2020年12月  課題:アウトレット

アウトレットでマスクを買った

 いわゆるアウトレットなるものに初めて行ったのは25年前。アメリカバーモント州のマンチェスターという小さな町だ。ツアーを企画したのはニューヨーク州の州都オーバニー在住の大学のクラスメートの田中さん。参加者はクラスメートとその連れ合い。ブロードウエイで「オペラ座の怪人」と「キャッツ」、オーバニーの森の中のオペラハウスでは、ニューヨークメトロポリタン歌劇の「ドンジョバンニ」、タングルウッドではボストンフィルのベートーベンを野外で聴くという、マニアックなツアーだった。

 マンチェスターで泊まったホテルはイクイノックスホテル。ホテルに隣接してプライベートゴルフ場があり、そこでゴルフをするのが目的だった。私のほか、数人はゴルフをしないので、その日は奥様方と連れだって、少し離れたマンチェスターの中心にあるアウトレットに出かけた。

 アウトレットというと普通の商店より安く買えるが、商品には少し問題があると理解していた。行ってみると、有名ブランド店が軒を並べていた。ディオール、ポロラルフローレン、ダナ・キャラン、カルバン・クライン。こんな有名店が傷物を売るのかと不思議に思った。

 ハンドバッグが欲しいという妻に付き合い、コーチの店に入った。黒い牛革のバッグを店員が勧めた。よく見ると幅数ミリ、長さ2センチほどの細かい凹凸がある部分があった。店員にこれは何かと聞いたら、血管の跡だという。店員の言い方には悪びれたところはなく、むしろ本物の牛革であることの証明であると言いたいようだった。しかし、欠陥であることには違いない。だから安いのだろうと思った。この傷も注意してみなければわからないほどのものだから、妻は購入した。

 二度目のアウトレットは2012年の御殿場プレミアムアウトレット。青春十八切符で御殿場線を巡ったときのこと。沼津から裾野市にある宗祇の墓を訪れ御殿場駅に着いたのは12時。駅前から御殿場プレミアムアウトレット行きの無料バスが出ていた。時間もあるので行ってみた。

 富士山の見えるかつての遊園地跡に忽然とできた巨大モールだった。広い歩道を挟んでアーケード付きの店が軒を連ねる。その数100は越えそうだ。こんなにもたくさんの店が、傷物を売るのか! 私は特に買いたいものもなく店を覗きもしなかったから、扱っている商品がどんな性質のものかはわからなかった。工場直送の調味料を使っているという店でパスタを食べた。

 三度目のアウトレットは、と言ってもたんなるバーゲンだが、今年の12月。横浜市営地下鉄センター南駅には有隣堂書店があるが、そこで時々店の前に棚を置きバッグや衣料品のバーゲンセールをやる。先日通ったら、マスクのアウトレットセールと銘打って、マスクにはこんなに多くの形があるのかと驚くほどたくさんのマスクがなれベられていた。張り紙には「工場直送、季節外商品、過剰在庫処分」。なるほどそうか、アウトレットというのは傷物をだけを扱うのではないのだ。大量に作ったマスクが過剰在庫となっている。国が各家庭にマスクを配るという春の騒ぎが嘘のような話だ。

 50枚入り1400円のマスクが490円。1200円の消毒スプレー缶が390円。この2品が私の初めてのアウトレット購入品となった。                             

2020-12-17up


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