2019年3月  課題:「待ち合わせ」 

吟 行

 私の入っているオリーブ句会の宮川ルツ子師は、今年90才を迎えるが、吟行が大好きである。家に籠もっていたのではよい句はできないと言うのだ。

 月1回の句会の他に、月1回の吟行がある。句会の所在地は、横浜市緑区で、近場には大きな公園や市民の森などが残っていて、四季の移り変わりを目の当たり感じることが出来る。横浜線沿線、小田急線沿線にもたくさんの吟行地がある。丹沢山麓の戸川公園や、座間の谷戸公園などは、ルツ子師のお気に入りのところで、いずれも3回も吟行している。都内では根岸の子規庵、上野公園、隅田川遊覧、あるいは文京区関口の芭蕉庵など。芭蕉庵の後は、すぐ近くで開催中の春画展の列にも並んだ。五島列島や伊豆には泊まりがけで出かけた。

 句会のメンバーは現在男女それぞれぞれ4人。句会は第2木曜、吟行は第4水曜と決まっていて、句会の際に吟行の行く先を決める。集合場所、集合時間、アクセスなどの細かいことは世話役の私が後で調べて、句会報に載せて連絡する。

 原則として現地集合。待ち合わせ場所は多くの場合駅の改札口に指定する。かつて、駅のホームを待ち合わせ場所にして、逆のホームにいてなかなか現れなかったメンバーがいたことがあり、以後、改札口にしている。ここが一番わかりやすく間違いがない。改札口がいくつもある駅でも、ネットで調べれば、ほとんどの駅の構内図が出ているので、それを見て指定する。

 吟行で特に便利なのがケータイ電話だ。吟行では、俳句手帳を手に各人が思い思いに公園などを歩き回って作句する。そろそろまとまって行動しようかと連絡する場合には、ケータイはなくてはならない。待ち合わせの際も、乗り物の遅れなどで、時間に間に合わない場合もケータイがあれば、連絡できる。

 とはいえ、私にはケータイで苦い失敗がある。4年ほど前、大宮の氷川神社に吟行した。吟行の案内には、必ず当日の緊急連絡先として、私のケータイ番号を載せておく。その日は、たまたま事故で電車が遅れた。2人のメンバーから連絡が私の携帯にかかってきた。当時、ケータイの取り扱いに不慣れだった私は、ケータイを操作している間に切れてしまって電話を受けることが出来なかった。幸いたいした遅れではなく、皆集合できたが、ケータイに出ることが出来ない私はあきれられてしまった。それ以来、吟行案内の緊急連絡先には、私の他にもう1人のメンバーのケータイ番号を載せることにした。以後、私のケータイへの連絡はなくなった。私のケータイ操作は今以ておぼつかない。

 吟行句会は、2時間ほど歩き回った後、適当なレストランで遅い昼食をとりながら行う。1人3句出句。即席の属目句だが、これは俳句作りの基本である。当日出来なくても、時間をかけて、吟行で目にしたものが、じっくりといい形に育って行く。

 今までに行った吟行は60回近い。吟行で色々な季語を実感し、特に今まで知らなかった草花や樹木の名前をたくさん覚えた。

     神代植物園にて

吟行は理科の勉強花擬宝珠         

    2019-03-28up

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