2023年4月 課題:野球 日本の国技は? What is the national sport of Japan? と聞かれて「Baseball」と即答した。ところが相手の求める正解は「Sumou」だった。 2003年夏にバルト海クルーズに出掛けたときのこと。イタリア船籍の豪華客船で、一週間の船旅の間、船上では色々なイベントが催された。たまたまクイズ大会があったので出てみた。イタリア人の若い女性司会者が、問題を読み上げ、それに対する解答を紙の書いていく方式。乗船客の国籍は様々なので、イタリア語から始まり、フランス語、スペイン語、英語、ドイツ語と、各国の言葉で司会者は問題を読んでいく。全部で10問、合計得点で優勝を争うものだった。問題は地域や国に偏らないように配慮されていて、「サボテンから作るメキシコの強い酒は何か」といった問題に並んで、上記の問題が出てきた。10問が終わり、解答用紙を提出すると解答の発表。 「What is the national sport of Japan? 」のところでは、司会者が私の席にやってきて、マイクを向け、「What is the national sport of Japan? 」と聞いた。私は自信を持って「Baseball」と答えた。司会者はけげんな顔をして、再度聞た。私は再度「Baseball」と答えた。彼女はあきれ顔で「The national sport of Japan is sumou」と言った。 10問中6問正解した人が3人いて優勝を分け合った。運良く私もその中に入っていたが「相撲」を正解できていれば、単独優勝だった。 クルーズから帰って、何人かの友人にこの話をして、答えを聞いた。多くの人が「そりゃ、国技だから相撲だろう」という返事だった。一人、ワシントンに住む友人が「日本のnational sport と聞かれれば、野球だろう」と言った。 問題は「national」の解釈にあるようだ。「national」を辞書で引いてみた。 1a 国民の、国民的な 1b 国家の、一国の(限られた)とある。要するに、国民に重点を置くか、国家に重点を置くかで、私は前者の意味にとったのだ。「national sport」から私が思い浮かべた日本語は「国民的スポーツ」であり、「国技」という日本語は思い浮かばなかった。それなら野球しかあり得ない。もし、日本語で国技はなにかと聞かれたら、野球とは即答できなかったかも知れない。 野球も相撲も小学校生からやった。そこらの棒をバット代わりに野球をやり、地面に丸を書いて相撲をした。野球は川上、大下の赤バット青バットの頃から、相撲は照國、東富士の頃からのファンだ。野球熱は広島カープの全盛時代に最高に達したがその後はやや冷めた。相撲熱は栃若時代から、モンゴル勢全盛の現在に到るまでコンスタントに続いている。相撲は純粋の競技として面白く、見ていて楽しい。私は相撲の伝統などを意識したことがない。 シアトル在住の知人からは「national」は「traditional」という意味合いを含むから「national sport」と言えば国技だろうと言われた。 結論として国技はやはり相撲だろう。何しろ、大相撲の優勝力士には天皇賜杯と総理大臣杯が贈られ、小泉総理のように自らが手渡すこともある。そして、優勝力士の国籍にかかわらず君が代が歌われる。いずれもプロ野球では見たことがない。 WBC杯での盛り上がりを見れば、野球は国民的スポーツ、国民的娯楽と言うのがふさわしいようだ。それに、野球が日本の国技だと言えばアメリカ人は良い顔をしないだろう。
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