2014年01月 課題:「ときめき」 カンカン帽かぶれば ときめきという言葉が一番似合うのは恋であろう。後期高齢者入りした今でも、恋のときめきをあきらめたわけではないが、私の目下のささやかなときめきの場は句会である。 俳句を始めて4年目に入った。二つの句会に参加している。 一つはどこの結社にも属さないフリーな句会で、メンバーは全く平等。毎回の参加者は10人ほどだが、郵送投句があり、1人5句で合計70句ほどが集まる。幅9ミリの短冊に書き込んだ句を、作者名は明らかにせず、ランダムに並べて貼り付け、それをコピーし、全員に配る。そこから各人良いと思う句を10句選ぶ。70句もある中から、10句を選び出すのは大変だと思ったが、慣れてくると30分もあれば十分だ。選句が終わると各人が選んだ句を読み上げて行く。これを披講という。 果たして自分の句が何回読み上げられるか。期待と不安で胸がときめく。期待した自句に点が入っていくときは、それもっと入れと内心で叫ぶ。選挙の開票速報を見る候補者の気分もこんなものだろう。得点だけでなく、誰が選んでくれるかも気になる。いつも良い句を作る尊敬するベテランのメンバーが果たして選んでくれるかどうか。選んでくれたら、その1点は2点にも3点にも思われる。さらに自分が選んだ句にどれだけ点が入るかも気になる。しっかりとした鑑賞眼が句作りの基本だから、誰も選ばない句ばかり選んだりすると、作句の力量まで疑われる。 全員の選句、披講が終わると得点を集計して、その日の1席(天)、2席(地)、3席(人)が確認される。それから、1句毎に選者が選んだ理由を述べ、皆で句を評論する。その後やっと作者が明らかにされる。各人が勝手に評論し、作者が時に反論する。70句のうち、20句ほどは無得点だ。「報告に過ぎない」「余情がない」といった辛辣なコメントが飛び交うが、それを根に持つような人はいない。俳句歴の浅い私は有り難いコメントとして頂戴する。終わった後は一杯やりながら、また俳句談義に盛り上がる。 もう一つは「天為」という結社の同人が主宰する句会。まず主宰を除いたメンバーによる互選が行われる。その後で主宰による選句が披講される。主宰が絶対の句会だから、胸のときめきは主宰選句の披講の時だ。投句6句のうち特選と並選がそれぞれ2〜3句、選外1句といったところが私の平均的成績だ。 カンカン帽かぶれば我も笠智衆 これは先の方の句会で昨夏、圧倒的好評を博し天を取った句だ。気をよくしてこの句をNHK俳句全国大会に投句した。今まで入選はあってもそれ以上がない。この句なら、入選の上の佳作、さらに上の秀作くらいになるのではと期待した。結果はまたしても入選止まりだった。秀作の上は特選だ。特選は著名な俳人十数人が1人3句を選び全体で50句ほど。大会に寄せられる句は4万5000句ほどだから、千倍近い難関だ。特選になると、大会当日、NHKホールの舞台の上、選者の隣に座り、表彰を受ける。その様子はテレビで放映される。 NHKホールの舞台に上がること、それは私の夢である。 2014-01-24 up |
エッセイ目次へ |