2015年7年  課題:「梅雨」


ナス科の植物

 毎年6月から7月にかけて、丸ごと茹でた皮付きの新じゃが、ナスとピーマンの味噌炒め、シシトウの塩こしょう炒め、よく冷えた完熟のトマトとミニトマトが我が家の食卓に押し寄せる。いずれも自家製の野菜だ。これらはすべて分類学上はナス科に属する植物である。さらに付け加えるなら、私が生涯の仕事として取り組んできたタバコもナス科である。

 実を食べるトマトやピーマン、シシトウ、地下茎を食べるジャガイモ、乾燥した葉の煙を楽しむタバコ。これらが同じ科に属するというのが信じられなかった。何か似ているところはないか。注意して見ると、花の形が似ていた。いずれも花冠が五つにわれている。さらに、ナス、ジャガイモ、タバコの花は紫から薄紫で色までよく似ている。トマトは黄色、ピーマン・シシトウは白色だが、形は似ている。ジャガイモは花が実になる。青いジャガイモの実を輪切りにしてみて驚いた。なかには種まで入っていて、その断面は未熟のミニトマトとそっくりであった。トマトとジャガイモは確かに親戚だと感心した。

 私の夏の菜園の主要作物であるナス科植物の大きな特徴は、ナスを除き、その原産地が中南米で、ヨーロッパを経て世界各地に広まったのは、コロンブスによるアメリカ大陸発見以後であること。ナスはインド東部が起源で、中国を経て日本にはすでに奈良時代には伝えられていた。ジャガイモやトマト、タバコはいずれも南米アンデス山地に起源を有する。

 今年の菜園では特にトマトとピーマンのできがよい。例年6株植える大玉トマトのうち、1株もしくは2株が病気でやられるのだが、今年はすべて順調に育って、大きな実をたくさんつけた。1株のミニトマトからも、3日おきぐらいにざる一杯の収穫が、もう3週間ほど続いている。それよりも驚いたのがピーマンのできだ。たくさん出来る上に、形がいい。すっきりと伸び、軟らかな肉は厚く、グリーンが輝いている。今のところで菜園を初めて15年になるがトマトとピーマンのできは、今までで最高だ。その他、ナスもシシトウも例年通りよくできている。

 原因は5月の高温と好天、6月の陽性な梅雨だろう。平均気温は平年よりも2.5度も高く、日照時間は1.4倍、降雨量は半分というのが今年の横浜の5月の気象データだ。毎年4月の下旬に夏野菜の苗を植える。5月は定着した苗が、勢いよく生育する時期だ。例年5月は梅雨の走りがあって、雨が多い月だが、今年は違った。特に、下旬は真夏並みの暑さであった。梅雨に入っても6月は雨が長続きすることが少なく、陽性の梅雨であった。ざっと降って、さっと晴れる、作物にとっては願ってもない天気だ。

 先日NHKラジオの長寿番組「昼の憩い」を聞いていたら、「今年は菜園のピーマンがとてもよくできています」という、地方のリスナーからの便りが流れて来た。

 ピーマンの原産地は中南米の熱帯地域とされている。今年の日本の天候に、彼らの熱帯生まれの遠い祖先の血が目覚めたのだろう。


補足
 ピーマンの仲間パプリカも最高の出来だが、今年出来のいいもう一つはズッキーニ。ズッキーニはウリ科の植物。キュウリ、スイカ、カボチャなどがウリ科である。ズッキーニはメキシコの巨大カボチャを起源とするとされている。
       
      パプリカ(左)とズッキーニ(右)



ズッキーニの一番上のものは1240グラムあった。左にのぞいているキュウリと比べるとその太さがわかる。

  2015-07-30 up

 

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