2006年1月  課題 「火事」

出初め式

                            
 3年前、初めて出初め式を見た。家庭防災員というのをやっているので、横浜市緑区の消防出初め式を見に来て欲しいという動員要請があったのだ。防災員の目印として、市から支給されたアルミ蒸着のピカピカ光る防災ジャンパーを着て、会場の十日市場駅向こう、田圃を見下ろす消防演習広場へ出掛けた。

 道路側に私たち観客用の椅子席が並んでいて、それと向かい合うように数百人の消防署員と消防団員がそれぞれ制服で整列している。その後ろには数十台の各種消防車と、救急車が待機。風は強いが、澄んだ冬晴れの空だ。

 前座に郷土芸能保存会による獅子舞があって後、市歌斉唱そして開会。市長挨拶の代読。ついで、各種表彰。消防署員、消防団員の永年勤続、各種団体の表彰と、長々と続く。団員は呼ばれるたびに腰に両手を構え、駆け足で正面の演台に進み出、挙手敬礼の後賞状をもらう。軍隊調だが、きびきびしている。色々な自治会も表彰された。賞がいくつもあるから、毎年それをたらい回しにして、ほとんどの自治会が何らかの賞をもらうのではないかと思った。

 ついで緑区長を初め、来賓の挨拶。ずらりと並んだ緑区選出の県・市会議員団を代表して、女性市会議員が挨拶する。阪神淡路大地震のことがもう忘れられようとしていることに警鐘を鳴らし、普段の注意と、地域の協力を呼びかけた具体的ないい内容だった。挨拶のたびに、マイクで号令がかかり、向こう側に並ぶ隊員達は代表が挙手敬礼をし、全員が気をつけ、休めをする。軍隊みたいだが、火事や災害現場は戦場と同じだから、指揮命令系統をはっきりさせておくために、日頃からこのような習慣をつけておくのだろう。

 ついで鳶職組合の人々によるまとい振り込み・はしご乗り。ほとんどがおじいさんの集団だが、さすがにはしごに登って芸をする人は若かった。高いはしごの上で、仰向けになり両手を一杯に広げる。背景には抜けるような青空しかない。なかなかの眺めだ。もし落ちたとしても火消し棒ではしごを固定している人々の上に落ちるのだから、大けがはしないだろうなどと思って見守る。

 それから、消防車の分列行進。大きなはしご車から、普通の消防車、ミニ消防車、救急車、バイクが次々と演台前を通って会場外へ出ていく。演台正面では速度を落とし、助手席の隊長がマイクで「頭右!」の掛け声とともに敬礼をする。演台に立つ消防署長他は敬礼をもって返す。数十台の行進は圧巻である。

 最後は消火の演技。消防団員、企業自営消防隊、地元病院の看護婦さん達によるミニ消防隊の3組が、ホース展開と消火を実演。いずれも手際よく長いホースを展開し、放水した。続いて、倒壊家屋や高層ビルに閉じこめられた人の救出演技。会場の隅にパイプで組み立てられたやぐらの上から、消防署員をはしご車とロープづたいに救出する演技が行われた。

 フィナーレは8本のホースによる一斉放水。白い水煙が青空に舞う。

 始まったのは定刻の9時30分。これだけの行事をこなしながら、終わったのも定刻ピッタリの11時30分。その正確さは、日頃の訓練振りを思わせる隊員のきびきびした動作とあわせて、すがすがしく、頼もしかった。


補足
 今年も1月8日の日曜日に出初め式が同じところであった。出掛けるついでに立ち寄り途中から見学した。
 今年は地元選出の衆議院議員が、小選挙区と比例区を合わせて3人、全員来ていた。地元に顔を売るいい機会なのだろう。
 もう一つ前回と違ったのは、ミニスカートの女子職員によるカラーガーズ演技があって華やかな彩りを添えていたこと。
 
                   (2006-02-01 up)



エンジェルガールズによるカラーガーズ演技
エッセイ目次へ