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初 級電子工作

簡単な論理回路を使用した電子工作をお勧めするページです。

電 子工作自体のやりかたはあまり書いてありません。なぜ電子工作をお勧めするかを中心にしています。



コンテンツ

  1. 論理回路の設計
  2. 設計の手順
  3. 使用する部品
  4. 工作例
  5. 工作を終えて
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論理回路の 設計

論理回路の設計の理屈は非常に単純なもので、論理式を扱える方であれば原理的にはどんな複雑な回路でも作る ことができます。しかも最近では論理合成ツールなどの性能も向上し、例えば数十万ゲートの回路でも一人で設計することが可能になっています。

私 は、本業でマイクロコントローラの論理設計を行っていた時期があり、実際に上記のような規模の回路を扱っていました。でも、そのときに感じたことは「複雑 なもの」に対する感覚を養っておくことの重要性でした。

こ れは言葉ではなかなか表せない感覚なのですが、簡単なものから徐々に複雑なものの設計を経験していく上で得られる、限界に対するマージンのような感覚を持 たないと、複雑なものを作りきれない (いつまでも機能が完成しない、バグが収束しないなど) 事態になりやすいのです。

そ こで、このページでは昔を振り返って、簡単な論理回路の設計を行ってみた経過を書いています。論理設計に詳しい方もそうでない方も、一度基本に戻ってツー ルに頼らない設計で何か作っていませんか?

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設計の手順

論 理回路の設計はおおむね次のようなフェーズに分割できると思います。

  1. 企画
  2. 仕 様設計
  3. 論理設計
  4. 回路設計
  5. 実 装
  6. 評価

小 規模なものでは 1. の企画と 2. の仕様設計はすぐに終わります。今回は、たまたま長男が鉄道模型に興味を持ち始めたこともあり、鉄道模型の進路構成の制御卓を作ることにしました。ただ し、長男の場合まだ制御することよりも走っている車両を眺めるほうに趣があるようですので、制御卓自体のリアリティは一切無視しています (方向てこと目的位置で進路を構成するというステートフルな概念がまだむずかしそうなので)。自分が本格的にやっていたころにはこんな妥協は性格的にでき なかったのですが、年をとったせいか?いつのまにか割りきりができるようになっていたのも自分としては発見でした。

鉄 道模型だけに脱線しましたが、企画に魅力がないと、途中までで長期中断になる可能性が高いので、目的意識の感じられる題材を探しましょう。

2. の論理設計は仕様を論理に変換するフェーズです。論理回路の場合は入力と内部の状態を保持するフリップフロップの出力との論理式で全ての出力およびフリッ プフロップの次ステートの値が決定できますので、これを具体的な記述にすれば論理設計は完了です。

最初は後の実装 のやりやすさを考えて、フリップフロップを持たない組合せ回路で実現できるものを選ぶと良いと思います。今回の例も、ステート部分は外部のスイッチに任せ ていますので、回路としては組合せ回路になっています。

論理設計が終わればあとはこれを回路にして組立て、きちん と動作するかを確認する、つまり 4. の回路設計から 6. の評価に至る作業になります。

4. の回路設計では論理をカルノー図などを利用して極力単純かつ利用可能なゲートの組合せに置き換え、回路図や Netlist などで表現します。下はそのときに使用したメモで、論理と IC への割り当てが表現されています。

Memo

5. の実装では実際に必要な部品を基板上などに配置し、配線を行います。下は使用した配線図です。

Connection

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使用する部 品

今 回の例では 74LS シリーズの CMOS 標準 Logic を使用しています。PAL や FPGA などが普及する前は、CPU や周辺 IC などの高機能部品を除けば、標準 Logic が論理回路を実現するための主要部品でした。CMOS になる前は TTL で 標準 TTL 略して単に TTL と呼んでいました。今でも昔から回路設計をしていた方は、たとえ CMOS 標準 Logic でも「TTL で作る」という表現を使われる場合もあるのではないでしょうか。

その他の部品としては、鉄道模型の動力系の信号と のアイソレーションのためのフォトカプラとリレー、オープンドレイン回路の構成に使用する集合抵抗、電源系に使用するコンデンサ、そして制御用のスイッチ と表示用の LED などがあります。

これらの部品は懐かしい?2.54mmピッチのスルーホール基盤に搭載し、 ワイヤリングはめっき線等を使用しています。

電 源は、手持ちの部品がなかったので PC 用の AC アダプタ (12V, 5V 出力) で代用しました。最近の鉄道模型の制御系 DC は 12V (昔は ACで 16〜18V でした、今でも大型のものはそのままです), 74LS シリーズの電源電圧は 5V なので、ちょうど都合が良いです。

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工作例

下 は作成した制御基盤の写真です。

単純な組合せ回路で高速動作でもないのでコンデンサなど不要ですが、昔馴染んだ電 源配線にしたため、おまけで付いてしまいました。

Circuit

下は制御板の上に乗せた表示用のパネル の写真です。見にくいですが LED が基板に付けられ、その上にアクリル板があります。

Panel

最後にパネル上に(線路の方の)配線図を乗 せた状態です。この上にさらにアクリル板を載せた状態が完成形です。

Console

久しぶりにこのレベルの工作をしたせい か、唯一手書きの回路図は上で半田付けを行ううちに汚れてしまい (^_^; 、最後には紛失してしまうという失態でした。

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工作を終え て

久 しぶりに 「電子工作」 らしいことをしました。週末の作業なので約1ヶ月かかりました。正直マイコンを使えばほぼ 1chip ではるかに簡単に (多分2日で) 実現できるものなのですが、標準 Logic で、しかも完全なマニュアル設計でやってみて良かったと思っています。

理 由は、

  1. 論理合成扱っているものの複雑度が如何に高いものかを身をもって再認識できた
  2. こ んな単純な回路 (150ゲート程度!) でも回路設計で8箇所、実装で3箇所の間違いがあり
    設計を収束させるためには丁寧に設計・ 実装することの重要性を再認識した
    (久しぶりのせいもありますが)
  3. 急ぎすぎず楽しすぎず の感覚がよみがえった?

などなどです。

言葉であ らわすのはやはり難しいのですが、経験のない方、特に論理設計を本業としている方はぜひやってみてください。必ず得られるものがあると思います。

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Last Update Sep.24/2006
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