6)freeze : 動くな
 
 freezeで思い浮かべるのは、1992年にアメリカルイジアナ州、バトンルージュで起こった日本人高校生の悲劇だ。当地に留学していた高校生はハロウィンパーティに出掛けた際、間違って別の家に入ろうとし、そこ家の主人に撃たれて死亡した。主人が「Freeze」(動くな)と言ったのを意味がわからずに進んで行き撃たれた。「Freeze」を「Please」と聞き間違ったのではないかという憶測もされた。
 
 私もfreezeに「動くな」という意味があることはこの事件までは知らなかったし、また、pleaseと聞き間違えそうだ。もし、この高校生の立場におかれたら、恐らく私も撃たれていただろう。
 
 撃った男性は陪審員により正当防衛で無罪とされた。銃の所持が個人の権利として認められているアメリカ社会一般の考えを反映した判決だろう。我々の常識からすれば、これは過剰防衛だと思う。亡くなった高校生の両親は、アメリカでの銃規制を求めて、各方面に働きかけた。クリントン政権時代に、銃所持への規制が少し強化されたが、全米ライフル協会を有力な支持母体とするブッシュ政権は、銃規制に否定的だ。それどころか、ブッシュ政権はイラクへ攻め込んだ。これもどう見ても過剰防衛としかいえない。
 
7)gentleman'sC : 紳士のC
 
  「リーダーズ英和辞典」には載っていない。「リーダー・ズプラス」には以下のように記載されている:
 紳士のC《あまり高くないが、まあまあの評価;伝統的に大学などで育ちの良い子息に与えられる情状及第点》
 
 この言葉と出会ったのはNewsweek誌だ。前回のアメリカ大統領選関係の記事の中で、ブッシュの大学時代の成績を「gentleman's C」であると述べていた。日本でも有名私立などではこれに相当する成績評価があるのだろうか。
 
8)CEO(chief exective officier) : 最高経営責任者
 
 CEOという言葉は今はそのまま使われるほど一般化した。少し前までは「CEO(最高経営責任者)」というように、括弧書きを入れていた。
 
 15年ほど前はCEOという表記はいうまでもなく、最高経営責任者という訳語もなく、この言葉の意味も理解されていなかった。当時、仕事でアメリカでのある訴訟記録を読まなければならなかった。膨大な記録で、専門語も出てくる英文だったので、翻訳会社に翻訳を頼んだ。私は勉強のために原文も読んでみた。その中に「chief excective officier○○」という表現が出てきた。高い翻訳料を払った翻訳文では「○○専務取締役」となっていた。当時はまだCEOと言う言い方は一般的でなかったが、私はその意味を知っていたから、これは誤訳だとピンときた。大勢いる経営陣の中の一専務取締役と最高経営責任者とではその立場はまったく違う。同じ発言でも、専務のそれと最高経営責任者のそれとでは重みがまったく違う。

 当時はこのいい方にずいぶん戸惑い、変ないい方だと思ったが、その思いは今でも残る。日本でもCEOといういい方を採用する会社が出てきた。その多くは会長兼CEOという肩書きを標榜している。わざわざCEOという肩書きをつけなくても、会長あるいは社長といえば、本来会社のトップ、最高責任者であることはわかるのではないか。



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