2021年2月  課題:宝くじ
 
宝くじと競馬

 毎月、NHK文化センターの下重暁子のエッセイ教室が終わった後、課外授業と称して青山一丁目駅ビルの地下のライオンで、ビールを飲みながら、歓談する。大きなジョッキを頼むと、時々、三角くじを引くことができた。当たると、次回の飲み物券として使うことができる。私は何回か引いたことがあるが、外れるよりも当たる方が多かったように思う。

 これは些細なくじ運だが、大きなくじも運が良かった。今のところに自宅を建てた際のこと。土地は会社の共済組合が斡旋してくれた、1ブロック21区画の土地。私が希望したのは東南の角地という一番いい区画だった。希望者は、4,5人いたようだけれど、私が当選し念願のマイホームを持つことができた。

 自身くじ運はいい方だと思うが、宝くじは買わない。独身の頃、一度買ったというかすかな記憶があるきりだ。自分の意思を働かすことができないものに、金をかけたくない。年末ジャンボの売り場に長い列を作る人々の気持ちがまったく分からない。

 宝くじではなく私が買ったのは馬券だ。宝くじと違って、買う馬券は自分の意思で決めなければならない。出走馬の今までの成績、本命か穴馬か、長距離型か短距離型か、逃げ馬か追い込み型か、そして血統。競馬のすごいところは膨大なデータがそろっていること。中央競馬会の毎年の全レースの結果は、数十年にわたって記録されている。

 すごいのは血統だ。すべてのサラブレッドの牡系の血統は、18世紀中頃のイギリスの3頭の牡馬まで遡ることができる。競馬の面白さの大きな要素は、この血統にある。私も有力馬の血統についてはその三代前くらいまではよく調べた。酒席でこの馬の父は何々で祖父は何々で、さらに遡るとな何々にたどり着くなどと、競走馬の血統の蘊蓄を語ったりして、私の話はまるでイエスキリストにいたる系図を述べた聖書のマタイ伝の最初の部分を聞いているようだと言われたこともある。

 こうしたデーターをじっくりと考慮した末、勝ちそうな馬を自分なりに導き出す。競馬の楽しみはこの過程にある。1970年代の初めから15年間ほど、毎週馬券を買い、ダービーなどの大レースは東京競馬場で観戦した。80年代の半ばから、日曜日に翻訳の仕事を手伝うようになり、競馬の実況中継が見られなくなったのを機に、私の競馬熱も冷めていった。

 宝くじと競馬の大きく違うところは、前者は当たった場合の賞金額が馬鹿でかいこと。百円のくじが一億円にもなる。倍率は百万倍だ。その代わり当たる確率はずっと低い。競馬では百円券で一万円の払戻金がある、いわゆる万馬券が出れば大いに話題になった。もっとも最近は馬券の種類が増えて、一万倍の払戻金が出ることもあるようだ。

 もう一つの違いは、主催者の取り分。中央競馬は平均で25%ほどなのに対して、宝くじは約50%。宝くじの賞金は無税だが、競馬のあたり馬券の配当金は課税される。しかし、年間50万円までは控除される。こうしてみると、賭け事としては、競馬の方が圧倒的に有利なことが分かる。

 それでも平均すれば投入資金の75%しか回収されない。植木等の歌ではないが「馬で金もうけした奴あないよ」である。
 
 私の通算収支もそんな程度だろう。

2021-02-17up

 補足:100円が5億5444万6060円に

 3月14日の中央競馬ですごい高配当がでた。WIN5とは中央競馬会の指定するその日の5つのレースの勝ち馬をすべて当てる馬券。そのWIN5の的中が僅か1票、史上最高5億5444万6060円の払い戻しの大波乱となった。1番人気が0勝、昨年、無敗で牝馬の3冠を取った圧倒的人気のデアリングタクトが敗れ、10番人気のギベオンが逃げ切ったことが、高配当に拍車をかけた。

 競馬会の取り分を25%として計算すると、この馬券に投じられた金額は約7億2000万円。当たったのは1票だけだから、720万分の1の確率だった。

 競馬も近年は高額配当がでる馬券が売られている。

 2021-03-17up


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