2025年2月 課題:晴れ着

 私の晴れ着
                              
 「 晴れ着」と言われて、思い浮かべるのは成人式に着飾った女子の和服、あるは七五三の祝の衣装である。これが私の晴れ着のイメージである。成人式には行く気もなかったし、七五三は戦中のことで、これもやっていない。だから晴れ着など私には生涯縁のないものと思っていた。

 念のために「晴れ着」を辞書で引いてみた。
 広辞苑:はれの場所に着て出る衣服。
 大日本百科全書:晴の日に着る衣服をいい、普段着(褻の服)に対する言葉として用いられる。

 晴れ着を身につける人の一生における通過儀礼の例として、大日本百科全書には誕生、成年式、婚礼、還暦祝いなどの他に意外にも、葬式、法要を挙げている。要するに非日常の空間で身につける衣服という意味のようだ。

 それなら私にも晴れ着の経験はある。なんと言っても結婚式の礼服、モーニングが先ず浮かぶ。自身の結婚式だけでなく、職場の後輩の仲人をした際のモーニング姿も晴れ着なのだ。ただし、いずれの場合も貸衣装である。


 就職した頃、私の職場では新年初出勤の日は、所長の新年の挨拶があった後、各部署ごとにお酒を飲みながら新年を祝い、仕事はせずに午前で帰るのが習慣だった。若い女性社員の多くが華やかな和服を着てきた。今はもうこんな習慣はないが、あれはまさに晴れ着だった。私もその日は持っている中で一番立派なスーツを着ていったから、これも晴れ着のうちだろう。

 私のもっともよく着た晴れ着はダブルの黒いスーツ。結婚式、葬式、法要の度に身につける。2着もっているが、一つは50年以上前に買った。その後かなりしてからもう1着買ったが、特に夏の暑い盛りの葬儀に用に薄手の物にした。いずれも既製品である。毎日着るものではなく大切にしているうえ、私の体型は大きくは変わらないので、今もって私の晴れ着といえる。若い頃は友人や同僚の結婚式に、その後は職場の後輩の結婚式に着服するのがもっぱらだった。その後段々葬儀、法事に着る機会が増えてきた。そしてサラリーマンを卒業してからはもっぱら葬儀、法事用になった。それもここ10年ほどは家族葬主体の葬儀になってきて、出番がなくなってきた。

 自分の結婚式以外にこれと言った晴れ舞台のない私だが、10年近く前から人生最後の晴れ舞台として冗談半分に夢見ていることがある。NHK俳句全国大会で特選を取り、NHKホールの舞台に上がってみたいというものだ。晴れの舞台だから当然四半世紀以上も仕立てたことのないスーツを新調して。

 ふとしたきっかけから俳句を作り始めて今年で15年目を迎えた。NHK俳句全国大会には2年目から欠かさず投句している。3句もしくは6句投句して、入選ははずしていない。入選は4万句近く集まる中から8千句ほど。入選作の中から、佳作、秀作と絞られていって、最後は特選。佳作以降は著名俳人10数名が選び、特選は各選者3句。特選は千句に1句ほどの確率になる。特選の作者は舞台に上がり選者の隣に座る。私は今までに佳作まで行ったが、それ以上にはなかなか行かない。

 今年も3句入選の知らせは来ているが。さてスーツの新調まで行くか?
 
 2025-02-19 up


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