2023年3月 課題:年齢 ネコの年齢 我が家に迷い込んで来て居着いてしまい「おばさん」と名付けたネコは18歳過ぎまで生きた。キジネコであったが16歳を過ぎた頃から腎不全になり投薬と水分補給の輸液をするようになった。高齢のネコの死因のほとんどが腎不全という。17歳の頃獣医からは「あと1ヶ月くらいはもつだろうが、それ以上は、きんさんぎんさんにあと10年生きろというようなものだ」と言われた。*) ネコの1年は人間の6年に相当すると言われていた。それに従うと17歳は102才になる。多分獣医はそんな換算をしたのだろう。 おばさんは、しぶとく生き抜き18歳を越えた。そのころ見た雑誌にはネコの18歳は人間の96歳、ネコの平均寿命は9.9歳とあった。おばさんは2005年の夏に亡くなった。推定18歳4ヶ月。きんさんぎんさんクラスの長生きだった。 おばさんが亡くなる1年前に、やっと目が見えるようになったばかりの子猫を妻が拾ってきた。ランと名付けた三毛猫は、元気いっぱいのやんちゃネコだった。幼いランに刺激されたのだろうか、おばさんは元気になり、食欲も出て1ヶ月と言われた余命が1年以上延びた。 ランが8ヶ月の時避妊手術をした。その際、ネコは最初の1年が人間の20年、その後は1年が4年に相当するという換算法を知った。ネコは7ヶ月過ぎると妊娠可能であることを考えると、1歳を20歳とするこの方が妥当だ。以後はこの換算法によることにした。 ランも順調に大きくなった。おとなしかったおばさんに比べ、活発なネコで、外で過ごすことが多く、よく怪我をし、襖や壁のクロスを破るとか、とにかく手がかかった。手がかかることはかえって飼い主の愛情を誘う。ランは家族皆に愛され、可愛がられた。 15歳の時に首の悪性腫瘍を手術。翌年再発したのでまた手術。この頃より腎臓の機能の低下を言われた。いよいよランもおばさんネコと同じ道をたどるかと覚悟した。 2021年夏にランは17歳、人で言えば84歳となり、私の年齢を越えた。その頃から食欲が落ち、元気がなくなった。秋からは週に2回の輸液療法を行った。通院は私が自転車で連れて行った。回復の見込みはなく、あとは飼い主がいつまで面倒を見るかだといわれた。 年が明けて、輸液が1日おきになり、自宅で娘が行うことになった。輸液は血管ではなく、皮下に行うので、素人でも行えるのだ。そんな治療を半年以上続けたが、9月に亡くなった。18歳と1ヶ月半、人で言えば88歳、米寿である。 亡くなる前日の朝、テレビの裏に寝ていたランがソファの私の所にふらふらとやってきて、足元にうずくまった。餌をねだるのでもなく、鳴き声も出なかった。 その夜は仲秋の名月で、ランを可愛がっていた娘が、ランに月見をさせようと抱いて外に出て行った。私も外に出てみた。久しぶりに見るきれいな満月であった。 ランも見ただろうか。 *)この時はすでにきんさんぎんさんはそれぞれ107才と108才で亡くなっていた
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