2023年7月  課題:マイナンバー

身分証明書

 原付バイクの運転免許証、住民基本台帳カード、そしてマイナンバーカード。これが私の身分証明書の歴史。

 原付バイクは実技試験なしで免許が取れたから私向きの免許証だった。65歳を過ぎた頃からは、バイクに乗ることもなくなったが、免許証だけは保持し、30年以上にわたって身分証明書として使っていた。

 2010年に免許証が切れたので、住民基本台帳カード(住基カード)を取得した。住基カードを申請すると、個人情報が行政の手に握られてしまい、いつ流出するかもしれないという不安があって、当初は申請しなかった。しかし、運転免許証に代わる身分証明書に健康保険証を使うことはしたくなかった。紙で心許なく、大きくて財布にも入らず、病院へ行く時しか携行しないので、突然身分証明書と言われても提示出来ない。それで住基カードカードを申請した。 2011年より、住基カードを使って確定申告を行っている。いわゆるe-Taxである。これは便利で、税務署に行かなくても、端末から必要事項を入力し、本人確認として住基カードを読ませれば確定申告が出来る。

 2016年、住基カードの終了に伴い、マイナンバーカードを申請して取得した。マイナンバーカードは住基カードの番号がそのまま移行する。以後私の身分証明書はマイナンバーカードである。

 このカードの一番有用だと思われるのは
e-Taxだ。数値を入れれば自動的に税額が計算される。前年のデータを利用できるので、家族構成や生年月日などの基本的事項の入力の手間が省ける。そして、公的年金の受給額、公的保健料の支払額、生命保険料の支払額、医療費の領収書など添付書類を出す必要がない。

 国税側も従来の紙による申告と違って、電子化された情報をそのまま取り込めばいいから、事務軽減効果は絶大で、国費の節減にもなっているだろう。

 住基カードからマイナンバーへの切り替えは、マイナンバーに個人の金融口座を結びつけることが大きな目的だった。今回はマイナンバーカードを健康保険証の代わりにし、24年秋までに従来の健康保険証を廃止しようという。

 考えて見れば、身分証明書として健康保険証が使えるというのは不思議だ。他の身分証明書には顔写真がついているのに、保険証にはついていない。本人以外の人物が使っても見抜けない。政府の見解によればこうした保険証の不正使用は無視できず、マイナンバーカードへの切り替えの目的の一つだとする。

 政府がマイナンバーカードの普及を急ぐ一因は、コロナ禍の際の国民への一時給付金がなかなか届かなかず、行政のデジタル化の遅れを痛感したことだという。今回、報奨金まで出してマイナンバーカードの普及を進めている。拙速のあまり、他人の個人情報に結びつけられるといったミスが発生し、制度そのものに対する批判が大きく叫ばれている。

 しかし、人口が減少し、働き手が減少がするなかで、行政事務の効率化、公平な税の徴収、利用者の利便性の向上などを考えると、マイナンバー制度は避けて通れないと私は思う。

補足
 教室では講師の下重暁子さんを初め、マイナンバーカードは必要ない、取らないといったマイナンバー制度に対する否定的意見が多かった。

2023-08-19 up



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