2013年4月    課題:「首飾り・ネックレス」 

ランの首輪


 今年の夏で9才になる我が家の飼い猫、ランのためにいくつ首輪を買ったことだろうか。10個ではすまないだろう。すり切れて買い換えたものもあるが、ランが何処かに落としてきたものの方が多い。

 ランは雌の三毛猫。まだ乳離れもしていない頃、路上をさまよっているのを見つけ、車にひかれたら可哀想だと、家内が拾ってきた。活発な猫で、目を離すといつの間にか外に出ていて、家に閉じ込めておくのが難しかった。 

 やがて発情期を迎え、避妊手術をした。妊娠する心配はなくなったが、外へ出すなら、首輪をつけ、電話番号をつけるようにと獣医から勧められた。生後10ヶ月くらいから、首輪をつけ始めた。首輪には電話番号と「ラン」と書いた小さなタグをつけた。首輪は少なくとも飼い猫であることの証明にはなる。

 最初の2年ほどは、ランが出て行ったまま帰ってこないのではと心配だった。幸い、杞憂に終わって、ランはすっかり家族の一員になった。電話番号と名前のついたタグもいつのまにかつけなくなった。

 家に帰ってきたランが首輪をつけていないことは当初からあった。首輪が好きではないのはわかる。しかし、きつくはめても何処かで落としてしまう。一度、ハーネスをつけ、リードで結んでおいたランが、ハーネスから抜けたことがあった。胴体と両前脚を輪の中に入れるハーネスを抜けられるランなら、首輪を外すことなど簡単なことなのだろうと諦め、なくなる毎に買ってきた。

 ランが2才半の頃、家の前の2階建てのアパートに飼い猫を連れた家族が引っ越してきた。しばらくすると、たて続けに外で猫の争う声が聞こえるようになった。そして、ランが3回も首輪なしで帰って来た。越してきた猫に対し、ランがここは私の縄張りだと、けんかをしかけたようだ。相手はランより大きい猫で、ひっかき合いの時に首輪をとられてしまったようだ。一つは道に落ちているのを見つけた。二つはアパートの外階段の手摺りの下に置かれていた。首輪が抜ける原因はけんかにもあったのだ。

 ランの毛は細く、やわらかく、濃密で、艶があり、今まで飼った猫の中ではもっとも感触がいい。その毛並みを大切にしたいので、夜の間は首輪を外す。夜、外すのは家族の誰かが行う。朝、首輪をつけるのは私の役目と決まっている。私の一日は、ランの首輪つけから始まる。ランは夜は決まって私のベッド、私の足先の上で寝て、5時前後にベッドサイドに下りてきて、私の顔をなでて起こす。私はランと階下に降りて首輪をつけ、朝食のキャッツフードを与える。

 今の首輪は何かに引っかかった際にすぐにとれるようにマジックテープで留めるもの。このタイプは日本では売っていない。最初、娘がアメリカ土産に買ってきたがすぐになくなり、さらに、娘が友人に頼んでアメリカから買ってきたものもなくなり、今のはアメリカから娘が個人輸入で取り寄せたものだ。幅1センチほど、表面フェルト地で、伸縮性がり、鳴らないが鈴がついている。

 ランもそろそろシニア年代。最近はけんか相手もおらず、首輪にもすっかり慣れたようで、今の首輪はかなり長持ちしている。

蛇足:
 エッセイ教室の日、いつものように終了後「課外授業」で歓談して、帰宅したら12時近かった。玄関のドアを開けると、ランが目の前に座っていた。私のベッドが整っていなかったので、眠る場所がなく、私の帰りを待っていたのだ。すぐに2階に上がってベッドを整えると同時ランはその上に上がって横になった。




       ランの近影

 2013-04-17 up


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