2018年4月 課題:「薄着」
ジーンズに股引は似合わない
結婚するまでは、ジーンズを履いたことがなかった。まだ一部の若者のファッションで、私は興味がなかった。ジーンズを着用し始めたのは、30代になってからだ。妻に勧められたのかもしれない。ごわごわした感触と、履き慣れるに従って肌に馴染む感触の、両方が気に入った。
34歳の時に、私の勤務するJTの研究所が、東京の大井町から、横浜市の青葉区に移転した。移転にともなって、私の入っていた社宅も、研究所から徒歩5分ほどの所に出来た。その頃はすっかりジーンズ愛好者になっていた私は、職場へもジーンズで通った。職場では作業衣に着替え、毎日たばこの成分を分析したり、新しいたばこの作り方を探ったりしていて、外に出ることもなかったから、通勤にジーンズでも問題なかった。それに、ジーンズで通勤なんて、ちょっと反体制的で格好いいという思いもあった。
ジーンズは厚手の生地だから、夏のステテコなどは邪魔だ。冬も、歩いて5分の通勤だから、股引なしでもよかった。そんなものをしていたのでは、ジーンズのあの感触が味わえない。かなり一般化したとはいえ、まだ若者のファッションであるジーンズの下に、おじさんたちの愛用する股引きは似合わない。一年を通してズボン下とステテコを履かないことにした。冬のロッカールームで、ほとんどの所員が厚手の股引をはいている中で、さっとジーンズを脱ぎ、裸の腿と脛を出して、着替える私を見て、先輩が「へー君、冬でも股引履かないの」と感嘆の声を掛けてきたときは、誇らしかった。その先輩は、いわゆるらくだの股引を履いていた。
私の薄着の起源はそこら辺りにある。その後社宅を出て、自宅からか通うようになったり、50歳過ぎからは職場が都心へと変わり、ジーパンで出社ということはなくなったが、ズボンの下には何も履かないという習慣は変わらなかった。子供の頃、フランネルで出来たコンビネーションという上下一体の下着を履かされていた記憶はある。成人してからもズボン下やステテコは長いあいだ履いていた。今は、真冬でもズボン下は履かない。上も薄手の半袖の下着、ワイシャツ、ジャケット、そしてコートが、真冬の外出時の服装だ。春秋の服装の上にコートを羽織るだけだ。
着ぶくれた男は格好悪い、というダンディズムだけで、長年の薄着が通せたとは思わない。世の中全体に暖房が行き渡ってることが原因の一つだ。出かける時でも、外気に曝される時間は極めて少ない。電車も建物内もよく暖房が効いている。
もうひとつは私の体質が原因だろう。私は若いころから高血圧である。それが原因か、体温が高い。人と握手した際、ほとんどの人の手を冷たいと感じる。体温が高いために、薄着でも暖かいのではないかと思う。
私の体のもうひとつの特徴は、風邪を引くことが極めて少ないこと。鼻風邪くらいは年に一度二度は引く。しかし、成人してから、風邪で寝込んだ記憶は一回しかない。薄着で肌を鍛えている効果だと思っている。
2018-04-19 up
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