2015年12月  課題:「冬支度」


白菜とキヌサヤエンドウ

 今のところに60坪ほどの菜園を借りて野菜作りを初めて、15年になる。菜園日誌をつけて、農作業の指針としている。菜園は私の歳時記、毎年同じ季節にやる作業は決まっている。

 白菜の種を播くのは8月下旬。菜園日誌によれば、ここ10年で8月27日播種が6回である。菜園を始めたころ買った種袋に、8月27日に播きなさいと注意書きがあった。日にちまで指定してあったのは後にも先にもその年だけだったが、以後出来るだけその指示に従っている。播種後85日で収穫出来るという品種だが、初収穫は毎年11月の25日前後で、ちょうど90日かかる。

 キヌサヤエンドウは11月上旬に播く。種袋には10月から11月上旬に播くよう指示してあるが、私は10月には播かない。出来るだけ遅く播く。早く播くと育ちすぎて、冬の寒さにやられてしまうからだ。キヌサヤとかソラマメ、あるいはムギは冬を越すことによって、分蘖が促進され、根元から新しい枝がたくさん出てくる。春先になってキヌサヤを播いたことがあるが、分蘖がほとんどなく、収穫もごくわずかだった。厳しい試練に曝されないと逞しく育たないのは人間もキヌサヤも同じようだ。

 キヌサヤの収穫は4月20日頃から5月20日頃までの1ヶ月。毎年決まって5月初めのゴールデンウイークに収穫の最盛期になる。今年の例では5月5日に1キロ採り、翌6日はまた600グラム採れた。種袋一つ分、100粒ほどの種からの収穫だ。葉の陰の取り忘れたものはすぐに豆が大きくなって、さやが固くなるので収穫しなかった。そうして捨ててしまうものが毎年4分の1くらいはあった。数年前、大きくなってしまったキヌサヤから豆だけ取り出して、食べることを思いついた。豆御飯にすると、グリーンの豆を炊き込んだはずなのに、御飯がうっすらと赤くなった。豆のポリフェノールがしみ出してきて赤くなるのだろう。体にはいい。

 白菜は11月末から漬け物にする。1回に2株漬け、1シーズンに5回ほど漬ける。1株の重さは2キロから3キロと、やや幅がある。30株ほど作るので、3月の上旬まで順次収穫してゆく。寒さにやられないように、年の瀬には外側の葉で芯の部分を覆い、紐で結わえる。こうしておくと外側は傷んで褐色に枯れても、中は瑞々しさを保っている。年を越した白菜は、寒さのために甘味が増して、一段と美味しい。広がった葉を丸めて結わえる作業は結構手間であり、しゃがんでの作業だからきつい。私の父の実家は豊橋市で専業農家を営むが、キャベツが主作物である。白菜は結わえる作業が面倒だから、その必要がないキャベツにしたという。その気持ちはよくわかる。

 キヌサヤとソラマメには霜除けが必要だ。よく見かけるのは、笹を立てて霜除けとすることだ。私は竹笹が手に入らないので、毎年、庭の垣根のカナメモチや金木犀の剪定枝を持って行って、キヌサヤとソラマメに覆い被さるように差している。

 年の内に、白菜を結わえ、キヌサヤとソラマメに霜除けをすると、2月中ごろまでは農閑期で、私は冬籠もりに入る。

            
白菜


 

        
キヌサヤ




 2015-12-24 up


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