八ヶ岳で食べる キノコ図鑑   


「八ヶ岳の食卓」でキノコを取り上げました。リコボウでの突撃体験ルポを紹介、いずれ多種のキノコを網羅した「突撃!八ヶ岳食用キノコ図鑑」を編纂したい、とブチあげました。ところが、 ササクレヒトヨダケから先が進みません。まわりにキノコは多いのですが、我が身はひとつ、ある日突然「絶筆」ということになりかねません。

躊躇していたら、「惜しまれるうちが華よ。それに全部食えとはいわない。WEBで参考にする程度でいい、八ヶ岳限定でもいいから作成を急げ」と励ましか、脅しか わからぬことを言われ、それもそうだな、命をかけるほどのテーマでもないか、と生来易(やす)きにつく性癖がもたげ、ここは素直に、「突撃!」をはずしての、実用「八ヶ岳食用キノコ図鑑」です。


この項の目次

キノコの生態 

未知のキノコの方が多い迷宮の世界 
(毒キノコ詳述のサイト一覧)

奇怪なスギヒラタケ中毒 
( 突然、食キノコから毒キノコに変身したスギヒラタケの不思議 )

毒キノコや光るキノコは何のために? 

食用キノコ大全 

毒キノコ大全 


キノコの生態

(農林水産省のHP「きのこの生態と豆知識」にある森林総合研究所東北支所長、山中高史さんの話から引用)

身近な食材であるきのこは、自然界では樹木と"共生"して栄養を互いに与え合ったり、倒木や落ち葉などを"分解"して土へ還したりといった大切な役割を担っています。今回は、あまり知られていないきのこの生態について紹介します。

菌糸体
シイタケ菌床(シイタケの下にある白い部分が菌糸体)
私たちが「きのこ」と呼んでいるのは、植物では果実や花に相当する器官です。ここでは、植物の種子にあたる胞子が作られ、それらが、飛散して子孫を残します。では、きのこは何からできているのでしょうか?答えは「菌糸(きんし)」です。きのこは、微生物の真菌類がつくる糸状の菌糸が集まって塊状になったもので、例えばシイタケの柄を縦に裂いて、それを顕微鏡で見ると、長い菌糸がぎっしりと並んでいる様子を見ることができます。かさの部分も同様で、シイタケは全部「菌糸」でできているのです。また、きのこの下には菌糸の集合体である「菌糸体」があり、土や樹木、落ち葉の中に拡がり、栄養や水を得ながら生活しています。

子嚢菌類と担子菌類

子嚢菌類と担子菌類
左:子嚢菌類の「ヒイロチャワンダケ」、右:担子菌類の「オオワライタケ(毒きのこ)」。
きのこをつくるのは、たいていの場合「子嚢(しのう)菌類」と「担子(たんし)菌類」という2つのグループで、これらは、胞子(有性胞子)のつくり方が異なります。子嚢菌類は、子嚢と呼ばれる袋状の器官の内部に胞子をつくる菌類で、トリュフやアミガサタケなどの食用きのこはこのグループに属します。また、担子菌類は、担子器と呼ばれる構造の外側に胞子をつくる菌類で、マツタケやシイタケなどの食用きのこはこのグループに属します。

きのこはどうやって増える

きのこで作られた胞子が、風などにより飛散して、倒木や落ち葉などの上に落ちて、条件が良ければ発芽します。そして、胞子から菌糸が伸び、養分を吸収して拡がり、菌糸体となります。その後、栄養条件や温度、湿度などの環境条件に応じて、まず、菌糸体の一部で菌糸が密に集合して、きのこの元になる原基が形成され、これが発達して柄と傘ができ、きのことなります。

輪廻
きのこは分解/共生して生きている

きのこは、栄養の取り方によって、大きく「腐生菌(ふせいきん)」と「菌根菌(きんこんきん)」に分かれます。

腐生菌とは

腐生菌
腐生菌
腐生菌とは落ち葉や倒木、切り株などに生える菌で、セルロースやリグニンなどの植物体を構成する有機物素材を分解し、栄養分として利用します。腐生菌の生育によって分解された倒木や落ち葉は朽ちて、土へ還っていきます。腐生菌きのこの例として木の幹や枝などを分解する「木材腐朽(ふきゅう)菌」のシイタケやナメコ、落ち葉などを分解する「落葉分解菌」のマッシュルーム(ツクリタケ)などがあります。

菌根菌とは

菌根菌
菌根菌
生きた植物と共生関係を築いて生活している菌で、菌糸を土の中に張り巡らせ、植物の細根部に共生して菌根をつくります。菌類(きのこ)はチッ素やリン、カリウムなどの無機養分や水を吸収し、自ら利用するとともに菌根(植物の根と菌類が作る共生体)を介して植物にもそれらを届けます。一方、植物は光合成でつくった糖類などを菌類に与えます。菌根菌のきのこの例としてマツタケやホンシメジ、トリュフなどがあります。

自然界でのきのこの役割

分解

腐生菌は、分解者としても生態系における循環システムの維持に役立っています。植物や動物の遺体などの有機物を分解して無機物へ還元し、植物の栄養として土へ戻す役割を果たしています。他の菌類や微生物が分解できない難分解性の物質であるリグニンを含む樹木の幹や枝なども分解することができます。森林が枯れ木や落葉で埋め尽くされないのは"森の掃除屋"と呼ばれる腐生菌のリグニン分解パワーのおかげといえるでしょう。

チャカイガラタケ
シイの倒木から発生している木材腐朽性きのこ 「チャカイガラタケ」
共生

菌根菌は、土壌中で植物の根よりも広範囲に拡がり、さまざまな物質を分解する酵素の分泌により、植物の水や無機養分の吸収を促進します。植物は単独で生きるよりも、菌根性のきのこと共生することで、より多くの水や栄養を吸収することができます。また、細根部が菌糸に覆われることで、乾燥や病害に対する抵抗性が高まります。

チチアワタケ
マツ林を代表する菌根性きのこ 「チチアワタケ」
マツ林を代表する菌根性きのこ 「チチアワタケ(要注意きのこ:中毒をおこす可能性のあるきのこ)」(写真提供:千葉県立中央博物館・吹春俊光さん)。


未知のキノコの方が多い迷宮の世界

偉そうにキノコの花などを書いているサイトの亭主は北海道での学生時代に馬術部にいました。その3年後輩に農学部にいたT君がいました。彼は鬼籍に入ったのですが、菌類の研究者でいわゆる「キノコ博士」です。このホームページでキノコの話が膨らんでくるたびに彼に相談していたのですが、こういわれました。

「名前がついているキノコは世界で2500種ほどありますが、未知のキノコはその3倍はあります。食べられると分かっているキノコはせいぜい300種、毒キノコと分かっているのは数十種です。毒キノコをまず知った方が早いです」

そんなわけで毒キノコに重点を置いて書いたのですが、実際には専門家でもはっきりと判別できないのがキノコの未知の世界です。

そんなわけでいくらこのホームページで詳細を極めたところで至らぬのは自明のこと。ほかにも、毒キノコを専門に取り上げているサイトがありますので以下に紹介します。

@「知っておきたい毒キノコ 」(東京都福祉局のHP)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/pamphlet2/files/dokukinoko24.pdf

A「日本の危険な毒キノコ40種類」(「ailovei」という運営者のサイト)
死ぬ恐れがる猛毒キノコを星3つ(★★★)から(★)の毒性の低いものまで分けて紹介。
https://ailovei.com/?p=67928

B「きのこ図鑑」(「きのこ図鑑」発行元のサイト)
代表的な毒キノコを50音順に紹介。
https://kinoco-zukan.net/toadstool.php

キノコ用語
識別によく使われるキノコ用語

キノコ用語について


以下の項「食用キノコ大全」や「毒キノコ大全」などでその特徴を説明するにあたり、「キノコ用語」について図示しておきます。カサは「傘」、イボは「疣」、ヒダは「襞」、ツバは「鍔」、ツボは「壷」、の意で、キノコの識別には頻繁に出てきますので覚えておいて下さい。



奇っ怪なスギヒラタケ中毒 突然、毒キノコに変身したのか

キノコ好きには衝撃的なニュースだった。2004年秋、スギヒラタケを食べ、急性脳症から意識障害や痙攣(けいれん)を起こし死にいたるケースが相次いだのだ。10月末までに東北地方を中心に8県で59人が発症、うち19人が死亡した。

スギヒラタケ
スギヒラタケは毒キノコに突然変異したのか。

スギヒラタケはこれまで日本中でよく食べられていた「食用キノコ」だった。地域によってはスギカヌカ、スギワカイ、スギモタセ等と呼ばれていて、真っ白で似たキノコがないため、見分けが付きやすく、東北や日本海側ではポピュラーなキノコ。クセがなく味もいい。みそ汁の具やいため物にして食べてきた。それが、なぜ死者まで出る「毒キノコ」になったのかが問題だった。

スギヒラタケ キシメジ科スギヒラタケ属のキノコ。スギなどの針葉樹の切り株や倒木に多く群生、柄がほとんどなく、子実体(かさ)は耳状で、真っ白なのでわかりやすく古くから食用として好まれてきた。地方によって呼び方は異なり、新潟県森林研究所の調査では、秋田県で31、新潟県で14もの呼び方がある。

発症した48人中人中45人が、透析治療などを受けている腎臓病患者だったことから、推論としては、スギヒラタケには健康な人では問題がない毒素のようなものがあり、腎臓の機能が低下した人では、老廃物や毒素を体外に排出できないように働くのではないか、ということだった。しかしそのメカニズムは不明だ。

症状をみると「よくある感染症とは違う」(国立感染症研究所)し、「キノコ中毒とも異なる」という。キノコ中毒の多くは胃や腸などの循環器に異常をおこし、下痢や嘔吐(おうと)の症状を示すが、それはなく、死者の多くは急性脳症を起こしていた。急性脳症はとは、さまざまな原因で起きる脳障害の総称で、細菌やウイルスで脳がむくんで、意識障害、痙攣、発熱を起こす。痙攣や精神運動障害などの後遺症が出ることも多い。

福井大医学部の松木孝澄教授(法医学専攻)によると、スギヒラタケには血液を凝固させるタンパク質やレシチンが際立って多い。試験管内でキノコ抽出液が血液凝固検査に有効かという実験をしたところ、キノコ八百種類の中でもスギヒラタケは最高レベルだった。このことから、「血液を凝固するレシチンなどが体外に排出されず、脳の血液が凝固し、障害が出たとも考えられる」という。

また、スギヒラタケから、シアン化水素(青酸)を検出したとする研究結果を浜松医大や滋賀大などのグループがまとめ日本法中毒学会で発表したが、検出量は人間の致死量は0.06gとされているのに対し、含まれている量は1/1000以下で、食用としては問題ない範囲だった。

わからないのは、従来多くの人が食べていたのに、なぜこの年だけ死者がでたのか、だ。

キノコ研究家は「キノコは育つ木の養分や気候条件によって毎年、成分が変わる。猛暑や長雨で何らかの変化があったかもしれない」と説明する。実際、2004年は夏が猛暑で秋口から雨が多く、キノコの生育には最高の年で収穫も多かった。

「他のキノコとの複合的な要因で毒性が生まれた」とするのはキノコ学を専門にする高崎健康福祉大学の江口文陽教授。2005年各地でスギヒラタケ31株を採取、毒性を確認した18株について調べたところ、他のキノコと同じ木に生えていたか、以前に別のキノコが生えた跡があった。毒の有無は共生によりなんらかの異変が起きたのではないか、という。

スギヒラタケ
スギヒラタケは判別しやすいキノコ
とされていただけに

2005年末までに、推測はいろいろ出ているがメカニックを解明したものはない。このため、厚生労働省は発生直後から「スギヒラタケは従前から食用きのことして摂取されており、これまで健康被害の報告もないところですが、腎機能が低下している方への安全性が確認されるまでの間、これらの方々に対しスギヒラタケの摂取を控えるよう注意喚起をお願いします」と呼びかける文書を出し、翌2005年もまだ原因が究明されていないことから「引き続き摂取をひかえるよう」通達を出している。現在原因について関係機関と研究者で究明中だがまだ解明されておらず、2006年以降もこの状態が継続される見通しだ。

また、キノコ図鑑も大幅な修正を迫られている。山溪カラー名鑑『日本のきのこ』では最新の 第25刷から「新たに国内外で中毒例が確認された4種(スギヒラタケ、キシメジ、シモコシ、カエンタケ)を毒きのこに変更」している。


毒キノコや光るキノコは何のために? 

シイタケ、マイタケ、マツタケ…私たちにとって「身近な存在」のキノコは、国内では数千種もの数が確認されています。毒のあるキノコも有名ですが、中には“まるで銀河”のような「光るキノコ」、「モグラのトイレから生えるキノコ」、そして「昆虫に育ててもらうキノコ」など、“驚きの生態”を持つものもいます。

最新の研究からはキノコが森に暮らす生きものたちと様々な方法でコミュニケーションを取っているということも明らかになってきています。生きものたちの魅力と自然のすばらしさに迫るNHK番組「ダーウィンが来た!」から「奥深いキノコの世界」を紹介。
(@「ダーウインが来た!「不思議なきのこの世界 第2弾(2022年2月13日放送)とA「ダーウインが来た!マジカルミステリー・きのこ・ツアー」(2022年3月17日放送)をリンクしていたが、著作権の関係と思われる理由でYouTubeから削除されたので文章で説明します。)

一体何のため? 光るキノコの秘密

エナシラッシタケ
エナシラッシタケ
宮崎県にある青島のビロウの木が茂る森。雨が降ったあとのひときわ湿った森で出会えるのが「エナシラッシタケ」です。
エナシラッシタケ
エナシラッシタケ(昼間)
米粒のような小さなきのこで、国内でも温暖な地域の、ごく限られた場所にしか生息していないとても貴重なキノコだといいます。そしてこのキノコの特徴は、光を放つ発光キノコの一種だということ。真っ暗な夜の森では、まるで星空のように無数の緑色の光が浮かび上がります。

実に幻想的な一枚ですが、キノコの中にはこうした「発光」の仕組みをもつものが複数います。
深い森が残る宮崎県の内陸部では、エナシラッシタケの他にも枯れたスダジイなどの幹によく見られる「シイノトモシビタケ」、さらに傘からとても強い光を放つ「ヤコウタケ」など、十種以上の光るキノコが見られます。同じ発光キノコでも大きさや形、光り方は様々。大きさ1センチほどの「ギンガタケ」が密集して光る様子は、まさに銀河のような美しい光景です。

シイノトモシビタケ ヤコウタケ
シイノトモシビタケ ヤコウタケ

では、一体なぜこれらのキノコは光を発しているのでしょうか? この謎はこれまで多くの研究者を悩ませてきました。世界中の様々な発光生物を研究している中部大学の大場裕一さんによると、夜行性の動物にとってキノコが放つ緑色の光は非常に目立つといいます。

それが決定的な証拠、ではないのですが、諸説ある「光る理由」の中で最も有力なのは、光で虫などをおびき寄せて自らの胞子を運んでもらっているという説です。

キノコが子孫を残すためには、自ら胞子を飛ばすだけでなく胞子を運んでくれる他の生きものたちへアピールすることが重要です。
金沢大学の都野展子さんは「実はキノコの多くは様々な生きものに食べられることを狙っているのではないか?」と考え、長年キノコに集まる生きものたちを研究してきました。都野さんは、キノコが自ら多くの生きものたちに食べられようとするタイミングがあると言います。

例えば胞子を作っている最中のキノコの傘は辛みや苦味が多く、こうした辛みや苦み、そして毒を使うことで、きのこたちは「望まないタイミング」で「望まない相手」に食べられてしまうことを防いでいると考えられます。

一方でしおれたキノコにショウジョウバエがたくさん集まっている様子を確認することができました。
一見すると、もう胞子を飛ばす役目を終えたように見えますが、都野さんによると、これが虫たちにとっては成熟している美味しいキノコなのだそう。風などを使って胞子を飛ばし終えたキノコの多くが、より確実に子孫を残すために次は虫たちに胞子を運ばせているのではないかと都野さんは考えています。

「キノコを食べる甲虫とハエの仲間の昆虫たちは形というよりも匂いなど、かなり違うシグナルを大事にする。そういった昆虫に対してキノコも特徴を押し出しているんだと思う。キノコが発している言葉があって、それは匂いだったり毒だったりする。それで動物とコミュニケーションを取っていると考えている」(都野さん)

それぞれのキノコが持つ独特の匂いや味は誰に向けたどんなメッセージなのか? 森の中では私たち人間にはわからない秘密の言葉が飛び交っているのかもしれません。

別の生きものとちょっと変わった関係を築いているキノコもいます。京都大学名誉教授の相良直彦さんは、あるキノコと生きものが互いに助け合って暮らしていることを世界で初めて発見しました。

ナガエノスギタケ
ナガエノスギタケ
ナガエノスギタケ(長柄杉茸)は一見何の変哲もないキノコですが、その下を掘ると葉っぱの塊が現われます。実はこの塊はモグラが落ち葉を敷き詰めて休憩や子育てをするために作った巣。ナガエノスギタケの根元を掘ると必ずモグラたちの巣が見つかるそうですが、これはなぜなのでしょうか。

ナガエノスギタケ
ナガエノスギタケの幼菌
そのヒントは、モグラのトイレにありました。地下にトンネルを掘って暮らすモグラは巣の中を清潔に保つため、いつも巣のすぐそばに糞をすると言います。ナガエノスギタケはこのモグラのトイレから栄養をもらうことで成長しているというのです。

一方、モグラ側にもメリットがあります。ナガエノスギタケは栄養を吸収する過程でモグラの排泄物を分解して土に返すため、モグラは巣やトンネルを清潔に保つことができるのです。

ナガエノスギタケにトイレを掃除してもらうことでモグラは同じ場所に住み続けることができ、ナガエノスギタケも栄養をもらうことで毎年ほぼ同じ場所に生えることができる、キノコとモグラはまさに「共生」の関係なのです。





クリフウセンタケ
リコボウ(ハナイグチ、ヌメリイグチ)とササクレヒトヨダケについては前のページにあります。

クリタケ   ハルシメジ    カラカサタケ 
チチタケ   ウラベニホテイシメジ    ヒラタケ 
ムキタケ   ホコリタケ    オニフスベケ  
タマゴタケ   ミヤマタマゴタケ    ハツタケ
     ツルタケ   テングツルタケ   ハタケシメジ



テングタケ   イボテングタケ     ベニテングタケ 
ドクベニタケ   コガネテングタケ    カブラアセタケ 
カエンタケ   タマゴテングタケ      シロタマゴテングタケ 
タマゴテングタケモドキ   タマゴタケモドキ 
ドクツルダケ  ツルタケダマシ   クサウラベニタケ   
  カキシメジ
   ツキヨタケ
   クロハツ(あわせてニセクロハツ クロハツモドキも記述)
     

・クリックでその項に飛びます。手形マークが出る写真は、クリックで大きなサイズになります



【 毒キノコ について】

いささか脅かしすぎたきらいがある。この項は八ヶ岳限定ではあるが、まわりにふんだんにあるキノコを食べようということでスタートしている。 にもかかわらず、「自己責任で」とか「似ていて見分けのつきにくい毒キノコがある」といわれれば、誰もが躊躇するだろう。そこで、まず敵を知る ことからはじめようというのが、この【 毒キノコ の研究】である。

毒キノコにあたるとみな死に至るかのような印象を持っている人が多いと思う。そうではない。ある箴言を紹介しよう。

「食えないキノコは絶対に無い。食えるのが1回だけかどうかの違いだけだ」

前の項で尾崎喜八の日記を紹介したが、そこにあるように 多くの毒キノコは加熱でかなり解毒される。しかも、水溶性のものが多く味噌汁などにして煮汁を飲んだらきついが、焼いたり煮たりして食べたくらいでは 症状が軽いのが普通だ。嘔吐、下痢、腹痛はあるものの回復するのがほとんどだ。しかし、こんなことを述べたからといって安心されても困る。過去20年間 に日本で1000件、人数にして5000人あまりのキノコ中毒事件が発生、30人が死んでいる。やはり用心に越したことはないのだ。

東京都福祉保健局の「食品衛生の窓」というコーナーにキノコ中毒についてまとめた 「キノコの話」という解説があるので一度見ておくことをおすすめする。毒キノコの見分け方についてはいろいろなウエブサイトがあるが「いしかわ きのこ図鑑」というのが見やすい。

毒キノコのなにが毒なのか、知りたいところだが千差万別でとても数え切れない。聞いたこともない化学記号ばかりでこちらの線から判別することは あきらめた方がいいだろう。ただ、草を食む牛や馬、羊を見ていると毒のある草はきれいに食べ残している。何かセンサーを持っているわけで、キノコで こういうのが開発されるのを待ちたいところだが、まだ朗報には接していない。

キノコの相談をうけた事業所の統計がある。素人が判別に悩むキノコの順位でもあるわけで

相談の多いキノコの上位5つは次のようになっている。
    食用: ハタケシメジ
        ナラタケ
        ウラベニホテイシメジ
        ミネシメジ
        シメジモドキ

    有毒:クサウラベニタケ
        カキシメジ
        ハナホウキタケ
        ツチスギタケ
        ニガクリタケ

つまり、これが識別できればひとまず安心ということができる。食用キノコでは、ハタケシメジが1位だが、これはは初夏と秋の年2回、庭や草地に発生する 身近でおいしいキノコ。身近にあるので相談が多いのだろう。シメジモドキは、春にウメなどのバラ科の樹木のあるところに発生するキノコ。この時期に キノコはあまり発生せず、生える場所も限定されるので、すこし勉強すれば判断は容易。むしろ、果樹園などに生えるため、農薬散布の方を心配した方がいいようだ。

毒キノコでは、まずクサウラベニタケやカキシメジを覚える。クサウラベニタケは、俗にいう食べられるキノコ「地味で茎が縦にさける」という 特徴を持っていることや、立派なものは,食用のウラベニホテイシメジと似ていることで間違う。ハナホウキタケとツチスギタケは難しいそうだ。これらのキノコは、地方や人によっては食べて いるものだ。実際、ハナホウキタケは道路わきの野菜直売所などで販売されていることがあるという。軽度とはいえ中毒例の多いキノコなので、素人は食べない 方がよい。

カキシメジは、いかにもおいしそうな外見をしているのでつい手を出しがち。悪いことに、カキシメジの近縁種を食用にしている人もあり、判断が難しい。 カキシメジの毒は水溶性であるため、調理方法によって毒の摂取量が異なり、潜伏時間や症状の現れ方に差がある。カキシメジを何 本食べたかではなく、毒性分の溶出した汁をどのくらい摂取したかによって症状の重さや潜伏時間の長さが左右される。水溶液を飲むみそ汁では 強毒型となるが、水溶液の摂取が少ない煮物では弱毒型となる。



【 クリフウセンタケ 】(栗風船茸)
クリフウセンタケ

最初にクリフウセンタケを取り上げるのは、キノコ判別の難しさを如実に示しているからです。 秋にコナラやクヌギ、ミズナラなどのナラ類の林内地上に群生するフウセンタケ科フウセンタケ属のとても美味 な食用キノコです。ニセアブラシメジともいいます。これならいいのだが、茨城県など地方によっては「カキシメジ」と呼ぶところがあります。 カキシメジは有名な毒キノコ。つまり毒も食用も同じ名前がついているところがあるのです。カキシメジについては後述します。

クリフウセンタケの特徴は、傘が初めはまんじゅう形、後に平らに開き、色は淡橙褐色から黄褐色で表面が湿っている時にはぬめりがあります。 ひだは 初め白色で後には淡褐色。並び方は密で柄に直生から上生します。柄は初め白色、後に淡褐色となり、しばしば大きく曲がり、根もとはやや ふくらみ淡紫色をおびます。柄の上部にはクモの巣状から綿毛状のつばをもち、その色は胞子の付着により褐色です。

10月の初旬、ミズナラ林によく見られます。落ち葉の下に隠れているため見逃すことも多いのですが、1本見つければ大量に採取できることもしばしば で、人を狂喜させます。うまみ成分が非常に強く、よい出汁がでます。塩焼きにするとまたおいしいキノコです。 爽やかな香りと多少のぬめりもあり、歯切れも舌触りもよい。味には全く癖がなくどんな料理にも利用できます。貝類とのぬた、三杯酢、雑炊などに使えます。

【 カキシメジ 】(柿占地)
カキシメジ
さて、毒キノコのカキシメジの特徴です。 いかにも食べられそうな、色と形をしています。塩蔵すると毒が抜けるとも言われているが試さない方が無難でしょう。 クリフウセンタケ、マツタケモドキ、チャナツムタケと似ています。傘の表面にぬめりがあって、ハナイグチと間違えることもあるややこしさ。 コナラ・ブナなどの広葉樹やマツとの混生林に秋の同じころ発生する地味な色のキノコでひだは密で、古くなると赤褐色のしみがでてきます。

柄は傘の色より淡い赤褐色で上部は白色 。傘の裏にヒダがあり、しかもヒダに赤いシミがあるとカキシメジ。ひだのシミで判別するが、若いうちはシミがないのでむずかしい。 チャナメツムタケにも似ているが、カキシメジは傘のまわりに鱗片がない。 独特の臭いもある。カサウラベニタケと共に誤食されるキノコの典型的な種類で、食べると嘔吐、下痢の症状を示します。
 


【 クリタケ 】(栗茸)
クリタケ

クリタケ(栗茸)はハラタケ類ハラタケ目モエギタケ科クリタケ属で 切り株や倒木、木道の木の階段などにも多数発生します。 八ヶ岳では9〜10月の季節になると国道沿いの野菜の即売店にも並ぶ ごく身近なキノコです。腐朽菌なのでクリやクヌギなど広葉樹や針葉樹の切り株や倒木上に群生します。 名前どおり栗色をしていますが、時にはきれいな赤色のものもありアカンポウと呼ばれるときもあります。 何本かまとまって株立ち人っていることが多いキノコです。

その他、地方によって、 やまどりもたし、やまどりもさせ、くりもたし、あがぼう、あがもだし、あかきのこ、あがたげ くりのきもたし、くりのきぼんず、ざざんぽ、さざんぽ、しもかずき、しもたけ、やまどりたけ  などの呼び方もあります。

クリタケ2
傘は径が3〜10センチ、表面は「ぬめり」がなく、明るい茶褐色〜暗レンガ色、周辺部は淡色。若いときはクモの巣状の不完全なつばがあります。 形は 半球形からまんじゅう形で、さらに時間がたつと平らに開いています。ひだの並び方は緻密で、色ははじめ白 から黄白色、のち暗紫色で、柄に直生か湾生します。白色の薄い繊維状の膜に覆われています。時間がたつと=写真右=のように表面がひび割れして、 別なキノコのようですがこれもクリタケです。


茎は長さが5〜12センチ、径が0.8〜1.5センチ、上部は白色〜黄白色、下部はさび褐色です。 成長するとほぼ中空となり折れやすくなります。

乾燥保存が出来ますが、シイタケのようにはなりません。柄の肉はかたく締まっていて歯切れがよ く癖のない風味で極めてよいだしが出る。 食べ方は、キノコ汁に、キノコ御飯に、テンプラにされることが多いです。パエリヤやリゾ ットといった米を使った料理などうまみを生かす使い方がおすすめ。

【 ニガクリタケ 】(苦栗茸)

ニガクリタケ
キノコの常として、外観が似ている有毒のニガクリタケがあるので要注意。 ごく普通に見られるキノコで、針葉樹にも広葉樹にも1年を通じて発生する明るい黄色の小型のキノコ。いかにも食べられそうな色や形をし ていますが、クリタケより早く生えるのと傘が黄色なので、ここがクリタケと見分けるポイント。クリタケは朱褐色か茶褐色でおいしいキノコ。 ニガクリタケは淡黄、硫黄色で有毒、とおぼえます。

傘は丸形で表面は茶褐色。径は3〜10センチ。肉はやや黄色を帯びています。 ニガクリタケは柄に黒いツバの痕跡があること、生を少しかじってみると大変苦い(ファシキロールFという成分)ことなどで、クリタケと区別します。

このキノコの和名は、最初ヤナギタケと呼ばれていたが、上記のように苦味があるので「ニガクリタケ」の方が用いられるようにな った。ドクアジロガサがコレラタケに、ヒョウタケがテングタケにと、呼び方が変わった例は多い。もともと和名には規則が無いので、 どう呼んでも構わないのだが、混乱するのを防ぐため、日本では標準和名の扱いをして統一し、安易な変更も 避けている。食べると下痢、腹痛、嘔吐など胃腸障害や腎障害をおこします。


【 ハルシメジ 】(春占地)(シメジモドキ)
ハルシメジ

4月から5月ごろ、林檎、梅、桃、梨、花梨,などのバラ科の樹の下に顔を出すキノコとはロマンティックです。 正式な和名はシメジモドキですが、春に発生するのでハルシメジと呼ばれます。林檎の樹の下に出ればリンゴモタシ、梅の樹 の下に出ればウメノキシメジ、傘の裏がやや紅色なのでウラベニシメジなど、多くの別名を持っています。しかし、発生する 季節がキノコの発生する季節としては余り馴染みがない春と言うことで、一般的にはハルシメジと呼ぶのがふさわしいようです。

八ヶ岳への途中山梨県、長野県を通りますが、たくさんのリンゴ畑 があります。その下のハルシメジとは聞くだけでおいし そうです。この名前は 知っていたのですが見たことも食べたこともありませんでした。

キノコの発生が少ない時期に出るので貴重な食用キノコです。もうひとつ、春は見分けやすいという特徴があります。 毒キノコの多いイッポンシメジ科のキノコですが、 秋だとよく似たクサウラベニタケの可能性がありますが、春ならこのキノコだ けです。ハルシメジは時に秋にも発生するそうで、このときばかりは キノコ博士の登場を願わねばなりません。

ハルシメジ2
これもハルシメジ。
成長過程でいろいろな形がある。
ひだがピンク色なのが特徴です。傘の径3〜10センチ、初め鐘状に生え、丸い山形から、のちに中高の扁平となります。笠の周辺は不規則に波打つものが多く、表面はネズミ色で暗色の繊維状の模様があります。 ひだは柄に上生又は湾性し、やや疎。色は、はじめ 白色でピンク色を経て肉色になります。肉は白色で紛臭があります。柄は長さ4〜8センチ、白色から帯灰色、繊維状で根もとに向って太くなっています。

シコシコした歯ざわりが心地よく、弱い粉臭があるものの、それ程気にならず、味も良く、いろいろの料理で楽しめます。 ただし、生で食べると消化器系の中毒を起こすので、生煮え、生焼けでは食べないこと。炒め物に使う場合は(加熱が不十分になりがちなので)、あらかじめゆがいておくと安心です。

「日本のきのこ:山と渓谷社発行」によると、適する料理法は以下の通りです。

  酢の物、煮込み、鍋物、佃煮、茶碗蒸し、グラタン、ピザ、オムレツ、油炒め、餡かけ 餃子、焼売、ホイル焼き、味噌焼き、たれ焼きなど。

[ 料理例 ]

高 菜 あ え ハルシメジをさっと洗い、食べやすい大きさに薄切りし、沸騰水中で1分ほど湯がいておきます。高菜漬けを絞って細かく切り、ハルシメジと和え、好みによりごま油やラー油で香りをつけます。

高菜の炒め物 小鍋にごま油少量と刻んだ高菜を入れて炒め、湯がいたハルシメジ を加えてかきまぜ、味をよくなじませます。必要なら酒、しょうゆ で味をととのえます。高菜の酸味とハルシメジ の歯ごたえが楽しめます。


【 カラカサタケ 】(唐傘茸)
カラカサタケ

カラカサタケ(唐傘茸)は八ヶ岳ではけっこうよく見かけるのですが、食用キノコだと知る人は少ないでしょう。夏のわりあい早い時期から、9月はじめに道ばたや草むら、芝生の上にぴょこんと顔を出します。 左の写真は八ヶ岳高原ロッジのホームページ「今日の八ヶ岳」が2005年9月7日にロッジの入り口付近で撮影したものですが、1枚で傘が開く前と後の対比ができる珍しいものです。ずんぐりとマツタケのようなのが、開くと、その名前のように直径20センチほどの大きな唐傘のようになります。同じキノコだとは思えないかもしれません。

長野では「にぎりたけ」と呼ばれていますが、それは傘の部分を握って、再び手を離すと元の形に戻ることからで、他に「からかさ」、「からかさもたし」、「からかさだけ」、「きじたけ」「きんたまきのご」、「つばたけ」、「つるたけ」、「のっぽ」、「つるもだし」、「つるだけ」など別名が多いのは昔から親しまれてきたせいでしょう。

煮たり炒めたりすると、ぺしゃっとしてしまって、ふわふわした感じがなくなってしまうので、フライにすればいいといわれます。一方、柄はけっこうかたく、歯ごたえがありすぎるので、じっくり炒めるのに適しているなど一工夫が必要です。おいしい部類にはいります。 傘は細かく切ってから、茎は長いので適当に切って裂いた後にバター炒めや天ぷらにするとおいしく、柄のほうは野菜炒めやゴボウとニンジンのきんぴらにすることもあります。

ハラタケ科カラカサタケ属 に属し、傘は始めは球形で色はこげ茶色ですが、傘がパラソル形に開くにつれて表皮は縦横に裂けてウロコ状になります。柄の基部はふくらみ、段だら模様があります。傘にリング状のツバがついていますが、触ると上下に動きます。

カラカサタケの名前がついたキノコは多く、ワタカラカサタケ、クリイロカラカサタケ、キツネノカラカサタケ、マントカラカサタケ、シワカラカサタケ、コガネキヌカラカサタケ、シロカラカサタケ、キヌカラカサタケ、ドクカラカサタケ(コカラカサタケ)、ツブカラカサタケなどわんさとあります。中には有毒のものもあるので、素人判断は禁物です。

【 オオシロカラカサタケ 】

オオシロカラカサタケ
1989年に大阪、1992年に京都でいずれもカラカサタケが原因と見られる食中毒事件が発生しましたが、調べると、カラカサタケではなく、熱帯性の「オオシロカラカサタケ」(オオシロカラカサタケ属)と呼ばれる毒キノコでした。オオシロカラカサタケは、ハラタケ科オオシロカラカサタケ属の毒キノコで、食べると嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、発熱などの中毒症状を引き起こします。傘は径7〜30cm、表面は白色で、帯褐色の鱗片をつけます。見た目がカラカサタケとはっきり違います。フィリピンをはじめとする熱帯地域に広く分布するもので、熱帯の海上で発生した台風でその胞子がフィリピンから関西圏まで運ばれたようで、近年の地球温暖化につながるものでしょう。八ヶ岳では気温が低いので、まず発生することはありません。


【チチタケ】(乳茸)

チチタケタケ
チチタケ
チチタケは夏から秋にブナ科の林に群生します。カサの直径が5〜12センチほど。色は黄褐色、橙褐色、赤褐色で、フチの周辺は色が薄くなっている事が多く、表面の質感はビロード状〜粉状。形は幼菌時は真ん中が窪んだ饅頭型、成長するとカサが開いて平らになり、老菌になるとカサが反り返り漏斗型になります。

幼菌、成菌とも姿形、 色などは全く一緒なので判別しやすいキノコです。おもしろいことに幼菌ももろくボロボロと折れやすいです。傷をつけると多量の乳液が出て褐色に変化する。この乳液の特徴から名前が付きました。乳液は、ゴムノキなどが生成する天然ポリイソプレンの低分子を主成分としており、ゴムの分子構造研究の格好の材料ともなっています。

「ちたけうどん」
「ちたけうどん」
食感がぼそぼそしているため見向きもされない地方もあるが、岩手や信州でよく食べられていて、中でもは「栃木県では「地域限定キノコ」というか道の駅でも売られているほど好まれている。香りが強く、調理法によっては独特の良い出汁が出るためで、地元では「チタケ」と呼ばれて、炒めたナスとチチタケをつゆに用いる「ちたけそば」「ちたけうどん」が代表的な郷土料理として親しまれています。

栃木県でチチタケを食用とする習慣は少なくとも江戸時代の享保年間の時点で記録が存在し、かつては身近な食用キノコであったと考えられている。しかし1990年代から2000年代頃になると、乱獲や雑木林の荒廃などによって栃木県内産のチチタケは減少傾向にあり、生の日本産チチタケがマツタケ以上の高額で取引される場合もある一方、安価な中国からの輸入品が水煮などの形でスーパーマーケットに出回るようになっています。

チチタケは異常な人気がうかがい知れるキノコですが、発生場所が風の通る崖地や林道沿いの急な斜面です。 そのために危険なところまで採取に行って滑落死亡事件もあるので、注意が必要です。


【ウラベニホテイシメジ】(裏紅布袋占地)

ウラベニホテイシメジ
ウラベニホテイシメジ
柄が長く、大型になるためキノコ狩りの対象として人気がある食用キノコです。歯切れが良いが味はほろ苦く、多少粉臭が気になる場合があるので、さっとゆでこぼして料理します。

ウラベニホテイシメジは主にブナ科のコナラを中心とした広葉樹とマツが混在した林の地上などに単生または群生で発生し、カサの直径は10〜20センチで、かなり太く、根元付近の方が太くなっています。表面の色は帯灰褐色でヌメリはなく、白色の繊維状のものが全体を薄く覆っています。形は幼いときは半球形で徐々にカサが開き、平らになっていきますが、中心部分に穏やかな突起が見られます。ヒダは柄に湾生していて、幅が広い。色は最初は汚白色、やがて淡い紅色を帯びていきます。

イッポンシメジ
イッポンシメジ(有毒)
毒キノコのクサウラベニタケやイッポンシメジと似ているのと、東北地方や関東地方など本菌のことを「イッポンシメジ」と呼ぶ地方があることなどから紛らわしく、よく中毒事故が起こります。有毒のものにはキノコの傘の表面に光沢があるのに対し、ウラベニホテイシメジには傘の表面に白い粉のようなものがあって光沢がなく、丸い模様が出ることで同定します。また、本種は肉に苦味があるがイッポンシメジやクサウラベニタケには苦味がないことでも区別ができます。また傘に指で押したような丸い模様が出るのがウラベニホテイシメジです。


見分け1 見分け2
ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケの見分け方(画像) ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケの見分け方(説明)



【ヒラタケ】(平茸)

ヒラタケ
自然物のヒラタケ)
新鮮なヒラタケは素晴らしい香気を放ち、山で採取した人がクルマで帰る時などは、車の中がきのこの香りでむせ返るようになるほどだという。このため味噌汁ほかで大変重宝されるキノコです。現在では養殖栽培されスーパーなどでも販売されているがこの香りは自然採集したものでないと味わえないと、山に入る人が多い。

我が国だけでなく、世界的にも古くから食用にされてきた第一級の食用菌。欧米では「オイスター・マッシュルーム」(Oyster Mushroom)と呼ばれていて、その由来は大きく開いたカサが牡蠣に似ているからです。

風味が良く、シメジに似た味わいがあるので、かつては、本種をビン栽培して株立ち状に仕立てたものが「シメジ」を名乗って流通していましたが、その後キシメジ科シロタモギタケ属のブナシメジが「ホンシメジ」と称して流通するようになり、品質でも名称でも劣るヒラタケの栽培「シメジ」は徐々に姿を消していきました。現在はブナシメジ栽培のものも「ホンシメジ」を名乗ることが事実上禁止されているます。

栽培品は全国的に流通しており、長野県産は「信州しめじ」の名前で売られるようになり、2014年には日本産のヒラタケと海外産のヒラタケ属であるオイスターマッシュルームを交配し、形が崩れにくく品種改良したヒラタケが「霜降りひらたけ」の名で流通しるようになっています。 2018年(平成30年)に日本では4,001トン、19億円のヒラタケが生産された。

天然ものは秋が旬で、地域によっては寒い時期に採れたものを「寒茸(カンタケ)」と呼ぶこともあります。人家周辺の木、例えば街路樹の幹や根元、公園の木などにも発生する身近なキノコです。

名前の通り傘が平たいキノコで、広葉樹の枯れ木などに重なるように生えています。 傘の径5〜15センチ、柄は長さ1〜3センチ、幼菌時はまんじゅう形、しだいに開いて貝殻形〜ほぼ平ら〜最後はじょうご形に反り返る。表面は平滑で粘性はなく、色ははじめ黒褐色からしだいに淡色となり、淡灰褐色となる。しばしば青、あるいは紫色を帯びることがある。まれにはじめから淡色のものもある。

ヒラタケとよく似た毒キノコにツキヨタケがある。




【ムキタケ】(剥茸)

ムキタケ
ムキタケ
ムキタケはナメコと同様に人気のあるキノコです。都会ではスーパーまでは出回らないでしょうが、秋田県や中部地方の山間地方では「山のフカヒレ」と呼ばれるほど美味しいキノコとして重宝されています。傘の内側がゼラチン層になっていて、これが食べたときにフカヒレのように感じられることからそう呼ばれます。

ブナやミズナラ林をはじめとする広葉樹の枯れた幹や倒木などに重なり合うように群生するのが特徴で、旬は10月中旬から下旬で、キノコのなかでも旬の時期が遅いキノコです。ガマノホルケ科ムキタケ属のキノコの一種で。カタハ、ノドヤギ、ムクダイなどの地方の呼び方があります。

扇形のカサが3〜15センチ程度でほぼ半円形。薄い黄褐色をしていて表面に毛が密生し、それが剥(む)けやすいこと、さらにそのまま食べると食感が悪いので剥くことから、ムキタケの名がついたといわれています。傘裏のヒダは白色から帯黄白色で密。口の中でほどけるところがホタテに似ているという人もいます。保存食として塩漬けにする地方もある。

緑がかったムキタケもあり、こちらは生えるのがやや遅いことからオソムキタケと呼ばれています。もともとは区別もされていなかったようですが、今はそれぞれに学名もつけられ区別されています。味わいや生態などにあまり違いはありません。秋に生えてきた場合は紫色になったりしますがもちろん美味しく食べられます。

ムキタケ幼菌は毒キノコのツキヨタケの幼菌と似ているのと、ともに枯れ木に混生するので注意が必要です。外観がよく似たものに、ツキヨタケ(毒)やヒラタケ(食用)があります。




【ホコリタケ】(埃茸)=キツネノチャブクロ(狐の茶袋)

ホコリタケ
ホコリタケ。これはてっぺんに穴が開いていて
すでに食べ頃を過ぎている。食べられるのは右下の状態のもの。
日本全国、中国、シベリア、ヨーロッパ、北アメリカなどに産するホコリタケ科ホコリタケ属のキノコで、名前の由来は叩くと頂端の小さい穴あなから胞子ほうしを煙けむりのように出すところからついた名前で、英語で「パフボール」(Puffball)と呼ばれるのも同じ理由です。日本では「狐の茶袋」の名で呼ばれるほうが多いです。地方ではケムダシ、ケムダシキノコ、メツブシ、ツンボキノコ、ミミツブシ(耳潰し)、バクダン(爆弾)などとも呼ばれ、食べられるものは表皮を向いてからすまし汁、豆腐汁、酢のもの、納豆和えなどに重宝される食用キノコです。

ホコリタケ
食べ時のホコリタケ
 夏から秋、樹林内や原野、道端、畑地などに洋ナシ形のキノコで一夜のうちに群生します。子実体は高さ4〜6センチ、頭部は擬宝珠形に膨らみ、はじめ白色、のち灰褐色です。表面に尖ったつぶ状の小さな突起が密生しますがのち脱落します。肉ははじめ白色、弾力のあるはんぺん状で味、においとも温和。成熟するにしたがい灰褐色海綿質から淡緑褐色の屑綿状となります。

ホコリタケ
二つに割ってみて
こういう状態なら食べられる
 食べられるのは若い時だけで、頭部の肉を二つに割ってみて、中が詰まっていて真っ白なら食べられます。肉が少しでも灰色ないし緑褐色に変色して、前述のように叩いて茶色い煙のような胞子が飛び出るようでは既に食期を過ぎています。食べた印象は「菌臭のするハンペン」といったところでしょうか。

 


【オニフスベ】(鬼贅)

オニフスベ
オニフスベ
上述のホコリタケと似た食用キノコです。「フスベ(贅)」とはこぶ・いぼを意味します。薮玉(ヤブダマ)、ヤブタマゴ、キツネノヘダマ、テングノヘダマ、ホコリダケなどの地方名があります。江戸時代は、他のホコリタケ類とあわせ馬勃(バボツ)とも呼ばれました。「牛溲馬勃」(ぎゅうしゅうばぼつ)という言葉があります。つまらないものや、役に立たない無用なもののたとえで「牛溲」は牛の小便。「馬勃」は馬のくその意味です。

両方とも漢方薬にあり、「牛溲」は薬草のオオバコ(大葉子)で、中国では「車前葉」(クルマの轍のところに生える)漢方薬として慢性気管支炎や高血圧症に使われます。「馬勃」は腐った木などに生えるホコリダケのことでこちらは漢方では止血、鎮咳作、鎮痛、解毒作用、できものなどに使われます。

オニフスベ
オニフスベのバター炒め
オニフすべは巨大なキノコで直径30センチほどあります。内部は白いはんぺん状。中の肉まで真っ白い幼菌は食べられます。外皮をむいてフライに、さっとゆでて酢漬けにして食べると美味しいといいます。

オニフスベ属の仲間は世界に4種ありますが、日本には本種だけで日本特産です。夏から秋、庭先や畑、雑木林、竹林などの地上に大型の子実体を生じますが、一夜にして発生するので驚かれます。

 


タマゴタケ(卵茸)

タマゴタケ
タマゴタケ(幼菌)
ハラタケ目テングタケ科テングタケ属のテングタケ亜属タマゴタケ節に分類されるキノコの一種。色が鮮やかなため毒キノコと間違われがちだが、美味しい味を持つキノコで、テングタケ科の中でも珍しく殻を破る前の幼菌は生食で口にできることで知られています。

 

キノコ自体は壊れやすく、傷みやすいため、一般にはほとんど流通していない。フランス料理、イタリア料理では高級茸としてよく使われます。茹でると煮汁に黄色い色素が出ると共に茶色に変色するため、色を楽しむには茹でずに焼いた方がいい。おすすめ調理法は天ぷら、バター炒め、マリネ、スープ、鍋物、フライや炊き込みご飯、オムレツなどによく合う。

火を入れると赤い傘は黄色くなります。天ぷらにすると色も赤いまま仕上がるので見た目にも美味しいです。柄はボソッとした感じで味はそれほどではないものの、傘はもっちりした感じでとびっきりの美味さです。

夏から秋にかけて、広葉樹(ブナ科・カバノキ科)や針葉樹(マツ科)の林内に孤生または群生する。樹木の細根の細胞間隙に菌糸を侵入させて外生菌根を形成し、一種の共生生活を営んでいると考えられる。

タマゴタケ
タマゴタケ(成菌)
はじめは土から白い卵のようなものが顔をだし、それが割れると赤から赤褐色のカサが顔を出します。その後、柄(え)が伸びてきます。カサは卵の形のようで、柄は黄色気味。成長するにつれ、カサは饅頭のような形になります。成菌になると、カサは中央に出っ張りがある平らな円形になり、若干黄色味をおびます。カサの大きさは径4-15センチ程。柄の根元部分には白いタマゴのようなツボがあります。

タマゴタケは鮮やかな赤色が特徴ですが、同じく赤い毒キノコのベニテングタケと似ているので要注意です。ベニテングタケは赤い傘の表面に白いいぼがあります。ベニテングタケの柄は白く、タマゴタケの柄は黄色いという違いで見分けます。

タマゴタケモドキ
タマゴタケモドキ
名前に「タマゴ」とついているものの、食用とは真逆のタマゴタケモドキという猛毒のキノコがあります。卵のような白いつぼから生まれるところはタマゴタケと似ています。タマゴタケと異なるのは・カサの色が違う(黄色)のと周縁部に条線(スジ)がないことです。症状は食べてから10時間〜24時間程で嘔吐・腹痛・下痢の症状が現れます。一旦おさままるものの数日後には肝臓や腎臓の細胞が破壊され、最悪の場合死に至るという猛毒キノコです。

 


ミヤマタマゴタケ(深山卵茸)

ミヤマタマゴタケ
ミヤマタマゴタケ(幼菌)
ネットには「ヤマタマゴタ13を味噌汁にして食べた。美味しかったよ〜(^^♪。癖がなく、まろやかで、かさはツルッと喉ごしがよかった」という書き込みがあります。しかし、図鑑によって、食毒は「不明」とか「食不適」、あるいは「有毒」と書いてあるものがあり、はっきりしません。ここでは一応、食用キノコの項に入れておきます。

というのも、2001年に新種として発表されたばかりのキノコなのです。日本特産で北海道、静岡県、長野県、岐阜県などのキノコ愛好者の間で、「ミヤマドクツルタケ」、「ミヤマタマゴテングタケ」、「オオフクロテングタケ」、あるいは「オオツルタケダマシ」などの仮名で呼ばれていたキノコです。

ミヤマタマゴタケ
ミヤマタマゴタケ(成菌)
タイプ標本は、岐阜県高根村日和田高原のモミ属をまじえたミズナラ林(海抜1400m付近)内で採集されたものの分析から新種とされ、種小名「Amanita imazeki」にあるように、菌類学者今関六也にちなんで献名されたものなのです。食べても大丈夫なようではありますが、まだ疑問符がついている段階です。

初夏から秋にかけて、コナラ・ミズナラ・シラカシ・クリ・スダジイなどブナ科の樹木やアカマツ・クロマツ・エゾマツ・モミ・カラマツなどマツ科の林内の地上に孤生ないし点々と群生する。生態的な性質の詳細については、まだ不明な点が多いが、これらの樹木との間に外生菌根を形成して生活しているものと考えられる。

まとめると、傘は卵形→平、白に近いベージュ色〜暗褐色で個体によって様々。周縁部には条線がある。 ヒダは離生し、密で白色。柄は白色で上部に白色のつばがある。基部に大きな袋状のつぼがあり下半分位にささくれがある。

北海道東部に位置する阿寒湖の周辺は、ミヤマタマゴタケが多く発生するが、ここは標高420メートルほどだが、緯度が高い場所。名前に「深山」(みやま)とあるように本州では相当高い標高の高山植物帯でなければ生育できないキノコである。


ハツタケ(初茸)
 

ハツタケ
ハツタケ

「初茸」の名前の由来は、初秋(9月中旬)に他のキノコに先駆けてアカマツ、クロマツなどマツ類の樹下に多く発生するところからの命名とされ、日本では北海道から沖縄まで広く分布します。

ハツタケの裏
このように傘裏が緑青のような色をしているハツタケ
ベニタケ目 ベニタケ科カラハツタケ属に分類される中型から大型のキノコです。夏から秋にかけて、マツ林に発生する。子実体は傷がつくと赤ワイン色の乳液が出て、ゆっくりと青緑色に代わるのが特徴で、地方によってはアイタケ(藍茸)やロクショウ(緑青)などともよばれる。旨い出汁が出る食用キノコとして知られ、特に千葉県の房総半島では珍重されます。

優良な食用きのことして知られていたようだが、文献に登場するのは、室町時代以後で、倭訓栞には、「はつたけ、紫蕈(むらさきしめじ)ともいう。ハツは早いことをいう。備州では”あいたけ”、尾州では”あおはち”、江州では”あおすり”、または”あいすり”、賀州では”まつみみ”「、中国、九州では、”まつなば”「という」とあり、江戸時代には、全国的に知られていたようです。
ほかにも「あいずり」、「あおはち」「あおはつたけ」「ろくしょうはつたけ」「ろくしょきのこ」「まつしたきのこ」「まつしめじ」「まつなば」「まつみみ」「まつめん」など異名があります。

傘は直径4 〜 16センチ、幼時は半球形から丸山形で、生長すると中央がくぼんだまんじゅう形になり、次第に開いて、ほぼ平らあるいは浅い皿状となる。成菌になると、不規則な円形になる。傘・柄の肉は堅く締まっているがもろい肉質で、ほぼ白色でかたく、柄の周辺とヒダの上部は赤ワイン色を呈する。傷つけると暗赤色ないし暗赤ワイン色の乳液を少量分泌し、後にゆっくりと青緑色となります。

ハツタケは古来より、食べられてきたキノコで、松尾芭蕉や小林一茶などの俳句にも登場しています。芭蕉の句は「 初茸やひとつにゑくぼひとつづつ」。一茶の句は「初茸を 握りつぶして 笑ふ子よ」

多くのベニタケ科のキノコと同様、若干、パサパサしているので、調理には工夫が必要で出汁扱いされる時が多いものの、炊き込みご飯にすると絶品だといいます。

アカハツ
アカハツ
アカモミタケ
アカモミタケ
ハツタケというと、必ず並んで出てくるのがアカハツアカモミタケです。いずれも有用な食用キノコです。違いは、ハツタケが紅色を帯びた褐色なのに対して、アカモミタケはオレンジがかった色。ハツタケの出す乳が赤色なのに対して、アカモミタケのそれはオレンジ色。ハツタケの乳が緑青色に変色するのに対して、アカモミタケは変色しません。また、ハツタケがアカマツやクロマツの林内に発生するのに対して、アカモミタケはモミやシラビソなどの林に発生するという違いがあります。アカハツはどうかというと、全てが「中途半端」で、カサの色はオレンジを薄めたような色で、乳はオレンジ色だが多くは出ない。そして乳は穏やかに緑青色に変色します。


 


ツルタケ(鶴茸)
 

ツルタケ
ツルタケ)
 スラリとした姿や傘の色が鶴の羽の色と似ているところからツルタケの名がついたようだ。夏から秋にかけてマツ類やナラ類、カンバ類の林の地上に発生する。分布は世界的で、ツンドラ地帯からニューギニアの高地まで発生が確認されている。

ハラタケ目テングタケ科のキノコで食用キノコであるが、この仲間にはツルタケダマシやタマゴテングタケモドキという毒キノコがあるのでよほど同定に自信がある人以外は気を付けたほうがよい。今なお「生食すると中毒を起こす、加熱しても毒」という文献があるほか、実際に食べたところ美味との報告や普通に「食用」とする文献が混在、もう一つはっきりせず、実質的に食毒不明として扱われていることが多い。

 傘ははじめ卵形で最後にはほぼ平らに開く。直径が3〜8センチほどで、色は灰色から灰褐色で周辺部は色が薄くなっており、放射状の線がある。傘の表面にはつぼの破片が付着する場合もある。 ひだは白色で柄に離生する。柄は白から淡灰色で根もとに白色のつぼをもつ。つばはない。

有毒のツルタケダマシやタマゴテングタケモドキとの違いはつばがあるかどうかであり、ツルタケにはつばがない。ただし、幼菌のうちは区別が困難であり、成菌でもつばが取れていることがあるので判別は慎重に。肉は基本的にどの部分も白色で、味や匂いは殆どありません。

湿気が多い場所では表面にヌメリが見られ、カサの形は幼い時は卵形で成長すると平らに開いていきます。成長するとカサが裂けやすい事もツルタケの特徴のひとつです。

ツルタケの柄は長さが10〜20センチとかなり長く、根元に近づくほど、やや太くなっており、中身は細い空洞です。また、根元部分には膜質のツボがあり、表面は白色。上部は粉状、下部は綿毛状の鱗片に覆われています。

近縁にシロツルタケ(食毒不明種)があり、これは色が真っ白な点がツルタケとの相違。同じくカバイロツルタケがるが色が樺色ということ以外はツルタケと外見の特徴はほぼ同じ。生食は中毒を起こすが、加熱すれば食用になる。

 


テングツルタケ(天狗鶴茸)
テングツルタケ
テングツルタケ

一見、食べられそうには見えませんが食用キノコです。テングタケ科のキノコは有毒が多いのですが、本種はツルタケに近い仲間で可食なのです。ただし、食感はボソボソしており食用価値は低いのでキノコ狩りの対象にはあまりなりませんが、近縁のカバイロツルタケに似たよいダシが出るというキノコです。

テングツルタケ見分け
テングツルタケ見分けのスケッチ
夏から秋に、クヌギ、コナラ、シイなどブナ科広葉樹下に発生します。傘は直径4〜7センチ、黄褐色から暗褐色で周辺部は淡色、やや粘性があり、表面に黒褐色のやや綿状のイボが散在し条線があります。ひだは白色で、縁は灰色で粉状の物質が付いている事があります。柄は長さ7〜18センチほど、灰色で、鱗片が覆い、つばはありません。

テングタケ属(Amanita)は大きく分けて、「テングタケ節」と「ツルタケ節」があり、テングツルタケは「ツルタケ節」に入ります。「テングタケ節」は、根本が膨らみ、細かく砕けやすいツボがあり、「ツルタケ節」は、根本は膨らまず、ツボはさや状でツバはありません。

近縁にヘビキノコモドキ(カサに条線なし、ツバあり、膨らんだ根本に黒い粒状のイボが環状につく)とキリンタケ(黒っぽいカサに灰色の粉状イボあり、条線なし、ツバあり、膨らんだ根本に綿クズ状ツボ破片あり)がありますがいずれも有毒です。

上でキノコの腐生菌(枯れたシイ、クヌギ類に生えまるシイタケなど)と菌根菌(生きているシイ、コナラ林の地上に生えるタマゴタケなど)と寄生菌(腐ったきのこに発生しするヤグラダケなど)について触れましたが、テングツルタケは菌根菌で毎年同じ場所に発生します。共生している樹木が元気な証拠です。

 テングツルタケを「食べた人の報告があります。

大半の図鑑では有毒と記載されている。一方でwikipediaと山と渓谷社の大型のキノコ図鑑には食用と記載されている。英語版のページを見ても可食との記述があるのである程度の信憑性はありそう。

味を確かめるには単純に焼くのが一番だと思っているのでしつこいくらいに焼いてみる。ハマクサギタマゴタケやオオオニテングタケを食べたときのように一口食べて24時間経っても異常がないのを確かめてから1本丸々食べる。さらに24時間が経過しても異常はないので無毒でよさそう。

味はツルタケの仲間というだけあってカバイロツルタケに近い。噛むとこっくりとした出汁のある旨味が染み出てくる。食感はボソボソしていてタマゴタケ以下だがけっこう美味い。も

っと食感をボソボソさせて味を少しだけ薄くしたカバイロツルタケです。味噌汁とかに入れたら結構いけるかも。その後2本食べましたが異常はありませんでした。 
すずめさんのHPから 写真(左上)も)

 

ハタケシメジ(畑占地 畑湿地)
ハタケシメジ
ハタケシメジ

「匂いまつたけ味しめじ」といわれるシメジの中でも、一番美味しいといわれるのがホンシメジ。それに次いで美味しいのがこのハタケシメジです。「畑しめじ」という名前ですが、畑で栽培しているわけではなく、れっきとした天然物でホンシメジに極めて近い親戚のキノコですので味、食感、香りともに素晴らしく、また味の方は天然ものに劣るものの人工栽培物が出回っていて身近になっているキノコです。

ホンシメジ
通販で見かけたホンシメジ。
300グラムで4990円の値段がついていた。

里地の草むらや藪から、奥山の林地、草むらと採取環境は広く、秋のはじめから晩秋までと採取期間も 長いのが特徴です。群生することが 多く株となってでています。傘の径は4〜9センチ、まんじゅう形からほぼ平らに開き、幼時は暗灰褐色で僅かに粉状だが、老成時にはやや淡灰色あるいはくすんだクリーム色となる。ひだは密で柄に直生ないし上生し、ほぼ白色だが、古くなると多少クリーム色を帯びることがある。柄は長さ5〜8センチ、太さ7〜10o程度、ほぼ上下同大あるいは基部に向かってやや膨らみ、ほとんど白色、中実である。胞子紋は白色、胞子は類球形で無色・平滑別荘地の道路わきやら軒先やら毎年、同じ場所に出ます。

毒キノコの「クサウラベニタケ」「カキシメジ」が同じようなところに出るので「ハタケシメジ」を 採取するときは要注意です。







【 テングタケ 】(天狗茸)

テングタケ
テングタケ
テングタケはアカマツ林、トウヒ林、コナラ・クヌギ林など広葉樹の林の中に単生します。夏から秋にかけて広葉樹のあるところ日本中どこでも見られます。発生の条件が揃えば平地の都市部などでも生育しています。一般的に毒キノコは人が利用する事は殆どありませんがテングタケは昔からハエの捕殺に用いられていて「ハエトリ」または「ハエトリタケ」とも呼ばれます。

形状からゴマナバ、ヒョウタケという名前もあります。テングタケの学名は[Amanita pantherina]ですが、この「pantherina」の部分は「ヒョウの」という意味でカサの表面がヒョウ柄になっている特徴からこの名がついたものです。

テングタケ
テングタケ(傘が開いた状態)
テングタケのカサは直径が4〜25センチほど、根元にいくほど太くなっており色は褐色または黄土色を帯びた褐色で中央部の方が色が濃くなっています。カサの形は幼菌時は半球形、成長するにしたがってカサが広がり平らになるまで広がっていきます。カサの表面には白いイボが無数にあり、湿気が多い時にはヌメリがでます。また、テングタケのカサのフチの付近には薄い条線が見られます。ヒダは密に並んでいて、色は白色。柄に離生しています。

テングタケ
テングタケの柄の部分の特徴
柄は高さが5〜20センチ程度で柄の中ほどの箇所に白いツバが見られますがこのツバは脱落しやすく残ってない事も多いです。柄の基部は丸くなっていて一番太く、球形のツボで覆われています。このツボのフチの部分はリング状に反り返るという特徴があります。左の写真のように柄の基部にはつぼの名残りが襟まき状に残る(白く囲んだ部分)、またつばが柄の中央から上部に残る(赤矢印)。

テングタケの肉は白色でもろく、味やニオイは特にありません。同じく毒キノコであるガンタケとも似ているキノコです。 他にも「ベニテングタケ」や「ウスキテングタケ」と似ています。

また、以前は同種として扱われていた針葉樹付近に発生するテングタケは「イボテングタケ」という名前の別種に分けられました。

テングタケは食後30分程度で消化器系、神経系の中毒症状が起こります。その毒性はベニテングタケよりも強いといわれ、 食べると大量に飲酒した時のようにおう吐したり気分が悪くなったりします。具体的な症状としては嘔吐、腹痛、下痢、痙攣、運動失調、幻覚、視力障害、興奮、頻脈、発汗などで酷い場合は呼吸困難や昏睡状態に陥る事もあるようです。

札幌市の無人販売所で“毒キノコ”誤って販売

報道機関が一斉に「食べないで」と呼びかけたところ、翌21日、札幌市南保健センターに購入者から申し出があり、本人は無事だったことがわかった。男性は持ち帰ったキノコのうち1本はハタケシメジに似ていたので「家族と一緒に朝食で味噌汁にして食べた。もう1本は見たことがなかったので食べるのを躊躇した。ネットニュースを見て自分のことだと思った。食べなくてよかった」とテングタケに手を付けなかった理由を話していた。


【 イボテングタケ 】(疣天狗茸)

食べないで
無人販売所に掲げられた「食べないで!」の張り紙
イボテングタケ
イボテングタケ
夏から秋に針葉樹林や広葉樹林から発生する大形のキノコ。つばは取れやすく、ひだは白色で、茎は白かクリーム色。傘の上には条線があり、薄い茶色を帯びたイボ状のつぼの破片がついている。

イボテングタケ
イボテングタケの柄の部分
テングタケと似ていて長い間混同されていたが、こちらの方が少し大きいこと、つばが取れやすいこと、そして傘の上のイボが硬質という違いがある。柄の部分の特徴を右に図示したが、柄の基部にはつぼの名残りが何重にも環状に残る(白く囲んだ部分)。つばは消失してないことも多い。 左から3番目のものは、いぼが脱落しているが,つばは残っている。

宮城県仙台市近郊でハエトリモダシと呼ばれていたキノコを、大正時代に仙台で教員をしつつ、地質・考古学の博士だった松本彦七郎がイボテングタケと命名した。1962年本種から殺ハエ成分が特定されイボテン酸と名付けられた。その後、前からあるテングタケではないかという説が主流になり「テングタケ」の名が定着。ようやく2002年になって、遺伝子マーカーによる分子生物学的調査から正式に独立種と認められた。



【 ベニテングタケ 】(紅天狗茸)

ベニテングタケ
ベニテングタケ
ベニテングタケは八ケ岳では秋口によく目にする身近な存在です。というのも、このキノコは主に高原のシラカバやマツ林に生育し、針葉樹と広葉樹の双方に外菌根を形成する(つまり八ケ岳の環境)ハラタケ目テングタケ科テングタケ属のキノコです。

おもに北半球の温暖地域から寒冷地域でみられ、遠くからも目立つ深紅色の傘には、つぼが崩れてできた白色のイボがあり、傘は直径8-20センチくらいあります。長野県の小諸地区などでは塩漬けにし食べているところもありますが、れっきとした毒キノコです。ただし、毒性は低いようで、食べてから20-30分で瞳孔は開いて眩しくなり、弱い酒酔い状態となる程度のようです。

殺ハエ作用があり、洋の東西を問わずハエ取りに用いられてきて、英語では「Fly agaric」(ハエきのこ)、フランス語では「une amanite tue-mouche」(ハエ殺し)と呼ばれ、ハエがよってくるところにキノコ片を置いて遠ざけた。日本でも東北や長野で「アカハエトリ」と呼ばれベニテングタケを米とこねて板に張り付けてハエを捕獲していた。

ベニテングタケをむしゃむしゃ食べるエゾシカ

2021年2月21日のNHK 「ダーウィンが来た」や「ワイルドライフ」で、阿寒摩周国立公園で猛毒のベニテングタケをエゾシカがせっせとに食べている姿が動画で紹介された。

毒食らうエゾシカ
ベニテングタケをむしゃむしゃ食べるエゾシカ

NHKの番組は録画しそこなったのでYouTubeにあったものを上で紹介したが、この方によれば野生のシカは毒キノコだけでなく、猛毒のトリカブトやスイセン、バイケイソウも食べるとのこと。


【 ドクベニタケ 】(毒紅茸)

ドクベニタケ
ドクベニタケ
ドクベニタケはベニタケ科ベニタケ属ドクベニタケ節のキノコで夏から秋にかけて広葉樹林やマツやトウヒなどの茂った針葉樹林のなかの地上に発生する菌根菌。傘は鮮やかな赤からピンク色の毒キノコで全体に輪を描くように並んで発生しフェアリーリングを形成するキノコとしても知られています。

*フェアリーリング 菌輪(きんりん)、菌環(きんかん)とも呼ばれ、キノコが地面に環状をなして発生する現象。英語では "fairy ring"、"fairy circle"、"elf circle"、"pixie ring" など「妖精の輪」と表現される。

ドクベニタケのカサは直径が3〜10センチ、幼菌時は饅頭型で、成長に伴ってカサが開いて平らになった後はやや反り返る。カサの表面の赤い皮は容易に剥がす事ができ、湿気のある環境ではややヌメリがある。また、表面の色はピンク色の場合もあり雨にうたれたり古くなってくると退色し、白っぽくなる。ヒダは柄に直生〜離生し、色は白く密に並んでいる。柄の部分は白色、表面には浅いシワがある。肉は柄やヒダと同じく白色で全体的にもろく、裂こうとするとボロボロとくずれるほど。


【 コガネテングタケ 】(黄金天狗茸)

コガネテングタケ
コガネテングタケ
 高さは10センチ前後でテングタケ科の中ではやや小形の有毒キノコ。ブナやミズナラ等広葉樹林内の地上に生える。傘は黄褐色の地に黄色のイボが付着している。ひだは白色〜淡い黄色で密。柄は淡い黄色で上部に黄色の膜質のツバを付ける。

テングタケの仲間の幼菌が卵のような形をしているのは、次世代に命をつなぐ大切な大切な胞子をつくりだし、拡散させる器官であるきのこ(=子実体)を保護しているからで、この「卵」を「外皮膜」という。

ベニテングタケの特徴とも言える、赤い傘に付着している白い点々(=イボ)の正体は千切れた外皮膜。誤食すると胃腸系、神経系の中毒を起こす。

ニホンリスは毒キノコを好んで食べる

上で有毒キノコ三種(ベニテングタケ、ドクベニタケ、コガネテングタケ)を紹介した。ところがこの毒キノコをリスが好んで食べているというびっくりの報告が2021年学術誌に掲載された。観察したのは我が山墅と赤岳・横岳を挟んで反対側にある茅野市のアマチュアだ。またエゾシカも毒キノコを食べるということがNHKの「ダーウインが来た」で報告されている。ということは我が山墅で大食漢に困り果てているニホンシカも食べているのではないかと思われる。

毒キノコをリスが食べている決定的瞬間は「野鳥とリスを呼ぶ」の項「なんと!リスが猛毒のキノコを食べる」で紹介。
◇ ◇ ◇

【 カブラアセタケ 】(蕪汗茸)

自宅で採取のキノコで食中毒、カブラアセタケか

鳥取県米子保健所は6月30日、西伯郡内の70歳代男性が自宅敷地内で採取したキノコを食べて食中毒を起こしたと発表した。 毒キノコの一種「カブラアセタケ」とみられる。このキノコによる食中毒が確認されたのは県内で初めて。
男性は27日午後6時頃、キノコをゆでて食べ、約2時間後から下痢やふるえ、発汗などの症状が出たという。自ら119番して入院。29日に退院した。
カブラアセタケは傘が「くり褐色」で直径2.5〜3センチ、柄の長さは2.5〜4センチ。同保健所は「加熱しても毒は消えない。見慣れないキノコは食べないで」と注意を呼び かけている。(2015年7月1日、読売新聞)

カブラアセタケ
カブラアセタケ。海外では死亡例がある。
カブラアセタケはフウセンタケ科アセタケ属に属するキノコ。多くは毒キノコとして知られるアセタケ属で海外では死亡例もある。アセタケ属では比較的小型の部類に入り、傘は始め円錐形のち中高の平らに開く。表面は繊維状で、くり褐色でのち放射状に裂ける。ひだは汚白色、のち帯褐色で柄に上生し、やや密。 柄は上下同大だが、基部がカブラ状に膨らみ、中実。表面は傘と同色で、下方に向かって白くなる。

含まれる毒素はアルカロイドの一種であるムスカリンを含む。猛毒で知られるベニテングタケによって初めて単離された毒成分だが、含有量はカブラアセタケの方が遥かに高い。 食べると早いときは15分、遅くても数時間ほどで症状が現れる。 発汗・流涙・流涎・そして嘔吐・下痢などいわゆるムスカリン中毒を起こし、その他にも痙攣・瞳孔の縮小・ 徐脈・視覚障害・血圧低下。最悪の場合は心臓発作・呼吸困難などによって死に至る。発汗症状からアセタケ(汗茸)の名が付いていて、北海道から九州の平地に広く分布する。



【カエンタケ】(火炎茸、火焔茸)

カエンタケ
カエンタケ
カエンタケはボタンタケ科の高さが10〜15センチほどのキノコで、その名の通り、全体がまるで燃え上がる炎のように上に伸びている赤いキノコです。日にちを経るにつれてくすんだ色合いに変化してきます。触っただけで皮膚の炎症を引き起こし、3グラム食べれば死に至るとされ、「最強の猛毒キノコ」とも言われていて、このキノコが持つトリコテセンという物質は化学兵器にも使われるほどの毒性があります。

ベニナギナタタケ
ベニナギナタタケ
冬虫夏草
冬虫夏草
(これは蛾の幼虫に生えたもの)
この形状を見てまさか食べる人はいないと思うでしょうが、それが結構いて、日本では6件計10名の中毒患者が出ており、酒に浸して飲んだ人など2名は死亡しています。外観がやや似ている食用キノコのベニナギナタタケや冬虫夏草などと誤って食べるようだ。ベニナギナタタケ(紅薙刀茸)は子実体は棒状で、薙刀に似ており、紅色をしていることからベニナギナタタケと名付けられた。可食ではあるがあまり美味くはなく、サラダ、マリネ等に赤い彩りを豊かにする食材として使用される。冬虫夏草(とうちゅうかそう)は、土中の昆虫類に寄生した菌糸から地上に子実体を作る。漢方の生薬や、薬膳料理・中華料理などの素材として用いられる。

原産地はアジアで、1895年にチベットで発見された標本をもとにフランスの研究者が『新種』として報告したのが最初の発見例とされています。その後、1930年代には現在のインドネシアのジャワ島で、さらに戦後になって日本でも報告されるようになった。近年、西日本を中心に発生量が増加、関東にも広がってきた。

2022年には、入間、所沢両市の同丘陵にある県立さいたま緑の森博物館の職員がこぶし大のカエンタケを見つけた。穴を掘って埋めたが、2〜3センチの小さなものや、7センチほどのものなどが次々と出現。また東北地方でも発生が確認され、オーストラリアでも見つかるなど世界的な広がりを見せています。

日本では江戸時代末期に完成した植物図鑑『本草図譜(ほんぞうずふ)』に、カエンタケと似た姿のきのこの図が『火焔(かえん)だけ』として記載されています。その解説文には『細条の珊瑚(サンゴ)の如く黄色紅赤火の炎々たるが如し(中略)大毒あるといへ(え)り』とあります。

日本では、元来、原生林に近いような自然な林に見られるキノコで、相当に稀な存在で毒性についての情報もなかったが、1991(平成3)年に山梨県で3センチほどのカエンタケを天ぷらにして食べた47歳の男性が、数日間40度以上の発熱を起こし、その後に髪の毛が抜けたり、小脳が萎縮して運動障害が出たとの報告があった。また、1999(平成11)年には新潟県で、旅館に置いてあったカエンタケを男性5人が食べ、うち1人が2日後に死亡した。こうした報告からカエンタケの強毒性が明らかになった。

カエンタケを食べると30分ほどで胃腸系や神経系に食中毒の症状が現れます。具体的には悪寒、腹痛、手足のしびれ、嘔吐、下痢、のどの渇きなど。その後、腎臓・肝臓・呼吸器・循環器不全や脳障害などの症状が生じ、ときには死に至る。顔面の脱皮、粘膜のびらん、脱毛などの『表面に出てくる症状』が特徴とされている。

最近、カエンタケが都市部の公園などでも発生するようになったが、ナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)との関連が言われている。カエンタケ発生の先行地域である関西では、ナラ枯れ地域とカエンタケの発生地が一致していることからだが、まだ結論は出ていないものの、ナラ枯れした木に腐朽菌が入り、それをねらう菌寄生菌としてカエンタケが入ってきたのではないかとも言われる。それを裏付けるように、2017(平成29)年に千葉県内で初めて発生したナラ枯れの拡大と期を一にして、2019〜20(令和元〜2)年に県南部の君津市や鴨川市の森林地帯でカエンダケが見つかっている。


【タマゴテングタケ】(卵天狗茸)

タマゴテングタケ
タマゴテングタケ
以下で紹介するドクツルタケやシロタマゴテングタケとともに「猛毒キノコ御三家」と呼ばれ、世界的に知られている毒キノコで、その毒は食べると1日後に嘔吐、下痢、腹痛などの症状があらわれ、数日後に内臓の細胞が破壊されて、最悪の場合死に至ると言われています。

ギネスブックに「最も有毒なキノコ」として掲載されている。ヨーロッパには多く自生しており、death cap(死の傘)と呼ばれ、ローマ教皇のクレメンス7世もこのキノコの犠牲者の1人で、1534年9月25日にタマゴテングタケの中毒で亡くなった。

種名phalloidesの意味は「男根 (phallus) に似た (-oides) 」であるが、文字通りの意味なのか、Phallus(スッポンタケ属)に似ているという意味なのかはっきりしない。

夏から秋、主にブナやミズナラなどの広葉樹林に生える。傘はオリーブ色。条線はない。柄は白色でつばがある。ひだは白色。ひだに濃硫酸をたらすと淡紅紫色に変色するという、他のキノコには見られない特徴があり、このキノコの判別に用いられる。日本では北海道で発見されることがあるが、本州以南の地域では見つかることは稀。

古くから知られている毒キノコであるため、その毒素成分の研究も進んでおり、アマトキシン類、ファロトキシン類、ビロトキシン類などがその毒素であることが明らかにされています。

他にタマゴテングタケと名のつくキノコにクロタマゴテングタケ、タマゴテングタケモドキ、コタマゴテングタケ、クロコタマゴテングタケなどがありますがいずれも有毒です。

タマゴテングタケ殺人事件、3人死亡1人重体(豪州

 タマゴテングタケは世界で最も有毒なキノコの1種であり、世界中のキノコ関連の死亡の約90% の原因になっている。主な毒素はα-アマニチンで、料理や乾燥では破壊できず、肝不全や腎不全を引き起こして死に至る。

オーストラリアでこのタマゴテングタケを使って元夫の両親と叔母の3人を殺した疑いで女が逮捕・起訴された。
2023年7月末、オーストラリア・ヴィクトリア州東部にある小さな街、リーオンガサで、3人が毒キノコと見られる食中毒で亡くなった。警察は事故ではなく事件として捜査を行ってきたが、11月2日朝、被害者に食事をふるまい、事件後の取材で涙を流していた女が逮捕・起訴された。オーストラリアABCなどが報じている。

エリン
メディアに涙ながらに無実を訴えるエリン
 7月29日、この町在住のエリン・パターソン(48歳)は、別居している元夫の両親で、義母にあたるゲイル・パターソンさんとその夫のドンさん(ともに70歳)、義母の妹夫妻ヘザーさん(66歳)とヘザーさんの夫で、バプテスト教会の牧師イアン・ウィルキンソンさん(68歳)を自宅に招待し、昼食のビーフウェリントンパイを振る舞った。

ビーフウェリントン
ビーフウェリントン
* ビーフウェリントン(英語: Beef Wellington)パイ 
イギリスの伝統料理で、クリスマスの時期に好んで食される料理。牛ヒレ肉の周りにパテやキノコなどで作ったデュクセルを塗ってからパイ生地で巻き、オーブンで焼き上げたもの。レシピには、一般的にキノコが加えられる。


被害者
亡くなったパターソン夫妻(右)と夫だけ助かったウイルキンソン夫妻
数時間後に4人とも苦しみはじめ、同日真夜中に症状が悪化し、メルボルンの病院に運ばれたが、数日後、ゲイルさんとドンさん、そしてヘザーさんが病院で死亡した。牧師のイアンさん(68歳)は、肝移植のほかないという重篤状態が続いたものの一命を取り留め9月22日退院にこぎつけた。

 警察は、被害者らが腎不全や肝不全を引き起こす可能性がある、テングタケ属のデスキャップキノコ(Death Cap =死を呼ぶ傘、タマゴテングタケの英語名)の摂取と一致する症状があったことを確認した。またエリンの住む地域ではキノコ採集が人気で、捜査では料理をしたエリンの周りの森に、タマゴテングタケが自生していることがわかった。また、事件が発生した後、エリンの家の近くのゴミ廃棄場に、パイをつくるときにキノコを砕いたとみられる食品乾燥機が捨てられてあるのが発見された。

 料理をしたエリンと、昼食時に一緒にいたエリンの2人の子供たちも予防措置として病院に運ばれたが、症状はまったく出なかった。というのも、エリンと子供たちは料理を食べていなかった。エリンは「店でキノコを買った」と供述したが、猛毒キノコが店で販売されているとは考えにくい。また、地元メディアの調査では、地元の農産物を販売している複数の店舗で、リコールや警告が一切出されていなかった。

Death Cap
欧米でDeath Capと呼ばれるタマゴテングタケ。
豪州でふんだんに出る。
 自分に容疑が降りかかると、エリンはメディアの前で涙を流して全面否定した。「かつての義理の両親を失ったことを、私自身とても悲しんでいます。義母のゲイルは、私にとっては母親のような存在でした。私の母は4 年前に亡くなりましたが、ゲイルは私にいつも良くしてくれて、親切でした。イアンとヘザーは、私がこれまで会った中で最高の人々の1人でした。私は何もしていません。キノコの有毒な成分については、なにも知りませんでした」

この昼食会はエリンが現在別居中の元夫サイモンさんとヨリを戻すきっかけになるはずのものだったようだ。サイモンさんの友人は、「エリンはサイモンとよりを戻したかったが、サイモンの家族は彼女が息子と復縁することを望んでいなかった」と語っている。サイモンさんは、食事に招待されていたが、出席できなかった。

 サイモンさんの友人は、「あの日は単なる昼食会ではなく、牧師のイアンさん(元義母の妹の夫)を仲介者として呼んでいたようだ」と話している。
奇妙ななことにサイモンさん自身も昨年5月、謎の胃の不調を訴えて倒れてから、21日間集中治療室で過ごし「死にかけた」経験があることだ。夫婦が別居した後も、深刻な腸疾患で入院していたという。


【シロタマゴテングタケ】(白卵天狗茸)

シロタマゴテングタケ
シロタマゴテングタケ
シロタマゴテングタケはハラタケ目テングタケ科テングタケ属の猛毒キノコ。夏から秋に広葉樹林や針葉樹林の地上に発生します。傘の大きさは5〜10センチの中型で白い以外はタマゴテングタケとほぼ同じで、このためタマゴテングタケの変種とする説もあります。世界に広く分布しています。

傘は名前の通り、白色で表面には光沢が見られますが、湿気を帯びるとややヌメリが出てきます。また、形は幼い時は卵型で成長するにつれて徐々に開いて平らになっていきます。柄の部分は白く、上部には布のような質感のツバが垂れ下がっています。また、柄の表面は平滑で繊維状です。

肉の色は基本的には白色ですが、柄の髄の部分はやや黄色みを帯びています。

後述のドクツルタケ同様、欧米では「破壊の天使」(Destroying angel)の異名をもち、1本食べただけで死に至るほどの猛毒を持っていて、日本では新潟での発生が多く「イチコロ」という地方名があるほど。

食後6時間から24時間ほどで下痢、嘔吐、腹痛なそコレラのような症状を呈し、数日後に肝臓肥大、黄胆、胃や腸からの出血、その他,内臓細胞破壊が起こり死に至る場合がある。この毒はファロトキシン類、アマトキシン類、溶血性のレクチン 。

発生県名不詳だが、平成 4 年 (1992) 夫婦 ( 男性 53 歳、女性 52 歳 ) がキノコ狩りで採った約 30 本のきのこを加熱調理し食べたところ 12 時間後に嘔吐、腹痛、血液の混じった水様性下痢、手指のつっぱり感を発症し、近くの病院に入院し、大量輸液、強制利尿などが行なわれたが危険状態になり、43 時間後に救命救急センターへ転院。ここで血中毒素除去の目的も兼ねて血漿交換、血液透析を行ったところ5日後に正常化に向かい、25日後に退院した。妻も夫と同様の症状が出たが食べた量が少なく、15日後に退院した。(国立保健医療科学院報告)

平成 10 年( 1998 ) 10 月 29 日、栃木県芳賀郡茂木町で 5 人がシロマツタケと誤って、シロタマゴテングタケを煮物にして摂食。摂食後全員嘔吐、下痢などの上と同じような中毒症状を発症。肝機能低下でうち男性 1 人が死亡した。栃木県保健環境センターでシロタマゴテングタケと同定された。

シロタマゴテングタケは次項で紹介するドクツルタケに非常によく似ている事でも知られ、違いとしてはシロタマゴテングタケの方がやや小さい事や柄の内部の肉の色がやや違う事、柄の部分にササクレがない事などがあげられますが、素人では殆ど見分ける事ができません。しかし、どちらのキノコも猛毒を持っています。


【タマゴテングタケモドキ】( 卵天狗茸擬)

タマゴテングタケモドキ
タマゴテングタケモドキ(成菌)
タマゴテングタケモドキは広葉樹林や広葉樹と針葉樹(アカマツ)の混じった混成林の地上に夏から秋に群生、散生または単生します。日本では各地に広く分布しています。

タマゴテングタケモドキ
タマゴテングタケモドキ(幼菌)
名前からはタマゴテングタケの近縁種のような印象を受けますが、実際にはタマゴタケの近縁種である事が分かっています。タマゴタケは食用ですが、こちらは毒の成分を持ったキノコなので特に注意が必要です。アカハテングタケと呼ぶところもあります。強い胃腸系の中毒症状を起こす毒を持っており、下痢、嘔吐、頭痛などの症状がでる事があります。

タマゴテングタケモドキの傘
タマゴテングタケモドキの傘はピンク色が特徴
タマゴテングタケモドキのカサは幼い時は饅頭型で成長するとカサが開き中央にくぼみのある浅い皿型に変化します。カサの表面の色は淡い紅色を帯びた灰褐色、質感は平らで滑らか、周囲のフチの部分には長い条線が見られます。湿気が多い時には弱いヌメリがでます。カサの裏側のヒダの部分の色は淡い紅色でやや密に並んでおり、柄に離生しています。テングタケ科の中では珍しくひだが薄いピンク色である。ツルタケダマシ(有毒)は本菌に非常によく似るがひだが白色である。

柄の長さは4〜9センチ、柄の下方の方がやや太く、上部には膜質のツバが見られます。表面の色は白色ですが下部は少し灰色を帯びている事もあるようです。柄の基部には膜質で厚みのある袋状のツボが確認できます。肉の色は白色で特徴的な匂いや味はありません。



タマゴタケモドキ(卵茸擬)

タマゴタケモドキ
タマゴタケモドキ
卵のような白いつぼから生まれるところは食用のタマゴタケと似ていますが、タマゴタケモドキの方は猛毒です。食べてから10時間〜24時間ほどで嘔吐・腹痛・下痢の症状が現われ、一旦おさままるものの数日後には肝臓や腎臓の細胞が破壊され、最悪の場合死に至るという猛毒キノコなのです。

山梨で60代女性、「タマゴタケモドキ」で食中毒、肝障害も
 山梨県衛生薬務課は2018年8月28日、甲府盆地などを管轄する中北保健所管内の病院から「毒キノコによる食中毒患者を治療している」との連絡があったと発表した。
 同課によると、患者は富士・東部地域に住む60代女性。23日の正午ごろ、家族が採取した野生のキノコを炒めて食べ、同夜に嘔吐や下痢などを発症、救急搬送され地元の入院した。患者は食用の「タマゴタケ」に似た毒キノコ「タマゴタケモドキ」とみられるものを食べたとされ、今も入院中という。他の家族はキノコを食べなかった。 25日になってタマゴタケモドキが引き起こすとされる肝障害など症状が悪化し、中北保健所管内のほかの病院に転院した。

この60代女性は回復したが、北海道では死亡例が報告されている。

1989年9月、北海道網走湖畔の雑木林で採取したタマゴタケモドキを食べた2人が食後2時間後に腹痛、嘔吐、下痢で病院に行ったが、きのこ中毒と気づかなかった。一時回復したものの、5日後に夫が妻と子の意識低下に気づき病院に運んだが、8日目に妻(40歳)が、15日目に長男(15歳)が肝・腎不全で死亡した。解剖所見の結果、劇症肝炎、肺うっ血、肺化膿症、腎臓と脾臓のうっ血、脳軟化症などが見られた。(1992年日本菌学会報)

 タマゴタケモドキは、3〜5センチの黄色または黄褐色の傘が特徴で、白いつぼから生まれるところはタマゴタケと似ています。異なるのは・カサの色が違うのと周縁部に条線(スジ)がないことです。

発生する時期は夏から秋で、発生の場所もコナラ、クヌギ、ミズナラなどの広葉樹林やトウヒ(唐檜)などの針葉樹林。カサは3〜7センチ、湿時には弱い粘性があり、冷たい感じのする淡黄色からくすんだ橙黄色で中心部ほど濃色となる。地色より濃い繊維状片鱗に覆われ、周辺に比べ中央部が濃色。ヒダは、白色、密、離生する。柄は、逆こん棒形。基部に白色膜質のツボをもつ。 上部に、表側白色、裏側黄色のツバを垂れ下がらせる。 柄のつばより下部は黄色の繊維状片鱗に覆われるが、ツバより上部は淡色平滑。肉は白色で、表皮下表面色を帯びる。

名前からはタマゴタケに似た印象があるが、形態的にはタマゴテングタケに近く、同様に猛毒である。なおタマゴテングタケモドキ(A. longistriata)というキノコもあるが、こちらは灰褐色の傘にタマゴタケのような条線があり、毒性は弱い。村上康明は「現在のタマゴタケモドキに『タマゴテングタケモドキ』と名付けるべきであった」と述べている。


【ドクツルタケ】(毒鶴茸)

ドクツルタケ
ドクツルタケ
日本で見られる中では最も危険な毒キノコの一種です。欧米では「死の天使」「破壊の天使」「殺しの天使」(Destroying angel) という異名をもち、日本においても死亡率の高さから、地方名で「ヤタラタケ」「テッポウタケ」などとも呼ばれる毒キノコです。初夏から秋、広葉樹林および針葉樹林の地上に生えます。かさは径5〜15センチとかなり大きく、初め卵形、のち円錐形のつりがね形から平らに開き、色は白。湿っているときはやや粘性があり、柄にはつばとつぼ、そしてささくれがあります。

シロツルタケやハラタケ科などの白い食用キノコと間違える可能性があるので注意が必要です。例えば、シロオオハラタケとドクツルタケは見かけはほぼ同じで、水酸化カリウム3パーセント液を傘につけると黄変することで見分ける他ないので素人にはまず無理です。

これまでドクツルタケとされてきた個体も複数の種に細分化できることが分かっており、高山帯に生え大型になる高山型の個体と、平地に生え小型の平地型の個体に分類されるようになり、柄にささくれがあるが強い塩素に似た臭いがあるニオイドクツルタケや柄にささくれがあり、傘の中央がクリーム色を帯びるアケボノドクツルタケなどの種類が分離されています。

毒性は、1本で1人の人間の命を奪うほど。腹痛嘔吐下痢が起こり、1日ほどで治まったかに見えるが、その約1週間後には肝臓や腎臓の組織が破壊され、劇症肝炎様の症状が現れます。

巷間、「干して乾燥すれば食べられる」「ナスと一緒に料理すれば大丈夫」「塩漬けすると毒が抜ける」などの誤った言い伝えがあり、これを信じて食中毒の発生につながった事例も報告されている。

1993年10月10日11時ころ、71歳男性が、(県名不詳)裏山で採ったキノコを、65歳妻と、ナスと煮て食べた。翌日午前0時頃から、激しい嘔吐、下痢。症状はいったんおさまったため自宅で休養していたが翌日、妻が死亡しているのに気づき、近隣の医者の往診を受け総合病院に緊急入院した。中毒の原因がドクツルタケのアマニチン中毒と特定され治療を受けたが、入院翌日から劇症肝炎の症状が現れ、血漿交換などの治療の甲斐なく7日目に多臓器不全で息を引き取った。亡くなった時、肝臓の正常な組織はほとんど残っていなかったという。


ツルタケダマシ(鶴茸騙)

ツルタケダマシ
ツルタケダマシ
アマトキシン毒素、および溶血性タンパクを含む毒キノコで、この毒は煮ても焼いても熱分解されない。消化器系がやられ、嘔吐や激しい下痢を引き起こす。さらに、それらが一旦治まった後に腎臓、肝臓などの細胞が破壊され、最悪は腎不全や急性肝炎引き超す。

ツルタケ(可食)と似るところからの命名だろうが、ツバがあることで区別ができる。夏から秋にかけて、広葉樹林に発生する。カサは、傘の直径 11〜12センチ、地上部の高さ 13〜15センチほど。卵型から半球型をへて浅い皿型に開く。色は、灰色から灰褐色で周辺が淡く、周囲に条線がある。ヒダは、離生、密、白色。柄は、長く逆棍棒型。中空。上部に白色膜質のツバがあり、ツバより上は平滑。下はややささくれる。 基部に白色膜質の深いツボをもつ。

ツルタケダマシによく似たキノコとして上で紹介したタマゴテングタケモドキ (卵天狗茸擬) があります。共に毒キノコで両方とも 「つば」 はあります。相違点は 「ひだ」 の色です。ツルタケダマシは白色または黄白色、タマゴテングタケモドキは淡紅色です。



【クサウラベニタケ】(臭裏紅茸)

クサウラベニタケ
クサウラベニタケ(まだ傘が開き切らないもの)
クサウラベニタケは、食用キノコである「ウラベニホテイシメジ」や「ホンシメジ」と同じ時期、同じような環境に互いに混じりあって発生するため、誤って食べてしまう事が多い毒キノコです。これまでの統計で、食中毒を起こした件数の約3割を占めているのが、このクサウラベニタケです。早いものは梅雨時から姿を見せはじめ、秋のおわり頃まで、コナラ、クヌギとアカマツの混ざった林の地上に点々とあるいは数本ずつかたまって発生します。

クサウラベニタケは夏から秋に広葉樹林帯の朽木上に群生して発生します。カサは直径が3〜8センチほどの大きさで色は薄い灰色〜灰褐色です。形は幼菌時は半球形で成長すると中央がやや高くなった形で平らに開いていきます。表面には湿気があると滑り(ぬめり)がでますが、乾燥すると絹糸のような光沢があらわれます。

クサウラベニタケの柄
クサウラベニタケの柄の部分
ヒダの色は最初、白色ですが、徐々に薄い紅色を帯びていきます。ヒダのフチは折線グラフのように不規則に乱れており、細かい鋸の歯のようなギサギザが見られます。柄の長さは5〜10センチで、その長さの割にはやや細い印象があります。やや根元の方が太く、中身には空洞があり、色はほぼ白色。表面にはうっすらと条線があります。肉は表面とほぼ同じ色をしており、味は特になく、ニオイは僅かな粉臭があり、これが名前の由来です。ます。柄の部分の肉はスポンジ状です。

●山形県は2023年10月26日、天童市の男女2人がクサウラベニタケを芋煮に入れて食べ、食中毒になったと発表した。
県食品安全衛生課によると、天童市の70代と60代の男女2人が24日夕方、前日に東根市内の山で採ったキノコを芋煮に入れて食べたところ、およそ2時間後に吐き気や嘔吐、下痢の症状を発症した。村山保健所が自宅に残っていたキノコを調査した結果、クサウラベニタケを誤って食べたことによる食中毒と断定された。2人は快方に向かっているが「ハタケシメジと勘違いして食べた」と話している。

このようにクサウラベニタケ食べると消化器系の中毒症状が起こり、下痢、腹痛、嘔吐などの症状があらわれます。1989年に大阪市で起きた食中毒事件では、カサの直径3センチほどの小さな幼菌1本を夫婦で食べた。量は妻が3/4本、夫はわずか1/4本しか食べていない。それでも激しい胃腸障害を起こし、自宅療養で回復まで6日間かかった。

平成元年〜22年にかけて、少なくとも258件が報告され、1041名の患者が記録されている。これは日本における毒キノコによる食中毒では2番目に多い数である(最も多いのはツキヨタケ)。他の食菌と間違えて販売されるという事件もある。2016年9月下旬には、岡山県の道の駅で本種をハタケシメジとして販売され、これを鍋にして食べた夫婦が中毒している。さらに過去にはウラベニホテイシメジに混じって販売されたケースもあるという

クサウラベニタケは、めじん(名人)なかせ(岩手、青森県)、にたり(埼玉県、前橋市、大分)、あぶらいっぽん(前橋市)、ささしめじ(金沢市)、にせしめじ(秋田、青森地方)、うすすみ、さくらっこ、どくよもだけ、どくしめじ(秋田県)、いっぽんしめじ(岩手、新潟、富山、長野県)、あしぼそしめじ(埼玉)と地域で異なる名前があります。

本種の学名は「Entoloma rhodopolium」ですが、同じ学名で欧州でも発生しますが、欧州では毒性がなく無害と考えられており、中毒を起こす日本産のクサウラベニタケは別種ではないかと言われています。


【カキシメジ】(柿占地)

カキシメジ
カキシメジ
カキシメジは地味で毒々しさがないので、クサウラベニタケ(上述)、ツキヨダケ(次項)などと並んで、食中毒が非常に多いキノコで、食べると消化器系の中毒で嘔吐、腹痛、下痢などの症状がでる毒キノコです。もし食べても、カキシメジの肉には強い悪臭があり、苦味もあるので気づきやすいと思います。

カキシメジは夏から秋、広葉樹林、松林などに発生します。カサの直径が4〜8センチ、形は幼菌時はフチが内側に巻いた形状をしていますが、成長するにしたがって、平らに開いていきます。色は黄褐色または赤褐色で、表面は繊維状、湿気が多い場所では強いヌメリが見られます。ヒダは湾生しており、やや密にならんでおり、色はほぼ白色です。

柄の長さは3〜6センチほどで、カサの付け根から根元まで、太さはほぼ変わりません。色は上部は白色ですが、根元に近づくにつれ、カサと同系色の色を帯びています。また、中身が空洞になっているものも見られます。

かきしみず(秋田,新潟県)、かきもだし(岩手県)、にせあぶらしめじ(山形県)、まつしめじ(長野県)、おちばしめじ(青森県)などの地方名があります。



【ツキヨタケ】(月夜茸)

ツキヨタケ
ツキヨタケ
日本を中心として極東ロシアや中国東北部に分布し、晩夏から秋にかけて主にブナの枯れ木に群生する。子実体には主要な毒成分としてイルジンSを含有し、そのひだには発光成分をもち、光るので江戸時代の絵師、坂本浩然の描く『菌譜』で「ツキヨタケ」と命名した。古くは『今昔物語集』では“和太利(わたり)”という名で登場し、この“和太利”を用いた毒殺未遂事件が描かれています。

光るツキヨタケ
光るツキヨタケ
光るといっても、発光は「脳に映る」と称した人がいたくらい弱く,目を凝らさないとなかなか見えない。写真で見る発光現象はクリアだが、これは高感度撮影など技術を駆使して撮られたもので、肉眼ではなかなかこうはいかない。発光性を有するのはひだのみで、かさや柄は、表面においても内部においても光らない。また、発光のピークは傘がじゅうぶんに開いた後の2-3日程度である。発光原因物質は、このキノコに多量に含まれるこのイルジンSが関与すると考えられてきたが、最近の研究によりランプテロフラビンであることが決定されている。

ツキヨタケは中毒事故が多い猛毒のキノコです。以下のようにシイタケと間違えることが 多いです。

「ツキヨタケ」食べ、キャンプの3人中毒
 大分県は30日、日田市と中津市の50〜70代の男女3人が、採取した毒キノコ「ツキヨタケ」による食中毒になったと発表した。2人が一時入院したが、快方に向かっているという。
 県食品・生活衛生課によると、3人は知人グループで、竹田市のキャンプ場で調理したおでんに周辺で採取したツキヨタケを入れ、29日午後5時ごろから食べた。1人はキノコ自体をかじってすぐ吐き出し、2人はほかの具材を食べただけというが、まもなく嘔吐や寒気などの症状が表れ、日田市内の病院に救急搬送された。
 病院から30日に連絡を受けた県が、残ったキノコを鑑定したところ、ツキヨタケと特定された。3人は「シイタケと思って採取した」と話しているという。(2021年10月1日)

一般に症状としては摂食後30分から3時間で発症し、下痢と嘔吐が中心で腹痛をも併発し「景色が青白く見える」などの幻覚症状がおこる場合もあり、重篤な場合は、痙攣・脱水で死亡例も少数報告されているが、キノコの毒成分自体によるものではなく、激しい下痢による脱水症状の二次的なものであると考えられます。

ツキヨタケは秋、主にブナなどの広葉樹の枯木・倒木の上に重なるように発生し、半円形の傘の直径は6〜10センチ、大きいものは20センチにもなる、比較的大きく表面にはロウ状のつやがあります。

ツキヨタケの根元
ツキヨタケは柄の根元
にリング状のツバがある
 ツキヨタケは上述のようにシイタケと間違えるほか、ヒラタケ、ムキタケと間違えやすいですが、見分け方はこれら食用キノコは柄がほとんどありませんが、ツキヨタケは“柄の根元にリング状のツバがある”という特徴があります。また縦に裂くと柄の基部の断面に暗紫色の斑紋があることです。

2023年はツキヨタケ中毒の当たり年

日本は年々暑くなっているが、2023年はとりわけ厳しく、東京都心では9月18日の敬老の日でも最高気温33.3度を観測。30度以上の真夏日の最多日数を更新し、合計で86日となった。サイトの亭主がいる長野県はマツタケの主産地だが、今年の収穫は壊滅的でマツタケ料理店でもカナダ産や中国産マツタケに頼ったほど。キノコ全部が暑さにやられたかというとそうではなくて、かわって毒キノコのツキヨタケが全国的に大発生、このため、まれにみる食中毒事件の当たり年となった。

●岐阜県は10月24日、有毒キノコのツキヨタケを誤って食べた郡上市の70代女性が食中毒になったと発表した。女性は23日にシイタケと誤って食べたところ嘔吐の症状が出たが、快方に向かっている。県生活衛生課によると、女性の家族が22日に高山市内の山林でツキヨタケを採取し、女性が翌23日朝にフライパンで焼いて食べたところ15分後に発症した。キノコによる食中毒の発生は県内では3年ぶり。 

 

●群馬県は10月24日、太田市内の男女6人が毒キノコによる食中毒の症状を示し、このうち1人が入院したと発表した。23日、太田市内の10歳未満から70代以上の男女6人が知人から譲り受けた野生キノコを食べ嘔吐や下痢などの症状を訴えた。保健所で調べたところ、食用のヒラタケやムキタケによく似た毒キノコの「ツキヨタケ」であると判明。
23日に事業所の社員らが同僚からもらったキノコを持ち帰り、油炒めやほうとうなどで食べた。配った社員は自分でも食べたが発症しなかったという。6人のうち3人が医療機関を受診し1人は入院したが全員命に別状はなく快方に向かっている。県内で毒キノコによる食中毒が発生するのは2021年9月以来、およそ2年ぶり。

ツキヨタケの根元
道の駅の売店で混入していた
ツキヨタケ(横手保健所提供)
●10月24日、秋田県横手市の「道の駅十文字」でムキタケとして販売されたパック入りのキノコに毒キノコのツキヨタケが混入していた。5パックのうち2パックが売れ、その2パックを購入した湯沢市の女性が納豆汁にして食べた。食べた4人のうち、10歳代男性と40歳代女性が 嘔吐 や腹痛の症状を訴えた。残っていたキノコにツキヨタケが確認され、症状も一致したことから、野生キノコが原因の食中毒と断定したという。
道の駅十文字は「生産者任せのところがあった」として今シーズンは天然物のキノコを販売しないことを決めた。県内でのキノコによる食中毒は昨年はなく、今年も初めて。

●新潟県妙高市で10月22日、今年初めての“毒キノコ”による食中毒が発生した。上越保健所によると食中毒になったのは、60歳代の男性と50歳代女性の夫婦2人で、ツキヨタケを誤って食べた。夫婦は、22日に妙高市の山中で親せきが採って来たキノコを午後6時頃に自宅で「きのこ鍋」に調理して食べたところ、午後7時半頃から嘔吐・下痢等の症状が出たため、午後10時頃に医療機関を受診した。2人は一晩入院した後に快復し、既に退院した。

●鳥取市保健所は27日、市内の60代の女性と70代の男性の家族2人が誤って毒キノコのツキヨタケを食べ、食中毒を起こしたと発表した。26日の昼食で吸い物にして食べたところ、同日午後2時〜2時半ごろに嘔吐の症状が出た。いずれも快方に向かっている。鳥取県内の林でヒラタケと間違えて採取したという。県内で毒キノコによる食中毒が発生したのは4年ぶり。

●兵庫県豊岡健康福祉事務所は10月31日、同県香美町内の1世帯4人が「ツキヨタケ」とみられる毒キノコを食べて食中毒になった、と発表した。4人は15〜60歳までの男女で、同町内の親族から「自宅近くで採れた」とお裾分け、家族4人で29日午後8時半ごろに自宅で炒めて食べ、同日午後10時ごろに発症した。
30日午前、豊岡市内の医療機関から連絡があり、同事務所は調理で残ったキノコの石づきなどから成分を分析。ツキヨタケの毒成分が検出されたことなどから、食中毒と断定した。シイタケと間違えて採取されたとみられるという。県内でキノコによる食中毒は2019年11月以来で、今年初めて。嘔吐や下痢の症状がみられたが、全員快方に向かっているという。

●神奈川県平塚保健福祉事務所秦野センターによると10月31日、同市内の山林で男性が採取したキノコを調理して食べた男性と同僚計7人のうち、70代女性ら6人が相次いで嘔吐などの症状を訴えた。重症者はいない。男性は「ヒラタケだと思った」と話しており、同センターは特徴や中毒症状が一致することからツキヨタケと推定した。

区別
間違いやすいツキヨタケとヒラタケ
●神奈川県平塚保健福祉事務所秦野センターによると11月4日、秦野市内の自宅でキノコを焼いて食べた親子が嘔吐や下痢の症状を訴え救急搬送された。 2人は入院したがすでに退院していて、保健所が調べたところ食べたキノコは毒キノコ「ツキヨタケ」で、2人は「知人から秦野市内の山林で採った『ヒラタケ』と言われてもらった」と話していて、採った人がよく似た食用の「ヒラタケ」と間違えたようだ。採取した人は食べておらず無事だった。 秦野市内では10月31日にもツキヨタケを食べ6人が食中毒になっており今年2例目。

●秋田市保健所は11月5日、秋田市に住む70代の女性が自宅で調理したキノコの煮物を食べて下痢や嘔吐症状が出た、と発表した。残っていたキノコを調べたところツキヨタケだった。女性の母親が、自宅近くの山でムキタケと思って採ってきた。秋田県内では10月、横手市の「道の駅十文字」で、ツキヨタケを誤って「ムキタケ」として販売し、購入した客の家族2人が食中毒の症状を訴えた事例以来2件目。

●新潟市保健所に11月5日、市内の医療機関から「キノコが原因と思われる食中毒の症状がある患者2人が受診している」と連絡が入った。2人は一時入院したものの現在は退院し、快方に向かっている。保健所が残っていたキノコを調べたところ、有毒のツキヨタケだった。2人は5日午後、知人が採ったキノコをもらい、夕食に煮物にして食べたところ、およそ1時間後に嘔吐や下痢の症状が現われた。キノコを採った知人夫婦も同じ日に夕食にバター炒めにして食べ、同様の症状があったものの、医療機関を受診せずに回復した。

●岡山県生活衛生課は11月5日、同県美作市の60代の女性が、市内の山で採取したキノコを7日に味噌汁にして食べたところ、約1時間後に嘔吐や下痢などの体調不良を訴え、病院で診察後、入院して治療を受けている。
美作保健所が、残っていたキノコを岡山県農林水産総合センター森林研究所に依頼して鑑別したところ、毒キノコのツキヨタケであることがわかり、ツキヨタケの有毒成分「イルジンS」が検出されたため、ツキヨタケによる食中毒と断定した。食用のヒラタケと間違えて、毒のあるツキヨタケを採ったとみられる。

見分け
ツキヨタケと間違えやすいムキタケ、ヒラタケとの違い。
石づきを縦に裂くとツキヨタケには黒紫色のシミがある。ムキタケ・ヒラタケにはない。


【クロハツ】(黒初)  【ニセクロハツ】(偽黒初)  【クロハツモドキ】(黒初擬)   

クロハツとニセクロハツ、クロハツモドキという、3つの似た名前のキノコがありますので一緒に紹介します。クロハツは今では毒キノコに分類されていますが、往時は食用キノコとされていたほどです。これに対しニセクロハツの方はこれまで何人もの死者が出ている猛毒キノコです。

【クロハツ】(黒初)

クロハツは「黒初」という漢字が当てはめられています。これは食用の「初茸」に似る「黒い初茸」というところから来た名前のようです。

クロハツ
クロハツ
ハラタケ目ベニタケ科ベニタケ属。地味なキノコで、夏から秋にアカマツ、クロマツなどの松林やブナなどの広葉樹林の地上に落ち葉を持ち上げてぼっこりと出現する。ベニタケ科の仲間には優秀な食菌が多く、ハツタケはその代表格で、マツタケやシメジに並ぶ食用菌として親しまれています。それと似たクロハツも従来は「よいダシが出て美味」とされていましたが、近年の図鑑では有毒と分類されることが多くなりました。致死性の猛毒を有するニセクロハツに酷似していて判別が非常に困難なことから、まず食べない方がよいキノコです。

クロハツ赤色
クロハツは傷つけると3分後には
このように赤茶色になる。
これまでは、見分け方として、クロハツは、子実体を傷つけると傷口がまず赤く変色し、その後で徐々に黒変するのに対し、ニセクロハツでは赤く変色したままで留まり、黒色にはならない点で区別されるといわれていましたが、変色性は、子実体の生長段階の違いや発生環境の条件などによってまちまちで、変色性だけで区別することは難しいのです。

クロハツ
左の人の手と比べてもクロハツは結構大きい
傘の直径は6〜12センチ、柄の長さも3〜6センチ程度。傘は半球形から次第に開き、成長するに従い傘が反り上がっていき、老成すれば漏斗状に窪むことが多い。湿った時は粘性があるが次第に乾き、幼時は灰白色?灰褐色、生育に従って黒褐色を帯び、最後にはほぼ黒色になる。ひだはほぼ白色あるいはクリーム白色だが、古くなるとほとんど黒色となり、傷ついた部分は次第に赤変し、後にゆっくりと黒変します。


【ニセクロハツ】(偽黒初)
ニセクロハツ
ニセクロハツ

 クロハツは少し前までは可食とされていたほど毒性は低いですが、これに対してニセクロハツの方は猛毒で、日本国内では1950年代に初めて報告されて以降、2020年までに16名の発症が報告され、 8 名の死亡が報告されています。

【事例1】
三重県は18日までに、同県桑名市の男性(75)が毒キノコを食べて食中毒を発症し、17日夕に入院先で死亡したと発表した。キノコは強い毒のある「ニセクロハツ」とみられる。
ニセクロハツ変化
ニセクロハツは傷をつけて15分位経過
してもこのように黒くはならない。
県によると、男性は10日夜に夕食で自分で採ったキノコを自宅で鍋の具材として煮て食べた。11日に下痢や嘔吐などの症状が現われ、同日夜には首から肩にかけて痛みを訴えた。桑名市内の病院に入院後、呼吸困難になり症状が悪化したため、愛知県内の病院に転院。意識不明の状態が続いていた。男性は症状が出た時点で、「食用のクロハツと思って食べた」と話していたという。男性は17日、多臓器不全で死亡した。
この男性は、以前は北陸地方に住んでいて、この地域ではクロハツを食べる習慣がある。一方、ニセクロハツは北陸含め東海地域よりも東には少ない。そのため男性はてっきりクロハツだと思って酷似するニセクロハツに手を出したのではないか、とみられます。(2018年9月18日)。

【事例2】
 愛知県は8月10日、幸田町に住む30代の男性が自宅近くで採取したキノコをカレーの具にして食べたところ、下痢や嘔吐などの症状が出た。男性は翌朝、体調不良を訴えて病院に運ばれ一時、意識を失い心停止になるなど重体だったが現在は回復に向かっている。
 男性が食べたキノコは毒キノコ「ニセクロハツ」で、男性は初めて野生のキノコを採取して食べたという。(2023年9月7日 )

ニセクロハツの毒成分の特定は食中毒事例が少なかったこともあり進みませんでし たが、平成 21 年に 毒成分の分析が報告 されました。「2−シクロプロペンカルボン酸」といい、筋肉が解けてしまう横紋筋融解症を引き起こします。中毒の潜伏期間は早いと10分後、摂取した毒の量や体質により変わるものの致死量(2〜3本ほど)を摂取してしまうと1〜4日程で死亡に至る猛毒菌です。

【クロハツモドキ】(黒初擬)

クロハツモドキ
クロハツモドキ
クロハツモドキは、傘は茶白色→灰褐色〜黒色に変化する。ヒダは密で淡クリーム色。傷つくと赤変し後に黒変する。柄はかたくて白く、手で触れると黒変する。また、成長につれ浅いじょうご形になる。肉やヒダは白色だが傷つけると赤色から黒色に変色する。子実体を食べると、消化器系の中毒を起こし、場合によっては死に至るおそれがあります。

クロハツ、クロハツモドキ、ニセクロハツの三つともよく似ていて判別が難しいものの、見分け方は以下のような点です。

クロハツとクロハツモドキの違いはヒダの間隔に現れます。ヒダが疎になっているのがクロハツでクロハツモドキのヒダは間隔が狭くなっています。このヒダの狭い様子を密と呼びます。
ニセクロハツの変色性は赤変のみで、赤色から黒色に変色しません。(変色の時間には個体差もあります)
ニセクロハツとクロハツモドキは姿形が非常によく似ているので見分けることは難しいのですが、色の変化で種類を見分けることができます。ヒダはニセクロハツとクロハツモドキは同様に密ですが、色の変色性に両種の差が出ます。肉やヒダが傷つくと、クロハツモドキが赤変〜黒変することに対して、ニセクロハツでは赤変しますがその後も黒く変色しません。








     「八ヶ岳の食卓・キノコの話」へ(この項はここから発展したページです)

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