2026年7月 課題:ワールドカップ

攻撃型サッカーを

1964年の東京オリンピックの頃、サッカーはそれほど人気のある種目ではなかったので、簡単にチケットが得られた。国立競技場の向こう正面スタンドの高いところからハンガリーとモロッコ戦を見た。6対0でハンガリーの圧勝だった。一方的な試合でつまらなかったが、6回もの得点シーンが見られ、その上ハンガリーはこの大会の優勝チームだったことはラッキーだった。

 当時のサッカーは攻撃主体だった。フォワードが5人がW形に配置され、その後に攻守を兼ねるハーフバックが3人、その後にバックが2人という布陣。学生時代、学科対抗のサッカーにかりだされたが、このフォーメイションを守ることを指示された。カミュの1947年作の『ペスト』にも、男達が食事をしながら、センターフォワードやセンターハーフの役割を熱く語るシーンがある。W形戦法は戦前からの戦法だったようだ。

 試合開始の笛が鳴り、センターサークルからのパスを受けた右ウイングフォワードの杉山が、タッチライン沿いに疾走し、敵陣深く入ったところから、センターフォワードの釜本にセンタリング。60年前のサッカースタイルだ。

 2002年の日韓ワールドカップも見た。地元横浜のスタジアム、ゴールポストが斜め左下に見える席。エクアドル対クロアチア、1対0でエクアドル。まことにあっけない試合で、12,000円という高いお祭り参加費だった。

 64年オリンピックのハンガリーは6戦全勝、総得点26点、1試合平均4.6点である。ワールドカップの一試合平均得点の変遷を見ると、1954年の5.38が最高で、以後減少して、1990年のイタリア大会以降2点台が続いている。2点台ということは、平均すれば2対1より少ない点で試合が結着すると言うこと。サッカーが攻撃型から、守備型に変わった結果だ。

 今の代表的な布陣では、ゴール前にバックを4人おき、さらにその前に2人の守備的ミッドフィールダーを配置する。得点が難しくなるわけだ。得点が少ないだけでなく、シュートの数も少ないのが見ていて不満だ。ゴール枠をとらえたシュートを、キーパーが横っ飛びで弾くシーンはサッカーの華だが、その回数も減っている。


 エッセイの提出期限は20日17時。今大会の最後まで、つまり19日の3位決定戦、20日決勝戦を見てからエッセイを仕上げようと思った。

 19日の早朝、大事件が起きた。イングランド対フランスの3位決定戦で、6対4という信じられない高得点ゲームが出現したのだ。ゲーム展開としては大味だったが、10回も得点シーンが見られた観客は楽しかっただろう。

 そして翌朝の決勝戦。イライラのつのる試合だった。延長後半、スペインがやっと1点を取り1対0でアルゼンチンを破った。信じられないことだが、延長戦に入るまで、アルゼンチンのシュートはゼロ。

 もともと優勝が目標のイングランドとフランスは、その望みの断たれ、3位か4位にそれほどこだわりはなかったのだろう。一方優勝をかけた最後の一戦のスペインとアルゼンチンには、選手にも監督にも1点の重みがのし掛かかる。その差が現れたゲームだった。

 「一番面白い野球は、8対7の試合だ」と言ったのはフランクリン・ルーズベルトとされている。それに倣えば、「サッカーで一番面白いのは、4対3の試合だ」。

 点を取られても取り返せば良い。そんなサッカーは復活しないものか。

補足:
今大会の3位決定戦を除いたベスト16によるトーナメントの1試合平均の得点は2.73

この他、1対0のような低得点のゲームの問題点は、そのようなゲームが両チームの本当の実力を表すのかと言う疑問。
幸い、今大会においてはベスト4に残ったチームは事前のFIFAの世界ランクキングの上位4チームだった。

このことに関して、30年以上前に、『ネイチャー』取り上げて論じていた。
『ネイチャー』の主張については→ワールドカップとネイチャー

2026-07-21 up

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