2005年12月 課題 「サンタクロース」

兜町からのサンタクロース 

                            
 今年話題になった人物に、堀江貴文、三木谷浩史、村上世彰の三氏がある。いずれも株の買い占めを武器にして、企業に経営統合を迫るか、あるいは企業の経営効率・資産運用の一層の向上を求めた。大量の株を握られた企業側の抵抗は強く、また、彼らの手法に対する世間の批判も根強い。「ホリエモン」のライブドアは、ニッポン放送の過半の株を握りながら、ニッポン放送およびその系列親会社であるフジテレビとの経営統合を実現できず、わずかな業務・資本提携と、巨額の株の売却益とを手にして終わった。三木谷の楽天も、TBSとの経営統合は拒否されているし、村上ファンドも阪神タイガース球団の株公開を、阪神電鉄に拒否されている。

 経営統合により、新しいビジネスが推進されれば、それは世の中に一層の便宜を提供し、企業の持つ資産がもっと有効に活用されれば、それも社会にとってはいいことだと思う。そのための手段として、大量の株式を取得するのもまったく正当なことだと思う。

 彼らの行動がきっかけで、会社は経営者のものではなく、株主のものであるという、従来からいわれていた資本主義社会の本質を多くの人が実感したと思う。企業は株という手段を通して商品と同じように市場で売り買いできる物であり、経営者は企業の価値を、いいかえれば企業の時価総額をいかに高めるかに最大の努力を注ぐべきだ、というのが彼らの突きつけている考えだ。

 ここに来て株が高い。夏以降の上昇傾向は12月に入っても衰えない。

 4年前、第2の職場を辞めた際に手にした退職金をすべて株式市場に回した。当時、株価は下落の一途であった。もう底だと思って買っても、買っても下がっていった。4年前の8月のエッセイ教室のテーマは「セール」であった。私はまるで大バーゲンのように下がり続ける株のことを書いた。手持ちの資金がなくなって、もう買えなくなってからも株価は下がり続け、2003年春にはついに平均株価は8,000円を割り込んだ。含み損も増えたが、いつまでもこんなはずではないと、じっと持ち続けた。

 平均株価が11,000円を越えて、含み損がなくなったのは昨年の春頃からだ。そして、今年の夏以降の急激な上昇で、平均株価は15,000円を超えた。それに伴い、ここ4年半の間に買った株はすべてが買値を超えた。中には2倍以上になったものもある。

 待ちこがれていた兜町からのサンタクロースの到来である。赤い服を着たサンタのおじさんは、日本経済の回復を見越して、日本株をどんどん買ってくれた外国人投資家と、資金を株式市場に向けた個人の投資家。相次ぐ株式買い占めへの対抗策として、企業が従来の株主軽視の姿勢を改め、卑近な例では配当を増やし株主優待を充実し、大きくは企業の時価総額の向上を意識し始めたことが、個人投資家と外国人投資家を呼び込んだのかも知れない。

 だとすると、「ホリエモン」達もサンタクロースか?

追記:
 この作品を書いてからすぐ後の日経新聞に、個人投資家の急増に伴い、外食や映画会社で株主優待の縮小相次ぐという記事が出ていた。何を考えているのやら。
                        2005-12-21 up

追記 その2
  2005-12-25 up

 ヤフーのニュース欄に以下のような記事が載っていた 2005-12-25

<ライブドア>社長月収1000万円も、株主へ無配当継続

 ライブドアは25日、東京都内で株主総会を開き、同社として初の配当を実施するという株主提案を否決し、00年4月の上場以来続いている無配が継続されることになった。ただ、同社の堀江貴文社長は今春のニッポン放送争奪戦で「株主利益の尊重」を強く主張した経緯があり、高収益下の無配継続に憤った株主が堀江社長に退任を迫る場面もあった。
 企業が株主に対して行う配当では、成長途上にあり赤字続きの企業が無配とすることが多いが、ライブドアは05年9月期連結決算で154億円の最終黒字になっている。このため、株主総会では個人株主から「1株当たり2円の配当(総額約21億円)を行う」との配当提案が出された。
 これに対し、堀江社長は「高成長を維持するには、企業の合併・買収(M&A)を実行するための内部留保を積み増す必要がある」と述べ、配当は行わないとする会社側の提案を示した。
 配当か、無配継続かは2時間以上にわたって議論され、個人株主の一人が「一般株主の犠牲のうえに会社が成り立っている」と指摘。堀江社長に退任を迫ったのに対し、堀江社長は「10年間株主のことを考えてやってきた」と涙ながらに訴える一幕もあった。
 最終的に会社提案の無配が了承されたが、「会社は株主のもの」との論理でニッポン放送株の取得を進めた堀江社長が自社株主に突き上げられる皮肉な総会となった。
 総会には、昨年の2倍を超える約5000人が出席。堀江社長は「1カ月1000万円の報酬をもらっている」と自身の収入を公表するとともに、今後の政界進出については「あえて私が出て行く必要は今のところない」と否定的な考えを示した。
(毎日新聞提供)

 「ホリエモン」サンタも身内にはシブイということか。あるいは従来の日本的経営者と変わらないということか。私はライブドアの株主ではないが、その言行不一致に対しガッカリを通り越して怒りを覚える。

追記 その3     2006-01-24 up

 
ホリエモン逮捕!
  咋、1月23日夜、ホリエモンこと堀江貴文ライブドア社長が逮捕された。

  容疑は、子会社の買収をめぐり、
虚偽の報告をしたという証券取引法違反
  その他にもライブドア本体の
粉飾決算の疑いもある。
  


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