9)Yahoo! : ヤフー
 
 ご存知、インターネットのポータルサイト。
 
「YetAnother Hierarchical Officious Oracle」 の頭文字を取ったもの。Yahoo!の創立者で当時スタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤンとデービッド・フィロが、自分たちのリストに付けた名前だ。最後に!マークを付け「Yahoo!」となる。ニューズウイーク日本版98年6月3日号では「またも登場した階層的でお節介な神託」と訳していた。
 
 ヤフーという言葉を聞いたとき、最初に思い浮かんだのは、遠い昔に読んだ「ガリバー旅行記」に出てくる、人間の姿をした動物であった。確か、軽蔑的に書かれていたという記憶があり、なぜサーチエンジンの名前になっているのか不思議に思った。当時、「Yahoo!」を「ヤホー」と呼んでいる人が結構いた。
 
 日本のヤフーがいつ設立され、いつ株式を上場したかは知らない。私は情報化社会のインフラ整備を目指すソフトバンクという会社に興味があった。それで、ソフトバンクが何百億円という資金を調達するために転換社債を発行したとき、ベンチャー支援のつもりで一口買った。その企業を支援し資金を提供するという気持ちで社債や株を買ったのは、この時が最初でそれ以後はまだない。まず利殖という観点が先行する。
 
 ソフトバンクはヤフーの大株主であった。証券会社の営業員から、ヤフーの株が近々分割されると電話があったのは、99年の2月であった。ヤフーの株価が上がればソフトバンクの株も上がるから、転換社債は持っていた方がいいと連絡してきたのだ。ヤフーの株価は1,700万円だった。思い切ってヤフーを1株買ってみようかと思ったのは一瞬であった。そんな大金を賭けるわけにはいかないと、すぐに思い返した。
 
 ヤフーの株はITバブルに乗って分割後もぐんぐん騰がっていった。
 驚いたことに、1年後の2000年2月には、ヤフーの株は1億を超えた。しかも途中でもう1回分割をやったから、4株になっていて、1年前の1,700万円が4億円を超えたのだ。マスコミにはヤフーはじめIT関連株で巨額の利益を得た人々を指す「ヤフー族」なる言葉が登場した。
 
 私はヤフー族になり損なった一人である。
 
 ソフトバンクの転換社債もぐんぐん騰がっていった。最後は額面の十数倍の価格になったはずだ。私は2倍を超えたところでうれしくなって売ってしまった。
 あの時思い切って1,700万円を出してヤフーの株を買って、1年後に売っておけば今頃は左うちわだ。しかし、その決断が出来なかったところが私という人間の器なのだ。ただ、転換社債の方はもう少し儲けられたのにと、残念である。

ヤフー追記:2005−12−06 up
 
  今日の朝刊に、東証1部の時価総額が500兆円を超えたことが出ていた。500兆円を超えたのは、実に15年5ヵ月ぶりとのこと。15年前の時価総額ランキングと、昨日付けのランキングリストが載っていた。銀行や電力会社が上位を占めていた15年前に変わって、今はトップのトヨタを初め自動車メーカーなどの製造業、さらにIT企業も
台頭している。驚いたのは、ヤフーの時価総額が4兆3199億円で、第16位に顔を出していることだ。東京電力よりも大きく、ソニー、三菱商事と肩を並べる時価総額である。

 ヤフー株はその後も1対2の分割を続けて、1株の価格が下がってきた。やっと私でも買える価格帯になったので、今年の夏、3株購入して株主になった。9月末に分割があったので、今の手持ち株は6株である。株価は昨日の終値で143,000円である。

 数日前に、ヤフーから「株主通信」という冊子が届いた。そこには株式分割の経過が記されていた。それに基づき、もし、99年の2月に、証券会社の営業員の情報に乗って、ヤフー株を1株買っていたら、今頃いくらくらいの価値になっていたかを計算してみた。
 この間の分割回数は実に12回になっている。従って、当時の1株は、2の12乗、つまり4096株になっている。これに昨日の株価、143,000円をかけると、585,728,000円、
5億8572万8000円になる。

 ヤフーの「株主通信」の最初のページには名前の由来が記してある:
 Yahoo!という名前は、"Yet Another Hierarchical Officious Oracle"(もう一つの階層的で非公式な神託)の略だといわれていますが、ジェリーとデビッドの二人は自らを「ならず者」(yahoo)と称し、この名を選んだと主張しています。

 「株主通信」の冒頭に載っているのだから、ヤフーとしては、よほどこの流説を否定したいのだろう。逆に言えば、この流説はそれだけ広く浸透しているのだ。

 Yet Another Hierarchical Officious Oracleの日本語訳も、前述のニューズウイーク日本とは少し違う。
 リーダーズ英和辞典には
officious の意味として:1 おせっかいな 2 《外交》非公式の と載っている。ニューズウイーク日本は前者の意味として解釈した。もちろん、ヤフー自体が「非公式な」としているのだから、こちらをとるべきだろうが、「おせっかいな」というのも、二人の創始者が、実際にそう感じたかも知れないと思わせるところがあって、面白いと思う。



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