2012年7月    課題:節電

ゴーヤ

 ゴーヤという名前はまだ一般的ではなかった。ニガウリといっていた。文字通り苦いウリだ。菜園の隅に1株植えてみたのはもう25年ほど前だ。キュウリを想像していたが、葉が違った。ニガウリの葉は大きく切れ込みが入っていてヤツデに似ていた。脇芽がたくさん出て、黄色いキュウリに似た花を付けた。雄花と雌花に分かれているところはキュウリと同じだったが、雌花のもとにある紡錘形の実の表面は小さな突起で覆われているのが無気味だった。紡錘形を保ったまま、15センチほどの実になったので収穫した。表面のつやつやしたいぼいぼに、ゴジラのプラモデルを連想した。

 キュウリと同じように食べればいいと思い、大好物、酢の物にした。輪切りにしてみたら真ん中に種とわたがあったのでこれを取り除き、薄切りにして軽く塩を振り、酢の物とした。さてこれでビールだとつまんで口に入れた。名前からしてある程度苦いだろうとは思っていた。しかし、予想を超える苦さだ。それでもせっかくの初物、頑張って何回かは口に運んだが、最後はあきらめた。後日鹿児島出身の職場の同僚に聞いたら、ニガウリをそんな食べ方をした人はいないと驚かれた。軽く炒めるなどして、苦みを抜いてから食べるものだと教えられた。まだ、今のようにゴーヤチャンプルというニガウリのための沖縄料理など、ほとんど知られていない頃だった。

 教えられたとおり熱を加えて苦みを減らし、削り節を掛けて何回か食べた。いくつかの実は収穫しないでそのまま放って置いた。緑色が鮮やかな黄色になってしまった。驚いたのは黄色い実が割れると、小豆大の真っ赤な種が現れたことだ。

 ゴーヤ(茘枝ともいう)が一般家庭の庭先につくられるようになったのは、省エネ、節電のためにクールビズなるものが提唱された7、8年前からだろう。丈夫でよく茂るから夏の日よけに使えば、室内温度を下げられるという。街で無料の苗が配られたりした。その頃にはニガウリに代わってゴーヤという名前が広まった。ニガウリのカーテンよりゴーヤカーテンの方が響きがいい。

 私も菜園でゴーヤ作りを再開した。1株から20本以上採れる。料理は主としてゴーヤチャンプル。豚肉、豆腐、卵と一緒に炒める、最もポピュラーな沖縄料理だ。その他にも佃煮にしたり、牛乳とバナナと一緒にジュースにしたり、とにかくよく採れるから一生懸命食べる。どう料理しても苦みは残るが、それが夏のスタミナ維持にはいいと信じて食べる。

 昨年、庭のキウイが枯れてしまったので、後にゴーヤを1株植えた。よく茂りたくさんの実をつけた。ただ、ゴーヤカーテンの恩恵を受ける部屋は昼間は使わないから、節電の効果は微々たるものだろう。

 公共施設にもゴーヤのカーテンを見掛ける。私の街の地区センターにもゴーヤが茂っていた。節電が目的だから、実の方はどうでもいいようだ。昨年8月中旬に行ったときには数本の熟れた実が真っ赤なはらわたをのぞかせていた。

 採られずに朽つる身赤き茘枝かな   肇

    2012−07−19  up


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