2024年2月
 課題:避難

私の町の防災・避難訓練

 私の住む横浜市北部の緑区霧が丘は、50年ほど前に宅地開発が着手された所だ。整地される前はゆるやかな北向きの斜面に水田と林が混在していた。42年前に私が移り住んだ頃は家屋もまばらで、リビングやダイニングから丹沢山塊の上に富士山を見ることができた。現在は一戸建て、集合住宅合わせて4500世帯、1万5000人を超す人口を擁す。

 町には13の町会自治会がありその上に連合自治会がある。40年近く居座り続ける連合自治会の会長は、霧が丘を防災・防犯・教育で日本一の自治会にすると常々公言している。

 年2回の連合自治会主催の防災訓練が、1回は9月1日前後の週末、1回は1月の寒い頃行われる。特に9月の訓練は大規模で、私が町会自治会役員をやっていた頃参加人員が450名にもなったことがある。それ以外にも各町会自治会で独自の防災訓練が行われる。

 これらを通じて私が体験もしくは参加した訓練は次のようなものだ。

 家庭用消火器、投光器、倒壊家屋から人を救出するための削岩機とパイプカッター、簡易担架による搬送、消火栓にホースを繋ぎ放水する訓練、煙の下を潜って避難する訓練、軽油発電機を使って圧力炊飯器での炊飯、建築現場で見かけるような簡易トイレの組み立て、スタンドパイプ式消化器の扱い方。このうち消防署の消火栓用のホース以外はすべて自治会の備品である。さらに、自治会では、断水に備えて、避難場所である旧小学校の校庭の隅に、独自に井戸まで掘った。

 防災訓練に付随して避難訓練も行った。住民は町会自治会ごとに決められた公園などに集まり、そこから集団で指定の避難場所に向かう。避難所に着いたら、人員の点呼確認を行い、人数を報告する。

 私は参加したことはないが、極めつけは9月の訓練に合わせて行われる旧小学校の体育館に、毛布持参で一泊するという訓練だ。連合自治会長はもちろんだが、地元の市会議員のみならず、地元選出の国会議員まで参加したことがある。コロナ禍で中止されているが、また復活するかもしれない。

 私が体験した訓練で、いざ災害という時に使えるものは何であろうか。

 削岩機やパイプカッターはまず使わない。投光器や炊き出し炊飯器用の発電機を回わす訓練も年に1回程度体験するだけでは役立たないだろう。炊飯器も同じだ。消火栓から長いホースを何本も繋いで行う消火などは、実際にやることはなかろう。 

 すぐ使えるものとしては家庭用の消火器による初期消火。簡易担架も使えそうだ。2本の物干し竿を1メートルほどの間隔に置き、1枚の毛布の両端を竿に巻き付けるのだ。人を乗せても毛布は離れないし、竿も折れたりはしない。

 もう一つは、避難所へ向かう際の注意。家の玄関の目につく所にタオルを掛けておくこと。こうすれば救助に来た人にこの家の人は避難しているという目印になる。

 訓練も大切だが、災害の時最も大切なのは、近所同士で助け合うことだ。ところが隣近所であっても普段ほとんど顔を合わせることがないのが現状だ。

 町内自治会の年2回の町内一斉清掃や、毎月の防犯パトロールにはすすんで参加し、近隣の人との接触を持つようにしているが、それは私の災害への備えでもある。

 
2024-02-21 UP


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