2002年2月 課題 「テレビ」
紅白歌合戦
私はラジオ派で普段はテレビを見ない。特に、大相撲もプロ野球もない時期の平日は、終日家にいるようになってからも、朝のテレビ小説の15分間だけがテレビの前に座る時間であることが多い。テレビは見始めるとダラダラといつまでも見てしまい、その間何もできない。ラジオだとパソコンに向かったり、読書しながらでも聞けるから、私は1日FMラジオのポップミュージックを聞き流している。 紅白歌合戦はテレビで見る。ラジオでしか聞かない歌手の顔をまとめて覚えることができるし、普段はまったく聞くことのない演歌系の絶唱を年に一度くらい聞くのも悪くはない。女性演歌歌手は毎回美人ぞろいだ。 数年前の紅白歌合戦の時、スマップの中居君が白組の司会をした。私でも「キムタク」は知っていたが、中居君というのはその時初めて知ったタレントだ。中居君はスマップと一緒に紅白の直前まで、8チャンネルの番組に出ていた。8時直前に一旦終わったその番組は、生だという。番組の中でも、盛んに中居君は紅白に間に合うだろうかと言っていた。そして彼はその番組の最後まで出ていた。こちらも心配になった。司会者の出番まで少し時間があって、お台場のスタジオからヘリを飛ばして行けば間に合うのだろうと私は思った。 紅白の最初から中居君は登場してきた。さっきの番組で彼が消えてから2分も経っていない。そんなことは不可能だ。だからこれは生放送なんかではなかったのだ、と私が言うと、娘や息子は、そんなことはない、これは生で、8チャンネルのスタジオは渋谷にもあるから、そこから移ればできると言い張った。
11時45分に紅白は終わった。待ちかまえていたように子供達はチャンネルをまた8に合わせ、先ほどの番組の続きを見た。紅白の出番が早かったスマップのメンバーはもうそこにいたが、中居君は当然ながらいなかった。結局12時30分過ぎても彼は来なかった。この後半部分は確かに生放送だった。私は子供達に再度、やはり前半は録画だと言った。息子はテロップで生と出ていたから生だと言い張った。娘に至っては「そんな見方をするからテレビがつまらなくなるのだ」とまで言った。番組の前半は生の部分に録画をうまく組み合わせて、いかにも全部が生であるかのように見せたのだ。見る方はそれに担がれたのだ。 中居君は紅白の冒頭に、和服姿で竹刀を構えて、紅組の司会者の和田アキ子と共に、奈落からせり上がってきた。2分やそこらで局を移動し、着替えまですることが不可能であること、もしできたとしても、国民的番組の司会という大役に、そんな綱渡りのような芸当をさせることは考えられないことは、常識で考えれば明らかだ。れっきとした成人である娘と息子はそんな常識を働かせることもなく、テレビから流れる情報を鵜呑みにしていた。恐いことだ。 昨年暮れの紅白で、初めて出た中島みゆきは「地上の星」を歌った。その効果で、年明けに、そのCDアルバムは発売130週にして、ヒットチャートのトップに躍り出た。これには、テレビ嫌いの彼女も改めてテレビのすごさを知ったと語っているが、テレビの影響力は絶大で、それだけによけい恐い。 補足
テレビ放送開始50年にあたり出された課題である。
|
エッセイ目次へ |