2008年2月 課題:「手袋」 

地域活動には軍手を


                              
 横浜市の北部、今のところに居を定めてから25年以上経つ。サラリーマンを卒業した7年前に、ちょうど自治会の役員の順番が回ってきたのを契機に、以後、終のすみかと決めたこの町に少しでも溶け込もうと、地域活動にささやかながら参加している。

 地域活動には軍手が必需品だ。

 その一は年に2回の町内総出の清掃作業。前もって各戸に配られた軍手をして、公園の生い茂った草を刈り、道路脇の草を引き抜く。2時間ほどの作業が終了すると、防災鍋で炊き出した豚汁を囲んでの親睦会。近所に住んでいながら顔を合わすことも少ない人々と歓談するいい機会だ。

 その二は地区の環境事業推進委員による町内を通る環状四号線沿いの清掃。環境事業推進委員というのは横浜市が任命する地域の委員で、町の美化、家庭ゴミの区分の徹底などで行政に協力することが任務だ。私はもう5年も委員をやっている。夏と冬の2回の清掃作業では、主として沿道の植え込みの中に投げ捨てられた飲料の空き缶やペットボトルなどを収集する。1キロほどの区間で多いときにはリヤカー一杯のゴミになることもある。不埒な輩が多いとびっくりした。作業には軍手が支給される。

 環境事業推進委員としては、この他に連合自治会の盆踊り大会のゴミの分別指導がある。家族連れでにぎわうこの夏祭りにはたくさんの屋台が出、プラスチックや紙のコップやトレーがたくさん出るので、会場に設けられたゴミボックスの前でその分別を指導、実践する。この作業にも軍手が支給される。

 その三は町内防犯パトロール。空き巣が多発したこともあって、数年前から私の町でも町内の防犯パトロールを始めた。1回に4,5人のボランティアが「防犯」と記した帽子とジャケットをつけて、町内をパトロールする。私も月に1回、参加している。パトロールの際に、レジ袋を持ち、空き缶やたばこの吸い殻など、路上のゴミを拾って歩く。そのために必ず軍手をしていく。

 その四は道志水源林ボランティアの会による間伐作業。この会は後継者不足のために手入れが出来ず、荒れているという道志村の森を守ろうというもの。道志川は横浜市の重要な水源である。1回にバス2台で100人のボランティアが道志村に出向き、スギやヒノキの間伐を行う。私も今までに3回参加した。1組10人に分かれ、森林インストラクターの指導のもと、20メートルもある木にロープをかけ、根元を鋸で切り、引き倒し、枝を落とし、4メートルほどの長さに切り分ける。フィトンチッドに包まれた1日の作業が終わると、快い疲労感が残る。当然、軍手は必需品で、持参する。

 もちろん、軍手の一番の出番は菜園での作業だ。編み目から土が入るので、毎回爪の先が真っ黒になる。それでも、軍手の柔らかな感触、伸縮自在な作業性、通気性、指先に伝わる土や作物の感触は、ゴム手袋の及ぶところではない。昔の軍隊も、いいものを残してくれた。

 地域活動のお陰で、ここしばらくは、軍手を購入していない。 そして、道ですれ違ったとき、挨拶を交わす人の数もずいぶん増えた。

                   2008-02-20 up

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