2025年11月 課題:ワイン

マグナムボトル
                              
 テーブルにまず運ばれてくるのは、ずんぐりした一升瓶のような瓶に入った赤ワイン。容量1.5リットルのマグナムボトルである。瓶から500ミリリットルのデカンターに空けた後、5つのグラスに分ける。時刻はウイークデイの午後3時。私の地元、横浜の十日市場での月例句会が終わった後の一杯会だ。メンバーは男性2人、女性3人。もう一人の男性は90歳、女性3人も私よりは年下であるが全員高齢者である。場所は最近評判のイタリアンレストランのS。

 例えば今月のつまみは、ニンジンのサラダから始まってチキンサラダ、ポテトチップス、ソーセージ、ピザ、マカロニ、パスタ、エビが次次に運ばれてくる。多くの場合注文は一皿でそれを皆でシェアするので多彩な料理が楽しめる。この時は注文しなかったが、エスカルゴのオーブン焼きやムール貝といった洒落た料理もある。

 ワインは口当たりがよく飲みやすい。5人がほぼ同じペースで飲む。1時間もするとマグナムボトルが空になる。それで終わりにならないところがこのメンバー。さらに500ミリリットルのデカンターを注文。デカンターも赤にすることが多いが、白ワインにすることもある。

 こうして時には2時間近くSで過ごす。俳句のこと、家庭料理のレシピなど食べ物のこと、家族のこと、旅行で体験したこと、病気のこと、昔話など尽きることがない。15年も付き合っていて、しかも最初から皆ファーストネームで呼び合っているから家族みたいなものだ。あるいは家族以上の仲間かも知れない。そして何よりも飲むことが好きだ。新年会から始まって、花見、暑気払い、忘年会、メンバーの祝い事など飲む話になるとすぐ決まってしまう。その他月に1回吟行する。横浜や東京の公園が主な吟行場所で、1時近くまで吟行して、遅いランチには必ずビールが付く。

 Sに行きだしたのは3年前から。句会の主宰が元気なころは、終わってマックに行ってそこでまた即席の句会を行った。主宰が高齢で来られなくなり、またコロナ禍も下火になったのでSに行くようになったのだ。

 当初はワインをデカンターで注文していた。しかし、空になる度に注文するのは面倒だということで、マグナムに変えた。最初マグナグボトルがテーブルに置かれたときこんなに飲めるのかと驚いた。全くの杞憂だった。

 ビール党の私も時々ワインを飲んでいた。私の好みはフルボディで渋味のあるワイン、カベルネソーヴィニオンだ。スーパーで一本1000円以下のチリワインを買っていた。値段の割にはおいしく、飲み応えがある。ビールならポンと開けて、それを飲み干してしまえばそれで区切りが付く。ワインはそうはいかない。栓を開けるとついだらだらと飲み過ぎてしまう。そんなこともありワインの家飲みは正月とか誕生日などに限るようになった。

 Sのマグナムワインは、イタリアのワイナリーと直接契約していて、新鮮なワインを提供するために、必要な分をその都度ボトリングして定温コンテナで海上輸送している。カベルネソーヴィニオンとは大きく違うワインだが、決してまずくはない。何しろ安い。1.5リットルで1100円という値段だ。そして上に述べた今月の料金は一人1000円でお釣りが来た。。

 不満は、グラスがプラスティック製で、合わせたときに音が出ないこと。


   2025-11-19 up


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