2002年6月  課題 「自転車」
 
大活躍                                                
                              
 昨年、また菜園を始めたのを機に自転車を買い換えた。

 菜園までは自転車で10分ほど。上り下りがかなりあるきつい道だから、年齢を考えて、坂道はモータの力を借り平地は自力で漕ぐ電動自転車にしたら、と家族は言う。まだまだ住宅地の坂道くらい、モータの力を借りなくても上れると思ったが、念のため近くの自転車店に行ってみた。1台だけおいてあった電動自転車の価格は10万円近くした。値段を聞いてきっぱりとあきらめ普通の3段変速の自転車にした。こちらの方は9800円という安さだ。

 後ろの荷物篭には水を満たした2リットルのペットボトルを4本積み込み、前の篭には手袋やはさみ、ひも、収穫物を入れるためのスーパーの買い物袋等、細々したものを入れて家を出る。家から横浜線十日市場駅までは団地の中を通る緩やかな下り道で快適にとばす。駅を突っ切ってからは恩田川に向かって急な下り。恩田川沿いの水田の中の農道を通り、橋を渡って対岸の高台の中腹に私の菜園はある。最後の上りはきつい。ここで自転車を下りて押したら足腰の鍛錬にもならないし、体力の衰えと年齢を認めることでもあるから、意地でも頑張る。途中でギアを低速に切り替え、腰を浮かしてペダルを踏む。水が重たい。

 帰りは収穫物を前後の篭に入れて帰る。今の季節は、キュウリ、サニーレタス、ジャガイモ、大根、ピーマン、ナス等であふれるばかりで、行くときと同じほどの重さだ。恩田川まで下って後は上り一方だ。覚悟を決めて時には猛然と、時にはゆっくりと駅をめがけてペダルを漕ぐ。駅に着くとほっとするが休む間もなく、さらに緩やかな上りを家まで漕ぐ。

 春から自転車の出番がもう一つ増えた。自治会の役員になったためだ。

 私の担当は町内の環境整備・交通関係。町内は一戸建てと小さなアパートのが混在し、400近い世帯がある。公園が二つの他、栗林も残っていたりして広い町だ。私の家は一番端にあり、町のもう一端までは6〜700メートルはある。各ブロックに1人、合計20人いる役員宅へ配布物を届けたりするのに自転車が一番いい。町内100箇所以上もある防犯灯が切れた時は、交換の要請が私の所に来る。そのたびに、暗くなってから自転車で出かけていき、位置と電柱の番号を確認して業者に連絡する。4月以来、もう十数灯交換した。あるいは、ゴミ収集車が行った後、周辺がきれいになっているかどうか、町内15箇所のゴミ出し場所を回ってみるのにも、自転車が最適だ。

 先日、町内一斉清掃の際にバス通り沿いに150株ほどの草花を皆で植えた。植えた後、雨が降らなかったので2,3日すると萎れかけてきた。私は水を満たした500ミリリットルのペットボトルを40本近く、前後の荷物篭に積み込み、自転車を押して一株一株に水やりをして回った。

 変速ギアもない、おんぼろの重い自転車で、大田区の自宅から、八王子、大垂水峠を越えて相模湖に行き、そこから津久井渓谷を下り、橋本、横浜を経由するサイクリングをしたのは20歳の頃だ。もうそのような遠出をすることはないだろうが、電動自転車にするにはまだ少し間がある。


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