2022年11月  課題:衣替え

私の衣替え

 一年を通して肌着は半袖シャツ、ズボン下は履かず。これがここ数十年変わらない私の服装の基本だ。

 季節に応じた服装の調節は、この基本の上に何を重ねるかだ。

 衣替えという言葉が一番合うのは、シャツを長袖から半袖に、あるいは長袖から半袖に替える時だ。半袖に替えるのは6月頃、長袖に替えるのは10月頃。中でも、春から夏への衣替えが一番季節を感じるのは私だけではないだろう。俳句の季語「更衣」は秋ではなくて初夏の季語とされている。わずかでも身につけるものが軽くなり、風を肌に感じる開放感がそうさせるのだ。我が家ではその日、今までの長袖シャツに替わって、6,7枚の半袖シャツがいちどきに衣装掛けスタンドに並ぶ。衣替えを実感する日だ。

 秋から翌年の春に掛けては衣装がけスタンドに吊されるのは長袖シャツだ。特に冬用のシャツがあるのではなく、吊されたシャツの中からやや厚めの生地のものを選んで着ている。いずれもユニクロなどで購入したものだ。

 半袖シャツはすこし違って、海外旅行の土産に買ったものなどが何枚かある。海外旅行の際、半袖シャツや、Tシャツはかさばらず軽いので格好の土産物となる。記念となるものだから、なかなか捨てられない。

 30年近く前にシンガポールで買ったシャツもその一つ。いかにも熱帯風の手の込んだ更紗模様が気に入っている。もう一つはカンボジアシルクのシャツ。16年前にアンコールワット観光の際に買ったもの。生成りシルクのすこしざらついた感触が涼しい。半袖シャツは句会やエッセイ教室など、いわばよそ行き用で、定年後の現在では月にせいぜい6,7回着るに過ぎない。したがって長持ちする。とはいえ更紗模様のシャツも、カンボジアシルクのシャツもさすがに襟がすり切れてきたりして、そろそろ処分しようかと思っている。

 夏の間、家にいる時はもっぱらTシャツだ。Tシャツは特に旅先で買ったものが多い。中では今は亡きエッセイ教室のOさんから海外土産に頂いた、数枚のTシャツがゆったりとして着心地がよく、愛用した。Tシャツは半袖シャツに比べて、身につける頻度がずっと多いから、傷むのも早い。気に入っていたハワイ土産の6匹の猫がカヌーを漕ぐイラストの描かれたTシャツも、襟まわりが伸びてすり切れてきた。頂いてから15年にはなるだろうか、これも残念ながら整理することになる。

 サラリーマン時代の最後の15年ほどは、上下そろいのスーツで出勤していた。スーツには夏服と冬服があり、これはきちんと季節に合わせて着用していた。定年後はそろいのスーツを着るのはたまにある少しフォーマルな場。だから20年もスーツの新調はない。もともとそろいのスーツというのは型にはまった没個性的な服装だと思っていたので、定年後は意識的に上下別にしている。スーツの上着はジャケット代わり、パンツもチノパンなどを愛用している。

 一つだけ今でも上下そろって夏用と冬用を使い分けているのは、黒の礼服だ。葬祭用がほとんどだが、それも家族葬が多くなり出番も少なくなってきた。


       2022-11-16
 up


エッセイ目次へ