2006年11月 課題:ネオン

「ニオンライト」
                          
 アバとかカーペンターズとか、若い頃名前は聞いたことがあるのに、楽曲を聴いたことのない洋楽のCDは、見つけるたびに購入している。まるで今までの人生で抜けていた穴を埋めるかのように。

 サイモンとガーファンクルのアルバムもその一つだ。こうした洋楽は歌詞の意味がよくわからないから、心地よいメロディーやボーカルを楽しみながら、読書やパソコンに向かう際のバックグランドミュージックに向く。

 サイモンとガーファンクルのアルバムを聞き流していたら、「ニオンライト」と言うフレーズが耳に残った。「ネオンライト」のことのようだが、ネオンではなく「ニ」にアクセントをおいた「ニオン」という発音に引っかかったのだ。曲のタイトルは『ザ・サウンド・オブ・サイレンス』。ネオンといえば日本では歓楽街のシンボルとして定着しているが、作者のポール・サイモンは歌の中でネオンをどのように使っているのか、歌詞を調べてみた。

 歌詞が書かれたのは1963年秋、ケネディ大統領暗殺の直後だ。『ザ・サウンド・オブ・サイレンス』とは直訳すれば「沈黙の音」であり、題からして難解である。「沈黙の音」とは、聞く意味のない音を表すようだ。

 歌詞は「暗闇よこんにちは(Hello darkness)」で始まる。夜道を歩いている私が、ネオンの光(flash of a neon light)に射抜かれたとき、「沈黙の音」が見えてくる。それは「伝えようとせずに話し、理解しようとせずに聞いている」たくさんの人々の姿だ。人々の疎外とコミュニケーションの喪失がこの曲のテーマ。全体がシンボリックで難解である。日本語の定訳歌詞はなく、個々のフレーズの解釈も色々あるようだ。その中で闇はコミュニケーションを阻む無関心と無感動の象徴として、それを引き裂く「ネオンライト」は真実と啓蒙の光の象徴として使われているようだ。あるいは文明の象徴としての意味をくみ取る人もいる。

 曲の最後の方には人々が頭を垂れ、祈りを捧げる「ネオンの神」the neon godというフレーズも出てくる。これを文明への過度の依存と取る人も、あるいは当時普及しつつあったテレビジョンと取る人もいる。とにかく意味をつかむのが難しい歌詞で、サイモン自身も本当の意味は理解していないのではないかという極論まで、海外のネットサイトでは飛び交っていた。

 この曲は彼らデュオの最初のヒット曲であり、映画『卒業』のサウンドトラックとしても有名になった。

 日本の歌謡曲で「ネオン」で思い浮かぶのは、「ネオン瞬く街角は うれし涙の湧くところ」というフレーズだ。1954年、若原一郎が歌ってヒットした『吹けば飛ぶよな』という歌謡曲で、作詞は東條寿三郎。あるいは少し後でフランク永井が歌った『夜霧の第二国道』の中の「つらい恋なら ネオンの海へ 捨てて来たのに 忘れてきたに」も忘れがたい。

 サイモンのネオンの光は、夜を切り裂き(split)、目に突き刺さる(stab)閃光(flash)と表現されている。一方、日本の歌謡曲のネオンは、酒と女と涙に濡れて、しっとりと優しい。

補足

 
『ザ・サウンド・オブ・サイレンス』の歌詞の解釈については主に以下のサイトを参考にした:
 http://www.musiker21.com/soundsofsilence.html
 http://www.st.rim.or.jp/~success/soundofSi_ye.html

                              2006-11-22 up
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