、風切羽の一部が灰色をしています。
アップで見ると多彩な彩り |
ユーラシア大陸中部に分布。日本では北海道で繁殖します。北海道では夏鳥で、本州以南では10月〜4月に見られる冬鳥です。北海道でのシメの繁殖期は5 月ころから始まります。低地から山地の落葉広葉樹林や雑木林に生息し、市街地でも見られます。1羽、または小さな群れでいて、大きな群れになることはあり ません。写真のように用意した我が家のバードフィーダーにも来ますが他の鳥を追いはらって食べています。 さえずりは地味で、普段でもあまり鳴きませんが、高い木の上に止まり、「ツツッ」とか「ピチッ」とか「キチッ」鳴くだけでほとんどさえずりません。
昔、地方によってはシメとイカルは雌・雄と思われていたそうですが、この2種は別種の鳥です。似たような体型、同じような場所で同じようなものを食べるため、 間違ったようで、万葉集にも斑鳩(いかるが=イカル)と比米(ひめ=シメ)が夫婦であるとして詠んだ歌があります。同じアトリ科のシメとイカル、ウソは 似た鳥で区別しづらかったのでしょう。私などは名前さえ知らなかったのですが。
【 ウソ 】
ウソの夫婦 |
八ヶ岳名物の鳥ということではなく、ヨーロッパからアジアの北部にかけて広く分布していて、夏は高山の針葉樹林で繁殖します。北方で繁殖するものは南へ渡って 越冬します。わが国では北海道から九州まで広く生息しています。スズメ目アトリ科の鳥で、体長約16センチほど。日本全国一年中見られる留鳥で、あまり人を 恐れずバードフィーダー(餌台)にもよく来ます。山でご近所の大学の先生はこの鳥が好きで大量にビデオ撮影して楽しんでいる様子は「八ヶ岳雑記帳」の中で 「山口さんちのウソ」として紹介しました。
ウソのオスはオレンジの前掛け |
冬も八ヶ岳で過ごしている留鳥 (写真はウソのオス) |
一夫一妻制を守っている鳥で、5月から8月に繁殖し、亜高山帯のシラビソ、コメツガなどの針葉樹に、枯草、枯れ枝、サルオガセなどで、お椀の形をした巣をつ くります。巣作りと抱卵は雌だけで行い、餌運びは夫婦共同で行います。親がひなに運んでくる餌は昆虫や植物の種、木々のつぼみなどですが、木々のつぼみ が膨らむころになると、餌の多くは花のつぼみになります。盛夏になると、巣立った幼鳥を引き連れた親子でバードフィーダーにやってきます。幼鳥は全体に灰 色でオスにも特徴のオレンジ色はありません。
【ウソの亜種3種について】2011年1月14日八ケ岳で撮影の亜種アカウソ |
「ウソという種」がいることは誰でも理解できます。八ケ岳にもたくさんいて、さんざん写真も撮りました。「亜種アカウソ」も分かります。色がより赤いからだ と推察もつきます。だがそのほかに「ウソという亜種」があるというところからよく分からなくなります。だいたい「ウソの亜種」という写真など見たことがあり ません。そこのところを解説しているサイトがあったので、そこから拝借します。
日本野鳥の会埼玉県支部発行の『しらこばと』に海老原美夫氏が「知ってるような知らないような野鳥の用語」というタイトルで書いておられる内容の要約ですが、 この「種」と「亜種」の関係を知っていないと私のように疑問の坩堝(るつぼ)に陥るということです。
●「種」と「種小名」について
「種」(species)というのは生物分類の基本単位で、基本的には、形態・行動・分布・生殖の有無などで区別され、同じ種同士では繁殖して子孫を残すことができ
る、とされています。
国際的に統一された種段階の分類群「種名」(species name)を学名と言い、これは「属名+種小名」の2つの部分から成り立っています。例えばウソはスズメ目 アトリ科ですが学名では「ウソ(Pyrrhula pyrrhula )」と表記されます。前のPyrrhulaが属名、後ろのpyrrhulaが種小名です。属名「Pyrrhula」はギリシャ語の 「赤い野鳥」からきています。
ウソの場合はたまたま属名と種小名の両方が同じで分かりにくいのですが、同じスズメ目アトリ科のカワラヒワ(Carduelis sinica)では、「Carduelis」が属名、 「sinica」が種小名です。属名のアタマは大文字で書きます。
国際動物命名規約による「二名法」という命名法で、ラテン語またはラテン語化された言語が使われ、通常斜体文字で表記されます。 種名の後に命名者名と公表 年が付け加えられていることがありますが、これらは任意のもので、学名としてなくてはならないものではありません。
●「亜種」と「亜種小名」
分類体系で「種」の次の下位に位置する階級が「亜種」(subspecies)です。地理的に異なる場所で成立した形態の、遺伝的特徴をもつグループを意味します。
「亜種名」は、やはり国際動物命名規約によって、 「属名+種小名+亜種小名」という「三名法」で表示されます。
ウソは、国内では次の3亜種が記録されています。 亜種 ウソ Pyrrhula pyrrhula griseiventris 亜種 アカウソ Pyrrhula pyrrhula rosacea 亜種 ベニバラウソ Pyrrhula pyrrhula cassinii これらはしばしば「P.p.cassinii」のように省略して表記されます。 ついでに言えば、カワラヒワでは、 亜種 カワラヒワ C.s.minor 亜種 オオカワラヒワ C.s.kawarahiba 亜種 オガサワラカワラヒワ C.s.kittlitzi の3亜種が記録されています。
つまり、「亜種」というのは、「種と同列で少し違うもの」という意味ではなく、「種の下の分類段階」ですから、「ウソという亜種」という段階もあるわけです。 ただし、写真などで識別するのは難しく、分類学者がDNAなどで階層を分けていく作業の学問の分野になります。
ついでに分類上の名前についていえば、「変種」(variety)、「品種」(race)、「型」(form)、「多型」(polymorph)、「突然変異型」(mutant)、「季節型」 (seasonal form)などがありますが、いずれも国際動物命名規約の対象ではなく、通俗名となります。
また日本各地で呼ばれている「地方名」に対し、日本国内で統一された名前を「標準和名」と言います。現在は、日本鳥学会が2000年に発行した『日本鳥類目録改 訂第6版』が基準になっています。
英名が書き加えられていることもありますが英名はひとつに統一されていません。例えばウソについて前記第6版には、「Bullfinch(or Eurasian Bullfinch )」と 記載されています。英名は「ずんぐりした首」からきていますが、アメリカとヨーロッパでは名前が違うことがしばしばで、そういう時は、国際的に統一された生 物名「学名」が頼りです。
分類学上の「亜種」の位置は分かりましたが、実のところ「ウソ」なのか「亜種のウソ」なのかは私には識別できません。冬に見かけるのはほとんどが「亜種ウソ」 だと聞きますが、区別できないでいます。私もたくさんウソの写真を撮りましたが、上でウソとして紹介しているものも実は「亜種のウソ」かもしれません。でも 「亜種のアカウソ」というのは識別できます。これだけ明瞭なピンクというか赤い腹をしているのですから。
このアカウソ(正確には亜種アカウソ)はユーラシア 大陸のウスリー川流域やサハリンなどで繁殖し、冬鳥として南下して日本に渡って来ます。 北海道の利尻山で繁殖するのもいて北海道ではアカウソの方が多いと いいます。八ケ岳では写真のように冬、たまに見かける程度です。さらに珍しいのが、「亜種ベニバラウソ」で、これは北海道にやってくると愛鳥家が大騒ぎする ほどの珍鳥です。
ヨーロッパのベニバラウソ(ネットから) |
亜種三種が入り混じらないのは、繁殖地が違うからだといいます。亜種ウソは日本の高山で、亜種アカウソは上述のようにサハリンで、亜種ベニバラウソはさら に北のカムチャツカで繁殖していると言われます。
以上から、ウソの3亜種について繁殖地と雄の腹の色からみた識別方法をまとめました。
亜種ウソ 【繁殖分布】本州・北海道・南千島 【雄の腹の色】純粋な灰色(わずかにバラ色がかる個体もいる) 亜種アカウソ 【繁殖分布】アムール・ウスリー地方、サハリン 【雄の腹の色】バラ色がかった灰色 亜種ベニバラウソ 【繁殖分布】オホーツク海北岸、カムチャッカ、北千島 【雄の腹の色】明るいバラ色
アカウソは別亜種にせずに亜種ウソにまとめる分類学者もいます。また亜種ウソの中にも雄の下面がわずかにバラ色がかる個体もいて腹の色だけでの識別は難 しく、このほか大雨覆の色彩(灰色か白いか)、外側尾羽に白い軸斑があるか、等で区別しているようです。いずれの雌も腹が赤くないので、亜種の野外判別はで きません。
ウソの異名に琴弾鳥(ことひきどり)というのがあります。鳴くときに左右の脚を交互に持ち上げるところが、琴を弾いているように見えるためと言われていますが 、眼前に現われる連中は食べるのに忙しくそんな優雅な姿はついぞ見せません。雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)とも呼ばれます。
ウソの名前の由来ですが、「フィーフィー」と口笛のような声で鳴きますので、口笛の別称「おそ」から転じて和名がついたといわれます。「盛岡タイムス」の〈盛岡 ことば入門〉にこんなことが書いてありました。
啄木の歌に「夜寝ても口笛吹きぬ 口笛は 十五の我の歌にしありけり」というのがあります。口笛のことは「おそべ」「おそべこ」と言います。これは古語の「う そぶき」が残った言葉で、「うそぶく」は虚空に向かって息を吹き出す、ということで小声で吟じたり、吠(ほ)えたりすることを言いました。
「うそを吹く」というのは、口笛を吹くことです。「おしょべっこ、夜に吹くど貧乏神ぁくる」「えのながで、おそべっこふぐなよ。福の神ぁにげる」とか「茶わん洗うどぎ ぁ、おそべっこ吹ぐな」などと言われました。
太宰府の「木鷽」 |
ウソの切手 |
カワラヒワ(河原鶸)は体長15センチほどのスズメ目アトリ科の小鳥です。「Oriental Greenfinch」(東アジア特産の
ヒワの仲間)というきれいな英名をもらっているようにアジア北東部で繁殖し、日本では北海道から九州までの各
地に留鳥として普通に分布し繁殖します。雄と雌は良く似ていて、雄の方が雌に比べて頭の緑色味や黄色味が
強く、ともにピンク色の嘴(クチバシ)を持っています。
カワラヒワという名前は、繁殖期以外は河原のような開けた場所に群れでいることが多いところから名づけられた
ようです。日本中どこでも、いつでもいるとはいうものの我が山小舎では2005年のゴールデンウイークが初見参で
した。名前が分からないといつも相談する山でお近くの水野さんに問い合わせると「小さくて羽に黄色い斑(飛ぶと
きに綺麗に見えます)のあるのがカワラヒワで大きい方の茶と黒の斑の羽をしているのがシメです。写真がとても
綺麗に撮れていますね。シメの2枚と最後のカワラヒワ(下の写真のこと)はシャッターチャンスも素晴らしく展示会に出品したい程で
す」とほめていただきました。シメは以前教えていただいたのですが、季節が変わると羽や色も違い他の野鳥の
ように見えるので問い合わせたものです。
ヒマワリの実が大好物のようでそれで我が家にやってきたのかもしれません。なにしろ、毎日どんと山盛りで提供し
ていますから。カワラヒワなどアトリ科の仲間は尾が「M]字型をしているものが多くこのあたりで見分けるのがコツ
のようです。アトリ科というグループに分類される野鳥は日本では17種類あり、主な種類はカワラヒワのほか、アト
リ、シメ、イカル、ウソ、イスカなど。そのうち、八ヶ岳の我が山小舎で見かけたのはシメとウソ、カワラヒワということ
になります。
アトリの仲間に共通した特徴は、太くて短いペンチのような形をしたくちばしです。くちばしの形がこのようになってい
るのは、地上や樹上で硬い草木の種を割って食べるためです。ちなみにシメはくちばしの力が特に強く、名前もそ
の締め付ける力が強いことから付けられたと言われます。
カワラヒワの地鳴きは「キリッキリッ、コロッコロッ」と鳴き。繁殖期には「ビュイーン」という声を出すとか。でも聞いた
ことはありません。じつはもっと複雑に鳴くこともあるそうで、「チッチョ、チッチョ、ピリリ、チーンチーン、チュルル、ビ
ーン」と、一節として同じものはない複雑で抑揚に富んだ鳴き方で、これは雌が近くに来たときの雄の囀(さえずり)
だそうです。
巣は枝の茂みに作られ、細根や枯れ茎が材料で椀形をしていますが、市街地ではビニールひもなどで簡便につく
るのもいるようです。産卵期は3〜7月、卵数は3〜5個、抱卵日数は11〜13日くらい、巣立ちまでの日数は14日ほ
どです。
巣作りは雌の仕事で、抱卵の時期に入ると、雄はエサを運び初め、雛がかえると、エサ運びが忙しくなるため、食
道にあるエサ袋(そのう)にたくさんのエサを入れて運ぶようです。シジュウカラのように1番(つがい)ずつのなわ
ばりを持つのではなく、数番でまとまって繁殖し、縄張り範囲は、直径30メートルくらいでかなり狭いものです。こ
のような繁殖のしかたをルースコロニーと呼ぶといいます。かといってカモメのような大きなコロニーではないのは
、この程度に集まることで防衛や食物の発見が有利なためだろうと研究者の間では考えられています。
マヒワ(真鶸)は全長12センチほど、スズメよりやや小さく、ユーラシア大陸の亜寒帯で繁殖し、秋に八ヶ岳などの山地にやってくるスズメ目アトリ科の黄色っぽい 鳥です。日本では北海道で繁殖します。確認されているところでは大雪山系や十勝地方、根室網走地方などの高山から低地にかけて少数が繁殖するようですが、 大半は大陸から冬鳥として日本全国に渡来、秋から春にかけ見かける鳥です。
日本にいるヒワの仲間には、カワラヒワ、ベニヒワそしてこのマヒワがいますが、昔はヒワと呼ぶときにはこのマヒワを指すことが多かったようです。平安時代に
は「ひわ」、鎌倉時代以降「ひは」、そして江戸時代に入ってから、「かわらひは」や「べにひは」と区別するため、「まひは」と呼ばれるようになったようで
す。
黄色と黒のコントラストが綺麗な小さな鳥です。色の中で鶸(ヒワ)色というのがありますが、このマヒワやカワラヒワのような緑色がかった暗い黄色をさします。
マヒワはアトリ科に属していますが、アトリ科の主な特徴は嘴(くちばし)にあり、どの種類も木の実や草の実を食べるのに適した丈夫な嘴を持っています。特に マヒワの嘴は小さな木の実を食べるのに適していて、太めのピンセットのような形をしています。このくちばしを使って、ハンノキやカバノキ、マツなどの実の 鱗(りん)片をこじ開けて中の種子を食べることが得意です。樹上で種子を食べるばかりではなく、地面に落ちた種子をついばむこともあります。
カンバやハンノキ、スギ、ツキミソウ、フキノトウなどの小さな実が好きで、10月初めにサハリン方面から渡って来た群れは、平地よりも早くにこれらの実が熟す 高地に入り、秋が深まるとともに平地に移動し、春に数十羽から数百羽の大きな群をなして旅立ちます。春先、梢で囀り、ざわめくようなコーラスが聞こえますが 、仲間を集める声のようです。
マヒワのメス |
お腹の部分と頭の部分をみれば、雌雄の違いはわかります。越冬期間中でも群れでいますので、雌雄同時に観察する機会が多く、見分け方を覚えやすいです。
マヒワの繁殖期は5月ころから始まり、カバノキやハンノキ、マツなどの林に営巣します。巣はおわん型で枯れ草や枯れ枝、サルオガセなどを使って作られ、卵を
6個から7個産みます。卵を温めるのはメスだけですが、餌運びは雄雌が共同で行います。
ひなには昆虫やクモなども与えますが、木の実が主食のため、餌のほと んどはいったん「そ嚢」(そのう )という器官に入れ、口に戻して与えます。そ(漢字は口へんに素)嚢は、食べ物を一度蓄えておくための器官で、蓄えられた 種子など堅いものは、温かくて水分の多いそ嚢の中で柔らかくなります。
マヒワは越冬期ばかりではなく、普段でも小さな群れでいることが多いですが、繁殖期も二つがいから三つがいほどが近接した場所で繁殖し、つがいごとに狭い縄 張りを守る「ルーズコロニー」を作って子育てをします。鳴き声はジューインまたはチューイン等と聞こえますが群れを作るのでかなり騒々しく聞こえます。
アオジ(青鵐、蒿雀)はスズメくらいの大きさのスズメ目ホオジロ科の野鳥です。漢字表記の「蒿」(こう)は、ヨモギとかヨモギのように背の高い草を意味する漢字 で、アオジの好む生息環境を表しています。「鵐」はホオジロのことで青い色のホオジロとして名づけられたようです。アイヌの人々は「ポン・ムルルン・カムイ(小 さい草むらの中の神)」と呼んで大事にしていた鳥です。
体長16センチほどスズメくらいで、本州中部以北で繁殖し、山地や高原などで一年を通して見かける留鳥です。雄と雌はよく似ていて、頭と背中は茶色が混じった暗い
緑色、胸からおなかにかけては薄い黄色をしています。雌は雄に比べて羽の色が薄く、雄は目先からくちばしにかけて黒いので区別することができます。英語名
「Black-faced Bunting」ですが、これは、オスに顕著な目元から嘴にかけての黒色からきたようです。メスのその部分はあまり黒くなく、薄い眉線で見分けます。
繁殖期は5月から7月にかけてで、繁殖期になると雄は強い縄張りをもって散らばり、木の枝先やこずえでにぎやかにさえずります。八ヶ岳ではおおむね秋の深まりと ともに現れ、春の訪れとともに山奥へと入ってあまりみなくなります。
野鳥のほとんどは普段の鳴き声である「地鳴き」と繁殖期の鳴き声である「さえずり」を持っていますが、アオジは「チッチッチ」という、とても地味な地鳴きと「
チョッピンチリリ、クルリ」という、複雑でよく通る美声のさえずりを持っています。
繁殖期に美声でさえずる雄のアオジはとても目立ちますが、繁殖期が終わると林の下などの薄暗い環境にいるため、七月を過ぎると姿を見ることがとても少なく
なります。
自然郷を訪れたキビタキ(2017年5月11日=ロッジHPから) |
キビタキ(黄鶲)はスズメ目ヒタキ科ヒタキ亜科に分類され、毎年、新緑の季節にインドシナ、ボルネオなど、南方から日本全国の明るい広葉樹林に渡来する夏鳥です。 とても美しいので 愛鳥家の間で人気があります。八ヶ岳には5月はじめにやって来て10月ごろまで滞在します。この美しさゆえに、学名「Ficedula narcissina」、 英語名「Narcissus Flycatcher」ともギリシャ神話の「ナルシス」にちなんだ命名になっています。自分の姿の美しさに見とれて、泉のほとりで水仙になってしまった という美少年ナルシスです。「Flycatcher」は昆虫を空中で捕まえる特技を持っていることからの名前です。
体長約13.5cm ほどスズメよりやや小さい鳥で、雄は頭部から尾羽にかけて黒く、眉斑と腹部は黄色、のどは橙色。雌はオリーブ色と褐色の羽をしていて、雄の若鳥も 雌と良く似た褐色です。
キビタキのオス | キビタキのメス |
鳴き声は変化に富み、「ポッピリリ、ポーピーピロロ、ポーピーピロロ」とか「ピッコロロ、ツクツクオーシ」とまるでセミのツクツクボウシの鳴声とそっくりな囀り をすることもあります。 地鳴きは「ピッ、ピッ、ピッ、クルル」と聞こえます。枝に止まり、飛んでる昆虫を追いかけ、空中でフライイングキャッチしますが、好みの 止まり木が決まっていて、必ずそこに戻りまた待ち構えます。秋には木の実も採ります。
繁殖期は5月から7月。雄はなわばりの宣言と、メスの関心を引くため上記の「さえずり」を日の出とともにはじめます。平地から亜高山帯の林で、樹木がある程度大 きくて空間のある林を好みます。雌が巣を作る場所は主に木の洞や幹のくぼみですが、入り口の大きな巣箱などを利用することもあります。細根や苔を用いた椀形の 巣に、4〜5個の卵を産み、約13日抱卵して孵化、約12日で巣立ちます。
私が勝手に名づけているだけですが、我が家の「八ヶ岳サンクチュアリ」にカケスが来たときは名前がわかりません
でした。「サンクチュアリ(Sanctuary)とは、野鳥をはじめとした野生生物の保護のために一定の土地を確保し、訪れ
る人々に自然の素晴らしさを体験してもらうところです。私も湖畔でキャンプしたことがある北海道のウトナイ湖にあ
る日本野鳥の会のものが日本第一号で広大で有名ですが、我が家の2坪ほどのサンクチュアリにも野鳥は選り好
みせずやってきてくれるのです。
カケス(漢字では懸巣)はスズメ目カラス科。全長33センチ。屋久島以北の山地の林に留鳥として分布し、冬季は暖
地に移動するものもいるそうですが、氷点下20℃近くになる我が「八ヶ岳サンクチュアリ」には厳冬でも姿を見せま
す。それにしても、「スズメ目カラス科」とは首をかしげます。分類だから仕方ないとして、これでスズメと同じ扱いと
はねえ。もっと妙なのは、どんな紹介記事を見ても「全長33センチ」なのです。昔の「目測1尺」をメートル法で度量
衡換算したのかしら、なぜ「30センチぐらい」ではだめなのか、なかには33センチより小さいのもいるようなのです
が、メジャーを当てるわけにもいかず、ただひんぱんな出入りを見ているだけです。
樹上に枯れ枝などで杯(さかづき)型に巣をかけるのでカケスの名がついたといいます。樫(かし)の実を好んで
食べるのでカシドリとかカケスドリの名前も持っています。
カラスの仲間ですが、美しい鳥です。特徴は褐色の体に、翼の部分に青い羽を持ち、頭の上には白地に黒の縦斑
があります。嘴(くちばし)の付け根から眼の周囲は黒く、喉は白い。眼は虹彩が白く、くっきり目立ちます。腰の部
分は白く、尾は黒です。雌雄同色です。するどい目をしていて警戒心が特に強く、部屋の
中からカメラを向けただけで気配を察して飛び去ります。北海道から屋久島までの全国で繁殖し、丘陵地から山地
の森に生息しますが、よく茂った林を好みます。つまり八ヶ岳にぴったりです。一番好きなのはピーナッツで一直線
にやってきてパッとくわえてまた一直線に林の中に戻っていきます。すき焼き用の牛脂も持ち去ります。カラスと同
じ雑食ですから昆虫なども食べるようで、小鳥の巣から卵や雛を取ることもあるそうです。このほか、餌はネズミ、
カエル、クモ、カタツムリ、ミミズ、木の実と多彩です。
姿に比べ鳴き声は「ジャーッ」とか「ジェーイ」といったしわがれ声でお世辞にもいいとはいえません。カケスは英
語名「Jay」ですがこの鳴き声からついたようです。オオタカなど猛禽類や他の鳥の鳴き声や物音の真似をよくしま
す。
北海道には亜種ミヤマカケスがいますが、頭部が茶色で、額から頭頂にかけて、黒い縦斑があります。こちらも、
ものまねの上手な鳥で、ワシやタカのまねは本物と判別がつかないくらいだといいます。
我が「八ヶ岳サンクチュアリ」(自称ですが)ではヒマワリ、殻つきピーナッツ、クルミ、トウモロコシ、果物、牛脂、水などを用意し
ていますが、リス、カケス、ヒメネズミといった「貯食」(ちょしょく)の習性がある輩が現れると大変です。たちまち餌
が底をつくほど持ち運ぶからです。秋には周囲でひろったミズナラのどんぐりを並べることもありますがこれは特
に好みのようです。
我が山墅(さんしょ)ではリス用にトウモロコシを干したものをクギに刺したエサ台を立ち木に用意しているのですが、 これにカケスがやってきます。リスはトウモロコシ(飼料用のデントコーン)をきちんと列ごとに食べるのでかねがね感心していました。 カケスはカラスの仲間なので”人真似”が得意な習性でしょうか、いつからかカケスもトウモロコシを好んで食べるようになりました。 行儀の良いリスを見習ったのか2009年10月8日、トウモロコシ1本きれいに平らげる写真を撮影出来ましたので、上のスライドショー に掲載しました。珍しい写真と自負しています。
カケスはドングリや栗など運んだものを地上の落ち葉や草の下に隠し、その上に枯れ葉やコケをかけます。後で
掘り出して食べるのですが、隠した全部のドングリを覚えているわけではなく、食べられずに残ったドングリは春
に芽生えます。こうして林が広がるのです。カケスがどのくらいのドングリを運ぶのかを調べた海外のデータによ
ると、10月下旬から11月上旬には、1時間に40〜60個ものドングリが運ばれたそうです。我が家のピーナッツが
すぐなくなるわけです。
英国ではイングランドの中心部でカケスの貯食活動を利用して貯水池周辺の森林地域を保護しようという試みが
行われています。多くのテーブルを設置し、近くにあるオークの古木からとったドングリの袋を積み重ねておきま
す。責任者は「我々は、カケスがテーブルからドングリを取って、くちばしにくわえて忙しく飛び回るのを観察しているが
、カケスがどんなに素晴らしい自然保護者であるかを認識している」といいます。
「サイエンス」誌に発表されたケンブリッジ大学の研究チームの論文によると、カケスの仲間には、早く痛ん
でしまうエサと長持ちするエサで保存場所を分けたのがいたそうです。以前他の鳥にエサを横取りされた経験があ
るカケスは、エサを隠すときに他の鳥がそれを見ていたと知った時には、戻ってきてエサの隠し場所を変え
たりしたといいます。理論性、応用性、想像力、将来の計画という、知能に関する重要な4つの分野に基づく行動が確
認され、人間に最も近いといわれるチンパンジーとほぼ同等の知能を持っていると結論づけています。集
団の中での個人を認識できることなども証明したそうで、我が八ヶ岳のカケスも毎度エサを運ぶ男を識別
してくれているのかもしれません。近ごろエサを置いてすぐに姿を見せるようになったし、すぐには逃げなくなりましたから。
キジバトは首の模様が特徴 |
我が林の中でもそうですが、鳴き声は「デェデェーポッポー」と聞こえます。夜明け前からこの声で、ひたすら歩きながら、
落ちている種子、果実などをついばんでいます。主として植物食ですが豆類やムカゴ、昆虫やミミズなどの動物
質も食べるようです。低木の小果実もよく食べます。
一夫一妻で、繁殖期は長く2〜11月にも及びます。こんなに繁殖期が長いのはピジョンミルクのせいだといいま
す。ハト類は、雌雄共に分泌が可能なピジョンミルクで子育てを行ないます。これは肥大した「そ嚢」(そのう。漢字では口へんに素)
の内壁から出るもので、細胞が剥離したミルク状の液体です。そ嚢は、食道に続く薄壁の膨大部であり、食物の一時的貯蔵
場所です。
野鳥はヒナを育てるために、動物性のタンパク質が必要です。スズメやムクドリなどのような種子食だけのものも、
繁殖期には昆虫類をヒナに与えます。多くの鳥の繁殖期が春から初夏であるのは、ヒナのエサである昆虫の発生
時期もこの時期だからです。ところが、ハト類は、育雛初期には雌雄ともピジョンミルクによってヒナを育てます。ピ
ジョンミルクには、タンパク質、脂肪、ビタミン類などが含まれています。ハト類は、ヒナに与えるエサの確保に気を
使うことはありません。自分が食べる穀類があれば十分なのです。だからキジバトが2月から11月までだらだらと
繁殖をしているのはこのためなのです。
ここでは見たことがありませんが、巣は樹上の横枝の上の、地上1〜10メートルのところに小枝を雑に組んで浅い
皿形につくるようです。ベランダの屋根、屋根の隙間など場所などあまり選ばず、雄が巣材を運び、雌が4日で作っ
てしまいます。卵数は2個、抱卵は雌雄交替で行い、雌は夜間を、雄が日中を担当するケースが多いそうです。雛
は親の口の中へ嘴を入れて、親の分泌するピジョンミルクを食べ16日で孵化します。増えるわけです。
キジバトはほかの鳥にはまねの出来ない独特の水の飲み方をします。ほかの鳥は一口ごとに頭を上げて飲み下
さないとだめですが、水の中に嘴を入れたままゴクゴクと飲みます。
なお、キジバトは都市部においても多数生息しているため、同じ場所にいるカワラバト(ドバト)と混同しやすいで
す。
ドバトのこと
街中で見かけるドバトはユーラシア大陸に広く分布するカワラバトを原種として家畜化されたものです。 カワラバトは、本来ヨーロッパ・中央アジア・北アフリカなどのの乾燥地帯に生息する鳥だったが、食用として家禽化 され、それが伝書鳩やレース鳩としてなどとしても利用されるようになり、日本にも輸入されました。カワラバトは乾 燥地帯の岸壁の割れ目や洞穴に巣を作ります。その習性がドバトを都会にも適応させました。石やコンクリートの 都市環境が本来の生息地に似ているためです。
その後野生化し、増えていったのが現在のドバトです。ドバトは古くはイエバトと呼ばれていましたが、お堂住み着くことが 多いことから「ドウバト」、さらに縮めて「ドバト」です。厳密にはカワラバトとドバトは異なりますが、通常は同 じ種として扱われています。こうしたいきさつからドバトは野鳥としては扱われません。
私が新聞記者になったころは東京・大手町や大阪・桜橋の本社の屋上には鳩小屋があり担当者が付きっ切りで世 話をしていました。朝夕、社屋の周囲のビル街を何百羽と円を描いて飛んでいたものです。このころは通信事情も悪く、鳩に頼ることが 多かったのです。現場 に伝書鳩を持参、フィルムや原稿を脚のアルミ缶に入れて放しました。途中、猛禽類の餌食になるのもいるので、 必ず複数の鳩を放しました。昭和50年代初めくらいまで鳩小屋はありました。
その後、夕刊フジのインターネットのニュースサイト「ZAKZAK」を立ち上げました。サーバーを何台か設置し光ファイバーで結んだのですが、役員会で説明するにも半分以上の時間は「インターネットとはなんぞや」にあてたくらいです。幸い大ヒットしてサーバーの増設に迫られ、 要求したところ、割り当てられたのが昔の鳩小屋でした。ビルの屋上の木造小屋です。何か「現代の伝書鳩」のようで、因縁を感じたものです。
またも脱線しますが、フランス料理では鳩料理が珍重されます。中国やフランスなど料理が発達した国では動物を 何でも料理します。秋から冬の狩猟シーズンに堂々ラインナップされるのが、ジビエ料理です。ジビエとは、野山に 暮らす鴨、キジ、鳩などの野鳥や、シカ、イノシシなどの野生の動物のことです。中でも鳩は高級料理です。普通は 肉質が柔らかくクセのない仔鳩(ピジョノー pigeonneau)が使われます。日本人は伝書鳩のイメージで敬遠しが ちですが、こちらはきちんとした飼育場で育てられていて、合鴨と同様に旨味のある美味な肉です。まるっきり野生 のものはピジョン・ラミエ(pigeon ramier)といってさらに珍重されます。これはキジバトの系列です。
この鳩料理、北朝鮮の金正日総書記の大好物だといいます。2007年10月3日、平壌での南北首脳会談の際、韓国の盧武鉉大統領一行歓迎会のメニューに「ハトの空揚げ」が 登場した、と産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長が伝えています。同行した韓国の閣僚によると、ハトのヒナをまるまる骨ごと揚げたもので、スズメほどの大 きさだったとか。そして“将軍様(北での呼称)”は「卵から孵化して正確に14日たったのがいちばんうまい。1日でも過ぎると味は落ちる。 さ、さ、どうぞ召し上がって…」と上機嫌だったそうです。シェフをわざわざ北海道に出張させ、利尻島の極上のウニを仕入れさせて握りを食べていた のが日本の経済制裁でストップしてますが、ハトなら北朝鮮の空でも飛んでいるでしょう。
ハトが平和の象徴とされるのは、旧約聖書『創世記』からきています。 その昔、神は人間の悪行を見て悲しみ、大洪水で生き物殆どすべてを滅ぼしてしまおうと考えました。しかし、 ノアに方舟(はこぶね)を作るように命じ、ノアの家族と様々な生き物を乗せた舟が乗り出します。大雨がおさま ったあと、ノアが鳩を飛ばすとハトがオリーブの若葉を加えて帰り、地上が近いこと、再び平和が戻ったことを告 げたと言われます。このことから、鳩は平和のシンボルになりました。
【 エナガ 】スズメ目エナガ科に分類されるエナガ(柄長)はスズメより小さく体重は10グラムほど。くちばしと首が短く毛糸玉のように丸っこい体で体長14センチほどの 半分以上は尻尾(尾羽)で英名でもLong-tailed Titと呼ばれています。「柄長」という名前も長い尾をひしゃくの柄になぞらえて付いたものです。愛鳥家の 間では「しゃもじ」や「スプーン」という愛称で呼ばれます。
エナガ科は世界で7種類が知られ ユーラシア大陸の平地から山地の林に住み、日本では北海道から本州、四国、九州、対馬、佐渡島などの平地から亜高山帯 に留鳥として生息しています。木の多い公園や街路樹の上などで見かけることもあります。
生息場所によってエナガ、チョウセンエナガ、キュウシュウエナガ、そして北海道に生息するシマエナガの四つの亜種分かれます。シマエナガは本州以南の エナガと違い、顔に黒い線がなく真っ白な顔をしています。
八ヶ岳では冬が多いですが例の「カラの巡邏」のシジュウカラなどに混じってやってきます。体に不釣り合いなほど長い尾羽は小枝に逆さになって虫を探す などエナガ特有のアクロバットのような動きを可能にし、他の野鳥が探せない場所にいる小さな虫や虫の卵を食べることができますが、特にアブラムシの成 虫や卵などを好んで食べます。草の種子なども食べます。
エナガは繁殖期以外の秋から冬にかけて10羽から20羽ほどの小さな群れで行動しカラ類と混群をつくることが知られていますが、群れを作る理由は外敵や食 べ物などの情報交換ができ、ねぐらで体を寄せ合って眠ることで寒さをしのぐことができるためであると考えられています。
独特のエナガの巣 |
子育てや抱卵も雌雄共同で行います。エナガの子育てではヘルパー行為が有名です。ペア以外のエナガのひなにエサを運ぶ行為が見られるのです。繁殖に 参加しなかった個体や、失敗してしまった個体が他の巣の繁殖をヘルパーとして手伝うのです。近年注目されているところです。種の保存行為でしょうが なぜエナガでみられるのかまだわかっていません。
エナガのヒナの習性。 押しくら饅頭 |
ビンズイは八ヶ岳でよく見かける鳥ですが、例によって何年間も識別できませんでした。全長約16センチほどでスズメ目セキレイ科の鳥で、囀りは複雑で すがきれいな声で「ピンピンツィーツィー」と鳴くのが和名「ビンズイ」の語源で、漢字では「便追」と書きますが、その由来はさだかではありません。下の画像 をクリックするとビンズイの鳴き声が聴けます。
頭から背にかけて、緑がかったかっ色、胸からわきに、黒い縦の模様が並びます。英名は「Olive-backed Pipit」と言い、これの方がわかりやすいかもしれ ません。日本では「なたねひわ」「やまひばり」「きひばり」などの地方名があります。
名前どおり草地にいるタヒバリ |
アジアの温帯から亜熱帯で繁殖し、インドから中国南部、ボルネオ島まで渡って越冬します。日本の気温が適しているようで北海道、本州、四国に広範囲に 繁殖する留鳥ですが一部は南下します。北海道の亜種カラフトビンズイは冬鳥として渡来します。北日本では夏鳥。九州以南では冬鳥になります。生息する 垂直分布域は広く、海岸近くからヒマラヤ山系の標高4、500メートルの高山帯にまで及びます。本州中部では、比較的標高の高い山地にいます。
低山から高山の林、林縁、灌木林、草地などで暮らし、蝶やクモ、バッタ、ムカデ、ハチ、ハエ、などの昆虫、種子などを食べてます。我が山墅でもバード フィーダーにはあまり近づかず、もっぱら地面を足早に歩いて採餌しています。ちょっと歩いては立ち止まり、尾を上下に振るしぐさが特徴です。
梢にいてヒバリのように 上空への飛翔と下降をする |
繁殖時期は5〜8月で年2回。草の根元、崖、土手の窪みなどに枯葉や細根を使って皿形の巣を造り卵を3〜5個産みます。この時カッコウに託卵されること がある鳥です。オスはよくディスプレイ飛翔を行います。木のこずえからさえずりながら翼を細かく羽ばたかせて垂直に上昇し、今度は尾羽を上げてゆっくり と舞い降りるという飛び方です。
私の経験ではカッコウ(郭公)が鳴き始めるのは「5月20日」です。北大のキャンパスで4年間過ごし、早朝からポプラ並木横にあった馬場で馬に乗っていまし たが、毎年この日にエルムの杜の梢からカッコウの初鳴きが聞こえました。「軽速歩」(けいはやあし)の時にはドッドッドッと連続してくる反撞を鞍の上で 一拍抜く動作があるのですが、カッコウの声に併せて腰を浮かせて衝撃を抜いていました。
北国の春は遅いのですが、あらゆる木々がこの頃から新緑に衣替えを始めるので、カッコウの声を聞くとああ春が来たのだと、実感したものです。渡り鳥がカ レンダーをもっているわけでもないのに、どうしてこの日なのだろうと長年不思議に思いつつ、20年後にこの八ヶ岳に別墅を構えたところ、なんとまた 「5月20日」にカッコウの鳴き声がカラマツの梢から聞こえてきたのです。
カッコウは、5月中旬に日本に渡来して森林や草原に生息しますが、寒冷地の場合は平地にも生息します。窓際のバードフィーダーなどには絶対寄り付かない 鳥で、高い梢から「カッコウ、カッコウ」とさえずり、飛び移るときに梢が揺れて、遠目に一瞥する程度で近くで姿を見たことはありません。写真はネットか らの拝借です。一般には初夏を告げる夏鳥とされるのですが、上述のように札幌や八ヶ岳では心弾む「春告鳥」です。カッコウの鳴き声が聞かれるのは、 7月末までの2か月半ほどでまたあわただしく大陸に帰っていきます。
カッコウ目・カッコウ科 の体長35センチほどの大きな鳥です。ユーラシアとアフリカに広く分布します。カッコウという名前は、学名「Cuculus canorus」、 英語名「Common cuckoo」、そして和名「カッコウ」もすべてオスの鳴き声に由来します。種小名のラテン語canorusは「響く、音楽的」の意です。ヨーロッパでも そのわかりやすい鳴き声は古くから親しまれており、様々な音楽に取り入れられて、有名なところでは「おもちゃの交響曲」、ベートーベンの「第六交響曲」 (田園)、そして学校で習う「かっこうワルツ」(作曲:ヨハン・エマヌエル・ヨナーソン)などがあります。
カッコウの頭部と体の上面は青灰色。尾は長く、くさび形で灰黒色をしていて、白点があり、胸と腹は白くて細い黒帯が並びます。翼の先はとがり、眼は黄色 です。食性は動物食で昆虫類、節足動物等を食べ、主にチョウの幼虫を食べているようです。
カッコウの地方での呼び名は、 カッコン(奈良県)カッコドリ(北海道)カッコウドリ(宮城県)カッポ(高知県)カッポン(福岡県)カッポウ(大阪府) カンコドリ(新潟・福島・秋田県)タネマキドリ(山形県)ホウコドリ(広島県)ムキウラン(愛媛県)ヨナキドリ(島根県)などと呼ばれています。
東北地方の呼び名カンコドリでわかった方もいるでしょうが、さびれたさまをあらわす「閑古鳥が鳴く」というときの閑古鳥とはカッコウのことなのです。日 本人はカッコウの鳴き声に物寂しさを感じてたようで、松尾芭蕉に「憂きわれをさびしがらせよ閑古鳥」という句があります。
カッコウの呼び名は、時代によって違っています。奈良時代の人はカツポー・カツフオーと聞いたのでカホドリ(容=貌)と呼び、平安時代の人はフワッコー と聞いたようでハコドリ(箱鳥)と呼んでいます。
カッコウがなぜカッコウと鳴くようになったのか。日本昔話にあります。あるとき母親が子供に「背中がかゆいので、かいてくれないか」と頼みましたが、子 供は遊びに夢中で聞いてくれません。母親はしかたなく川辺の岩で背中をこすっていましたが、あやまって川に落ち、死んでしまいました。子供はたいへんな 親不孝をしたと悲しみ、鳥になって、今も背中をかこう、かこう、カッコー、カッコウと鳴いているのです。=日本昔話(サントリーのサイト「日本の鳥百科 」から=
また、「冥土の鳥」とされる地方もあります。子どもを背負った母親が夕べの山道を通っていると、“早う来い・早う来い”とこの鳥が鳴いた。背中を見ると 幼な児は死んでいた、というのです。昔の人には、鳴き声が冥土に誘う「ハヤコ・ハヤコ」と聞えたようでヨブコドリ(呼子鳥)とも呼ばれていました。
それにしてもやりきれないのは、カッコウの託卵という習性です。
本来のヒナを背中に乗せて巣の外 へ放り出すカッコウのヒナ |
それでも気づかない親鳥は自分より倍以上大きいカッコウの雛に餌を運び続けます。やがて一人立ちしたカッコウの若雛は、養い親に一言の挨拶もなく、南の 国へ渡って行きます。さらにひどいのはカッコウの親で、電光石火託卵すると、子どもより先にさっさと南の国へ帰ってしまうのです。
自分より倍も大きく育ったカッコウのヒナに 餌を運ぶオオヨシキリ=『ウィキペディア』から |
黙って託卵される鳥ばかりではないようで、ニセ卵を見破って排除する鳥もいます。託卵のタイミングが狂ったり、見つかったりすると、相手の親鳥に食べ られたり、大きくなった相手のひなに踏みつぶされたりするという報告もあります。ところがこれに対抗し、カッコウもその鳥の卵に模様をますます似せるな ど適応能力を発達させると言いますからやれやれです。
託卵という習性は結構相手の抵抗にあい、種の保存と言う点では効率の悪い育て方なのだそうです。それでもろくでもない行為を働くのはなぜか。
研究でわかってきたことは、カッコウやホトトギスなど杜鵑科の仲間は、進化の遅い鳥類で太古からの体の構造を残している鳥だそうです。ほかの進化した
鳥たちのように自分の体温の調節があまり出来ず、外気の温度に左右されやすい特徴があります。つまり、夜と昼とでは体温に差が出来てしまうので卵をう
まく孵化させることができないので「託卵」という習性を生み出したと言うのです。そう聞くとなるほどなあ、と思ったりします。
カッコウの仲間はよく似ている ジュウイチのスケッチ |
名前は鳴き声が夜も昼も「ジュウイチー、ジュウイチー」(十一)と鳴きながら飛ぶところからきています。またこの声は昔の人には「慈悲心」とも聞こえた ので、「仏法僧」と鳴くブッポウソウ、「法、法華経」と鳴くウグイスを加えて、日本三霊鳥としてあがめてきました。
ジュウイチもカッコウ同様に托卵の習性があります。相手は標高が低めの所ではオオルリ、コルリが多く、高いところではコマドリ、ルリビタキが狙われます。 産卵期は5月中旬から7月で、卵からわずか10-12日程度で孵化し、目も開かない、孵化二日目から自分の体重に近い卵を背中のくぼみ(カッコウの仲間のヒナだけ が持つ特徴)に1個ずつ乗せ、巣の壁をよじ登り、外に捨てるのです。押し出し行動は三日ほど、全部を捨てると終わります。あとは自分より小さな親がせっ せと運んでくる餌を3週間ほど独り占めして大きくなります。巣立ち後もまた22日ほど仮親から餌をもらうのです。
托卵する側が必ず早く孵化するのは、産卵直前の状態で輸卵管に留めておくことができるためです。輸卵管の中ですでに発育を始めているので早く孵化するの です(普通の鳥は親が抱卵を始めてから発育する)。また仮親(宿主)の巣はたいてい小さいので、大きな鳥が卵を産むのは難しいのですが、不自然な体勢で も卵が産めるように、ジュウイチなどのお尻は長く突き出せるようになっているのであっという間に産み付けることができます。巣に取り付いてから産卵して 離れるまでの10秒前後という早さです。繁殖期の産卵数は20個ほどで一日おきに産卵し、托卵して回ります。
ジュウイチの雛は1羽でも、複数の雛がいるように見せかけて、宿主にたくさん餌を運ばせようとする知恵を身につけているそうです。口内が黄色いジュウイ チのヒナは、翼の内側の黄色い皮膚を見せることで、ヒナが何羽もいるように見せかけ、仮親(口内が黄色い)の給餌意欲を高めるのだといいます。カッコウ やホトトギスのヒナは口内が赤色で、このような行動はしません。このことは立教大学大学院生が観察してわかったことで、この研究論文は英文誌「Sicence」 に掲載されました。
ジュウイチの美しい飛翔 |
托卵では卵を持ち主の卵に似せる必要があります。そのため、ホトトギスはウグイスの赤茶色の卵、ジュウイチはオオルリやコルリの淡青色の卵というように 、この托卵仲間4種間で卵の色や模様がそれぞれに違っています。ところがカッコウだけしか生息していないヨーロッパでは、卵の色や模様が個体ごとに違っ ています。そのため同じカッコウでも托卵する相手の種類が遺伝的に決まっているそうです。 托卵を働くカッコウなどのオスは小枝をくわえてメスにプロポ ーズします。これは大昔は自分で巣を作っていた証拠とされます。育雛しなくなったのはカッコウの項で述べたように体温調節の機能に劣っているため他に 任せることにしたものと考えられます。
下に托卵行為をするカッコウの仲間4種の見分け方を挙げておきます。「日本野鳥の会」の創設者として知られる中西悟堂の文章なので、この項では取り上げていない ツツドリも入っています。ツツドリは八ヶ岳にもいると思いますが、まだ自分で見たことも鳴き声を聞いたこともありません。
主な識別点
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眼は暗色で、嘴(くちばし)は黒褐色、脚は橙黄色。目のまわりに、黄色のアイリングがあります。雌雄ほぼ同色ですが、中には雌の頭部から尾、翼が赤褐色で黒色の横斑がある赤色型がいます。幼鳥は頭部からの上面が黒灰色で、頭部から翼の羽先の所々 に白斑があり、喉から下の体下面は白色で、黒褐色の縞模様があります。
ホトトギスはアフリカ東部、マダガスカル、インドから中国南部までに分布しています。このうちインドから中国南部で越冬した個体群が5月頃になると中国北部、 朝鮮半島、日本まで夏鳥として渡ってきます。日本では九州と北海道には少ないようです。5月中旬ごろと、他の渡り鳥に比べ渡来時期が遅いのは、托卵の習性の ために対象とする鳥の繁殖が始まるのにあわせることと、食性が毛虫類の捕食なので、あまり早く渡来すると餌にありつけないためです。ですから産卵期は相手の 鳥に合わせて6月〜8月と長期にわたります。
日本では「テッペンカケタカ」(天辺欠けたか)、「トウキョートッキョキョカキョク(東京特許許可局)」の聞きなし(鳥の鳴き声を人の言葉に置き換えて表す )でお馴染みです。八ヶ岳で聞いていると、「東京」を省いて「特許許可局」と聞こえます。地鳴きはかん高い声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ」と鳴い ています。毎年南アジアで越冬し、日本に繁殖のためにやってくる夏鳥です。ホトトギスは夜に鳴くこともあり、八ヶ岳の闇夜で突然聞くとギョッとするときもあ ります。
東北ではホトトギスの聞きなしは「包丁かけ」です。そのいわれに関してみちのくの《遠野物語》 にこんな民話が残っています。
姉妹がいました。ある日、姉が芋を焼き、中の柔らかい部分を妹に食べさせようと、まずまわりの硬いところを自分が食べました。しかし妹は、姉が先においしい
ところを食べたと思い、怒って包丁で姉を殺してしまいました。姉はカッコウになり、「ガンコ、ガンコ(東北の方言で硬いという意味)」と鳴いて飛び去りまし
た。妹は自分の誤ちを知って後悔し、ホトトギスになり、「包丁欠けた 包丁欠けた」と鳴いています。いまもホトトギスのことを「包丁かけ」と呼んでいるのは
そうしたわけなのです。
他の夏鳥は、春に渡来する日が年によってずれることがあっても、ホトトギスなどのカッコウの仲間は毎年きちんとしています。一番早いのがツツドリで4月中〜下 旬、次がジュウイチで5月上旬、カッコウが5月中旬以降、そして最後にホトトギスが5月末にやってきます。いずれも悪名高き托卵する習性で知られている鳥です。 (なぜ托卵するか発生学的理由は「カッコウ」の項目にあります)
毎年正確な時期にやってくることから、ホトトギスの渡来は、田植えの合図とされてきました。それゆえ季節の区切りを示す「時鳥」という字が使われたりしてい ます。「田鵑」(でんけん)、「勧農鳥」「田長(たおさ)鳥」「早苗鳥」「あやめ鳥」「卯月鳥」などの名前は農作業と関連付けての命名です。平安時代以降に は「郭公」の字が当てられていますが、これはホトトギスとカッコウがよく似ていることからきた誤用ですが、芭蕉もこの字を用いています。その他、徳富蘆花 の小説「不如帰」、正岡子規の号「子規」、また「霍公鳥」などと表記され、ホトトギスは一番読み方が多い鳥なのはそれだけ古くから親しまれてきたというこ とでしょう。
ホトトギスほど呼び名や 漢字が多い鳥はいない |
ホトトギスは古くから日本人に親しまれ、その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を忍音(しのびね)といい、枕草子ではホトトギスの初音を人より早く聞こう と夜を徹して待つ様が描かれています。また唱歌「夏は来ぬ」(佐々木信綱作詞、小山作之助作曲)で「卯(う)の花の、匂う垣根に時鳥(ほととぎす)、早も来 鳴きて忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ」と歌われています。
万葉集でホトトギスは150首以上と野鳥の中で最も多く詠われています。
卯(う) の花の 咲き散る岡ゆ ほととぎす 鳴きてさ渡る 君は聞きつや(作者不詳 万葉集 巻十 一九七六)
「卯の花が咲き散る岡から、ホトトギスが鳴いて飛び渡って行った。あなた、聞きましたか?」といった意味です。この卯の花は「ウツギ」のことでウツギが満開
になったあと散り始める5月末に渡来することから詠まれた歌です。
これは「ウグイスの卵の中にホトトギスが一羽生まれて、お前の父や母であるウグイスのようには鳴かないようだ」という意味ですが、ホトトギスがウグイスに託 卵することはこうして万葉集の頃からすでに知られていました。ホトトギスが託卵する相手はたいていウグイスです。そのため、生息場所もウグイスと同じく低地 から山地の笹藪の周辺に暮らしています。ホトトギスはミソサザイ、クロツグミ、アオジ、ベニマシコに託卵した例が報告されています。
ホトトギスの卵はウグイスの卵によく似たチョコレート色をしていて、ウグイスより数ミリ大きいだけです。ウグイスの体長が14〜16センチに対して、ホトトギス はその倍の28センチもあり、大きな体を考えれば実に小さな卵です。卵の色も大きさも似せるのはすべて託卵を働くためなのです。
親鳥が巣から離れるわずかなスキに、ホトトギスは卵を巣内に産み付け、その時ウグイスの卵を一つくわえて持ち去ります。巣に戻った親鳥は勘定が合うせいか ホトトギスの卵と自分の卵を温め続けます。ウグイスの卵よりも早くホトトギスの卵がかえり、生まれた雛は数時間後には、ウグイスの卵を背中に載せ、巣の外に 放り出し、餌を独り占めして大きくなります。
オス約15.5センチ、メス約14センチ、ほぼスズメ(雀)くらいの大きさのスズメ目・ヒタキ科ウグイス亜科の文字通り「鶯色」の鳥です。頭部から背、尾までの 上面と翼が灰色みのある暗黄緑色。汚白色の眉斑と淡黒褐色の過眼線があります。顔、喉から体の下はやや汚れた白で、耳羽はやや暗色、脇(わき)は淡褐色を 帯びています。尾は長く、嘴と足は暗褐色で、上嘴(じょうし)は黒みがあります。 雌雄同色です。
東アジア(中国北東部、ロシア沿海地方・サハリン、朝鮮半島、日本)に分布し、日本では笹が生えていれば標高に関係なく、平地から高山帯のハイマツ地帯に 至るまで生息している留鳥です。英語で 「Japanese Bush Warbler」(茂みでさえずっている日本の鳥)というくらいです。
平地では鳴き始める季節が早春であることから春告鳥(はるつげどり)の別名があります。 囀(さえずり)は「ホーホケキョ ケキョケキョケキョ」で、 「ホーホケキョ」は他の鳥への縄張り宣言、「ケキョケキョケキョ」は侵入した者への威嚇と考えられています。オスの声で「ホーホケキョー」と聞こえるもの は「鶯の谷渡り」と形容されるくらい朗々とした声は求愛の鳴き声です。地鳴きは「チャッ、チャッ 」と聞こえます。
本州中部だと2月初旬頃からさえずり始め、 8月下旬頃までよく鳴き、10月はじめまで弱いさえずりが聞かれるものの10月末には見られなくなります。寒冷地では 冬期は暖かいところへ移動します。
ウグイスの卵 |
これがメジロ |
ホシガラス(星鴉)は体長35センチほど、カケスよりやや大きいスズメ目カラス科の留鳥で亜高山から高山の針葉樹林に棲みハイマツの実を好んで食べています。八 ヶ岳のハイマツ帯は我が山墅からは標高が上になりますが、標高1700メートル前後のこのあたりでも時々見かけます。ハイマツはありませんが、トウヒがあるので その種子を食べていると思われます。その固い殻を割るのに役立つ大きなくちばしを持っており、その根元近くの端には特別な隆起が見えます。実の殻が固すぎ る場合は、実を足の間に抱えて嘴を鑿(のみ)のように使って割ります。
マツの実、コナラ、チョウセンゴヨウの実のほか昆虫、鳥の卵や巣の中の小さなヒナも捕食するそうで、罠にかかった動物の肉や、餌として用いられていれば魚 の肉、その他ネズミ、カエルなども食べています。マルハナバチやスズメバチの巣を幼虫を目当てに熱心に掘ることもあり、雑食といってもいいくらいです。秋に なると冬越しの準備にハイマツやミズナラなどの種を集めるため、低い山や低地に下りてきます。
ホシガラスの頭部には冠羽がなく、体の色は全体にチョコレートのような黒茶色ですが、白い斑点が縞をなしているため、星空のようにみえ、和名の「ホシ」ガラ スはこれに由来します。英名の「Spotted Nutcracker」の前半Spottedもこれから来ています。後半は「堅い実を砕く」という意味です。
ホシガラス類は2種いてユーラシア大陸に分布するこのホシガラスと、北米西部に分布する類縁種のハイイロホシガラスがいます。ホシガラスは、生息する地域で 最も早い時期に巣作りをする鳥類です。新芽や果実がまだない時期なので、前年の秋から貯蔵したマツの種子を活用します。ほお袋にいっぱい種子が詰め込まれ るとのどが大きく膨らみ、種子を運んでいることがすぐにわかります。これはカケスや市街地にすむカラスも同じで、のどが大きく膨らんでいれば食べ物を運ん でいるしるしです。
ホシガラスのくちばしはマツの実を ほじくりだすのに便利にできている。 |
営巣場所は針葉樹の上で、普通は陽の当たる側に作ります。通常2ないし4個の卵を産み、ふ化までには18日ほどかかります。この間雌雄ともにヒナに餌を与え、普 通巣立ちまでには約23日、さらに何か月も両親の元にとどまって、厳しい環境での生存に必須の貯食の仕方を学びます。
ホシガラスの姿はとてもきれいですが、鳴き声はカラスやカケスと似て、ガーガーとよく響く声で鳴き、大きくてしわがれていてお世辞にもきれいとはいえま せん。高山帯でも低地でも似ている野鳥はいないので、まず見間違えることはありませんが、飛んでいる姿を遠くから見るとカケスによく似ていて迷うことがあ るかもしれません。ホシガラスは渡り鳥ではありませんが、マツの実が不作で食糧不足が起こると一斉に生息域を離れることがあります。
長年餌場を観察していてもなかなか存在に気づかない鳥もいます。このミソサザイがそれです。ごく小さいのと色が周りに溶け込む薄茶色をしているせいですが、知ってからはその控えめな行動と小さいけれど知能的な習性に魅せられました。
我が山墅の窓外にある餌場には「カラの巡邏」の仲間がやってきますが、どれもミソサザイよりは大きくて強いせいでしょう、餌台の上がカラの仲間で一杯の時でもミソサザイだけは仲間に入れてもらえません。餌台の下のロープの結び目やその下のレンゲツツジの下枝の中を転々とし、地面にある枯葉の中の虫をあさるばかりです。たまに餌台に誰もいなくなると上がってきてヒマワリの種にありつく程度です。その虐げられたような生活様式に同情してしまうのです。
ミソサザイ(鷦鷯、三十三才, 学名:Troglodytes troglodytes)は、スズメ目ミソサザイ科で、体長10センチ、翼長5センチ、重さは10グラム前後ほど、ス ズメより小さく、キクイタダキと共に最小種のひとつです。属名、種小名のroglodytesは「岩の割れ目に住むもの」を意味します。もうひとつの和名「三十三才」は”三十路”という時の「みそ」と「さんじゅうさんさい」をつづめてミソサザイと読ませる洒落のような命名です。
ミソサザイ |
我が国では北海道から九州まで広く分布する留鳥で、おもに山地の水辺に多くに住んでいて亜高山帯〜 高山帯で繁殖します。まさに我が山墅の環境です。背面は焦茶色、腹面は淡色で所々に細かい黒褐色の横斑があるのですが、小さい上黒っぽくて目立たない鳥です。体つきは 全体に丸みを帯びていて、尾は短いですが、この尻尾を常に上下左右に小刻みに震わせているのが特頻で、このため「尾を立てている」ように見えます。繁殖期以外は単独で生活し、群れをつ くることはありません。雌雄同色です。
からだに似合わぬ大声で長くうたい続けることで有名で、早春から囀(さえず)り始める習性があり、平地や里山などでも2月頃にその美しい囀りを耳にすることができる。小さな体の割には声が大きく、高音の大変に良く響く声で「チリリリリ」とさえずる。また、地鳴きは「チャッチャッ」とも「ジジッ」とも聞こえる鳴き方をするそうですが。今回初めて姿を見たくら いですから、私には聞き分ける力はありません。
ミソサザイが鳴く姿と音声をとらえた動画があるので以下に紹介します。
食性は動物食で、昆虫類、クモ類を食べます。そういえば見かけた日は雨上がりであちこちにクモが巣を作っていました。場所も餌台の下でクモがいそうな ところでした。繁殖期は5-8月。森の中のがけ地や倒木の下や切り株の根の隙間などちょっとした窪みに、コケ類や獣毛等を使って壷型の巣を作ります。ま ずオスが2個以上の巣を自分の縄張りの中に作ります。オスが作るのは巣の外側のみで、そのうち1個だけが使われ、巣の内側は番(つがい)になったメスが 完成させるという分業です。ミソサザイの巣は、入口と出口の二つがついていて、外敵から襲われると、反対側の出口から脱出します。こういうことを観察 して見極めた研究者がいると思うと楽しくなります。
浅学の身は最近知った鳥ですが、日本では古くから知られている鳥で、古事記・日本書紀にも登場します。古くは「ササキ」としてやがて時代が下り「サザキ」または「ササギ」「ミソササギ」等という名前でいろんな文献に登場します。
我が餌場にやってきたミソサザイ(2012.9.28撮影) |
ミソサザイの名前で呼ばれるのが仁徳天皇である。『古事記』に「大雀命」、『書紀』に「大鷦鷯尊」とその名が記され、どちらも「オホサザキ」と読む。この「サザキ」とはミソサザイのこと。仁徳天皇が生まれたとき、ミミズクが産屋に飛び込み、同じ日に家臣の妻の出産の際にミソサザイが産屋に飛び込んできたので、それを吉兆と考えた応神天皇が鳥の名をわが子の名前にした、という話が『日本書紀』に記されている。
余談ながら、サイトの亭主は仁徳天皇陵のそばを走る南海高野線で9年間小中高に通った。御陵は「三国ヶ丘」という駅の前にあるのだが、ミソサザイの名前の天皇とはついぞ知らなかった。
西欧の民間伝承でもミソサザイは「鳥の王」とされ、君主や王の意味を表わす単語が用いられています。スコットランド民話によると、ある日、鳥たちが集まり 、一番高く飛べた鳥を自分たちの王とすることにした。ワシは得意げに飛び立ち、誰よりも高く昇っていきましたが、いよいよ最高点に達しようとしたその時、ワシの首につかまっていたミソサザイがさらに飛び上がり、見事ワシに勝利した。以来、ミソサザイは王として認められ、「鳥の王様」と呼ばれる ようになったとのことです。
日本でもアイヌの伝承の中に登場します。人間を食い殺すクマを退治するために、ツルやワシも尻込みする中、ミソサザイが先頭を切ってクマの耳に飛び込 んで攻撃をし、その姿に励まされた他の鳥たちも後に続いた。最後にはアイヌの神様サマイクルも参戦してクマを倒すというもの。この伝承では小さいけれども立派な働きをしたと、サマイクルによってミソサザイが讃えられています。
▲ページトップへ冬鳥のオオマシコ |
青森、北海道で繁殖して冬になると主に中部地方以北、つまり八ヶ岳に多く来て越冬して春にまた戻っていきます。オオマシコ、ベニマシコ、ハギマシコ の3種があるので以下に一緒に紹介します。名前からはベニマシコが一番赤いように思いますが、オオマシコの方が赤いというややこしい色違いではありますが、ともに「燕雀目ア トリ科マシコ類」に分類される鳥です。八ヶ岳では上で紹介した同じアトリ科仲間のウソ、シメ、イカル、カワラヒワがいます。
まず、「マシコ」という名前の由来から。オオマシコは漢字では「大猿子」と書きます。「ましらの如く登る」と言いうように、猿のことを雅語で「ましら」といいます。猿子 (ましこ)という言葉もきっとサルの子供からきているのでしょうが、同じく猿の異称です。オオマシコの腹の赤いところを猿の赤ら顔に見立てた命名でしょう。
分類の「燕雀目」というのは「燕雀(えんじゃく)安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知らんや」(ツバメやスズメのような小さな鳥には、オオトリやコウノトリの ような大きな鳥の志すところは理解できない)というときの「燕雀」ですが、今では「スズメ目」と表記されることがあります。
オオマシコはロシア東部のバイカル湖から東のシベリア一帯とサハリン、ウスリーで繁殖し、冬は中国東南部、朝鮮半島、日本などで越冬します。日本では冬鳥として11月〜3月 に見かけます。大阪、山梨、長野などで毎年渡来する場所もありますが、全体としては少なく、八ヶ岳はそのなかで多く観察される場所といえます。温暖化で最近では渡来範囲が南 下しているということも言われています。
全長16〜17センチほどで次に述べるベニマシコより一回り大きい鳥です。山地から平地の林縁・農耕地・草藪などで、主にハギ類の種子を食べながら小群で素早く移動して、 一ヶ所に長居しない傾向があります。オオマシコは他の実や種には目もくれず、群れは一斉にハギを目指します。風が吹くと細いハギの枝は、上下左右に大きく揺れますが、オオ マシコは、枝に足の指を器用に絡ませ身体を支えます。多くの写真が撮影されていますがその多くはハギにとまっているオオマシコです。他にズミやイボタノキなどの木の実を好み キク科、タデ科、イネ科などの草の実をついばむこともあります。
オオマシコのメス |
八ヶ岳高原ロッジの窓際にやってきた オオマシコ(2012年11月18日) |
ベニマシコ |
ベニマシコのメス |
繁殖期のオスは枝先などにとまって早口で「チチチュリ チチュリ チュリリ」とさえずり、地鳴きは口笛に似た「フィッ」「フィホ」と聞こえます。草藪にもぐって植物の種子を食 べています。
古くから日本全土で親しまれ、各地で あかすずめ(福島)、べにすずめ(山形、長野)、さるこ、まつしどり(千葉)、さるましこ(岩手、秋田、石川、鳥取、兵庫、広島)、 あかまし、まひ、へつつます(宮城)、べにしとと(鳥取)、ましこ(岩手、埼玉、長野)、はるましこ(富山)、のしこ(長崎)、まひこ(埼玉、茨城)、きるまじろ(静岡) 、かかち、さんちんとり(奈良)、ゆきどり(愛媛)、えて(愛知)、もしこ(鹿児島)、ましきよう(奄美大島) などの名前で呼ばれています。
ハギマシコ |
前述のオオマシコ、ベニマシコと比べると中間の16センチほどの体長です。オスでは前頭と顔、喉が黒く、後頭から後頸は黄褐色で目立ち、胸腹翼の一部、腰はバラ色と黒が混 ざります。メスは全体に色が鈍くて後頭の黄褐色部は褐色味が強く、下面や腰のバラ色はやや淡い色です。普段はあまり鳴かないで、飛び立つときに「ヂュッ」「チュー」という声 を出します。
こちらも日本では古くから身近で各地で、 いわすずめ(岩手)、ましこ(秋田)、ますこ(富山)、くろはぎ(栃木県)、くろあとり、はぎすずめ(長野)、はぎしとと(鳥取 )、やぶすずめ(長崎) などの名前で呼ばれていました。
ジョウビタキ(八ケ岳高原ロッジHPから) |
秋の渡りの時は天敵を避けて夜中、月や星の光などを頼りに、一晩のうちに海を越えて日本にやってきます。山林や畑、公園などで見られ、庭先などにもやってくることがあります。群れにならず一羽ずつで生活し、木の実や地面の近くで小さな虫などを捕らえて食べます。あまり人を怖がらず、3〜4 bくらい近くに降り立つこともある。縄張り争いの行動ですが、お辞儀をするように頭を下げ、尾を細かくふるわす動作がとてもかわいいのでファンが多い鳥です。
ジョウビタキのオス(山内昭氏のHPから) |
ジョウビタキのメス(山内昭氏のHPから) |
地鳴きは自転車のブレーキ音を短くしたような、あるいは昆虫のカネタタキの鳴き声を大きくしたような声で、「ヒッ」や「キッ」と聞こえる甲高い声と軽い打撃音のような「カッ」という声を組み合わせた特徴的なものである。「ヒッ」の声はかなり遠くまで届く。早朝にも鳴くことが多く、2度「キッ、キッ」、続いて打撃音の「カッ、カッ」がくる。この打撃音が、火を焚くときの火打石を打ち合わせる音に似ていることから、「火焚き(ヒタキ)」の名が付いたとされる。
YouTubeに飛ぶ姿と鳴き声を収めた動画があったので上にリンクしました。
ジョウビタキの巣 |
昆虫類やクモ類などを捕食するが、冬にはピラカンサなどの木の実もよく食べ、ヒサカキなど実をつけた木によく止まっている。繁殖形態は卵生。一度に5〜7個の卵を産み、主に雌が抱卵する。樹洞、崖のくぼみなどに皿状の巣を作る。巣の材料はカップ部に細根、蘚苔類,草本、獣毛、羽毛など。産座に細根、植物繊維、獣毛。外周部に蘚苔類、細根、草本の茎、小枝、木本の葉がそれぞれ使われることが多い。国内での繁殖は建物の隙間など人工構造物での営巣が多い。
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