2012年3月 課題: 早春

初めての吟行


                             
 昨年2月の下旬、俳句の会の吟行に行った。俳句を作り始めてほぼ半年、初めての吟行である。行く先は城ヶ島。一行は男3人、女はルツ子主宰以下7人。女性の2人を除いては皆高齢者だ。

 吟行というのは芭蕉の昔から行われている俳句作りの一方法。何人かで何処かに出かけて行き、そこで見たものを句に作り、その場で発表する。即興性が強い俳句には向いている。同じものを見ても、人によって受け取り方はさまざまだから、句を比較するのは面白そうだ。同時に作り手の感性が問われ、本当の力が問われそうだ。興味半分、実際にその場で句が出来るのだろうかという不安半分で、リュックに俳句手帳、季寄せ、電子辞書、作品提出用の短冊、カメラなどを入れて、京浜急行線に乗った。

 電車を三崎口駅で降り、バスで城ヶ島へ。快晴無風の吟行日和。鳶が高く舞い時々鳴き声が響く。坂道を上って灯台まで行く。目の前に相模灘が広がり、足下には水仙の黄色い花。暦の上ではもう春。俳句の季語は春だ。快晴とは言え、真冬とは違って薄く霞がかかり、富士山は見えない。ルツ子主宰を初め先輩たちはそれぞれに散って、俳句手帳と鉛筆を手に、熱心にメモをしている。もう句が出来ているのだろうか?私も手帳を取り出す。といっても句がまとまるわけではない。とりあえず句材になりそうなものをメモしておく。春霞、鳶、光る海、岩礁、丸みを帯びた水平線、沖行く船舶、「マグロ丼」の幟・・。

 昼食を挟んで2時間余り灯台周辺を歩いて、今日の宿泊所である三浦海岸駅の丘の上に立つ高層リゾート施設マホロバマインズに向かう。三浦海岸駅前では河津桜が満開で、桜祭りが行われていた。

 ホテルに入ったのは4時近く。5時からホテルの一室で句会。メモと辞書と季寄せを参照しながら何とかひねり出し、短冊に書いて提出。1人3句、10人で合計30句。その中から良いと思う4句を各人が発表したあと、ルツ子主宰の選句が発表される。

 我が苦吟知らずのたりの春の海    

 私のこの句が主宰の特選10句の中に選ばれた。面白い、今日一番の句だとの評をいただいた。ビギナーズラックであったがうれしかった。

 先輩方の句は季語が多彩だ。「春浅し」「春岬」「鳶の恋」「鳥帰る」「水温む」「暖か」。句作りには季語をたくさん知っていることがポイントとなると思った。

 夕食は海鮮料理の食べ放題バイキング。数百人収容のホテルの食堂は満席だ。1泊2食付きで、1万円を切る値段だから予約を取るのが大変とのこと。まずまずの句が作れて、ほっとした気分で三崎マグロを味わう。

 翌朝も9時からチェックアウトまで句会が行われた。やはり1人3句。ほとんど寝ないで句作に励んだという女性もいれば、早起きしてホテルの部屋から見下ろす東京湾へ乗り出す春暁の釣船を詠んだ人もいる。
 朝の句会の私の一句

 初吟行終えてひと風呂春の宵 

  2012-03-17 up

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