2024年5月 課題:誕生日
早生まれと遅生まれ
ずっと以前のことだが、職場の同僚に、暮れも押し詰まって子供が生まれた。彼は12月に生まれてくれてよかったという。何故かと言えば扶養家族が増えたことにより税金が返ってくるからだ。もし1月に生まれていたら、学年は同じでも扶養控除の適用は1年後になる。
誕生月の差が一番問題になるのは、就学の問題、つまり早生まれと遅生まれの差だ。何故4月から新学期なのか。答えは国の会計年度が4月からであるからだ。学校も企業もそれに合わせた。国の会計年度は明治になってできたもので、変遷を経て明治19年(1886年)に4月からが新年度とされた。その頃はまだ、税収の多くが農民が米を売った代金から徴収されたので、1月からの新年度では予算編成のスケジュールが困難であったためとされる。
ここで面白いのは、4月1日生まれの子は3月31日生まれの子と同じ学年になること。それは、満年齢の数え方が、誕生日の前の日が終了する時点と民法に定められているからだ。つまり4月1日生まれの子は3月31日に満6歳となり、従って4月1日に入学する。誕生日が来て満年齢になるとすると、2月29日生まれは4年に1回しか歳をとらないことになるので、前日の夜中と決めたという。
6歳児にとって年齢差1年は大きい。色々な統計から早生まれと遅生まれの児童の体力、学力、情操面での差は示される。大人になれば解消して行くが、それでも差はあるというデータもある。やはり早生まれは損であると。しかし、誕生に1年間の開きがある児童を一律に教育する限りにおいては、学期の初めをどこにおいてもこの差は出る。
問題は年度の区切りを1月から12月にした制度とぶつかる時だ。上に述べた扶養控除の例がその一つ。扶養控除は平成23年に改訂され、児童手当が増額された関係で、16歳未満の子供は対象外となり、16歳になって初めて対象とされる。税制の年齢の基本は年度年齢ではなく、1月から12月なので、同じ学年でも、早生まれの子は遅生まれの子より1年遅れる。とはいえ、19歳まで支給されるから、早生まれの子は遅生まれの子より1年後までもらえる。ただ、19歳になる前に就職したりするとそこで児童手当は打ち切られるから、早生まれは不利である。
逆に、企業などで定年を誕生日で決めた場合は、同期入社でも早生まれは、遅生まれより最大で11ヶ月長く勤められ、退職金も増えるというメリットがある。その他、心理的なメリットとして、遅生まれの同期より若く思われることもある。
私は早生まれ遅生まれなど気にしたことはないし、言われるような差も感じたこともない。私の誕生日は新しい年まであと2週間という12月の後半。ギリギリの遅生まれだ。この誕生日のメリットとして日頃感じていることは、年が変わるごとに自分の年齢が一つ増し、暦の1年間を通してほぼ同じ年齢でいられること。例えば2000年と言えばそれは満61歳の1年間に相当する。
最晩年になって、人生を振り返って見ることが多くなったが、ある出来事があった年と自分の年齢とがすぐに結びつけられる。これはささやかではあるが、12月生まれのメリットである。
2024-05-23up
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