2013年6月    課題:「サングラス」 

男のサングラス・女のサングラス


                              
 サングラス、夏の季語である。「夏の強い紫外線から目を保護するものですが、ファッションとしても、場所や季節に関係なく、着用されます。」と『ザ・俳句歳時記』には解説されている。昭和になって出来た新しい季語であるがこの歳時記にはサングラスの例句として24句も載っていた。トップは

 サングラスかけて紅唇いよ々燃え      久保田万太郎

 サングラスは女を引き立たせる。いつも作業衣姿しか見慣れていなかった職場の女性が、ピクニックにサングラスをして現れ、別人のごとく魅力的に見えたことを思い出した。もっとも万太郎のこの句の女はいわゆる玄人筋の女の匂いがする。

 例句には次の2句もある。

 そのすぢのものに見られてサングラス    森重 暁
 サングラス黙ってゐてもものを言ふ     井上喬風

 いずれもサングラスのイメージを見事にとらえた句だ。私も町中でサングラスをした男を見ると、まず「そのすぢの」人かと思ってしまうし、サングラスに気押される。

 自分のサングラス姿はどんなものだろうかと思った。私は普段メガネを掛けているから、その上に色つきのブラスチックの薄い板をかぶせてサングラスとする。鏡で見ようと思ってプラスチック板を探したが、見あたらなかった。それではと、アルバムをめくった。海外旅行の際、旅行会社から渡される携行品リストの中にサングラスというのがよくあったのを思い出したのだ。

 10数年前に行ったギリシャ旅行の写真にサングラス姿があった。アテネの西南にあるスニオン岬で撮った集合写真だ。エーゲ海に突き出た断崖のこの岬の上にはかつて海神ポセイドンを祀る神殿があって、今も巨大な円柱が何本も残っている。人気の観光スポットだ。真夏の空には一片の雲もなく、エーゲ海は青く光る。

 黒に近い緑で大きく目もとを覆った私のサングラス姿はひと言で言えば、決まっていない。せめて「そのすぢの人」に見え、無言の威圧感でももっていればいいのだが、そんなイメージもない。一緒に行った男性陣のサングラスも決まっているとは言えない。原因の一つは、私と同じように普段のメガネの上に遮光板を付けていて、それがメガネのフレームまで覆い隠してしまっているためであろう。フレームはメガネの見栄えのポイントだ。普段はメガネを掛けない女性陣のサングラスは、それぞれにファッション性を意識していて、様になっている。左隣の妻のサングラス姿も悪くはない。

 右隣は現地のガイドさん。胸の谷間もあらわなタンクトップ姿に、赤いフレームの黒いサングラスが決まっていた。

      2013-06-19 up


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