2025年3月 課題:雛 ヒヨコと卵 いつ頃だったか、そう遠くない時、ある発見をして驚いた。発見というより気付いたといった方が良い。その気付きとは 「生まれたばかりのヒヨコは卵よりも軽い」ということ。 卵がヒヨコに孵る21日間に、卵は固い殻に覆われていて、外界から物質が入ってくることはない。ヒヨコは殻を破って孵化するので、卵より殻の重さ分だけ軽くなっている。当然と言えば当然のことだ。 なぜこんなことに気付いたのかは覚えていない。考えても見なかった。むしろ全身がふっくらと羽毛で覆われ、脚や羽、目やくちばしを持ったヒヨコの方が卵より大きく見え、重いとさえ漠然と思っていた。 ついでにニワトリの孵化について考えて見た。漠然とだが、卵が一つの細胞で、卵黄に核があってそこにDNA(遺伝情報)が納めれていて、それが発現してヒヨコが形作られると思っていた。これに関しては私は全く無知であった。 卵黄も卵白も栄養成分であって、DNAなど含まれていない。ヒヨコに成る卵細胞は卵黄の上部表面にあって、受精卵が産み落とされた際にはすでに、細胞分裂を繰り返し胚を形成している。この胚が成長して卵白や卵黄の栄養成分をもとに、ヒヨコを形作っていく。80歳過ぎて初めて知ったヒヨコ誕生のプロセスだ。 殻に覆われて外部との物質の出入りがないと書いたが、これも間違いだった。殻には目には見えない無数の穴が開いていて、雛はこの穴を通して呼吸をしており、酸素を取り入れ、二酸化炭素と水を放出している。これは卵の重さを減少させることはあっても、増やすことにはならない。 生まれたヒヨコはすぐに歩ける。ツバメやカラスなどの野鳥は巣を作ってそこで雛が巣立つまで親が餌を運んでくる。ヒヨコは体内に残る栄養分が尽きる生後2日頃からは自分で餌を啄む。その点はワニなどのは虫類や魚類に似ているのが面白い。 孵化するには21日かかるが、母鳥は抱卵していると、その間は産卵がないので、今は卵を母鶏から離して人工孵化を行う。その結果1年間に約300個の卵を産まされる。自然飼育のニワトリでは、雛は生後1~2日で母鳥の姿と声を見分けることができ、その後を付いていくようになる。母鳥は声で食餌を促し、つついて見せて摂食するものを教える。 「生まれたばかりのヒヨコは卵よりも軽い」という発見は、多分俳句を作り始めたことが背景となっているのではないか。俳句もエッセイも発見、気付きが基本にある。俳句は17音の短詩型だから、たくさん作れる。木の芽の膨らみ、鳥の鳴き声、風の音、空の色、雲の形・・・身の回りの些細なものや出来事に注意を向け、思いもめぐらせねばならない。そんな習慣がいつの間にか身についたのだ。 ヒヨコが卵より軽いことは私の人生に何の影響もあたえない。しかし、それに気付いたことの喜び、嬉しさは今の私にはかけがえのないものだ。 2025-02-19 up |
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